極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第20話 もしもし、今からお前ん家に墜落するから待ってろ

ザナドゥはコーディネイターをナチュラルに回帰させる事で自然に戻そうというブルーコスモス・穏健派の組織であった。……実態は兎も角、公式的にはそういう組織だ。

その為、コーディネイターを一刻も早く滅ぼしたい層や其処までは行かなく共、敵対的な手段を取る主流派とは仲が悪かった。

過激派からすれば同じブルーコスモスの同胞とはいえ、裏切るかもしれない。

その為、地球連合軍という新しい組織となったこの際にと、普段の言動行動からも明らかなザナドゥのシンパの多くは閑職に飛ばされていた。

 

尚、戦争で死にたくないのでザナドゥのシンパの振りをする者達も居た。

内情も知らずににわか知識でザナドゥのシンパとして振る舞った者達は最前線に投入されていた。

過激派はザナドゥのシンパを減らせるなら減らしたかった。末端は戦死させる気満々だった。

……宗教において異教徒よりも異端の方を過激に弾圧する傾向にあるがブルーコスモス・過激派にはそのような心理が働いていた。

 

公言するような本物のザナドゥのシンパは骨の髄まで気狂……インテリで能力が高かった。

 

最前線で活躍するつもりの奴らも居れば立ち回りで生き残る策を弄する者達も居た。

クシーとまではいかなくとも異端者としての振る舞いを心得ている者達である。

ザナドゥのシンパの振りをして自滅した者達を庇う振りをして前線指揮官に成った者達も居た。

 

彼らは軍人ではあるが積極的に戦争をしたい訳ではない。寧ろしたくないと思っている。

一見するとマトモな考えだが、ザナドゥのシンパは戦争末期でもないのに自分の死すら勘定に入れている異常者達である。

ザナドゥ、引いてはクシーの思想を広める為に発言力を付けたい。シンパの軍人達はそのように考えていた。

ザナドゥ代表・クシーの影響が色濃い彼らは全体への貢献を考え取捨選択をする優秀な軍人でもあった。…そうでなければクシー等というイカレに付いて行く訳が無い。

 

彼らは第1次連合・プラント大戦の緒戦で数少ないマトモな戦果を挙げ、捕まえたコーディネイターの捕虜達への対応もコルシカ条約を遵守していた。MSも鹵獲出来るなら鹵獲した。

 

MSジンは地球連合のメビウスが3〜5機で漸く1機仕留められる。

然し、ザナドゥはメビウスの産地みたいな所である。

クシーが開発に関与したスピアヘッドやメビウスに関してはその恩恵が一番還元されている派閥であった。この点だけは大西洋連邦内のブルーコスモスの主流派より恵まれていた。

 

その為、ザナドゥのシンパはエースパイロット揃いである。

全体がズタボロに負けている他よりも戦果を挙げていた。

全体が負け戦だったので、攻め過ぎないように味方の退路を確保していた。

大敗ではあるが味方の損害を減らす方策を取った。彼らは軍人として正しかった。

 

……彼らはブルーコスモス・過激派がMA母艦のルーズベルトに核を積んでいる事を知らなかった。

味方の為の退路を開けていなければ。若しもではあるが、それは防げていたかもしれない。

ルーズベルトの核。それはブルーコスモスの主流派も感知していない核ミサイルだった。

……70年も戦争をしていない軍隊が地球連合軍となり、混乱していた状況であったが故の暴走は最悪の引き金を引く事になる。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

コズミック・イラ70年2月11日、東アジア共同体・中国の某所の違法研究施設が襲撃された。

切っ掛けは地球連合軍となり、閑職に飛ばされたザナドゥのシンパの軍人からの報告だった。

 

10日の夜、カナード達とは別の閑職に飛ばされた軍人からの報告だった。

私ことクシーは何時でも連絡を寄越せと言っているので24時間対応である。

何時でも何処でも即断即決で動かないとコズミック・イラで治安活動等出来やしない。

 

 

『東アジア共同体の中国にて改造人間が非合法で”生産”されているとの事です』

元ユーラシア連邦軍、現地球連合軍のムラノフ中佐が善意の第三者から聞いた事を私に世間話した。

 

「生産ね……何処かにはあるとは思っていたが、非合法というのは?」

私はムラノフ中佐に尋ね返した。善意の第三者が『非合法』と言うからには多分ザナドゥが介入しても最悪になるまでは無いと推測出来た。

 

動かせる手勢を失った今となっては本格的な調査は不可能だ。

善意の第三者の上司としては研究施設ごと切り捨てても問題ないのかもしれない。だからこそ漏れ出たか。

 

だが、私が懸念していた存在だ。戦闘用コーディネイターの存在時点でブルーコスモスの大義名分からズレる。ならばどうするかと考えれば有り得る発想だった。

懸念はしても存在を調べる為の取っ掛かりすらなかった。それが今、本当に存在すると判明してしまった。

地球連合という新組織の混乱により告発者は出て来た。或る意味で幸運だが不幸な報告だ。

末端とはいえ、既に改造人間が作られていたと思うと本気で不味かった。

 

ブルーコスモスの一部がそのような論理で動いているのは理解出来てしまう。

コーディネイターではなくナチュラルならば人体実験で改造しても良いという発想だ。

……このままでは戦闘用コーディネイター達も消される。

 

ナチュラルの改造人間で代用出来ると主流派も含めて主張し始めるだろう。

そして、既に勝手に作った命、戦闘用コーディネイター達を消しに来るのはほぼ間違いない。

 

……ブルーコスモスの盟主であるムルタ・アズラエルは戦闘用コーディネイターに多額の投資をしていた。これは証拠は無いが確定だった。

アズラエルならば損失を減らそうと使い潰す。私がそれより有益な案を出せば融通は効く。

 

最低な発想だがアズラエルの方が未だマシかもしれない。いや、私も含めて外道だった。

私は金で捨てられる命を買おうとしている。今までもこれからも。

今後の戦争で確実に発生する孤児達。改造人間だか何だか知らないがもう既に量産出来るとすれば非常に不味い。

 

何方にせよ少しでも時間を稼ぐ必要があった。先ず確認された非合法な改造人間というのを保護しなければならない。

正直、カナードや戦闘用コーディネイター達を保護した時よりも気が重い。あの頃は未だ……。

 

私も大局的には世界の流れを止められないだろう。力も何もかも足りないのだから無いもの強請りをしても何も変わらない。

然し、改造人間は非人道的という空気をぶち撒ける事くらいは出来る。

手の届かない彼らの待遇改善くらいは望める可能性はある。

 

現状私が保有するMSの情報を纏めれば、旧ユーラシア連邦軍の保有していたMSに関するデータによれば

間接的な知識ではあるが、MSはナチュラルではほぼ動かせないに等しい。

私は動かせなくてアス何とかが動かせるとか考えれば考える程ムカつく。

実物を鹵獲したら複製して即訓練を開始しよう。兎に角ムカ付く。

 

嘗てジョージ・グレンが宇宙探査用として開発した宇宙服が元になったそれはコーディネイターでないと扱えない歪な形で進化していた。

普通の人間には使えない。だから改造した戦災孤児達を使うという発想が出て来る。

これまでも歴史の暗部にもそういう人間は居ただろうが、それが表舞台に出て来る。地獄が更に加速する。

……この場合、MS用の生体パーツとでも言うのだろうか?人間をパーツとして使い捨てにする。

 

もう既に歴史上には人間を使い捨てにする前例はあった。

……世界大戦の特攻用の兵器だ。人体改造がどれ程か分からないが後遺症で生き残れるかも怪しい。

第二次大戦の特攻兵器、有名なカミカゼでも運が良ければ生き残れた。

私が推定している改造人間の使い道は人類史で見ても最低最悪な発想だった。

 

そのような事が一度でも罷り通れば人類はお終いだ。……そんな事は無い。

そう言いたい。然し、この発想は実現するだろうと私の勘が叫んでいた。今まで当たって来た勘だったので否定出来ない。

どう足掻いてもこの糞の流れを阻止出来ないのならば次善の策しかない。

洪水を堰き止められないならば水の流れを増やして衝撃を抑える治水は日本の武田信玄だったか?

私の行動はそれに近い。消耗品扱いから人間にさせる。……無理だろうがこの方向で動くしかない。

戦争が始まったが緒戦から大敗北確定である。

糞の実験の首魁が掴めない以上、戦争に勝つ為にと必要な犠牲だと使われる事を阻止出来ない。

ならば、その首魁に言い訳を用意させる。河の流れを分散して緩和する。

 

自分が死んだら子どもがMSのパーツとして使われるかもしれない。

……そういう空気になると流石に現場の兵士は後顧の憂いが有り過ぎか。

というかこれでは流石に遣り過ぎだ。

私を含めて全てを揉み消す方が早い。揉み消されたらもう最悪だ。

下手をしたら戦争が止められても又直ぐにこの大義名分で戦争する。

……又しても火種を思い付いたがこれは止められないかもしれない。

 

それは後で考える。先の戦争を考えて今の戦争で滅びる訳にもいかない。

私は陰謀論で片付かない、消されないラインを探るしかない。

何故、この世界は憎悪の種が彼方此方に存在するのだろうか。バラ撒きも大概にして欲しい。

 

コペルニクスの悲劇さえなければ本命の首級を取れたかもしれない。

私の発想にドン引きしながら調査をしてアメリカの五大湖か地中海が怪しいと言っていた彼はもう居ない。探れる余力が無い。下手に探れば隠れてしまうだろう。

……流石に私も無理だと諦めそうになる。世界中に火種が有り過ぎる。

私が一つ二つ潰した程度ではどうにもならなかった。絶望仮面は人の業だと嗤うだろう。

 

……時間も何もかもが無い。私には些細な事で諦めている余裕は無かった。

戦争中なのに、どうなるか分からないのに、これは今しか出来ない事だった。

今ある手札で行動するしかない。嗤いたければ嗤うが良い。私はそれが無性に腹が立つから戦えるのだ。

……未来の悲劇に歯止めを掛けられる存在が居る事に望みを託して行動する事しか出来ない。

暗い事を色々考えたがワンチャン別の可能性を中佐に期待しよう。

 

だが、

『……遺伝子操作を受けていない孤児達で”勝手に”実験をしています』

ムラノフ中佐は憤りの声を押し殺していた。……私の問いに正直に応えてくれた。

余りにも私の想像通りの回答だった。ムラノフ中佐から私へ詳細なデータが転送された。

 

中国の湖南省・長沙から北西へ約500kmの山間地帯だ。

余りにも僻地だった。土地勘がある者を現地で雇って探すのでは処分されるまでに間に合わない可能性が高い。

 

「そうか。”勝手に”……有り難う。それと気を付けて」

私は即座に動く事にした。……人道的にも今後の為にも動かなければ不味かった。

ムラノフ中佐は大丈夫かと不安だが彼が独力で何とかするのを期待する他ない。

 

 

ムラノフ中佐の報告を聞いた私は早速、東アジア共同体の中国・国主の李さんに電話を掛けた。

 

 

「もしもし。李さん、クシーです。今から湖南省に遊びに行こうかと思って電話しました」

私は朗らかな声で中国の現国主である李さんに電話を掛けた。

 

李さんは『えっ?今から?というか何で俺に電話するの?』という反応を私にして来た。

 

「お友達なのに酷いですね。……友達ではない?そんな事はどうでも良いです。私のプライベートジェットが中国のこの辺に墜落すると思うので電話しました」

私は李さんに墜落予定地の情報を転送する。

 

墜落予定地は私がムラノフ中佐から教わった位置情報である。

 

序でに私が先程していた糞みたいな未来予測をカタカタと入力して李さんへと送っていた。

もうこんな事されたら人類が絶滅するまで争うしかないじゃないという酷い予想である。

……コペルニクスの悲劇後の流れは私が嘗て李さんに予測してあげた通りになっていた。

 

「……特攻でもする気かって?そうではありませんよ。そうなら連絡しないじゃないですか」

私は友人の李さんに協力して貰えると言質が取れたので早速遊びに行く事にした。

 

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