極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第21話 命の選別

コズミック・イラ70年2月12日、東アジア共同体の中国・湖南省にて。

 

中国の国主である李子墨がザナドゥ代表・クシーが”入院”する湖南省の施設へ見舞いに来た。

ザナドゥ代表が中国へ外遊の際、発生した墜落事件があった。公式発表である。

 

李国主がザナドゥ代表・クシーを見舞いに行く事は平時ならば可笑しくない。

問題なのは現在、東アジア共同体は戦時であった事だ。

戦場は宇宙なので地球に居る国主が出来る事は余り無い。

それでも高が一個人の見舞いの為に国主の椅子を離れるというのは如何なものか。

李の行動は中国の国主としての威厳を損ねると中国世論は荒れていた。

 

因みにクシーに関しては未だ和平などと遣っているのかという反応であった。

外遊という形ではあるが和平派のロビー活動として認識されていた。

 

中国世論はクシーに対してある意味で好印象を持った。

……プラント理事国の中で東アジア共同体の盟主と自負する中国は人数だけの国と馬鹿にされていた。

クシーの外遊は戦争中にわざわざ訪問するくらいに中国を評価しているという事であると解釈された。

 

中国は嘗ての超大国の誇りこそあった。

だが、世界再構築戦争の中頃に多民族国家が原因で発生した民族自決という内乱の傷跡は深かった。

中国は自国を東アジア共同体の盟主と自負しているが自分達でも認めざるを得ない程に衰退していた。

 

地球での国力も世界三位だが人口で傘増ししている部分が大きかった。

今回のプラントとの戦争では大西洋連邦の良いように利用されているという不満や鬱憤があった。

最も、だからこそプラント利権の放棄は論外であるので戦争には積極的に参加していた。

 

 

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現在進行系で自国の愚民共から叩かれている李は根本的な原因である糞野郎が無駄に元気であるのでムカついていた。

 

肝心要の改造人間に関する証拠も弱い。……良くて仄めかすくらいしか出来ないだろう。

済し崩しで協力を承認した事を李は後悔していた。

李としては他国は勿論、自国の愚民共が幾ら死のうが構わない。

……然し、人類滅亡の未来を提示されたら流石に目覚めが悪い程度の責任感はあった。

 

仮にも大国の国主である偉大な自分に深夜イカれたメッセージを寄越しやがったが。

友達とか気色悪い事を抜かす糞は国を憂う偉大な中国・国主を巻き込みやがった。糞である。

……だが、この糞は報告しただけ、他のド腐れ共よりは遥かにマシなので性質が悪かった。

 

よりにもよって自分の故郷である湖南省で、改造人間を量産しようとしていたド腐れ共は自分に無断であった。

万死に値するというか、自分の手でぶっ殺して遣りたい。

 

「釣りしてぇなぁ……。エギングとかよぉ……」

偉大なる中国・国主である李は旧暦の祖国なら平然と遣ってそうな人体実験の資料を読んでいた。然し、もう疲れていた。

 

当初、超人製造とかロマンがあるじゃねぇかと李は思っていた。然し、目を通せば絶対死ぬ使い捨てである。

こんな物は使い捨ての兵器でしかない。偉大なる我が祖国の復興にはロマンが無ければいけない。

 

男のロマンといえば釣りだ。マグロ釣りとかしたいがそんな事やったら暗殺者が送られそうなので却下だ。

 

……そういう意味では目の前の糞は便利だった。李が関係を仄めかすだけで大抵の暗殺者が泣いて逃げ出す。

超人とか改造人間とか言ってないでコイツのクローンを作ったら良いんではないかと思った。

いや、それこそ世界が滅ぶ。……李は偉大なる自分の脳天をぶち撒けたくなった。

 

 

「日本……ユーラシア連邦の北海道とかオススメですよ?」

糞は我が心の領土をユーラシア連邦と抜かしやがった。

 

北海道以南の沿岸はエギングの聖地だ。ユーラシア連邦が滅んだら真っ先に取り返してやると若い頃は思っていた。

 

「知っているわ。お前らユーラシア連邦の糞共がドサクサで奪ってなきゃ東アジア共同体だったんだから」

李は糞へ自国の領土を主張した。尚、日本の領土ではなく中国の領土と主張している。

 

「15歳に当たらんで下さいな。……MSで制海権取れたら結構不味いな」

糞はさらっとプラントの地球侵略まで言及し始めた。

 

……李としては愚民共にクシーとか抜かす奴を放置出来ない理由を見せて遣りたい。有益な情報の塊である。

まぁ、これまでの経緯を見せれば国主として自分が引き摺り降ろされるだろう。それも含めてする訳が無い。戦争しないと内乱で死ぬから仕方が無い。

 

李からするとプラントの独立など論外だが、戦争まで行くのは反対だった。

糞は戦争前に自治権くらい認めろやと主張していたが、今思うとそうすれば良かったかもしれない。

……大西洋連邦のド腐れ共が始めたので変わらない。西洋人共は殺すのが大好きだから困る。

 

李は今時珍しい完全なる人種差別主義者だった。

ナチュラルとかコーディネイター以前の問題である。

李としてはコーディネイターより何方かと言えば西洋人が嫌いだ。

 

その為、ロゴス等からは李は最初から除外されていた。

世界的な影響力の高い中国だろうが旧暦の価値観で動くので論外だった。

ブルーコスモスの方が未だ世情的に理解があった。

 

「……何で余計な事を言うのか。宇宙で活動出来るなら有り得そうだから困る」

李は溜め息を吐いた。

……海釣りが出来なくなるじゃねぇかと宇宙人共を脳内でサンドバックにした。

 

無駄にイケメン揃いなので李としては殴りがいがあった。李はイケメンも嫌いである。

なので目の前の糞も顔が良いので嫌いだ。

 

 

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私は場合にもよるが旧暦の人種差別主義者の方が話が通じる例として李さんを評価していた。

同時に主義主張関係無く、優秀な人間は優秀だと言うのを理解していた。

 

アズラエルも拗らせているが優秀だった。コーディネイターを嫌悪するブルーコスモスの盟主である。

ムルタ・アズラエルにはコーディネイター達を支配する側に成りたいという歪んだ思想が見て取れた。

だからこそ戦闘用コーディネイターというブルーコスモスの思想から外れた物に投資をしていた。

思い通りにならないプラントのコーディネイター達を黙らせたい、無理ならば殺したいのだろう。

今は屈服させたいと考えているだろうが、追い詰められればコーディネイターの絶滅に切り替える。

 

私からすればアズラエルは調子に乗るタイプだ。自分が優勢と判断するとマウントを取りたがる。

ビジネスでは損得を意識して調整が効くが命の遣り取りは又違う。

核が使えるならば平気で使うようになる。……だからこそ本当ならば使わせてはならない。

使うにしても軽々しく使うような真似はあってはならない。

 

だから、地球連合軍が核を使うような素振りがあれば止めろと言っている。

……私はカナード達に死ねと命令するような事をしてしまった。だが、そうするしかなかった。

 

核使用を防いで生き残ったら何が何でも助けるつもりである。

だが、地球連合軍は余りにも混乱していた。烏合の衆だ。

……嫌な予感がするが使うとしても軍事的な……私が考えても、もうどうにも出来ない。

 

 

賽は投げられた。神ではない私は最悪を想定して動く必要があった。

昨日じゃれ合いをした改造人間の双子以外にも保護した孤児達はそれなりに居た。

 

……完全に壊れている者はどうすれば良いか。

どれだけ引き伸ばしても後数日の命だ。安楽死には研究者の薬が一番良かった。

 

本人の意思は完全に壊れていた。

 

……私はこのような判断を下す為に来た訳ではなかった。

想定していなかった訳ではない。だが目の前でとなると少し動揺してしまっていた。

 

李国主ならば今後の被害者を減らす為に、証拠の為に生かせと言い切るだろう。

酷い言い方だが被害者を安楽死させずに生かしておく事、そして軈て亡くなる事件はこれ以上無い程の価値があった。

私も大局的に見ればそうすべきなのは分かる。だが、余りにも惨いではないか。

 

今ならば自己裁量で何とでも誤魔化せた。私は今直ぐに決意しなければならなかった。

 

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