極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ70年2月13日、ヘリオポリスの工科カレッジにて。
カトウゼミにてキラはテレビを点けていた。
昨日、東アジア共同体で墜落事故があったという彼のインタビューだ。
彼の無事を確認する為に点けていた。
これまでの公式のテレビ番組等では彼の扱いは悲劇の人物から急速に悪くなっていた。
彼が酷い振る舞いをしているという訳では無い。……テレビ等からは彼を貶める気しかしない。
平和の為に活動する彼には根本的に正義は無いと追求し、利益で動いている等という。
コペルニクスでは彼を被害者であったと散々利用しておいて戦争に待ったを掛けようとすると都合が悪いので印象操作を行っていた。
キラは余りにも惨いと感じていた。
彼を断罪するような空気に同調する世論がプラント理事国には蔓延しているようだった。
……世界は今では彼を空気の読めない邪魔者として印象付けようとしていた。
オーブ連合首長国は中立宣言を発していた。
そのオーブからですらそのように感じ取れた。彼の住む地域ではどのような有様か想像が付かない。
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中立のオーブでも今のテレビは何処も彼処も戦争の話題で持ち切りだ。
何処のチャンネルでも戦争の話題しかない。
今日はゼミが休みだ。キラは課題を遣りに行くと言って出て来ていた。
……完全に嘘ではない。ゼミにある機材を使った方が課題を熟すには早かった。
今から遣るのはキラ的に少し家族に見られたくない事だった。
キラはゼミのテレビを弄り、東アジア共同体のテレビ番組を流していた。
キラは彼が無事か調べていた。公的なインタビューはどれもこれも映像ではなく音声だった。
彼はキラにメールで生存報告を寄越したが、余程忙しいのかそれ以降の連絡はない。
メールの内容は何処か感情を押し殺したような形式的な文言だった。キラは不安だった。
東アジア共同体のテレビ番組で公開インタビューがあると漸く見付けた。
キラは家族にも友達にも隠れるようにコソコソと動いていた。
何故、隠れる必要があるのかと言えば彼がブルーコスモスの末端……最早異端とはいえ関わっているからだ。
友達との関係を壊したくないキラは彼の事を未だ皆に打ち明けられてはいない。……彼に迷惑が掛かるかもしれないので言って良いのかというのもある。
家族は彼の諸々を知っているので隠す必要は無いのだが……キラは何故か家族にも隠していた。
色々思う所は有りつつも彼が公の場に出ていたインタビュー番組をキラは見る事にした。
……インタビュー番組とは名ばかりで酷い内容だった。
『私が戦争に反対する理由?それは貴方、人に何で息するのかって態々聞くのかい?』
テレビに映る彼は何時も通りの姿だった。……キラとしても唯一其処だけは安心した。
コペルニクスの悲劇での彼は余りに痛々しかった。
その悲劇としか言えない彼の映像は皮肉にも戦争の為の口実となっていた。
『他の戦争になりかねないような独立運動には干渉しないですよね?』
インタビュアーがそう言うと彼の治安維持活動をピン刺しした地球儀で映し出した。
地球儀にびっしりとピンが打たれていたが、一部空白があった。
インタビュアーが言う独立運動なのだろう。
ザナドゥという組織に関してキラは正直良く分からない。
ザナドゥの公式ホームページではインフラ整備を主な活動としており、その実績を大々的に取り上げていた。
南アメリカ合衆国の水道施設は旧暦でも未達成な快挙らしい。他にアフリカ、アジアと並んでいる。
多分、彼的にはインフラ整備が本業の組織だと心の底から思っている。
キラは幼馴染として見抜いていた。彼は元来そういう人間である。
尚、世間一般で認知されているザナドゥの治安維持活動はついでのように記載されていた。
……その代わりゲーム会社の広告がデカデカとあった。ザナドゥ芸術部門監修とある。
キラがウッカリ広告に触ったらゲーム購入画面にまで飛ばされた。ワンクリック詐欺である。
『場合にもよるでしょう。地球連合とプラントの経済比率でも分かるように規模が……』
キラは映像に違和感を抱いた。……多分だが彼はこの前に何か発言したのだと察した。
キラは片手間にザナドゥの公式活動履歴と先程の空白地帯を照らし合わせてみた。
……照らし合わせて見れば空白地帯にも何度か治安維持活動をしていた。
『場合による』というのは程度によっては独立運動でも介入するという事だとキラは悟った。
……これは完全に印象操作であった。キラは思わずテレビのインタビュアーを睨み付けていた。
『では、規模により判断していると?其処に正義はあるんですか!』
インタビュアーは彼を断罪するように声を荒らげていた。
……何も知らなければ彼が経済的な損得で介入しているように見える。
死の商人と言わんばかりに背景には彼の関与したと思われる兵器産業が並んでいた。
キラはオーブ連合首長国のヘリオポリスに住んでいる。
その為、知っていた。彼が基本的に関わっているのは防衛用の兵器だ。
潜水艦や戦闘機はあるが地球で防衛する為にという理屈はあった。それがダブスタといえばそうではあるが。
防衛用にと格安でオーブに売りつけているとオーブの上流階級の出自であるサイから聞いていた。
キラも触りだけ聞いたのだが、サイは彼について詳しかった。どうもサイの実家に絡んでいるらしい。
キラでも擁護出来ない事があるとすれば……彼はモビルアーマー、MAの開発に関与している疑惑があった。
だが、それだけはテレビの画面にはなかった。それには演出側に不都合があるのだろうと察するには十分だった。
キラとしても嫌だが、彼を追求したいのならばせめてそのMAを取り上げるべきだ。
『……私を叩きたいのは分かるが正義とは?誰しも自分が正しいと思っているだろうよ』
彼は溜め息を吐いていた。正義とは何か聞き返していた。
実際、キラですら彼のこれまでの献身的とすら言える行為の数々と現状を比較して正義とは何だろうかと思ってしまう。
……キラはテレビを見るのを止める事にした。
彼へのバッシングだらけの内容に見ていて辛くなってしまった。
元気な様子なのは確認出来た。本当に大丈夫か不安だが、怪我は問題なく見えた。
……それで十分だ。キラはもどかしさを感じつつもテレビを消した。
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私は東アジア共同体の中国で取り敢えずインタビューを受け付けた。
東アジア共同体に来た意味を少しでも演出する為だった。
ユーラシア連邦以外での露出はある意味新鮮である。誰かしら、どの勢力でも見る者は見るだろう。
もう既に改造人間に関する噂を流す等の手は打っていた。どれ程効くかは微妙である。
最低でも改造人間への境遇は少し緩和されるように計画している。
それとは別にインタビューを受けた。どうでも良いが全く無意味な訳ではない。
私が健在であること、和平の為に動いている事をアピールする狙いがあった。
インタビュー番組を軽く見た。……やはり恣意的な改ざんが見受けられた。
とはいえ、私が目立つ失言をしなかった所為か演出で無理矢理感があった。
見る者が見れば違和感を覚えるだろう。
「……俺が国主とはいえ、旧暦と違って報道の自由は奪えないぞ?」
私の様子を見て中国の国主である李さんはそう言って来た。どうも私は落胆していたらしい。
李さんが気遣うというのは相当である。私は気分を切り替えた。
「いや、でもこれはこれで伝わる人には伝わりますよ。今、治安維持活動をしていないとか抜かした所でも治安活動していると流しています」
私は早速ゲーム会社の公式SNSを使い、嫌らしい改竄をしたインタビュアーを雑コラで流した。
……絶望仮面は反応して来ない。今は戦争中である。
やはり正体はザフト結成の時に映像の端に映っていたあの仮面で間違いないだろう。
正直私と同じ少し変わったナチュラルだと思っていたのだが、コーディネイターだったようである。
違和感はあるがそういう立ち位置に居た。具体的にどういうふうに考えているのかは分からない。
そういうのはゲームで遣れと私は絶望仮面のアカウントに直接メッセージを送った。
私のゲームでならば幾らでも世界は糞と罵詈雑言を吐けるというのに足りないらしい。
何となくだが、ガン研究の資料を絶望仮面に送るべきな気がする。
……何故だ?と私も思う。どう考えても足りない資料である。一応、ザナドゥの機密でもある。
とはいえ、私としては戦時では完成出来ないのだからプラントで開発されても良い。
……プラントの医薬学は地球側よりも進んでいない。というかする必要性がほぼ無い。少なく共、プラント側がこの研究を遣る価値は薄いだろう。
「だがなぁ……ゲームのお得意さんだしなぁ……」
私はもうなるようになれと絶望仮面のアカウントにガン治療の資料を送った。
多分、私は今信じられないほどヤケクソになっている。……後で怒られる事は間違いない。
李国主は私のゲームに何か思う所でもあるのか正気を疑った目で見て来た。当然、無視した。
何故、何奴も此奴も私の芸術活動を理解しないのか。
プラントで核の被害に合えば消し飛びそうだが、宇宙線もある。
世の中の病気であるガンが軽減出来るのであればもう絶望仮面でも良かった。
私はらしくない事をした。何故かは全く分からないが送るべきだと勘が言うので送った。
……これで何か変わる訳では無いだろうが、プラントにも被害は出したくない。
この私の意思を絶望仮面、ラウ・ル・クルーゼはどうするのか見定める事にした。
……何時もの意趣返しである。