極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ62年2月、年明けてから面倒な時期に入った。バレンタインデーである。
私の故郷一帯ではそこまで流行りの風習ではなかったが、一時は宗教が衰退した現在では代わるイベントとして丁度良かった。
聖バレンタインの処刑日にチョコを送って女性側から告白する行事である。
オーブでは女性が送る挨拶みたいなものらしいがその辺は良くわからない。
あそこは東アジア共和国と似た文化を持っているが現在では関係性が薄いので私にも良くわかっていない。
東アジア共和国、私の母方の祖国は余計なイベントを残してくれた。コーディネイターの間ではナチュラルで復活した宗教が弱いので特に広まっていた。
…まぁ、告白というにはあれだが親しい異性にチョコをプレゼントする程度には月でも流行っていた。
そこで問題となるのはアスランである。私自身は幾らか面倒なのに絡まれなければ良いと思っている。
まずアスなんたらはいつも私に突っかかってくるせいでクラスの女子達ではなんか怖い的な風に扱われている。
そのため、キラがアスランと仲良くしている光景は怖いのに良く付き合えるなという認識だ。
だが、私に絡まなければアデラン・ヅラは無口なイケメンと何故か評判である。
私的にはあれ程の面白いおも…騒がしい奴もいないと思うのだが。
まぁ、クラス外の男子からは恨まれ、クラス外の女子からはモテている。
クラス内外でここまで印象が違うのは最早芸術的とも言える。私のいないところでは顔で判別されているのだ。
ちなみにこれに関してはキラもおおよそ同じ認識である。世話焼きだからではないかと言っていたが、それはクラス内だけだと私は知っている。
牽制しあっているクラス外の女子はアスランには近づかず、クラス内の女子は普通に接するので世話焼きするのだ。
…クラス内では私に度々キレるので台無しになるのだが。少しだけ申し訳ない気がしてきた。
「この色男。バレンタインデー当日はキラの家で引きこもっているが良い」
私はアスなんたらに一番面倒くさくない解決法を提示した。
最適解である。モテても嬉しくないこの男からすれば面倒な女子を遠ざけられるし、キラも嫉妬を通り越した関係により面倒なのに絡まれない。
…私は面倒なことをしたくはないのだ。本当に。
「何故だ!大体、お前に指図される筋合いもなければ…そもそもカリダさんに断りもなく!」
ヅラはこんなことを抜かしてきた。わからなくもないが今の文脈、特にバレンタインデーでまず初めにカリダさんを引き合いに出すのはキラに失礼だと思わないのか。
「何故、この私が説明せねばならんのだ!」
私はキレた。一から十まで説明したらこの男は気を使われたと後々まで気にする。大体私から説明させるとかふざけるなという思いが強い。これで納得してくれれば一番早かった。
だが、言葉が足らないのも事実。多少思考を誘導してやろうかと思った矢先、聞かれたくないのが戻ってきた。
「次、クラス移動だよ。早く行こうよ」
キラが空き教室にわざわざ戻ってきた。馬鹿な…
「め、面倒臭がりのキラが戻ってきただと…熱でもあるのか!?」
私は内心を声に出してしまった。アスランがお前それはないだろうという目で見てくる。
「お前それはないだろう。まぁ、確かにそうだけどさ」
アスランは私の想像を超えた。負の方向に。
「アスラン、貴様!一言余計だ!」
私は思わずキレた。そして、我に返りキラの方へ振り返った。
「何だよ…」
キラはそういうとトボトボ帰っていった。…一番不味い拗らせ方をされてしまった。
「アスラン!」
私はアスランに声をかける。機嫌を取りに行くぞという意味で。
だが、
「ああ、早く移動しないとな」
この糞真面目の脳みそ腐れ。次の授業のことしか考えてない。
空き教室に呼び止めた意味がなかった。…少し遅れても言い訳できるというのに。
「ええい!…不慣れなことをするものではないな」
私はアスランを無視してキラへ声かけしに行くことにした。
…過激派のテロや謀略の方が利害関係があって幾分わかりやすいとこのとき初めて知った。
こんな語るまでもないような日常の一つであったバレンタインデーが後に別の意味を持つことになることを私も誰もこのときは予測すらしていなかった。