極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ70年2月16日、ザナドゥ代表・クシーは世界中のインフラ整備に着手していた。
ザフトの核報復の恐怖により世界は混乱していたが昨日、リューリク家の当主の核シェルター発売及び市民への無償貸与の抽選により多少緩和されていた。
その緩和されるまでの間の時間で人員を確保し、現在世界各地へエネルギー供給ライン及び緊急時の有線通信網の整備を急がせていた。
クシーは現在、姉の核シェルターを購入した富裕層等へ向けて一斉にセールスをしていた。
ザナドゥの性質上、トップ自らが行うのもどうかと思うが姉の真似をしていた。
クシーとしても協力出来るならしたかった。……この姉弟は地球中の富裕層から金を毟り取っていた。
弟に至ってはあわよくば富裕層の持つ人材まで確保しようとしているのだから更に酷い。
クシーではなく弟として、協力出来そうな富裕層の顧客名簿を姉から貰っていた。
……教わらなくてもクシーが少し調べれば分かるが恩として押し付けられた。
遺言の件を有耶無耶にしたいが出来なくなりつつあった。姉は又遊びに来るらしい。
「核シェルターに閉じ籠もるのも良いですが、ザナドゥが現在取り組んでいる有線通信網整備は如何でしょうか?」
クシーは姉の核シェルターの顧客だった富裕層を対象にしたセールスを行っていた。
古き良きテレビショッピングに近い。コペルニクスではテレビショッピングで無駄に購入するベラを叱った思い出がある。ベラは直ぐに飽きてキラに与えていた。
キラは何だかんだで使い熟しては飽きて最終的に私に回って来たとクシーは思い出していた。
「問い合わせはお手元のチャット機能をお使い下さい。一応、ザナドゥ公式ページの問い合わせから出来ますが……」
クシーは姉の元顧客達に説明していた。……より深い事が知りたれば公式の問い合わせに投げろと暗に言った。機を見るに敏な者は申し込みがされていた。
公式ページに申し込みした者は有線通信は『使えなくても』有益だと直ぐに判断していた。この行為の裏側のメリットを読み取れる能力がある。クシーはその者達を脳内でメモした。
「直ぐに私が答えられるのはチャットです」
クシーは問い合わせがあればチャット形式で即座に応えるつもりである(応えるとは言っていない)。
富裕層である彼らは核戦争で自分達が助かる可能性が高くなって安堵していた。余裕が出来た彼らは当然その後の生存に関して考え始めていた。
其処に金の亡者、ザナドゥ代表・クシーから提案があるという。彼らとしても先ずは聞いておこうと食い付いた。
「真っ新なお外です。エネルギー効率の良い私のゲームならば遣れるでしょう。然し、離れたお友達と通信対戦や連絡が出来るのは更なる楽しみになるでしょう」
クシーは出て行こうとする何人かを引き止める為に核戦争後の話題を口に出した。
富裕層のその後を憂う感情を利用し、核戦争でも破壊され難い様な有線通信網を整備する様に提案していた。
尚、無関係なクソゲーの話でチャット内では大ブーイングが起こった。……僅かながら肯定的なチャットを書いた者達をクシーは脳内に控えた。
「皆さん同士の通信は勿論ですが、近隣の役場や警察、消防、水道局等に緊急時に使用可能な有線通信網を作ろうかと思います。……他にも利用出来るインフラ整備です」
クシーは暗に人物金とを寄越せとテレビショッピングの向こう側に言っていた。
公共施設へ問い合わせ出来るのは富裕層としても利にはなった。
核で何もかも失うとしても有線通信ならば可能性があった。確かに残っていれば役に立った。
『我々を只で利用しようと言うのかね?』
富裕層達側のチャット機能でクシーへ問うていた。クシーはそのコメントを拾い上げた。
因みに暇な富裕層がチャットに書いた金の亡者・クシーへの嫌味やリューリク家当主である姉との比較が流れていた。それらは当然だが無視されていた。
「有線通信で優先するのは今回の提案に協力して下さった方々ではありますが……協力して下さった皆さんの名前は讃えられるでしょう」
クシーは富裕層にも損が無い提案だと最初に前置きしつつ、彼らの名誉心を煽った。
相手にしている富裕層達は自分で土木業者を買い叩き、酷使して使い潰せる程度の影響力があった。
だが、核戦争で地上が滅ぶ等すれば手元の資産以外は消し飛ぶ。……再起を図るならば有線通信で各地の生き残りと団結する必要があった。核戦争が起きなくとも、有線通信という手段を遺そうとした事実はビジネスや社交界等で使えた。
『……我々は人類の為に協力した。そうだよな、皆さん?』
その富裕層は協力するにしても自分だけ損をしたくないので『我々』という言葉を使った。
クシーはそのチャットを敢えて拾い上げて強調した。
「有線通信は過去の技術です。然し、今の人類に必要とされています。核で電波の受信施設が使用不可になった場合、手段を用意する必要があります」
クシーは補足するように説得した。有線通信というのは現代からすると国の重要機関や軍事拠点以外ではほぼ無かった。
因みにザナドゥ芸術部門の本拠地、グレイブヤードでは有線所か最早骨董品レベルの量子演算式ではないコンピュータが使われていた。
ザナドゥでは一部ではあるがセキュリティ対策として場合によっては骨董品である技術を使っていた。……クシーは元々量子コンピュータは危ないと薄々勘付いていた。それはコペルニクスの悲劇により確信に変わった。
「人類の為に、です。可能であれば皆さんが『より』協力して下さればと」
クシーは資金提供だけでなく人や物を寄越せと暗に言った。その為に『より』という言葉を強調した。
富裕層は言葉で真贋を見極めるのが上手である。
クシーの言葉を聞いた者達の中には直接ザナドゥのアカウントに物資の提供を提案する者達が居た。
ザナドゥ代表・クシーによるテレビショッピングの放送は終わった。反響は大分良かった。
物資の提供は有り難かった。現在高騰しているだけならば未だしも在庫が無いという状況も発生していた。
クシーは当然の様に安価な時期に大量に購入していたので現状はほぼ問題ない。然し、未だ未だ必要なのであればあっただけ良かった。
そう思いつつも、富裕層はやはり人は寄越さないとクシーは少し落ち込んだ。
それでも富裕層が買い占めていた物資や資金の提供の申し込みに目を通していた。
勿論、中には人材を派遣するという奇特な人も居ない訳では無い。
自分だけが助かる事に罪悪感を抱いているのかもしれないとクシーは脳内のメモに名前を控えていた。
クシーが求める人材は何処でも不足している現状が分かる。……誰だってインフラ整備が出来る人材は今の世では手放したくはない。
核戦争まで行かなくとも今後は戦争被害で儲かる事が分かる者は分かっていた。
怒りに燃えるザフトの地球侵略は勘の良い者ならば考えられた。
クシーとしてもプラント及びザフトの公式発表待ちである。
多分、2日か3日後程度だろうと思っている。其処まで沈黙している事は無い。
富裕層の土木業者等の囲い込みは国の強制力で取り上げない限りは無理だろう。
クシーがこの様に大々的なテレビショッピングを行ったのは民間では大分時代錯誤な物を作る口実が欲しかったからであった。
……クシーは富裕層を言い包めて有線通信網に積極的に協力する土壌を作っていた。
……ザフトに原子力を封じられる可能性や無線通信を遮断出来るとクシーが論じようにも証拠が何一つ無かった。
実際、打ち明けた者達からすら信じられていない。
というか何なら未だに一番クシーが信じたくない。であれば当然であった。
テレビショッピングが終わったクシーは現地の有力者である富裕層達と協力してインフラ整備が出来る環境を整えた。
現在進行系で行っている作業であるが更に強力な助けとなってくれるであろう。
そして、クシーは並行して進めている業務を確認する事にした。
オーブや日本の地熱発電。ユーラシア大陸の寒暖差を利用したエネルギープロジェクト等だ。
更に枯渇寸前とはいえ石油がある中東、アフリカ諸国等にも新規のプロジェクトを提案していた。
……世界規模のパイプラインを引くにはどう遣っても時間が足りなかった。
ザナドゥは現地で発電方法を確立していた。
ザナドゥでは新規に国際的なパイプラインを敷設していたが、既存のパイプラインに更に追加する。
当然だが既得権益などとは揉めていた。一応の説得は出来ていたが、未だに一部からは使う必要の無い設備投資とまで言われている。
そしてこのような世界規模のプロジェクトの乱立は事件も発生した。
クシーとしてもザナドゥとしてもある意味想定内だ。然し、なるべくあって欲しくはなかった。
……ザナドゥの人材不足から警備が若干とはいえ手薄になる研究施設等は存在した。
「……聖なる大地が火力発電研究所を爆破した?……ちょっとシバいて遣るから待ってなと伝えておけ」
クシーはブルーコスモスの一派である聖なる大地がザナドゥの研究施設を破壊したと報告を受けた。
当然だが激怒した。……これだけで何万人死ぬか分からない。
……直接シバいて遣りたいがクシーはこれからカナードやザナドゥのシンパ達が鹵獲したジンを回収しに行く予定もあった。
バレなきゃ犯罪じゃないとして元々計画されていた。
敵味方問わず現在機密の塊であるMSジンを可能な限り鹵獲する。出来るならばザナドゥへ送ってくれと依頼していた。
正規軍と非正規の傭兵部隊Xの共同作業である。こればかりはクシーが出向かないといけなかった。
成功していれば届く筈である。聖なる大地をシバいている時間はクシーとしては惜しかった。
未来にとっては何万人の命の損失だが、今からシバきに行くのは他への見せしめと報復でしかない。
クシーは我慢した。だが、気に食わない。従って妥協する事にした。クシーは最近見付けた傭兵組織に電話する事にした。
何でも気に入らない依頼は断るらしい。その為か凄まじい任務達成率の割に話題になっていない。
……クシーは未だ未だ無名な彼らに依頼する事にした。自分の勘がこの組織は成長すると感じていた。
組織の方針としても実に好ましい。誰が相手でも嫌なら断る所なんてクシーは大好きであった。
「もしもし、サーペントテールさんでしょうか?……私、ザナドゥ代表・クシーと申します。恐れ入りますがなるべく殺さずに出来る限りシバき倒して欲しいテロリストが居るのですが、其方でその様な事は可能でしょうか?」
クシーは未だ未だ無名な傭兵組織『サーベントテール』に依頼した。
クシーはムカついて仕様が無いので一方的に捲し立てている。殺さないで甚振り続けろとか滅茶苦茶を言っていた。
「えっ、嘘を吐くな?そもそも電話で依頼を話すな?……直接お伺いした方が良いでしょうか?済みません。私は現在忙しいので又改めて謝罪の為に伺います。代わりと言ってはなんですが、今から其方にザナドゥ本部長のティモテを向かわせます」
クシーは本人だと信じて貰えなかった。サーペントテールは極めて常識的だった。
……未だ未だ無名の組織であるサーペントテールにザナドゥ代表・クシーが直々に依頼の電話するのが信じられないのは当然である。
クシーの名を使うのはまあ良いとして、そもそも盗聴の恐れのある電話で任務を寄越すななどと常識的に叱られていた。
信じて貰えなくて悲しいクシーは謝罪した後にザナドゥのNo.2であるティモテを向かわせると一方的に約束して電話を切った。
クシーは別の所に電話を掛けた。今丁度休憩中のザナドゥ本部長のティモテ・エペーにである。
「もしもし、ティモテ?私、私はクシーだよな?……私が前線で暴れるのと外部の傭兵に頼むのとどっちが良い?」
クシーは唐突にティモテに2択を迫った。序でに久し振りに第三者にクシーである事を否定されたので八つ当たりしていた。
当然だが、ティモテは危ない前線に代表であるクシーを出したくない。
……何時もは勝手に散歩感覚で蹂躙しに行くのに成長したなとティモテは毒された感想を抱いていた。それは現実逃避とも言う。