極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第28話 ザナドゥ代表クシーの愚痴とその効果①

コズミック・イラ70年2月17日、混乱する世界と治安維持活動に奔走する者という構図は一時冷水を浴びる事になった。

ザナドゥ代表・クシーが公式で声明を発表した。……声明というよりも愚痴であったが、その内容は衝撃を以って受け止められた。

 

 

国ですら治安状況を正確に把握出来ない程に混沌となる原因はコズミック・イラ70年1月1日にあった。

……その前から世界中でブルーコスモスやコーディネイターの犯罪やテロ等で大分酷いが未だ把握は出来ていた。

1月1日以降、プラントは地球への物資供給を停止していた。

当時のプラント理事国は自作自演でプラントとの話し合いの場でテロを引き起こした。

結果、プラント最高評議会・議員が1名死亡した。

1月1日期限で話し合いが纏まらない場合はプラントはプラント理事国への制裁として物資供給をストップするとしていた。プラントとしてはそれを実行しただけである。

 

経済をプラントに依存していた多くのプラント理事国は大きな損失と困窮に陥り、反プラント、反コーディネイター活動が激化した。

経済を少しでも回復させる為にプラント理事国ではエネルギー産業や軍事産業への投資活動による回復の兆しが見え始めていた。

結果、敵対するプラント理事国よりも非プラント理事国の方が困窮する様になっていった。

 

プラント理事国では自国の技術や資材に投資すれば良かった。

だが、非プラント理事国は今までプラント理事国が経済的優位性から発展を阻害していたのもあり、必要な資材を開発出来る様な設備投資をする余裕が無かった所が多かった。都市ならば兎も角、地方では顕著だった。

エネルギーに関しても火力発電を復活させる提案が為される地域もあった。

聖なる大地が消し飛ばしたザナドゥの研究施設は非プラント理事国にとって重要であり、それらを失った事は最悪の事態だった。

 

非プラント理事国は1月1日の制裁より遥かに前からザナドゥの提案する世界規模のインフラ整備、公共事業に乗っかっていた。

経済的にメリットがあり、プラント理事国も阻害出来ない大義名分があった。

ザナドゥからは関連する技術支援も行われていた。

インフラ整備により地域経済は発展し、非プラント理事国に恩恵を齎した。経済活動により国力が回復し、最新鋭に準ずる兵器や軍備も整えられた。

……スピアヘッド等はザナドゥ経由で購入したが国力の増大に比べれば些事であった。

 

南アメリカ合衆国では大西洋連邦へ或る程度の牽制が可能になったと軍部が諸手を挙げて喜んだ。

南アメリカ合衆国は大西洋連邦に本気で攻め込まれた場合、大西洋連邦と交渉する事すら危うい程に軍事面では弱かった。

パナマ基地のマスドライバー『ポルタ・パナマ』は南アメリカ合衆国の経済の要の一つである。

当時の南アメリカ合衆国の軍部はプラントとプラント理事国が戦争をした場合の事を想定していた。

万が一、プラント理事国(現在の地球連合)とプラントが長期戦になればマスドライバーは大西洋連邦が南アメリカ合衆国の主権を無視してでも手を出す価値があった。

強奪する為に戦争になり兼ねないと認識していた。実際、2月7日に交付された国連最後通達でもマスドライバーの件に関して警告されていた。

 

それ以外でも現地では長年悩まされて来た風土病もザナドゥの研究機関により解決する事もあった。

ザナドゥの齎した様々な恩恵も1月1日以降は経済が急速に停滞した事により忘れられつつあった。

直接恩恵を受けた者も生活の困窮で恩を忘れる程には深刻だった。

1月1日以降、経済を何とかプラントの制裁前の状態に戻す為に政府は奔走していた。

ザナドゥは所詮一組織でしかないので、国家の経済そのものを立て直すまでにはいかない。

 

非プラント理事国にはザナドゥ依存の経済体制を警戒、反発する勢力も多かった。

潜在的には勢力は居たが無視されて来た。だが、困窮した政府や民衆は簡単に憎悪に動かされた。

恩恵を受けた者も簡単に掌を返した。ザナドゥは金の亡者として八つ当たりの様にテロをする人々も増えて来た。……それが背後に居る者達に誘導されていると気が付かなかった。

……ザナドゥへのテロに走る者達が実は衣食住をザナドゥに頼っていたという笑えない話が散見された。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

ザナドゥ代表・クシーは2月17日、各地の治安維持活動が限界に来ていると公式で発表した。

 

更に中東及びアフリカへの技術支援であった火力発電研究施設が全損したと公表した。

クシーは犯人であるブルーコスモスの一派である聖なる大地を非難した。

今回のテロにはブルーコスモスではない現地の協力者も居た。

……実名こそ伏せていたが、市民によるザナドゥへの度重なる攻撃により人員が不足し始めたと報告した。

 

クシーは公式の場ではあるが私的な愚痴を溢したいと言い出した。

……公式を見ている者は注目した。同時にクシーの宣言は揉み消せない程に世界中に拡散されていた。

因みに公式発表はクシーによってコメントを投稿可能なチャット機能付きで配信されていた。……どうも彼は気に入ったらしい。

 

「私は思想とかではなく、生活苦からザナドゥを攻撃して憂さ晴らしをしたい人々には研究所の再建の為に働いて貰う事にした。……今までも似た様な事をして来たし」

クシーは元テロリストでも雇うと宣言した。

雇っているとまで言い出した辺り、それは良いのかとクレームを入れる者も居た。

重箱の隅だと他のコメントで埋まっていた。生活苦ならば受け入れるというのは其処まで配慮しているという事である。金の亡者という扱いを疑う者も居た。……そして、会見の途中だがコメント機能が閉鎖された。

 

「はぁ……言い方があれだが、国の刑務所は定員が不味いらしいので此方で雇った」

クシーはコメント機能が閉鎖されたのを見て溜め息を吐いて実情を説明した。

事実、報道では犯罪者の激増で刑務所が埋まってしまい、餓死も発生する収容所に送り込まれる者まで居た。

……そうならない為に配慮しているという意思表示をしていた。

 

「その後の生活の為に正当な賃金も払う様に手配している。……もうこれ以上、私にどうしろと?」

ザナドゥ代表・クシーは公式発表の場で本音としか思えない愚痴を吐き始めていた。

 

「流石にね、私にも限界はあるんだよ。嘘と思われるのも癪だから今、公開するけれども」

此処まで遣っていますよと言って公開した資料にはザナドゥへの攻撃をしたテロリスト達を通報しないで雇っている実績が並んでいた。当然、匿名であるので個人の特定は出来ない様にされていた。

……テロするくらいならば此方に申し込めと軽作業から土木工事までの依頼が並んでいた。

 

「……これまでは私もね、ひけらかすのもどうかと思って秘密にしていたのだけれども、もう限界とか言っても許されるよね?……これでうちへの理不尽な攻撃が収まらなきゃ流石にね」

クシーは投げ遣りになりつつも未だ遣る気ではある事を示していた。同時に過度な攻撃は止めろと主張した。

 

「どうしてもと言うならば私を暗殺しに来い。周囲を巻き込まないならばそっちの方が健全だと思うんだ」

クシーは自分への暗殺の方が健全だと言い出した。

どういう神経をしているのかと見ている者達は思った。……そして、知っている者達は苦笑した。

 

「収まらなきゃ……許されるよね?最低限は残すけど。皆は出来るだけテロしないでね」

ザナドゥ代表・クシーはそう言って公式の会見を終了した。会見と言うよりも本気で愚痴を吐いた印象を受けるものだった。

 

……出来るだけテロしないでねというのはどういう事かとツッコみもあった。

それよりもクシーの撤退の理由は衝撃と共に伝播した。……理由としては十分過ぎた。

ザナドゥ代表・クシーが公表した資料は匿名になっているが事実ならば罵倒して来た者達はとんでもない恩知らずだった。

 

……当然の様にザナドゥ代表・クシーは偽善者であり、会見も嘘であると言う報道が飛び交った。他方では発言は真実であり、裏付けまで取られた報道も為されていた。

何方が真実かで民衆は混乱したが、何方にせよ自分達が自分の首を締めていた事実を突き付けられた。

……事実を受け止め切れずにテロを起こす者も居たが、それはザナドゥによって防がれ、労働者として雇用されていった。

テロに慣れているザナドゥからしたら計画性の無いテロの鎮圧は容易だった。

尚、暗殺は無かったのでクシーはガッカリした。……何人かがクシー本人を銃撃しに来たのだが、彼はそれを暗殺としてカウントしていない。

 

プラントによる制裁によって原子力発電が未だ健在の状況でもエネルギー問題が発生していた。

クシーの撤退予告もあり、この惨状に一部の国は激怒した。

枯渇寸前の石油にまで頼ろうと考えていたムスリム共同体、アフリカ共同体、南アフリカ統一機構は連名で聖なる大地を非難した。

将来的な経済的損失だけでなく、聖なる大地が主張する大地を損ねる事になり得る愚行と追求した。

 

 

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ブルーコスモスの盟主であるムルタ・アズラエルは聖なる大地の軽率な行動を非難しつつ一部擁護した。

 

中東及びアフリカの今後に影響が出る暴走は非難されるべきである。

然し、彼ら聖なる大地は地球の環境を思っての事だったと擁護にもならない事を主張した。

アズラエルは過激派に忖度していた。クシーの会見も不味いがブルーコスモス・過激派はコーディネイターが居る研究施設への爆破テロだと言い切っていた。

過激派から出る声を世間に知られると面倒だった。アズラエルは盟主としての振る舞いでその声を必死に消していた。

 

だが、ザナドゥに関してはなるべく触れない声明をアズラエルは出した。

ロゴスはアズラエルに圧力を掛けていた。然し、流石に問題があるのはブルーコスモスだと判断した。

アズラエルとしては盟主の立場上、ブルーコスモス内の騒動となり兼ねない言動をしたザナドゥ代表・クシーに物申したかった。

 

アズラエルは今までの付き合いで分かるがクシーのアレは完全に疲れた振りであった。

……本当に疲れているのもあるだろうから見抜くのは至難である。

とはいえ、ザナドゥの公式がその様な声明を出すのは本気でヤバいのだと悟ってもいた。

アズラエルは過激派に配慮しつつも、締め付けを更に強める事にした。

 

ブルーコスモス内部への説明にロゴスの圧力は明言は出来ないが仄めかす事は出来た。

そんな中、聖なる大地と似た思想であると思われていたブルーコスモス・環境保護派の重鎮達から非難声明が出された。

曰く、地球を汚さない研究を阻害するというのはブルーコスモス元来の思想からズレているという。

アズラエルは唐突な老人達の戯言に狼狽した。

 

……このままだとブルーコスモスは論争により過激派と穏健派の分裂になり兼ねないと判断した。

アズラエルは擁護していた聖なる大地への配慮を打ち切った。流石に擁護し切れない。

環境保護派の棺桶手前の老人達を宥めつつ、聖なる大地への制裁でアズラエルは何とか手打ちとした。

 

過激派も流石に情勢が悪いと判断して思想がやや異なる聖なる大地を見限った。コーディネイターが憎いとはいえ、ザナドゥの研究施設の破壊は不味いと判断した。

……弱ったクシーを見て暗殺や襲撃を考えた者も居たが、ザナドゥの公式声明の同日に起こった事件を後から知ってその思いは消し飛んだ。……クシーが知ったら残念がるだろう。

弱っていても奴は奴だったと過激派はその日、何故ザナドゥ代表・クシーが今尚健在なのかという恐怖を思い出した。

 

 

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2月17日、聖なる大地はサーペントテールに拠点を破壊された。更に代表のヌエバが拉致されていた。

……聖なる大地の代表・ヌエバは国に癒着する大物である。そんな奴が行方不明になったのだから他のブルーコスモスもどうなるか分かったものではなかった。

 

最後にブルーコスモス内外からの批判を一身に受けた、死に体の聖なる大地はその日をもって壊滅した。

ブルーコスモス・過激派のジブリールとの関係から豊富な資金源とMAまで持つ様な組織だった聖なる大地。巨大な組織はザナドゥの火力発電研究施設襲撃からたった2日で壊滅した。

 

残った聖なる大地の物資や人員は環境保護派の老人達を宥める為に送られた。

活動資金や活動の為の兵器を提供したジブリールはトカゲの尻尾の様に彼らを見捨てた。

然し、元聖なる大地の構成員達はジブリールよりも思想的に近い環境保護派に馴染んだ。

 

……元聖なる大地の構成員達はアズラエルが環境保護派にこれ以上の発言力を付けさせない様にする為に、環境保護派とは根本的には相容れない人間を放り込んで混乱させる為に送っていた。

所が聖なる大地はアズラエルの思惑とは裏腹に簡単に吸収されていった。環境保護派にはアズラエルも知らない能力がある者への伝手が未だ存在した。……伝手という名の糞映画であった。

 

 

聖なる大地は名前をティターンズと変えた。新しい代表は俳優であったハプテマスとなった。

彼、ハプテマスは糞映画でザナドゥとも環境保護派とも縁を切ったのにも関わらず呼び戻された。

 

「私だけが……責任を押し付けられるのでは無い……貴様らも一緒に連れて行く……」

ハプテマスは代表就任演説でティターンズの面々に本音をぶち撒けた。

あの糞映画の状況になって責任を取らされてたまるかと自分だけではなく連帯責任を取らせると暗に宣言していた。

ハプテマスからすれば何時暴走するか分からない様なテロリスト共を従えろという話である。

環境保護派は人材不足で滅茶苦茶だった。……実態を知ったハプテマスからすればこんな物を乗っ取った所で旨味が丸で無かった。

 

映画でジャミトフ役の重鎮と監督だったクシーはハプテマスの宣言を聞いて流石に笑った。余りに酷い畜生共をハプテマスは睨み付けた。

 

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