極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

51 / 107
第29話 ザナドゥ代表クシーの愚痴とその効果②

コズミック・イラ70年2月17日、ザナドゥ代表・クシーによる公式発表は世界中に拡散された。

 

世界に展開するザナドゥは治安維持活動が限界に来ていると説明した。

ザナドゥへの度重なる市民からの攻撃により撤退を仄めかす愚痴も溢していた。

 

『……これまで私もね。ひけらかすのもどうかと思って秘密にしていたのだけどもう限界とか言っても許されるよね?……これでうちへの理不尽な攻撃が収まらなきゃ流石にね』

ザナドゥ代表・クシーは今まで世間一般に見せた事が無い姿で溢していた。

彼は困窮から自分やザナドゥを攻撃した人々に衣食住や給与を与えて働く場を提供していた。

世論は何をしても自分を金の亡者と非難するのを止めないと溢す姿を見せ付けられた。

人々は幾ら傑物とはいえ15歳の少年一人に自分達の身勝手な憎悪をぶつけていたと感じた。

 

だが、自由である筈の報道はザナドゥ代表・クシーへの弾圧を止めない。

丸で人々の熱狂を冷却させない様に穿った見方の既存の報道を続けた。

市民をこれ以上反省させない為にクシーは嘘吐きの偽善者であり金の亡者という報道を続けていた。

結果、クシーの愚痴は市民からの攻撃でザナドゥの活動が被害を受け続けていたから出たものだと世論は納得した。

金の亡者とはいえ、自分達の生活の為に役に立つ仕事を遣っているのは事実であった。

……そこは報道がどう扱おうにも曲げられない事実であった。

現にザナドゥの職安は機能していた。衣食住と給与が支給されている事実は変わらなかった。

取り敢えずザナドゥへの攻撃は止めようという形で大多数の市民は落ち着き始めていた。

 

 

暗躍していたロゴスはザナドゥ代表・クシーがこれ以上の発言力を持つ事を何とか抑え込んだ。

偏向報道で穿った見方にする事は出来てもクシーの活動は事実だった。

事実が知れ渡れば反戦争、反地球連合の旗手になり兼ねない。

然し、ザフトとの戦争で負けた場合の保険としてはこれ以上に無い人材だった。

ロゴスは極めて厄介な存在だと実感した。本当の事で愚痴を言うだけでこの騒ぎである。

 

ロゴスにとって幸いなのはクシーもザナドゥもそれ以上の事はしなかった事だ。

無理矢理でも排除をしないといけなくなるギリギリを攻めている様に感じなくもないが其処まで出来たら化け物である。ロゴスはクシーの利害調整能力を買っているが其処までとは思っていない。

 

ザナドゥ代表・クシーは自分が称賛されたい訳では無く、インフラ整備等の活動の邪魔にならなければ良いと考えているとロゴスは判断した。

資本主義社会で成功した者としては珍しいくらいに世界の為に働いていた。だが、その見返りは必要なものを除いて基本的に放棄していた。

ロゴスは改めてクシーを極めて理外の思考をする変人として扱った。……ロゴスとは飽くまでも自分達の利益を追求する組織であった。

彼らはクシーの想いを理解する事も理解する為に行動しようという気も無く、それらを一切考えない。

 

 

14日の血のバレンタイン、核使用の混乱は良くも悪くも収束し始めていた。

ザナドゥへの当たりが強かった事で声を挙げられない者も少しずつ動き始めていた。

核シェルターを購入していた富裕層も有線通信網の整備に協力しようとしていた。

ザナドゥに八つ当たりしている現状を何とかして欲しいと富裕層はクシーに溢していた。

結果、クシーの愚痴である。偏向報道しようが変えようがない事実で世論を動かしてきた。

 

……ここまでしろとは言っていないが、富裕層も動きやすくなっていた。

これまでの富裕層、地域の権力者達はクシーが世界に進出する金の亡者であるという認識だった。

しかし、クシーが本気で世のため人のために活動していると悟った。

富裕層の彼ら程になれば事実か否か判別できた。

 

大衆はテレビや情報操作で簡単に転ぶが有力者である彼らは知っておく必要があった。

少し探りを入れれば取材活動をしていた記者達がザナドゥの実態を探った結果があった。

……明らかに採算度外視でザナドゥは世界の為に働いていた。

利益がないわけではないが労力に見合わない活動をしていた。

特に旧国連時代からの治安維持活動は富裕層からすれば絶対したくない程、安く使われていた。

今はザナドゥが軍事産業にも関与している関係で安く済む。一応の採算は取れているだろう。……ノウハウも無い他ではザナドゥの真似は出来ない。

ザナドゥを批判する為に探っていた記者達ですらそうだった。

中でもザナドゥを露悪的に書きたい優秀な記者達はザナドゥに捕まってザナドゥの広報担当になっていた。……ある意味で恐ろしい報復である。

能力だけはある優秀な記者達が今の世論で現役だったならば間違いなくザナドゥは面倒な事になっていた。

 

クシーが死の商人と評される事になった要因の一つである非プラント理事国へのスピアヘッド等の斡旋もクシーが取り入ったというよりも性能を見た非プラント理事国の軍部側から申し入れた事だった。

ダウングレードのスピアヘッド等を国の治安維持やインフラ整備の邪魔をするテロリスト等に使っていたがそれくらいである。

……ある意味これ以上無いデモンストレーションだが、富裕層が良くやる賄賂や癒着ではない健全な商取引だった。

 

富裕層としては自分達の財産を勝手に使われても困った。

今更ではあるが、クシーは金の亡者という印象で取引がしやすかった。

今では善行を利益に出来る人間だと悟ったので関係は続けやすくなった。

だが、最初から善人が世界中でインフラ整備しているだけと知っていたらと少し考えた。

富裕層はクシーに無駄に自分達の資産を使われるのではと躊躇したかもしれない。ある意味、順序が良かった。

 

 

「こういう人なのはゲームをしていたらわかるのに」

大西洋連邦の富裕層であるマイケル・サムエルは家族にそう溢した。彼はザナドゥ代表・クシーが開発したゲームの熱烈な大ファンだった。

同時に家族の最底辺である。芸術家気質の奇人である彼は核シェルターを購入した家族を出し抜き、クシーのテレビショッピングを独占していた。

そして、サムエル家の人材をクシーに勝手に派遣していた。結果的にクシーとの直接のコネが出来たのでギリギリ許されたがマイケルは独断でやり過ぎとして当主である父にボコボコにされた。

 

「あの悪趣味なゲームを?……お前のように頭がおかしい奴しかやるとは思えんが。……もし、この中にやっている者がいたら失礼だった。前言を撤回させて欲しい」

マイケルの父は愚息にそう吐き捨てた。だが、クシーと直接のコネを築けた愚息である。

一応はこの件で意見を聞いておこうと話を促した。サムエル家ではクシーへ協力するのは良いとしてどうするか話し合いの場が設けられていた。……その為、世界の富裕層達と通信していた。

 

『多分居ないから聞きたいな。居てもまぁ、公表は出来ないさ。息子さんはザナドゥ代表と直接会話が出来ているみたいだし』

大洋州連合のラッセル議員はマイケルに続きを促した。三世代目の議員である彼は今は若いがいずれ大洋州連合で大臣クラスにはなると目されていた。

マイケルの眼の前には世界各国の有名人がいた。マイケルは別に有名人だからと普段ならば気にしないが今回はゲームの友人が増えないかと期待していた。

……というかラッセル議員はこの間自分と通信対戦をした者と似ているような気がする。あのお好み焼き派の重鎮かもしれない。マイケルはそう思ったが、それはラッセル議員も同じで彼は広島焼き抗争を引き起こしたマイケルに唯一気が付いていた。

 

「ダディが言うようにゲームは確かにちょっと露悪的だけども。根本的には努力すれば報われるし世界もそうであってほしいと思っている人さ」

マイケルはクシーをそのように評した。なお、どちらかといえばクシーのゲームの魅力を語っている。

マイケルの父は皆にクシーと直接コネがある愚息として紹介していたので黙って聞いていた。

 

「だから人から何を言われようが基本的に止めないし、約束した事は相手が反故にしない限りは守るよ」

マイケルはゲームの宣伝をした。実際、クシーはそう考えているだろうと思っている。本当にそうかは知らない。クシーとはゲームの制作者とファンの関係である。

人材派遣の感謝のメッセージ、ちょっとした利権と発売禁止になったゲームのどちらが欲しいかとクシーに問われたマイケルはゲームと回答した。後にこの事を知った父にマイケルはボコボコにされた。

 

「……愚息の感想に過ぎないが。確かに今までの行動言動とは合致する。あの公式発表も我々が活動しやすい下地を整えたと判断すべきだと提案する」

マイケルの父はマイケルの感想を元に提案した。

サムエル家ではマイケルが権利を持っている状況である。従って詳細に話をする場合、マイケルを利用する形でないと会議に参加しづらかった。

……当然だが、サムエル家の家庭事情は参加者にバレないようにしていた。

 

『実際、そういう通知が我々に届いているしな』

スカンジナビア王国の貴族はマイケルの父に賛同するように言葉を述べた。

彼らにはクシーから風通し良くしたから協力しやすくなったと思うけどどう?などというメッセージが届いていた。

 

……マイケルの父はマイケルからそのような事は聞いていない。マイケルの顔を見る。

マイケルは慌てて自分の端末をカタカタと弄った。

……クシーからの未開封のメッセージを見つけた。同様の内容が記載されていた。

 

「……てへ?」

マイケルは画面に見えないように父からぶん殴られた。

サムエル家の様子がおかしいが何かあったのかと画面上にいる参加者は訝しんだ。

マイケルはお腹が痛いので席を外すと言って会議から離れた。

マイケルは怒れる父親から逃げた。……重要な会議で大事なメッセージを見落としたのは不味かった。

 

マイケルの不在でもクシーの整えた環境に乗っかる形で有線通信網等の整備を地域の有力者として推し進めようと決定した。

クシーの愚痴は世論の空気を変え、地域の有力者達が動き易い状況を作り、事業を躍進させていった。

 

 

マイケルから見てクシーのゲームは様々な世界を写していた。

どの世界も理想があった。……そうあって欲しいと。だが、現実は中々変わる事はないとゲームの世界観に反映されていた。

 

同じゲームファンの絶望仮面は世界はそう簡単に変わらない面が好きらしい。

ファン交流サイトでは絶望仮面は数々のトロフィーを獲得した有名人だった。

 

だが、マイケルは絶望仮面に努力する姿がカッコ良いのだと語った。

絶望仮面も実績を見ると相当努力しているんだろうとマイケルが聞くと黙り込んでしまった。

……何か良くない事を言ったのかとマイケルは絶望仮面に謝罪した思い出がある。

絶望仮面は気にしないで良いとして、人の業を語りだした。

マイケルには絶望仮面の言う事が良く分からなかったがへぇ、そうなんだと相槌を適当に返した記憶がある。

 

 

ゲームのエンディングは大抵バッドエンド手前である。

 

例えば、日本の昭和の小学生を描いたゲーム『お好み焼きVSモダン焼きVSもんじゃ』。

マイケルはもんじゃ焼き派でゲームをプレイしていた。

もんじゃ焼きは非常に変わった食べ物であり実家で作ってみた。

マイケル以外は食するのを拒否した。マイケルは美味しいのにと一人で食べていた。

もんじゃ焼きのゲームは店でモダン焼きとお好み焼きの勢力で権謀術数の闘争した結果、子どもの教育に悪いと学校から苦情が来て店長の婆さんが店を畳む事になる。

だが、権力の横暴としてそれまで争っていた三勢力が団結して学校への闘争を開始するというエンドだった。

広島焼き論争で血で血を洗う抗争を誘導して店を畳むきっかけを作ったもんじゃ焼き派のマイケルはエンディングに感動した。

シャブをキメてハジキを持った彼らが団結して学校を襲撃する様はカッコよかった。

 

 

マイケルは会議が終わった父親に殴られる前にゲームのファンサイトを見た。

ファンサイトでは絶望仮面がクシーと連絡がつかないが地球で何かあったのかと尋ねていた。

マイケルはヘリオポリスかプラントかはわからないが、未だクシーのニュースが見れないのだろうかと思った。

マイケルは別にプラントでも気にしないがネチケットとしてプラント在住だと溢す事はファンサイトでもやや面倒になると警告した。

……ファンサイト内ではコーディネイターもナチュラルもプラントの話題は出来るだけださない。

ザナドゥのゲーマーやファンはコーディネイターである事を気にしない。協力プレイで優秀な事が多いので歓迎されるくらいである。新規のゲーマーが一番動揺するところであった。

『MAYU』という新規のファンにここではコーディネイターである事を隠さなくて良いと公式チャットに君臨したクシーが説明していた。

クシーは自社のファン交流サイトに気軽に来ていた。友人のハゲのプレイ動画を公開していた。

どうもファンサイトに来ないタイプのゲーマーらしい。

友人の偉業としてクシーは勝手に投稿していた。

特に『破牢鬼帝』の完全クリア実績報告はファンサイトでは騒然となった。

 

そんな現状である。隠す必要はないが皆、プラントやプラント理事国等に関する事は出さないようにしていた。

マイケルからすると熟練のゲーマーである絶望仮面もわかっているだろうにと思った。それを忘れる慌てようは相当であった。

マイケルは今朝のクシーの愚痴の映像データを送付した。別に皆が知っているので問題はない。

……何だか普段よりも電波障害が酷かったが、無事に絶望仮面のアカウントに送れた。

言っては何だが裕福な実家の最先端の受信機で送信が遅れるのは相当である。

マイケルは有線通信の可能性を本気で考えた。

マイケルはゲームの購入代金と一部を残して自分で扱える財産をクシーへほぼ投入した。

マイケルは自分の相続予定分まで投入した。……この素晴らしいゲームが出来なくなる事態はあってはならない。ゲーム内とはいえコーディネイターである友人達も居るのだ。

彼らと気兼ねなく話せるのはセキュリティが完備されたザナドゥゲーム公式ファン交流サイトしかほぼない。

 

マイケルが色々していると絶望仮面から遅れて返信が届いた。

マイケルに感謝の言葉と仕事で電波障害の多いヘリオポリスの僻地にいてわからなかったと返信があった。

マイケルは言葉通りに受け止めた。疑う要素もなかった。

絶望仮面も大変なんだなとマイケルは彼か彼女か分からない相手に労りのメッセージを送った。

 

……マイケルは絶望仮面とチャットをしていた結果、怒れる父親に気付くのが遅れた。背後には父が居た。

 

「……ゲームオーバー」

マイケルはそう呟いた。ゲーム脳に侵された愚息を父親はぶん殴った。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。