極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ70年2月17日の夕暮れ時、ザナドゥでは割りと大事件が一段落した。
ザナドゥ代表・クシーにクーデターを起こそうとしたヴェラ・バリーナ・トルスタヤが解放された。
ザナドゥは面接があるとはいえ、人材不足から犯罪者やテロリスト、思想犯まで雇っている。
些細な『誤解』による衝突は良く合った。その全てを叩き潰して言う事を聞かせる絶対者によって機能している。
今ではクシーが特に何もしなくても、もう諦めろと既にクーデターを実行しようとした経験者達が止める。
というか気づいた者が止めないと自分達も連帯責任である。ザナドゥでは組織内で自浄作用が機能していた。
それでもクシーの付き人であるヴェラ、もといベラがクーデターを起こした事は無かった。クシーが倒れた事は当然だが秘密である。勿論、詳細は明かされていないがベラのクーデター未遂の理由を事件を知らされていた者達は察していた。
ザナドゥの初期メンバーでもあるベラのクーデター未遂は地味に大事件であった。
権利濫用による代表交代未遂、代表・クシーの監禁未遂と結構なやらかしである。
ベラはNo.2のティモテを一部では上回る権限を持つ幹部だ。
ベラはクシーの付き人としてあらゆる面で業務を補助していた。
そんなベラはザナドゥの最上位機関である『審査会』のメンバーでもある。
独裁国家よりも独裁しているザナドゥではあるが組織内政治はあった。
……尤も大部分がクシーが即断即決で勝手にやった事に追認の判子を押す部署と化しているが……。
外面的にはザナドゥではクシーやティモテに次ぐ最上位の権力者である。
ザナドゥの審査会の参加資格があれば国の重鎮も無視出来ない程度には偉い。
審査会の審査員は半数以上はナチュラルである。大体一芸に秀でている変人ばかりである。
ブルーコスモス等の外部から文句を言われないように配慮していた。
審査会に参加できる幹部で最もクシーに近い存在がベラであった。
地味に傭兵部隊Xの隊長であるカナードは審査員の椅子を狙っている。先ずはそこからだと思っていた。
ザナドゥの外部組織でも審査員に成る事は可能だ。対外的には変な事はしていないと自浄作用を示す組織なので外部の人間が居ても理屈的には可笑しくはない。
だが、選ぶのはクシーと審査会の審査員であるので自浄作用もクソもない。
とはいえ、なるべく幅広い人々が席を置いていた。
……糞映画に出たイゼルカント役のブルーコスモス・環境保護派の重鎮の席すらあった。
ジャミトフ役の席まで用意すると流石にブルーコスモス・環境保護派の色が濃くなるのでそれは無い。
彼の席が用意される時、それはイゼルカントが亡くなった場合だった。
「お前の方が先に死ぬかもな……そう、あの映画のように」
イゼルカント(98歳)はそのようにジャミトフ(89歳)を煽っていた。
ジャミトフ役は爺が爺を煽るなと言いつつ、ザナドゥの医薬学部門のサプリを飲み始めていた。
ブルーコスモスの非主流派とはいえ、重鎮が本来なら健康な若いバイトにやらせる治験に参加していた。
「あの爺より生きてやらんと癪だ」
ジャミトフはこれ以上長生きするつもりはなかったがムカついていた。
ジャミトフは自分が主役の映画であったのに最後を持っていったクソジジイが気に食わなかった。
そんなジャミトフ役の様子を知ったイゼルカント役は審査会の席で愚痴を溢していた。
17日に行われた審査会での内容はベラの解放と東アジア共同体・中国の超人機関から押収した資料に関して様々な分野の有識者でもある審査員への聞き取りだ。
クシーとしては現在手掛かりがほぼ無い状態で誰か何かしら有益な考えを持っていないかを聞いていた。……結果として、類似する者達を知る経験者が居た。
「薬に頼るとは落ちたな。……自分から改造人間にでもなるつもりか」
イゼルカントはジャミトフが最近元気な原因を知って言葉を溢した。
健康の為で危険性が薄い物である。余計な事は言わないが振り切り過ぎではないかと警告しておく事にした。
改造人間とは旧暦を思い出す。丸で再構築戦争時の中国ではないかとイゼルカントは思い出した。 当時は人権もクソも無い状況でそんな連中が自国の兵士の寿命を前借りするドーピングを行っていた。 イゼルカントはクシーから受け取った中国の違法研究機関『超人機関』の資料から過去の例を報告した。
「確かに改造人間は強い。だが、長時間行動すれば薬切れで理性が飛ぶ。再構築戦争での経験から言わせて貰うが、志願兵でも上澄みしか自分を制御出来んぞ」
イゼルカントは過去に交戦した改造人間との経験から述べた。
クシーが交戦した子どもは洗脳で制御していたが一時的だからだ。
イゼルカントはクシーへコイツらの親玉は改造人間を長期間制御する方法を模索している筈だからそれを念頭に探せと暗に助言した。
「それと、あの爺には伝えるな。……アイツは過去を思い出して憤死しかねない」
イゼルカントはジャミトフに伝える事を止めさせた。
ザナドゥの審査員であるのが自分で良かったとイゼルカントは安堵していた。
自分よりもジャミトフの方が詳しいだろうが最早70年前だ。
……無理に当てにならない情報を引き出すよりは数年でも持ちそうな自分の後釜の方が大事だった。
因みにベラが糞映画の存在を知らなかったのはイゼルカント役が手回ししたからだった。
当時のクシーとしては近過ぎる人間には見せたくない内容だった。
クシーが姉やベラとあの映画を見たのは状況が今更過ぎるからである。
クシーの姉であるシグネとの映画鑑賞に付き合ったベラは自分も出演させろ、クソジジイと抗議した。