極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第30話 働けテロリスト達!まさか国際法ガン無視しておいて正規兵とか抜かさんよなぁ?

コズミック・イラ70年2月18日、プラントでは喪服の独立宣言がなされた。

 

地球連合への徹底抗戦の表明である。プラントの民衆もザフトの兵士達も各々で受け止めようとしていた。血のバレンタインの復讐心はプラントの住民の中には当然あった。

しかし、緒戦はザフトが地球連合軍を蹂躙していた。

野蛮なナチュラルの核は悍ましい所業であるが、地球連合は恐れるに足らずという風潮が出来ていた。

文字通り時代が違う軍隊を相手にしている事を考慮しても圧倒していた。

ここまでMSによって戦争で圧倒出来るならば過剰なMS量産ではなく、プラント全体のミサイル防衛を強化していれば血のバレンタインは防げたのではという声もあった。

……そのような声は怒れる市民の声を前に叩き潰された。

 

プラント緒戦、ザフトではアプリリウス市等の首都や軍事施設への核ミサイル攻撃は想定されていた。

従って、それらには核ミサイルへの対策もなされていた。

最悪の場合、ニュートロンジャマーも起動するようにされていた。手の内が判明するがプラントの市民の命には変えられない。

 

だが、プラントにあるコロニー全てを守るには地球連合軍の物量はあまりにも多すぎた。

MSジンを量産出来ても物量に対処しきれない。核ミサイルがユニウスセブンに放たれてしまった。

 

ユニウスセブンへの核攻撃はプラントもザフトも誰も想定していなかった。

そもそもユニウスセブンは戦略的価値は皆無。非戦闘員しかいない農業コロニーである。

戦闘員のいない民間人しかいないコロニーはザフトの核ミサイル対策の網に見落とされた。対策は機能しなかった。

更にMSジンのパイロットも不足していた。MSジンとパイロットに余裕があれば予備軍として待機させ核ミサイルを警戒する事もできた。

机上の理論ではあるがユニウスセブンの核ミサイルを撃ち落とす事も可能ではあった。

机上の計算である。……本当にそれが出来たかは誰にもわからない。

だが、モビルスーツとはそれだけの主張がまかり通るだけの性能と汎用性がある兵器だった。

 

こうした机上の空論もあり、ザフトはプラント内でさらなる志願兵を募集した。

独立への勝利が悲劇となった。ナチュラルの野蛮な核によってユニウスセブンが破壊された。それを防ぐためにも更に兵士が必要だとザフトは喧伝した。

今までも独立戦争に向けて募集していた。今度は血のバレンタインの悲劇を繰り返さない為に兵士達を募集していた。

コーディネイター達は自分達の住むプラントを守るため……そして、ナチュラルに復讐をするために立ち上がった。

特に若者は続々とザフトへ志願していった。当然ながら戦火に身を投じる我が子を制止する親もいた。

しかし、熱に浮かされた子ども達は圧倒的勝利の事実に突き動かされていった。

 

プラントでは成人年齢が15歳である。……親が止めようが子は自由だった。

周囲の環境もプラントという国を守る為の志願兵達を賛美した。

志願する子を止める親は非国民であると白眼視されつつあった。結果、同調圧力によって兵士達はどんどん集まっていった。

 

優秀なコーディネイターの中でも若く柔軟な発想を持つ15歳以上の子どもである。

MSのパイロットとしてこれ以上無い人材であった。

コーディネイターとして二世代目の多い若い志願兵は遺伝により優秀な場合が多かった。

 

プラントに来る事のできる6000万人のコーディネイターは基本的に上澄みである。

……その両親から生まれた子ども達はMSのパイロットとして必要な能力の最低ラインよりも上だった。

アスラン・ザラは血のバレンタイン、母レノアのような悲劇を繰り返させない為、ザフトの正義を信じて立ち上がった。

 

 

血のバレンタインが起こった結果、アスランの事を知る者の心は悲鳴を上げていた。

アスランの母レノアの死と合わせて倒れる程の衝撃を受けていた。

……ザナドゥ(理想郷)という名を掲げた組織は設立者の理想には何もかも足りなかった。

それでもザナドゥ代表・クシーは立ち止まらない。

友が銃を持つ覚悟があるならばそれは既に銃を持つ者である自分には嘆く事を許されない。

……クシーは銃を持つ覚悟のある友がやがて自分を撃つ事も最悪自分が撃ち返す事も覚悟していた。

プラント独立戦争となった段階であり得る可能性だった。だからこそ必死に止めようとしたが失敗した。

せめて平和に生きる者達が無理やり銃を持たされないようにと覚悟を改めていた。

 

クシーはそれだけは何としてでも阻止する為に動いていた。ザフトが本気になれば地球連合内では学徒動員も有り得た。何としてもそこまでは行かないように必死だった。

緒戦は敗北するならば、既に銃を持ってしまっている兵士達を一人でも多く救う事に全力で取り組んでいた。

メビウスの緊急脱出装置、MAアルカ等のクシーの対策は尽く地球連合によって阻害された。

それでも地球連合軍としては本当にギリギリ救われていた。

宇宙戦争の経験のある正規教育を受けた尉官達を救っていた。

地球の佐官から引き抜き配置転換をするよりも宇宙軍の尉官を佐官又は佐官相当に引き上げた方が時間も人員もギリギリではあるが何とかなった。

クシーの最後の足掻きがなければ、最後の防衛ラインである地球は守りきれず、報復の核で焼き尽くされてもおかしくなかった。地球連合軍の一部はそう判断していた。

 

 

彼、クシーはずっと遠くの未来が見えていた。

……絶滅戦争を止めさせなければ、地獄の未来が待っていた。

だからこそ、何が何でも戦争を止めると幼少期のコペルニクスで誓っていた。

……文字通り世界中から罵倒されようが嘲笑されようが知ったことではない。

ザナドゥ代表・クシーは自分の才能の全てを使い世界に喧嘩を売っていた。

希望が果てしなく遠いものであってもその少年は決して諦めなかった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

今の地球連合とプラントの間での戦争で良くも悪くも大活躍しているMSジンはコズミック・イラ67年に発表された。

MSの初期型はコズミック・イラ65年に完成した。それ以降、ザフトでは極秘にされていた。

MSはザフトの革命的兵器である。地球から無理やり作らされていた兵器にはノルマがあった。

MSはその兵器の生産ラインを利用して制作された。MSは量産や複製自体は然程難しくない兵器であった。

 

だからこそ、プラントはプラント理事国に隠れて量産が可能だった。

MSは戦車のように硬く、戦闘機のように速い兵器である。

その兵器は特殊なOSによって稼働できた。人体のように柔軟な動きが可能だった。

 

MSは以上のような性能によって既存の兵器を駆逐できた。そのパイロットは高度な能力が必要な兵器でもあった。

ザフトの公式発表によればナチュラルが作れたとしても乗りこなせない。

ザラ派は人類の進化種であるコーディネイターだからこそ使いこなせると主張していた。

黄道同盟からザフトになり、ザラ派の代表・パトリック・ザラ達はコーディネイターの兵器としてMSを発表していた。

 

クライン派はザラ派の主張に眉を顰めた。確かにMSは斬新な兵器であり、そのOSはナチュラルが扱うには生物的な課題が多い。

それでもクライン派はコーディネイターが人類の進化種ではないと考えていた。平和的にナチュラルへの自然回帰すら考えていた。

ザラ派の行き過ぎた優生思想と主張をクライン派の面々は警告していた。

 

……だが、地球連合という組織は巨大である。

プラントの自主独立の為にはザラ派を完全に否定しては内紛になってしまいかねない。

ザラ派の主張により地球連合はMSをコーディネイターの兵器として危険性を唱えていた。

地球連合、ザフト、どちらも憎悪を煽る主張ではあった。

それでも総合的に見れば地球連合にはザフトのMSの脅威はプラントの要求を受諾するという選択肢を選ばせる圧力となっていた。

シーゲル・クライン及びクライン派の面々はザラ派を警戒しつつもプラントの独立にの為には必要な行為だとある程度は黙認した。

 

 

事実、クライン派の目論見通り、地球連合内部ですらマトモな者達はザフトの新兵器であるモビルスーツの存在を知り、早期に停戦や譲歩も考えていた。

だが、ブルーコスモスやロゴスを始めとするそれを打ち消す者達の声が強すぎた。シーゲルもパトリックも人類の憎悪というものを見誤っていた。

 

 

プラントにいるコーディネイターの大多数はザラ派の主張通りに訓練すればMSを乗りこなせた。

 

……だが、中にはザラ派の主張に該当しない者、所謂落ちこぼれもいた。

サーペントテールのイライジャはザフトの訓練についていけず、ナチュラルのスパイとして同胞から迫害されてザフトを抜け出したコーディネイターであった。

それでもプラントのコーディネイターの大多数は短期間の訓練でMSジンを乗りこなし、育成に時間が掛かるナチュラル、地球連合軍を蹂躙できていた。

 

 

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コーディネイター第1世代は免疫等を弄っていてもナチュラルとほぼ変わらない者達が多かった。

地球にいる4億人以上のコーディネイターは誕生に際して安価な施術を受けた者が多かった。

 

それでも免疫が強化されているだけでも兵士としては一般のナチュラルよりは優秀だ。

既存の毒や病気に強いだけでも兵士としてのポテンシャルは高い。

一部のコーディネイターが能力を開花させて疎んじられ、迫害された結果、捨て子や人身売買が発生していた。

コーディネイターの子ども達は傭兵組織等に売り飛ばされる者が多かった。

中産階級の両親が産み、環境で捨てられたコーディネイター達は優秀な兵士ないし兵器として扱われていた。

世界を恨み、犯罪者やテロリストとして大成する者は当然のように多発していた。

……最下層のコーディネイター達が行き着く先は地獄だった。

 

そんな地獄の中にザナドゥという組織は突然発生した。

ザナドゥはタケノコのようにしぶとい生命力で地獄に居座り続けていた。

 

憎悪の怨嗟をザナドゥ代表・クシーはお前等の事情なんて知らないから仲間になれと提案してきた。

……そんなことを今更言われても世界への憎しみを変えられない者達は大勢いた。

ザナドゥはその憎しみを直に受け止めていた。憎悪に狩られた犯罪者達を狩り尽くす勢いでしばき倒すザナドゥは地獄において輝いていた。

発足当初、最下層のコーディネイター達にとってザナドゥは憎悪だった。

同時に最下層のコーディネイター達にとってザナドゥは最後の拠り所であり、僅かに差し込んだ光だった。

 

 

 

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2月18日、南アメリカ合衆国のピアソラ大統領は地球連合にオープンチャンネルで話しかけていた。ピアソラ大統領は世界中に声明を発信していた。

 

 

『現在、南アメリカ合衆国は国連加盟のままである。地球連合に関しては我が国ではまだ承認していない』

ピアソラ大統領は崩壊した国連の名前を持ち出した。

事実、国連崩壊で一気にプラントと戦争しに行った地球連合を承認する暇などなかったので嘘ではない。

 

『そして現在、大西洋連邦軍は南アメリカ合衆国の境界線にいる』

ピアソラ大統領は証拠の一つも示さずに事実のように言い放った。

なお、南アメリカ合衆国軍は大西洋連邦軍も地球連合軍も把握出来ていない。

……南アメリカ合衆国の政府はピアソラ大統領がハッタリをかましたのだと察した。

ピアソラ大統領の発言が事実でなければ南アメリカ合衆国は世界中から非難される事になる。

 

『我が国を滅ぼす気としか思えない軍勢である。地球連合は何も言わぬ我らを滅ぼそうというのか!』

ピアソラ大統領は堂々と言い放った。

ピアソラ大統領は軍部にも政府にも黙って一世一代の賭けに出ていた。

……ピアソラ大統領はこの賭けに負けると恥だらけの人生に転落する。

 

 

南アメリカ合衆国内外でも国連の名前を出すのは恐らくは時間稼ぎだろうと思われている。

有識者の一部はザナドゥが何かやったと思っている。ザナドゥは平和を脅かす存在には何かやらかす。

ザナドゥ代表・クシーはまだ反応していない。……地球連合はザナドゥ代表へ今すぐ応答するように声明を出した。地球連合の声明は怒声に近い物があった。

 

そんなクシーは地球連合の声を無視していた。インフラ破壊を企むと推定されるテロリストを壊滅させた。

傭兵と大西洋連邦軍の正規軍っぽいのが混ざっていた。クシーは気の所為であると振る舞った。

 

「テロリストでも元気があるのは良いことだ。……働け」

ザナドゥ代表・クシーはテロリスト達にそう告げた。

地球で差別される存在であるコーディネイターだろうが関係ない。犯罪者だろうがテロリストだろうが目についたらボコボコにする。

そんなに元気なら頼もしいと正気ではない言動をする。ザナドゥ代表・クシーは正規軍でも傭兵でも働けるなら働かせようとする悪魔であった。

 

「困ったな。我々をテロリストとは……」

大西洋連邦陸軍のマッケンジー少佐は困った顔を隠さないで言葉を漏らした。

……南アメリカ合衆国の領土ギリギリに侵入してしまった大西洋連邦陸軍と傭兵で構成された自分達をザナドゥ代表・クシーはテロリスト判定してきていた。

大西洋連邦陸軍マッケンジー少佐は上層部の命令で南アメリカ合衆国への侵略準備をしていた。大西洋連邦の上層部はマッケンジー少佐が否定すれば自分の部下達までテロリストとして扱う。……トカゲの尻尾を切り捨てるだろう。国家の主権を無視した作戦行動という自覚はある。

 

「……大西洋連邦が反応するまでの間、彼らにインフラ整備の為に穴でも掘らせますか?」

ヴィクトリアはいつものように相手のウィークポイントを発見して甚振るクシーに提案した。

ザナドゥは大西洋連邦の正規軍の部隊と交戦するとは言っていない。ただテロリストは別である。

大西洋連邦軍内の急速な軍事作戦、正規軍と傭兵との間に生じた行き違いから発生した些細な国土侵犯はザナドゥ代表・クシーに見過ごされなかった。余りにも可哀想なので穴でも掘らせた方がマシであるとヴィクトリアは考えていた。

ヴィクトリアも大分クシーの考えに染まっているが、クシーの言葉責めよりは遥かにマシだった。

 

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