極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第31話 地球連合ってマトモな人程可哀想……えっ、お前が言うな?それは上司に言いなさい

 

コズミック・イラ70年2月18日、地球連合軍は再編成が急がれていた。

 

プラントとの緒戦の大敗北、血のバレンタイン、喪服の独立宣言によるプラントの徹底抗戦と再編成の理由には十分過ぎた。

緒戦の大敗の原因を精査して軍政を考慮した再編成である。一先ず何とか形になっていた。将校達の不眠不休の働きにより何とか纏まった。

地球連合軍将校達は地球連合の有り様に文句が言いたくて仕方がないが、各国の軍政でも似たようないざこざの歴史があるので組織の常として何とか踏み止まった。

地球連合に文句を言ってまた新しい問題を増やされても困った。……将校達は書面上での再編成は終わったとした。

ザナドゥ、正確には傭兵部隊Xの扱いはそのシンパと共に喧々諤々の議論となっていた。

もうザナドゥは懲り懲りだと溢した将校はそれがフラグだったとすぐに悟ることになる。

 

 

地球連合は主にプラント理事国の三カ国、大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共同体で構成されていた。

だが、地球連合には三カ国以外の加盟国もあった。血のバレンタイン時には地球連合軍には参加していない。

 

地球連合軍では大西洋連邦軍の規格で統一されていた。

……プラント理事国の軍では統一されていたがそれ以外に問題があった。

コズミック・イラ57年においてプラント理事国は共同で宇宙軍を派遣した。その際、大西洋連邦が主体となって規格を統一していた。

プラント理事国では様々な問題があったが合意された。

大西洋連邦の一部で熱烈に使用していたヤード・ポンド法を抹殺する条件が決め手となった。

 

その為、軍事行動ではユーラシア連邦や東アジア共同体は問題なかった。

……それ以外の地球連合加盟国では問題があった。流石にメートル法等ではあるが規格が違う。

 

非プラント理事国は理由をつけて軍事作戦の参加を拒否していた。

非プラント理事国は地球連合を認めても軍事行動までは認めないスタンスでギリギリまで粘っていた。

……地球連合に対してプラントが徹底抗戦を主張したのでそうしたダブスタは消し飛んだ。

地球連合にとって優柔不断な加盟国を巻き込めた。

地球連合は2月7日に設立し、11日には月面基地プトレマイオスを出発という状況である。

優柔不断な加盟国の言い分もあまりにも素早い軍事行動であるため一理はあった。

しかし、プラントの徹底抗戦の発表でその言い分は通じなくなった。

 

プラントの喪服の独立宣言は敵である地球連合を団結させてしまっていた。

どちらにせよ地球連合の加盟国に関しては時間の問題ではあった。それでもプラントやザフトが地球連合の内情を詳しく調べていれば変わった可能性はあった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

地球連合には地球の大国の一つである南アフリカ統一機構も加盟していた。

国連が崩壊して地球連合が後継を名乗ったからである。なし崩し的に加盟していた。

南アフリカ統一機構では国連の最後通告は軽視されていた。

国連事務総長がアフリカ共同体出身であった事も関係していた。

南アフリカ統一機構にとってはアフリカ共同体はほぼ敵に等しい。

……歴史的背景から善意の提案も無碍にされてしまっていた。とはいえ、どちらにせよ南アフリカ統一機構は地球連合に加盟を決定していた。

 

南アフリカ統一機構は地球でも困窮度合いが激しかった。

ザナドゥの公共事業で多少マシになっていたが、南アフリカ統一機構は1月1日のプラントから地球への制裁により困窮度が増していた。

プラントの経済制裁解除よりも地球連合の支援を当てにしていた。

南アフリカ統一機構はユーラシア連邦等から支援を受けていた。

ユーラシア連邦と共同開発のマスドライバー施設「ハビリス」を有するビクトリア宇宙港の存在が大きかった。

経済活動が活発となり、結果的に南アフリカ統一機構は元の水準に戻りつつあった。

 

 

オーブ首長国連邦や大洋州連合、スカンジナビア王国等の大国は中立のままで維持していた。

中でも大洋州連合はプラントのクライン議長の提案である積極的中立勧告を受け入れていた。今後の経済回復はほぼ確約されていた。

 

アフリカ共同体や赤道連合、汎ムスリム会議もまだ中立ではあったが経済活動の低迷が他よりも目立っていた。

ザナドゥのインフラ整備事業により多少は改善しているが、プラントの積極的中立勧告を受諾するかは情勢次第とした。

アフリカ共同体、赤道連合、汎ムスリム会議はマスドライバーを有していないので、地球連合にとって重要度は低かった。

攻め込むような価値が低い国と見なされている。だが、積極的中立宣言を発表すればまだ危うかった。

自分達が攻め滅ぼすまではいかなくとも攻撃されるのを警戒していた。

 

 

南アメリカ合衆国の状況は事実上様子見している国々にとっては他人事ではなかった。

南アメリカ合衆国は地球の森林保護という名目で経済活動に制限が課されていた。

だが、マスドライバーは有していた。大西洋連邦と目と鼻の先にある南アメリカ合衆国は軍事的にも政治的にも危うい立場にあった。

……他国の国家元首達からは南アメリカ合衆国の大統領にはなりたくないと思われている程同情されていた。ほぼ詰みである。

ザナドゥのインフラ整備で経済その他が回復したところであったのにプラントの制裁で減退した。

ザナドゥのお陰で南アメリカ合衆国は多少マシになっていたが、国民は反地球連合の傾向にある。……ここからどうするのかと注目していた。

 

大抵の有識者は決して口には出さないが、南アメリカ合衆国・大統領の立場で最適解を取るならば国民を弾圧して地球連合に加盟すると考えていた。

しかし、ピアソラ大統領はそういう人物ではないと知られていた。故に、多少抵抗して自主権を確保するくらいだと思われていた。

……大西洋連邦が全力で滅ぼしにかかっていると様子見の国々も当事者の地球連合加盟国も知らなかった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

2月18日、南アメリカ合衆国のピアソラ大統領が世界に向けオープンチャンネルで発信した。

 

『我が国を滅ぼす気としか思えない軍勢である。地球連合は何も言わぬ我らを滅ぼそうというのか!』

若い女性であるピアソラ大統領が大西洋連邦に怒声を発していた。

国連加盟のままであるので地球連合は未承認という声明は時間稼ぎとして受け止められた。

問題は大西洋連邦軍の話だった。南アメリカ合衆国を攻め滅ぼす準備をして国境付近にいるという。

 

 

『南アメリカ合衆国の国連加盟に関して地球連合はザナドゥ代表に回答を求める』

地球連合広報担当は南アメリカ合衆国・大統領の非難を無視してザナドゥ代表・クシーを名指しで呼びつけた。

……国連名義で色々情報を発信している組織である。他国からしても今回の関係の有無について気になっていた。

だが、いつもならば呼ばなくても応えるにも関わらずザナドゥ代表は声明を出さない。

 

『……南アメリカ合衆国の国連加盟に関して地球連合はザナドゥ代表に回答を求める!』

地球連合は回答に数日待つ事すら出来ないらしい。先の声明の30分後に同じ声明を発表した。

ザナドゥ側が代表不在とも何も言わないので広報担当者は怒声になっていた。

ザナドゥ本部にザナドゥ代表・クシーを出せと警告が入った。

……その10分後、ザナドゥ代表・クシーがオープンチャンネルで回答した。

 

 

『呼ばれましてこんにちわ。こちら、ザナドゥ代表です。現在、南アメリカ合衆国で現地のテロリスト達を鎮圧、再雇用して働かせていました』

ザナドゥ代表・クシーはいつものように振る舞っていた。今回はテロリスト達を鎮圧後に再雇用していると明言した。

クシーは土木工事で現場監督として働いているようだった。掘削機等があちこちで稼働していた。

 

『……今、忙しいので端的に言いますが南アメリカ合衆国の国連加盟は歓迎しますが、私は知りません』

クシーは地球連合の質問に回答した。

南アメリカ合衆国のピアソラ大統領の時間稼ぎだと各国の代表者は察した。

 

だが、次の瞬間驚きの光景が映し出されていた。

『これで良いか?……それと着替えられないか?軍服よりそちらの作業着の方が……』

どう見ても地球連合軍の士官がそう溢していた。……地球連合軍の軍人達がクシーの後ろで働かされていた。

 

『地球連合の軍服に大西洋連邦軍の兵装備、MAまで持ち出してコスプレするテロリスト達に与える作業着はねぇ!……丈夫で良いコスプレだ。汚しても問題ないだろう』

クシーは地球連合軍の士官(?)の意見を却下した。

良く見れば後ろには大西洋連邦軍の兵器や地球連合軍のMAまで鹵獲されたり、破壊されていた。

 

『代表!大西洋連邦軍の侵略用兵器……ではない、テロリスト達のMAの武装を外して重機として使えるようにしましたがこれでよろしいでしょうか?』

銀髪の少し浅黒い肌の美女がクシーに報告した。

普段からインフラ整備関係の仕事をしているのだろう。作業着が似合っている。……もうこれ隠す気ないだろと見る者全てが思った。

南アメリカ合衆国の無職達はザナドゥのインフラ整備の求人の申し込みに即座に動いた。

 

『地球連合には申し訳ない。……テロリストの兵器を重機に改造していたので対応が遅れた』

クシーは本当に申し訳無さそうに謝罪していた。本心からそう思っていそうである。

だが、誰でも嘘だとわかった。

 

……大西洋連邦軍はピアソラ大統領の言うように本気で何も言っていない南アメリカ合衆国を滅ぼす気だったと思われるには十分だった。ザナドゥ代表・クシーの通信はそこで終了した。

飽くまでも兵士たちを元テロリストと扱ってこき使うつもりらしい。

そして、クシーは知らぬ存ぜぬで後は地球連合と南アメリカ合衆国で何とかしろと示していた。

 

南アメリカ合衆国のピアソラ大統領は賭けに勝ったと内心ガッツポーズをした。

……南アメリカ合衆国が滅ぼされる一歩手前の状況だったと国民も納得してくれるだろう。

この状況で変わるのは国への被害だ。……どこまで譲歩を引き出せるかである。

ザナドゥ代表・クシーからの映像に映っていた兵士達はテロリストであり、偽物と断じられるだろう。こちらとしても譲歩を引き出せるのであればそれでも良い。

国民だけは守らなくてはとピアソラ大統領は決意していた。彼女にとって最後かもしれない大仕事であった。

 

 

様子見を決め込んでいた他の国々は地球連合が相当ヤバい事を仕出かそうとしていたと察した。

同時にザナドゥがやはりやらかしたと一部の有識者は代表・クシーを再認識した。

プラントもコメントこそしないが一連の流れは把握した。プラントの中には地球連合を地球そのものと考えている者もいた。ザラ派の主張を言葉通りに受け止めればそうなった。結果、この事件は地球=ナチュラルという単純な構図で考えている者の一部が地球側の事情を知る機会になった。優秀なコーディネイターの集団であるプラントの中にも興味外の情勢については単純化している者達がいた。世論に影響を与える程大きくは変わらないが僅かに変化はあった。

世界情勢はコントじゃないんだぞ、この馬鹿野郎と青い髪の少年はキレた。

 

地球連合は大西洋連邦が独断で南アメリカ合衆国を武力で滅ぼそうとしたと理解した。

加盟国の集団で抗議に行くことにした。大西洋連邦はもはやクシーどころではなかった。

地球連合は大西洋連邦側の事情も理解していた。

南アメリカ合衆国が持つマスドライバーが大西洋連邦にとって非常に不味い事を理解していた。

だからこそ自分達も協力して南アメリカ合衆国へ圧力をかけつつ交渉しようとしていた。

それが武力で以って滅ぼそうとしていたのであるから当然キレた。配慮を台無しにされたに等しい。

特に東アジア共同体の中国・国主である李は西洋的な思想に基づく帝国主義の復活と罵倒した。

……旧暦の価値観で西洋への差別主義者な李国主が一切取り繕っていなかった。

罵倒をやめない中国の李国主は他の東アジア共同体の構成国の代表達に羽交い締めにされその口を封じられた。

馬鹿みたいな事をしている東アジア共同体を余所にユーラシア連邦は大西洋連邦への抗議の先陣を切った。

 

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