極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ63年5月、ブルーコスモスによりプラントのエネルギー部門が破壊されるテロ事件が発生した。
全壊は防がれたが焼け石に水に等しく、プラント内ではエネルギー不足が深刻となった。
プラント評議会はプラント理事国にエネルギーの一時的な輸出制限を提案するも拒絶される。
プラント側はそれに対して抗議するもプラント理事国はモビルアーマー艦隊で砲艦外交を展開。
結果、プラントの許容値を遥かに超えるエネルギーが搾取され、プラント内での独立運動が更に激化していった。
あらゆる平和への努力は水泡と化し、過激な論調に流されていく世界。
このままではろくでもない事になるのは間違いない。
「プラントは何でも作れると評される程の産業と技術がある。…追い詰めれば既存の考えでは想像もつかないパラダイムシフトの1つや2つ起こりかねないのが何故わからない!?」
賢しい者が一人叫んだところで世界の情勢は変わりはしなかった。
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テロ事件から数日後、キラの誕生日となった。
少し前からアスランの機嫌がもとに戻ってこのコペルニクスではいつも通りになっていた。
キラの誕生日会は夕方過ぎにキラの父であるハルマさんが帰宅してから行われる。
手伝うにはまだ早かったのもあり私達は時間まで外で遊んでいたのだが、キラが私の誕生日プレゼントを勝手に開けた。
嵩張る物で気になったらしいが、そういう物はちゃんとした手順を踏んで開けてほしかった。
「確かに綺麗だけども。この月面都市コペルニクスで和傘って…どこで使うんだ?」
アスなんたらが私のプレゼントに苦言を呈する。実用性皆無の品だと言いたげである。
お前の親父もそうだが父子揃って風情がないなと言いそうになるが堪えた。
「アスラン…」
キラは何か言いたげな視線をアスランに向ける。
しかし、キラからしても使う機会はあまりなさそうなので飾り物になりそうだとも思ったのだろう。それ以上は言わないようだ。
「こういう物は持つ人を際立たせるのだ。見ろ、まるで大和撫子だ」
私はいつもとは違いセンスのあるキラの落ち着いた服装を指し示していった。
やたらベルトの多い作業着か拘束具みたいなのとは違い、お淑やかな可愛げのある服である。
ハルマさんが与えた服らしい。母であるカリダさんといいキラといいカリダ母子を放置すると趣味に走るのだ。
女の子にそれはどうなのだと危機感を覚えてコーディネイトされた服はうちのベラに色々相談したという。
が、キラの様子を見る限り今日と数回袖を通して終わりそうな予感がした。
「まるでって何だよ!」
キラが抗議の声を挙げるが、アスランは深く頷いた。キラはアスランに矛先を変えた。
キラも今年で8歳となり、本人はあまり気にしてはいないが男女の差が顕著になってきた。
意識させないで何か良さげな物をと思ったのだが、空回りしてしまった。
アジア、とりわけ旧世紀の日本的な容姿であるキラには似合うと思ったのだが。
天候まで管理されている宇宙環境、ましてやこの月面都市コペルニクスでは使う機会がほぼないのも事実だ。
グレイブヤードの職人に教わった技術は素晴らしい物がある一方で使い道に欠ける…
「ああ、なるほど」
私はアスランに殴りかかるも一方的に躱されるキラを見て一人納得した。
…私はどうやらキラが自分の近くにいてくれないかと思っていたらしい。
傘など今の世で使うのは地球である。キラが今後移住するかもしれない環境は地球ではない。
今の世ではコーディネイターが住みやすいのは宇宙となってしまう。
キラの両親であるヤマト夫妻はナチュラルだがプラントに居住できるだけの伝も能力もある。
今のプラントは独立運動の世情も相まって特にナチュラルを排斥している環境であるが、キラのような第1世代の親は別である。
息子と妻の口添えもあれば流石の糞ヤバ過激派筆頭のアスラン父も便宜を図ることだろう…そうであって欲しい。まぁ、何とでもなる。
プラントと地球の戦争に巻き込まれる可能性が低いのはオーブのヘリオポリスであるがあの国の氏族政治は良くも悪くも予測し辛い。
…中立を装い権力争いの為にどちらかの陣営の新兵器の密造でもやりかねない。
どちらかの方につくのが、等と考えるのを辞めた。今は関係ないことであった。
「どうしたの、眉間にシワ寄せちゃって?」
アスランを殴れなかったキラが私に向き直り様子を察して声をかけてきた。
微妙に息を切らせているキラ。近い。少し離れてほしい。
「いや、何。男なら一発くらい食らっておけと思ってな」
私はアスなんたらを煽るように言った。身体能力に差はないが技術に差が有りすぎて大人げない男だと思った。
が、
「…その理屈だと君は躱さないよね?」
キラに言質を取られた。にこやかであるが有無を言わせない雰囲気である。
アスランは目を反らした。…あの野郎、また裏切りやがった。
「さっきの言葉を根に持っていたか…」
私は諦めて一発貰うことにした。こちとらアスなんたらとは違うのだ。
久しぶりに思いきりぶん殴られたのだが、随分と腰の入ったしなやかで強いパンチだった。
…食らってわかったのだが、アスランは正しかった。こんなものを何発ももらったらただでは済まない。
私は少し自分の言葉を後悔した。