極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ70年2月20日、大洋州連合は地球連合の蛮行を非難した。
他の諸国も南アメリカ合衆国の件で非難していたが、大洋州連合はより強い論調であった。
大洋州連合は18日の地球連合軍による南アメリカ合衆国での蛮行をより身近に感じていた。
大洋州連合はプラントの積極的中立勧告を受諾し、プラントの支援を受ける事を表明していた。
南アメリカ合衆国は防がれたとはいえ、『まだ何も言っていない』のに滅ぼされかけた。
プラントの支援を受ける事を宣言していた大洋州連合も攻め滅ぼされる可能性があった。
大洋州連合ではプラントに味方すると宣言し、地球連合と戦うか議論されていた。
だが、南アメリカ合衆国はギリギリで主権が守られていた。
国連の後継を自認しているザナドゥが国連加盟国を自称した南アメリカ合衆国を守っていた。
19日、大洋州連合議会において地球連合への非難は決まっていた。
それに加えてプラント支持を表明するか議論されていた。
「……大洋州連合は防衛力を強化すべきですが、自分から戦争を招くのは留まるべきかと」
大洋州連合議会においてラッセル議員は母国に対して語りかけた。
「戦争を回避する為に尽力した者が成功した。我が国が戦争を引き起こすきっかけになっては余りにも報われないではないですか」
ラッセル議員の説得は議会の急進派の心にも響いていた。
大洋州連合はコーディネイターの権利が最も保証されている国の一つであった。それ故にプラント寄りの考えが国全体にあった。……貧富の差という現実でブルーコスモスに走る者も多かったが。
地球の何処かに当たれば壊滅させられる兵器をプラントが保有していないという保証はない。プラント側の大洋州連合ではあるが、地球内で戦争を引き起こす可能性の高い声明を出すのは流石に躊躇われた。
「それでも、我々は責任ある大国である。南アメリカ合衆国の悲劇はあってはならない。愚行を続ける地球連合は非難されなければならない」
フロス議員はラッセル議員の発言を踏まえて国家の責任を唱えた。
……フロス議員は大洋州連合では数少ないコーディネイターの議員であった。
プラントとの交渉窓口に立つ彼は大洋州連合がプラントの味方である事を示す必要があった。
「そうだな、大洋州連合は責任ある大国だ。だが、守るべき国民が居る事を忘れてはならない。ここに居る皆が国を想う者であり、国を想う者であるのはラッセル議員もフロス議員も変わらない」
ラトゥ議長は二人の発言を踏まえて、落ち着かせるように言葉をかけた。
……ラトゥ議長はナチュラルであるが、どちらかというとフロス議員寄りの立場であった。
だが、議論が加熱すればナチュラルとコーディネイターの論争になりかねない。
議会では地球連合の愚行を非難し、防衛力を強化する事が決まった。
裏ではプラントとの交渉を進める事を決定された。
……大洋州連合としては地球連合に味方出来るわけがなかった。
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所変わって、ザナドゥ芸術部門のゲーム対戦機能は極めて充実していた。
ザナドゥのゲームはクソゲーとして名高い。
だが、世界中のゲームで最も国を跨いだ通信対戦が行われていた。
それは何故かと言えばセキュリティが異常な程に優れている点にあった。
ザナドゥゲーム公式はナチュラルだろうがコーディネイターだろうが好き勝手にやっている空間である。
もはや意味不明なザナドゥ代表・クシーが作った規約違反に該当しない限りは大抵許されていた。
ゲーム通信機能をテロに使わない等を守っていれば誰でも好き勝手にやっていた。
非公式大会が催されては公式大会より盛り上がる事も良くあった。
ザナドゥ公式は大規模な非公式大会に旧時代の遺物、通称『粗大ゴミ』を送り付けていた。
皆、またかよと公式の嫌がらせに苦笑していた。……入賞商品にしてもいらない。
公式大会は病気なので賞品を受け取るが、非公式大会は暇な資産家やゲーマーが集まって開催する事が多く、入賞賞品はそれなりに確保されていた。
大体の場合、ザナドゥ公式から送りつけられる粗大ゴミは余っていた。
その場合、ザナドゥゲーム大会名物病気以外なら何でもタカる貧乏人達に粗大ゴミは配布されていた。粗大ゴミというが規格が古く性能が悪いだけで使えはした。実際、公式大会に入賞した趣味人が使っている。
ブロック崩しの鬼姫”MAYU”が粗大ゴミの性能の低さを利用した『破牢鬼帝』攻略はその手があったかと界隈を騒がせた。
なお、この大規模な大会が発生すると何か寄越せとタカる文化は有名だった。何故かというと”滅殺のクロト”が始めたガチの貧困層の叫びがきっかけだった。
クロトはゲームに勝ったから何か寄越せとタカるゲーマーだった。
悪質なので通報を考えられたがクロトはガチの貧困層であり、悪気は無く本当にただ何かくれと懇願しているだけだとクシーから沙汰が下った。
以降、欠食孤児のクロトに対して何やかんや物を送る者が増えた。
だが、クロトは五年程前からパタリとザナドゥのゲームから消えていた。恐らく何らかの要因で死亡したのだと思われる。
自由度を上げる為にセキュリティを高くし過ぎた所為か、どうやってもクロトの消息が掴めないとクシーが直々に声明を出した。
地球の裏側に逃げようとも見つけ出しそうなザナドゥ代表・クシーが捜索が不可能と断じた事によりザナドゥのゲーマー達はショックを受けた。
クロトという仲間が消えたザナドゥのゲーマー達は貧乏人はタカれと主張しだした。
もう少し早く気づいていればという想いから来たこの蛮族文化は今ではマナーが悪いとザナドゥのゲーマー以外からは叩かれているほど有名だった。
そういった経緯もあり貧困層のゲーマー達は節度を弁え、人が多い大会でタカっていた。
……旧時代の遺産である粗大ゴミを欲しがるのはガチの貧困層なので大抵は譲られた。通信機材として使えなくはない程度の性能ではあった。
そのまま使うと市販の安物の方が遥かに優れている。マニアは魔改造して無理やり使っていた。
ブロック崩しの鬼姫MAYUはマニア側の一人だと思われている。
破牢鬼帝は、画面が定期的に暗転し、ステージギミックにより乱雑に放たれる弾幕に当たれば即死。ブロック崩しの跳ね返す棒が延長されるアイテムを拾うと間違いなく弾幕で死ぬ。
ブロック崩しとは一体なんなのだというステージを低スペックの機材で解決した鬼才である。
二つ名が鬼姫なのは破牢鬼帝がファンシーな幼女向けの絵柄で可愛らしいゲームだからである。
それで死ぬが良いと言わんばかりのクリアさせる気のないステージギミックだらけ。破牢鬼帝はギャップが凄まじかった。
ファンからはタイトルの破牢鬼帝は『ブロックという牢獄を破る為に鬼となれ』という意味だと思われている。
MAYUは破牢鬼帝に対処する現実的な解法を生み出した鬼姫として一部で崇められていた。
そんな感じなのが、ザナドゥのクソゲーの界隈である。
2月20日にセキュリティが高いのを良いことに社会的身分の高い面々が通信対戦を行っていた。
ラッセル議員こと”ラッコ”、フロス議員こと”糸ようじ”、ラトゥ議長こと”次期大統領候補”とザナドゥ代表・クシーが通信対戦をしながらチャットをしていた。
今回のゲームは『キャロットケーキを切り分けて』である。
三人の子ども達はクソ不味いケーキを食べさせられたくない故に家から逃げ出そうとするゲームである。
その逃げ道を塞ぐように残虐な拷問器具が備え付けられたキャロット家から脱出する。
どんなに頑張っても逃げられるのは二名だけであるので脱出に協力していた子ども達は最後に醜い争いか自己犠牲をしなければならない。
「俺は次期大統領候補だぞ、生き残らせろ!」
ラトゥ議長はキャロットママ役のクシーから逃げる為に二人に圧力をかけていた。
「巫山戯ないでください。次期大統領候補さんは年相応に老いているのですから若い我々に譲るべきだと思いませんか?ねぇ、糸ようじさん」
ラッセル議員は老いぼれを見捨てて逃げるべきだと提案する。
普段はフロス議員とは敵対派閥に等しい。だが、ここはゲームである。協力しようと持ちかけていた。
「……ちょっと待ってくれ」
ゲームに慣れていないフロス議員はここで少し考えた。……真面目に考えるならばここは議長に恩を売り、ラッセルを排除するべきだよなと思った。
だが、
『そのような事を考えているとはキャロットママに失礼だと思いませんこと?』
クシーの操るキャロットママがフロス議員に襲いかかった。僅かにでも躊躇した奴が悪いと手持ちの拘束具にフロスの操作するキャラを拘束した。
「やったぜ。リアルを考えた馬鹿が一人捕まったぞ」
ラトゥ議長はラッセル議員に笑いかけた。一人は捕まらないと出口は解放されないのがこのゲームの難題であった。
「ええ、ここでリアルの事を考えるのは負けフラグですよ」
ラッセル議員はラトゥ議長とハイタッチした。
……二人は最初から慣れていないフロス議員を嵌めるつもりだった。
なお、優秀なコーディネイターであるフロス議員をトラップを解除させるために利用していた。
「よし、逃げるぞ……って待て待て待て」
ラトゥ議長は出口付近で立ち止まった。……ここでクシーに嵌められたと気がついた。
「ああ……しまった。まだ生かしておくべきでしたか」
ラッセル議員も気がついた。……最後の最後に超高コストの技能判定の罠が設置されていた。
フロス議員の操作キャラならば一瞬で解けるが自分達だと間に合わない。
今、彼らの目の前にキャロットママを操るクシーがいる。……つまりゲームオーバーだった。
大洋州連合の議長や議員が纏めて敗北した。協力プレイもクソもないと少し落ち込みつつもラトゥ議長達は切り替えた。
フロス議員は最初から裏切られる予定だったと知り、ショックだったが無様に散った二人を見てざまあみろと内心ほくそ笑んでいた。
「大洋州連合はこんな感じです。大体伝わりましたか?」
ラッセル議員はクシーをゲームに誘っていた。現状がわかるように代表者二名を巻き込んでいた。
『ああはい。だいぶわかりました。糸ようじさんはもう少し協調性を持たれた方が良いですね』
クシーは感想を述べた。そして、大洋州連合の状態を理解した。
公式発表だけみると纏まっているように見えるがその実態は纏まっていない。
フロス議員なんてゲームと割り切れていないので他二人に利用されていた。
それをクシーは見抜いていたので定石からずれる形で高コスト罠を最後に配置していた。
「何故、私はゲームをしているんだ?そもそも何故、ザナドゥ代表がいる?」
フロス議員は今更困惑していた。
フロス議員はラトゥ議長とラッセル議員に話し合いで招かれたはずだった。
そして、懇親会という名目でゲームをやらされて対戦相手がザナドゥ代表だったという状況であった。
「フロス議員の姿勢は賛同するが、あまり独断で進むと今みたいになるぞ?」
ラトゥ議長は若いフロス議員に端的に説明した。協力するゲーム一つでこのザマである。
「私とは敵対派閥でしょうが、とはいえ国難ですから。協力していきましょう」
ラッセル議員はフロス議員に手を差し伸べた。
……ゲーム友達のラトゥ議長に誘われてフロス議員を沼に嵌める。
ついでに国の状況をコーディネイターであるフロス議員に理解させる。
更に地球連合関係でうまい具合に調整してくれるようにクシーと示し合わせていた。
『仲良きことは美しきかな。まぁ、このゲームにおいて発電設備は大事です』
クシーはゲームの反省点をフロス議員に伝えた。
……同時にラトゥ議長とラッセル議員に太陽光発電の共有をして欲しいと暗に言っていた。
その代わり、地球連合がギリギリ宣戦布告しない程度に抑え込むと約束していた。
このゲームにおいては政治情勢及び高度な政治的な取引等、様々な腹の探り合いが展開されていた。
『このゲームは2月22日に続編も販売するのでフロス議員も良ければ購入してみてくださいね。……では』
ザナドゥ代表・クシーは最後に自社製品の販促だけして通信対戦を止めた。
残された三人は取り敢えず最初に行う予定だった話し合いを進める事にした。裏事情も含めて話し合われる事になる。
……フロス議員としては滅茶苦茶ではあるものの色々納得した。
ザナドゥのゲームは政治家が裏でやり取りする為にクソゲー扱いしているのかと解釈した。
当然だがそんなわけがない。
フロス議員に同類の気配を感じ取った二人が沼に嵌める為にちょうど良いとコミュニケーションツールとしても使えると示しただけである。
……そんな事情を知らないフロス議員はザナドゥのクソゲーの沼にハマっていく事になった。