極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ70年2月20日午前四時、ザナドゥ代表・クシーは世界各支部からの報告を読んでいた。
世界中のインフラ整備と治安維持を行っているザナドゥには大小あれど世界中に支部があった。
無論、歓迎されない国や地域はあったがザナドゥ設立当初から国や地域と交渉して支部を置いていた。
どこの国でも国の支援が行き届かない地域はあり、医療やインフラ整備等の福祉を補助する代わりに置かれるようになっていた。
……最終的には国に頼れないから土地等を用意してザナドゥを誘致してくる地域も多くなった。
ザナドゥ規模になると報告する情報を纏めるのも部下がやる仕事であるが、事件は現場で起きている。
クシーはその予兆がないか可能な限り探していた。
ザナドゥの情報部で上層部用に整理した資料が提出される。それは当然必ず目を通している。
それに加えて全部ではないが未整理の状態の報告書も合わせて毎日一時間弱で読んでいた。
未整理状態の報告書は内容が子どもの日記程度から軍事機密まで様々あった。
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クシーは場合によって情報部でふるい落とされた情報を使い判断を下す事もあった。
最近ではサーペントテールがそれに該当する。
情報部では真偽不明な情報や小さな情報は関連が発覚してから纏めて報告される。
通常ならばサーペントテールは中堅以上となってから上層部に報告されていた。
だが、クシーは正式な資料の他に未整理の状態の報告書を読んでいたのでその前に判断した。
ザフトからジンを盗んで傭兵になったという結構衝撃的な報告、叢雲劾という現代のゴ◯ゴみたいな噂話、ジン乗りの傭兵がMA乗りの劾に完敗した報告、地球連合軍はクソだと叫んで抜け出した優秀な士官の報告、仕事を選ぶ傭兵組織に関する報告……
花畑を守って貰おうと傭兵に依頼したという少女の話。
これら全てがサーペントテールと繋がると推理したクシーは、どこかで依頼して繋がりを作りたいと思っていた。
そして、ジンを受け取りに行くので自分は動けない。人員不足ですぐに聖なる大地に報復ができない状態になった。
クシーとしてはザナドゥに舐めた事をしたテロリストに報復するのを3日も待てない。
こうして、サーペントテールへの依頼が発生した。……内情を見ても滅茶苦茶である。
結果を見れば、2月17日にサーペントテールを雇ってブルーコスモス・過激派の一派であった聖なる大地に襲撃を掛け、依頼を成功させていた。
代表ヌエバは数々の責め苦と尋問の末にザナドゥ専属のトイレ掃除夫となった。
聖なる大地はMAを多数保有し、国と癒着していた組織であった。
優秀な戦闘員も多数抱えていた。そんな組織に無名の傭兵を使うのは有り得なかった。
だが、サーペントテールは成し遂げた。
南アフリカ統一機構・ダルエスサラーム支部長のマヌエラ率いるベロニカ部隊も作戦に協力した。
飽くまでも補助である。サーペントテールは寡兵をもって任務を達成していた。
サーペントテールは世界の傭兵界隈に名が広まった。
……ザナドゥ代表・クシーが自分の代わりを託せる程の戦力という評価ではあったが。
中東最大のテロ組織を潰したザナドゥ代表の名は裏稼業では有名過ぎた。
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午前5時、付き人であるベラがクシーの元にやってきた。
割りとどうでも良い世間話と身内のやらかしがないか確認しながら朝食を食べる。
ついでに自分を偽善者と罵る世界中のテレビ番組を見て気に入った者を雑コラにしてザナドゥゲーム公式に投稿する。
ついでに赤道連合までザナドゥ批判をやり始めたが大丈夫かと現地の有力者と支部に確認する。
赤道連合はザナドゥ本部より時差により5時間進んでいた。
ザナドゥの赤道連合・シンガポール支部は現在午前10時である。
『戦いの仕方を忘れたのかしら?……先制攻撃よ』
支部長のフェイがクシーの問いにそう応えた。
血のヴァレンタイン以来、姓ではなく名前で呼ばれるようになった彼女は苛ついていた。
……いっそのこと暴れてやるかとキレていた。ザナドゥに恩義のあるフェイは殺る気に満ちていた。
「いや、みっともないからやめなさい」
クシーはフェイの普段の口癖を少し真似つつ宥めた。
……先程雑コラを投稿した奴がそれを言うのかとベラは思った。
『俺でもどうかと思ったが、相変わらず世間の言論は気にしないのな』
赤道連合のマレーシアの有力者であるマルコムはクシーに溢した。
……殺意溢れる美女とそれを宥める少年の図は結構面白いので見ていたいと彼は現実逃避していた。
「言論の自由を掲げるゲーム会社を運営しているのだからそりゃ言論の自由は尊重しますよ」
クシーはマルコムに何を当然の事をという顔で言い返した。
流石に全く気にしない訳では無いから雑コラを投稿するわけだが、言論狩りはしない。
裏でロゴスが随分とやってくれているからムカつくのでやり返してやろうかと考えてはいる。
『……シラケたわ。あたし、シャワー浴びてくるから切るわ』
フェイはクシーの戯言を聞いて正気に戻った。……表現の自由のバーゲンセールが眼の前に映っていた。
フェイは勘が良いのでクシーが意図的に言ったと察した。
だが、怒りを上回るクソみたいな事実を投下されたら黙るしかない。
『……ああ、やっぱり身内でもそういう評価なんだ。いや、馬鹿にしているわけではないからな!』
マルコムは一応取り繕ってクシーに溢した。
マルコムはマレーシアの富豪である。フェイとはインフラ整備事業で付き合いがそれなりにある。
フェイはクシーの事になると非常にキレ易く、仮にも現地の有力者であるマルコムだろうがぶん殴って来る。
テレビ局が心配だったのだが一言で消し飛んだ。……ザナドゥ芸術部門のゲームの悪名は流石のフェイでも擁護できないのだと初めて知った。
「失礼だと思いません?知っていますか?大洋州連合ではうちの会社のゲームが流行りなんですよ。……中立国宣言がなかったら今頃ゲーム会社の支店を置けるくらいに!」
クシーはフェイとマルコムの反応に立腹した。クシーはそう思っている。ベラはそう思っていない。
先程確認したら大洋州連合のラッセル議員とラトゥ議長からゲームの誘いが来ていた。大洋州連合の公式発表が終わってからだが間もなくである。
『いや、もっとマトモな嘘つこうぜ』
マルコムは素でツッコんだ。赤道連合側では報道はインフラ整備に支障が出る程ではない。
業務としては気にする程ではないがザナドゥ代表・クシーが気にしていないかは心配していた。
この分だと大丈夫そうだとマルコムは他の赤道連合の有力者に声をかけることにした。
……フェイが落ち着いたので部下に例のテレビ局のアナウンサーの警護はする必要がないと伝える事も忘れなかった。
ザナドゥ代表・クシーを偽善者と罵ったアナウンサーは世界中に雑コラが拡散された挙げ句、職場に重武装した兵士達が押し掛け、何も言わずに彼を取り囲んでいた。
赤道連合はそもそもプラントに関しては中立寄りでザナドゥの恩恵をかなり受けていた。
……そして、ザナドゥの中で最もキレやすいザナドゥの支部長がいた。キレやすい以外は大分適当でも有能ではあった。
ザナドゥ、というかクシーを馬鹿にした不良達をボコボコにした上で自分の舎弟、労働者として雇っていた。
フェイの荒っぽさは赤道連合のインフラ整備に非常に有益だった。
人材不足のザナドゥはザナドゥ批判がまだヌルい赤道連合にフェイを派遣し、クシーが定期的に彼女がキレてないかを確認していた。