極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第34話 代表から金一封貰ったけど何でだ?……当たり前の事言っただけだぜ?

 

コズミック・イラ70年2月20日7時、ザナドゥ本部にて暗殺者が代表を狙った事件が起こった。

 

ザナドゥの恒例行事である。はいはい、いつものいつものという風に鎮圧された。

しかし、彼の背後関係に違和感を抱いたザナドゥ代表・クシーは少し彼と話をすることにした。

本部の地下室にて話をしていた。相手は椅子に拘束され、万が一でも自害しないように猿轡を噛まされている。

男の兵士が複数いるが私を除いて全員武装している。

 

付き人のベラはここが危険なのもあるが、何故か姉がザナドゥ本部に併設された特殊孤児院に来訪したので相手を任せている。

……嫌な予感しかしないが任せられる者が他にいなかった。今回は孤児院にロリコンは来ていないので安心である。

心配だったロリコンはミン◯ーモモみたいな令嬢に捕獲されたらしい。

かつてロリコンが口説いた資源衛星の権利を持つ名家の令嬢である。そこは自業自得なので問題ない。

 

 

……カナードと会う約束は12時だ。カナードは宇宙母艦で近くに来るという話だった。

実にロマン溢れる凱旋である。……私も一隻くらい自分の軍艦が欲しい。

ザナドゥでも作れなくもないが機密が多く労力が多大になる。

今はそんな事をしている余裕はないが、機密が多少わかれば兵器開発部の負担は相当減る。

どうせならば兵装を強化して上げたいが時間的に無理かと私は沸き立つ心を宥めた。

宇宙要塞アルテミスの光波防御シールドは私と北極の技士で既にコピーしていた。

高燃費過ぎてMAだと5分くらいしか使えないから放置していたが、軍艦ならば余裕で可能である。

私が少し手を加えれば現段階で軍艦に極めて高い防御力を付与できるはずだ。

……軍艦は極めて大きな利権である為か、ロゴスの息のかかった造船会社が待ったをかけていた。

軍艦クラスの高出力兵器ならば無理な兵装も装備出来たが利権で頑なに動かない。

戦争を加速させる気はないが新造艦の権利を全て握って戦争を止めることも出来た。

……多分、私がそういう事をするから関わらせたくないのだろうが。

 

MAメビウスならば隠れて量産出来るだろうが、軍艦ともなれば隠れて量産は無理である。

カナードは即日帰投なので時間がないが、既存艦で改装が可能かだけでも把握しておきたい。

そういう少年心的にも姉には邪魔されたくないので帰って貰いたい。

だが、姉の事なので有益な手土産がある確信があったので追い返すのも躊躇った。

妥協でベラに相手をさせているが嫌な予感しかしない。ミスった気がする。

 

 

北極ベリコリスキー基地の技士によれば、MSジンのバッテリーを流用すればMAも物によっては宇宙要塞アルテミスの技術応用して『陽電子リフレクター』を使えなくもないと回答が来ていた。

兵士回収、物資輸送用のMAアルカに使えば装備させたバッテリー1つ辺り10分程度なら既存の兵装に無敵状態である。

流石にビーム兵器や既存兵器の一斉掃射ならば効果はあるだろう。だが、MA等が装備できる小型化したビーム兵器はまだ公式では実用に至っていない。

……今後、ビーム兵器が主流になり、一周回って物理兵装の時代が戻ってきそうである。

 

メビウスはもう根本から変えないと無理だが、アルカなら改装出来た。鹵獲された時が怖いので躊躇われるが。

ロリコンを殴った回数ならば私と互角な北極の技士は今は必要だから協力してくれている。

この戦争が終わったら人を救う医師になるという話だ。……彼は終わる事を前提にしている。

戦争が終わったら私も歓迎である。彼の才能は非常に惜しいがザナドゥでは個人の意思を尊重するので応援している。

 

高性能バッテリーは様々な事に使うので解析したデータを元にザナドゥ関連の工場で簡易的な物は量産してもらっている。

防衛兵器に使うバッテリーは流石に機密性の高いところで量産していた。

プラントは既存の機材や兵器のラインでMSを開発したのでデータさえあれば部品くらいならばザナドゥの民営工場で量産できていた。

バッテリーは緊急時にも軍用にも使えた。ザナドゥが進出している防衛用兵器の規格を合わせていた。

非原子力潜水艦のバッテリーの性能も上がっているが流石にオーブにはバッテリーまでライセンス生産していない。

サハク家の息のかかったモルゲンレーテ社は難癖つけてバッテリーを解析しようとするだろう。

だが、私はキラ並の技術力がないと解析出来ないようにブラックボックス化していた。

北極の彼も協力しているがソフト面ではゲーム制作に携わる私の方が勝っていた。

……地味にカナードも解析できそうになってきていた。何でも学ぶ向上心は私も見習いたい。

 

 

……戦争をしない為に行動しながら兵器を開発するというのは自分でもどうかと思う。偽善者と罵られるのも仕方がない。

ただ言い訳するならば今の地球連合の為に、戦争の為に開発しているわけではない。

戦争で技術革新が異様な速度で進んでいた。

軍事産業に進出した以上は最低限後追いにならないように技術開発はしないといけなかった。

私は稀にメビウスで軍部を牽制しているが、何時までも私の影がちらつくのは軍部も嫌だろう。

 

 

……メビウスは私が関わらない場合、今年の6月頃になってようやく主力になっていた。

言っては悪いが、アズラエルでなくとも私に頼るのも納得してしまう体たらくだった。

それまではミストラルが主力となる。私はあのままではまともな軍人がほぼ全員戦死すると確信できた。

ミストラルが肉盾となり、軍艦の火力で誤魔化す戦術となる。これには限度があった。

地球側で唯一抜きん出ている生産力でカバーするにも足りはしない。

南アメリカ合衆国のように他国を併合し無理やりでも兵をかき集め、地球連合でも学徒動員までされる。

そんな有り様なので私は軍部に協力したが、判断は本当に正しかったのか今でも悩んでいた。

MSジンに対してメビウスが有効という安心か反動かは間違いなくあった。

血のバレンタイン前後、緒戦でプラントを舐め過ぎな体たらくで挑んで大敗していた。

私の思い込み過ぎと思いたいがもしもを考えてしまっていた。

 

地球連合軍ではコーディネイターの徴兵もまだ行われていない。だが極秘裏にやっているだろう。

ザフトが近日中に攻めてくるだろう世界樹防衛では鹵獲したMSジンを駆るコーディネイターがいてもおかしくない。

だが、大西洋連邦ではプラントのせいで弾圧されるならば戦いたいというコーディネイターが多数いるという話だ。

……そういう者達に機会はあるのか。大西洋連邦にあるザナドゥの支部に来れば保護できるがコーディネイター迫害の激しい大西洋連邦では中々難しかった。

私は巡り巡って大西洋連邦のコーディネイター達の自己を守る権利を奪った事にならないかと考えてしまっていた。

その場合、ナチュラルがMSに乗れるようになれば切り捨てられるだろうがそうでないかもしれない。

 

そうやって自分に言い訳しているのか本当にそうなるのか。私には最早区別出来なかった。

……神のみぞ知る領域に片足を突っ込んでいる自分の考えが妄想であると私はどうしても否定しきれなかった。

ミケランジェロが言っていたニュータイプというのは私と同様の悩みを共有できるのだろうか?

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

そんな事を考え込みながらザナドゥ代表・クシーとして地下室で暗殺者(未遂)を尋問をしていた。

……今回の暗殺未遂は正直、彼を罰する気はない。擁護出来る点が多々あった。

 

「マイナ・エニグマ、19歳。ユーラシア連邦・シベリアからの加入者で家族はブルーコスモスのテロで死去」

私は彼の経歴を抜粋して読み上げる。ブルーコスモスに恨みはあるようだが、そんな奴はザナドゥに掃いて捨てる程いる。

何ならザナドゥ本部長、No.2のティモテですら無理やり割り切れるだけでブルーコスモスに嫌悪感を抱いている。環境保護派の爺さん達とティモテを会話させたら自分の知るブルーコスモスではないと溢していた。あっちのが後から来た異端者だと爺さん達がキレていた。

 

「ザナドゥに所属してまだ日が浅いが人格面に問題なし。本部にて訓練の後、彼の希望通り故郷付近に転属される……」

私への暗殺者としては良くある手口だ。だが、今回はどうにも不可解な点があった。

 

「……君の家族の誰かが生きていて人質に取られたか?隠していたからザナドゥに報告出来なくて要求にしたがって暗殺を決行した。ならば多少不合理な行動も説明がつく」

私はマイナ君に一方的に話していた。推理というか確認である。

シベリア支部の報告書にザナドゥ結成以前のブルーコスモスのテロの情報もあった。

幼い兄妹を残してコーディネイターの父とナチュラルの母が亡くなったという小さな記事だ。このご時世には良くある事件の一つであるが、それに目をつけた第三者がザナドゥで暗殺を企んだのだろう。

故郷の家族の存在を隠してしばらくザナドゥの様子見をしてから報告しなおすケースはままあった。

 

「……!」

マイナ君は僅かだが反応した。……見張りの兵士にも似た経緯がある者がいたので多少動揺していた。言っちゃあなんだがザナドゥでは良くあった。

人質を使った暗殺未遂はブルーコスモスがザナドゥの内部分裂を謀るのに使っていた。

私としては犯人の処分は軽いというかほぼ無罪、指示した者がどのような目に遭うかは対外的に幾度となく示していた。

 

「安心しろ、妹さんは既にザナドゥで保護した。君が隠すのはよくわかるのでシベリア支部の者に確認させていた。情報部が悪意の第三者から君を守れなかったのが悪い」

私はマイナ君に言葉を続けた。一応、過去の事件との関連性を考え捜索させていた。

定期的な観察に留めていたがマイナが行った暗殺未遂により保護に切り替えた。

マイナの妹によれば兄と通信出来なくなっていたらしい。……悪意の第三者が確実にいた。

ザナドゥは世界中から罵倒されている現状である。加入歴が浅ければ暴走もする。

 

「……ザナドゥの代表よりも犯人に屈するとか正気か」

ザナドゥの兵士が同僚に溢していた。……話しかけている同僚は過去にマイナ君と同じことをした奴である。

 

「そこ、私語厳禁!」

私は気まずくなりそうな馬鹿話を止めさせた。何か奥の手を隠し持っている可能性もあるので私語厳禁である。

ロゴスの連中は自分の兵士に気づかれずに爆弾を兵士の体内に埋め込んでいた。アレは私でもどうしようもなかった。

 

「マイナ君の罪はこちらの落ち度もあるとして公表しないつもりだ。保護している妹さんとも会わせるから。落ち着いたら指示した糞野郎の情報をできる限り、何でも良いから吐き出して欲しい。……私が探しているにも関わらず本気で見つからない」

私はマイナ君へ一方的に話しかけた。……ハイかイエスかどちらか言って欲しい。

直接探しているわけではないが本気で見つからない。もうここまでになるとオカルト案件である。……少なくとも既存の技術によるものではなかった。

 

「……代表。その……彼に猿轡を嵌めたままだと話せないんじゃないですかね?」

兵士が恐る恐る私に進言してきた。……本部の兵士は質が良い。

 

「外してくれ。……後、今の発言で金一封!」

私はそう宣言した。……少し恥ずかしかったので顔を背けた。

私語厳禁と言っていたのにも関わらず私にマトモな進言してきた兵士は非常に偉い。

今後も私にガンガン言って欲しいのでボーナスだ。

 

姉の事やカナードの事でゴチャゴチャ考え事をしていた私以外の連中、進言した兵士以外は皆猿轡の事にとっくに気がついていた。……言えや、お前らは。

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