極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ70年2月20日10時、ザナドゥはユーラシア連邦から狂った数の潜水艦を受注した。
いずれ時が来れば需要があるからと作らせていた大量の潜水艦に新造のバッテリーを取り付けて送り出している。
本来ならば世界に向けて用意していた100隻は数日中に送りつけられる。
片っ端からこれらをユーラシア連邦の海軍へ送りつけるつもりである。
いきなり潜水艦が大量に送りつけられた海軍への言い訳を考える大統領の顔が目に浮かぶ。……ざまあみろ。それにしても100隻でもまだまだ足りないのは狂気である。
……緊急時と水中用MS対策の為に製造部のノウハウを蓄積するために作らせていた。
備蓄していた100隻は売れたが、内訳の四分の一以上は売るというよりもザナドゥに加入した新規の技術者に学習の為に作らせ、解体していなかった潜水艦である。
性能は保証できるが、現場の遊びで微妙に機能を追加している艦もあったのでそれは今回は省いている。
一部の発想は素晴らしかったがナチュラルの軍隊の兵器なのだから一部にだけ余計な機能があると混乱するだろう。
例えば、私の開発していた兵装のフォノンメーザー砲が追加された潜水艦があった。フォノンメーザーはまだ試作段階であるので今後も論外だ。
私は国連軍の元士官がプラントへ行くというので選別に作業用に開発したMAボールを渡していた。
ボールの海底用モデルには護身用にフォノンメーザー砲を仮設で付けていた。
潜水艦製造のノウハウ蓄積で学習としてやらされた現場の人員が新しい兵装につけたいのはわかる。
良いと思われたアイディアの一部は私も採用することにした。人がアレコレ考えたアイディアは馬鹿にできない。
コーディネイターだろうがナチュラルだろうが視点が違うアイディアはあればあるだけ良い。
こういう場合、アイディアを纏める者がいないと無駄に混乱するのが難点であるが。
現場で作ったのだから先ず現場に図面を書き直させている。私は後で確認する。
……現場のアイディアで有益な部分を取り入れることになる、ほぼ新造艦についてはユーラシア連邦へ第二陣として送りつける事にした。
少し値段が上がるが兵装が改良される。実際に戦場で運用する事になる海軍にとっては是が非でも欲しいはずだ。
……軍部は大統領に直訴して欲しい。大統領は直訴されなくとも私との密談で決めた予算の範囲内なので了承するが、軍部は知らないだろう。
私としてはユーラシア連邦の八割、数百の潜水艦を発注するという糞面倒な事をした大統領に思うところがあるので些細な八つ当たりくらいはしたい。
フォノンメーザーに関しては見送りだが、仮に付けるとしたら潜水艦本体と連動するか別枠でバッテリーを付けるかで私は考えた。
……私のフォノンメーザー砲を遊び半分で作った現場を叱ったが、北極海での試運転以外のデータが取れたので色々思考できた。
潜水艦ならばフォノンメーザー砲は兵装に直接バッテリーを取り付ける方が良かった。
ただ問題なのが、MSと比べてただでさえ低いと思われる潜水艦の機動性が失われた。……これでも非核動力潜水艦に特化しているだけあって既存の原子力潜水艦並の機動力はあるのだが。
フォノンメーザー砲は水中用MS対策にはなるだろうが外装がゴテゴテになる。
MS側からは脅威として備えた潜水艦を真っ先に潰されるだろう。
普通に強力な兵装だ。ザフト側も地球侵略の為に開発しているであろう水中用MSには作ってくると思われる。
ザフトがレーザー兵器を作れても水中で減退するが、フォノンメーザーは水中でも特に減退しない。
機動性が低下した潜水艦は想定される水中用MSからすればカモである。
いっそのこと兵器換装で兵器本体が取り外しできるシステムを構築した方が良かった。
潜水艦であるので無理だった。しかも、既存の潜水艦を大幅に弄らなければならないので注文とは違う。
……発想自体は使える。今後開発するMAやMSに取り入れる事にした。
忙しい開発部が心配になってきたが、私が今思いついた理論を渡せば手間は大分減るだろう。
……戦闘機にバッテリー兼兵装をつけて現場のMSやMAに送るというのもありだ。
戦闘機にも流用できる内蔵バッテリーの兵器をMAやMSにも使えるようにするのはザナドゥの規格の統一性を考えれば可能だった。
要はパック換装式の兵装だ。既に量産しているメビウスを改修するのは可能だ。一から作るよりも安いが問題はそれを活かせるかだ。
鹵獲したジンを改造して運用すれば稼働時間の延長、バッテリー切れ対策にはなる。
現状、コーディネイターしか扱えないMSの為の兵装となる。
地球連合のコーディネイター部隊があるだろうし、一部は扱うのだろう。それでも鹵獲したジンはほぼそのまま使われると考えられる。
……現状の地球連合軍が採用するかと言われれば限りなくゼロだった。
私のアイディア自体は使えると思うので軍部に権利として申請しておくのもありだろう。
軍がナチュラル用OSを作れた場合は私のアイディアも使えなくはないはずである。
私は一部極秘でやっているかもしれないMS開発に誘われていない。
大西洋連邦でMS開発計画はひょっとしたらあるかも知れない。
だが、ユーラシア連邦ならともかく他国の軍事機密なので下手に詮索するのは流石に不味いし探る伝も方法もない。
最近だと南アメリカ合衆国の件で私は大西洋連邦にとって余計に厄介者である。
このままだと軍部に稀に行うメビウスやスピアヘッドの権利のように牽制できるか怪しくなる。
……ならば私の魅力的なアイディアの権利だけ地球連合軍に送りつけておく事にした。
作るかわからないMSに使えそうなアイディアである。これを使えたら地球連合軍は大分マシな組織である。私は出来る範囲で未来の軍部に牽制することにした。
私のアイディアという権利は飽くまでも換装システムである。
どの程度採用するかわからないが後追いのMSともなれば機能を変えた試作機を幾つも作っているはずだった。
……一つのMSに被るくらいならば私をハブる連中にも問題ないだろう。
この時の私はヘリオポリスで五機の試作機を用意していて強奪される事を知らない。
残ったのが私のアイディアを一部流用したMSストライクになる事を知らなかった。
MSストライクはパイロット不明で活躍し、地球連合の象徴となってしまった。
大部分が権利が被る事になるメビウスとスピアヘッドの後継機達よりはマシだった。ストライクは一部のシステムだけである。
それでも地球連合軍は量産の際には私の機嫌を取らなければならなくなった。
オーブ連合首長国にあるモルゲンレーテ社はまたしても私のアイディアや開発を一部パクったが、今回は地球連合側の不始末であった。
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ザナドゥで何とか場所を確保し、ストックしていた潜水艦100隻をユーラシア連邦単独で購入してもまだまだ足りない辺り、大統領も正気ではない。
実際に先んじて運用していたオーブ軍等現場からの声を反映してある潜水艦であるので粗製濫造等という文句は言われないだろう。
海底に沈むと確実に乗員が死ぬという潜水艦の問題を解決した緊急脱出装置もつけてある。
百どころでは足りない潜水艦の需要、ユーラシア連邦は国土も領海も広すぎた。
ちなみにザナドゥの潜水艦は防衛用として中立国であるオーブ連合首長国に特に格安で売っていた。
私はオーブにザナドゥの潜水艦を自国で作れるライセンス生産も許可していた。
私も認める程にオーブのアスハ代表は本物の中立派である。……それ故に多少の便宜はした。
だが、少し変えただけのコピー品をモルゲンレーテ社オリジナルのバッテリー式潜水艦として売り出していた。
サハク家の支配下にある企業で私が嫌いだからって無礼過ぎないかと思ったが、ザナドゥの労力は減るので私は黙認していた。
利益的に考えれば損害だが時間と労力を別に使いたかった。
ユーラシア連邦から正気を疑う数の潜水艦の受注販売が決まったのでザナドゥの兵器産業部門もそれどころではなくなった。
その代わり人手が増えるのでインフラ整備は大分マシになってきた。
これでザナドゥ内の反オーブ感情も下がると良いのだが……。
中立国は嫌われる定めとはいえちょっと最近は酷い。特にザナドゥに酷すぎやしないかとアスハ代表に直接言いたい。
だが、オーブの内情は氏族が好き勝手やって暴走し、アスハ代表は責任を後から取らされる被害者だと知っていた。……実態を知った後だとどうも強くは責めづらい。
アスハ代表はカリスマとガンギマリ精神でオーブの中立を維持していた。私的には実に好ましい人物である。
覚悟のある者は見ていて好ましい。ブルーコスモス過激派やテロリストは別であるが。
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そんな事は切り替えた。現在の時刻は11時。
何とかカナードとの約束に間に合った。……待ち合わせ場所でカナードを待っていると近くにある孤児院から超人機関の双子がこちらに向かってきた。
「マリー、ソーマ。8日振りだが元気そうで何よりだ」
私は突っ込んできた双子をいなして躱した。
闘牛士のような気分である。双子の速度は最低でも時速50キロはあった。
骨格が下手な金属より硬く、筋力はそれに見合って強化されている双子である。マトモに喰らえば常人は死ぬ。……私はこの程度では死ぬつもりはないが。
「レディを受け止めないのは男の恥だと聞いた」「幼い可憐な“私”を受け止めるくらいできないのか?貧弱な」
マリーとソーマは私に理不尽な事を言ってきた。……誰だこんな事を吹き込んだのは。多分、姉だろう。
姉は何だか本気で私を暗殺する気はないようである。だが、挨拶代わりに殺す手前までするのは止めて欲しい。それに普通にこの双子は……
「君たち重いじゃないか。その質量と速度は凶器だぞ。可憐とかいうが見た目はそうかも知れないが、その重さは詐欺みたいなものじゃないか?」
私はうっかり素で双子を評価した。元気の良い双子は殺意の波動を放っていた。
「「お前、殺す!」」
真ん中分けの白髪の美少女達マリーとソーマは殺意剥き出しで私に言い放った。
「元気でよろしい!ちょっと遊んでやろうではないか!」
私は久しぶりに純粋な殺意全快で向かってくる対象に心躍らせた。
筋力はゴリラ並、技能は上位陣に入る双子である。カナードが来るまで相手をしてやる事にした。
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その後、クシーの元へ意気揚々とやってきたカナードはじゃれ合う可憐な少女達とクシーを見て軽く脳が破壊された。
「いや、カナードちゃん?……あれ、ガチで殺しにかかっているよ?止めなくて良いの?周りのコンクリートとかボコボコに凹んでいるんだけど。おーい……」
マッド大尉はカナードに進言した。マッド大尉は脳破壊のプロフェッショナルだ。……アレは誰かが割って入らないと止まらない。
良く蹴られていたマッド大尉はカナードならば間に入って止められると理解していた。
傭兵部隊X以外の地球連合軍将校はこの異常な光景はなんだと呆然とした。漫画やアニメの戦闘が眼の前で繰り広げられていた。
「ハハハ!見ろベラ、あの小娘の顔を!」
シグネはカナードが脳破壊されたのを指して笑っていた。
……シグネも流石にそろそろ双子を止める気だった。
だが、小娘の記念すべき凱旋でこれとは。良い物が見れた。シグネはそれなりに満足した。
「……だから駄目なんですよ、貴女は」
ベラはシグネの糞みたいな小姑ムーヴを罵倒した。
もっと早く止めに入れば普通に主も感謝しただろうに。暫く双子とのじゃれ合いを楽しんでいた主はカナード達が来ている事にようやく気がついた。
「すまない、ちょっとタイム!?謝るから待って!!」
クシーは双子に慌てて謝罪した。もう12時になっていた。
カナードと話せる時間はあまり多くはなかった。なお、カナードはまだ脳破壊されていた。
「乙女の一撃を一発は喰らいなさい!」「それかお菓子を買って来て土下座しろ!」
マリーとソーマはその2択を迫った。二人は攻撃を躱しまくるクシーに疲れてきた。
正直、二人共もう止めたいが落とし所がそれくらいしか思いつかない。
「……アイスクリームで駄目かな?土下座は嫌だ」
クシーは双子に妥協案を提示した。アイスクリームならば火照った体を冷ますのにちょうど良い。
だが、土下座は絶対したくなかった。クシーは無駄にプライドが高かった。