極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第37話 『鉄屑』の提督

 

コズミック・イラ70年2月21日、地球連合軍の月への橋頭堡となっていたコロニー群『世界樹』は重要拠点であった。

 

地球連合軍・第13艦隊所属のマルセイユⅢ世級改装護衛艦『ボイエン』等によりザフトや宇宙海賊を警戒した索敵が行われていた。

 

今日の索敵任務は地球連合軍・第13艦隊が担当していた。

指揮官のペルミノフ少将は本来は世界樹のあるL1宙域の担当ではない。再編成後の担当も別方面であった。

 

近日中に発生するであろう世界樹及び月面基地の防衛の戦力として呼び出されていた。

地球連合軍・第13艦隊は緒戦の惨敗の穴埋めの為に急遽補填、編成された即席艦隊である。

元々の第13艦隊は輸送任務や宇宙海賊への対応が主任務だった。

 

ペルミノフ少将は本来ならば治安維持や輸送任務に従事していた自分達にいきなり最前線で戦えという地球連合軍の無茶苦茶に忸怩たる思いを抱えていた。

……同時に地上の佐官を取り立てて急造で編成するよりはマシだと評価もしていた。そこまでするくらいならば自分達に回した方がマシである。

……宙域の輸送任務や治安維持が生え抜きの将校達でも簡単にできると思っていないかとペルミノフ少将は地球連合の軍事行政に対して怒鳴り散らした。

 

 

地球連合軍・第13艦隊に主にあるコーネリアス級を改装した護衛艦はまだ良い。……いや、本当はもっとまともなので戦わせろと思うがまだ良い方だった。

第13艦隊は型落ちも甚だしいマルセイユⅢ世級を改装した護衛艦まで現役で編成されていた。武装や装甲を改装しているとはいえ無茶苦茶である。

一応、ペルミノフ少将の乗る指揮艦はアガメムノン級宇宙母艦『オズワルド』である。

外部からの補填でアガメムノン級宇宙母艦オルテュギアやドレイク級宇宙護衛艦ナイアデス等のマトモな軍艦もあるにはあった。

 

……ペルミノフ少将はザナドゥのシンパではないが、緒戦での彼らの活躍は見聞きしていた。

本格的な艦隊戦やMSとの戦闘では不慣れな自分達よりも彼らを頼りにしていた。

ペルミノフ少将率いる地球連合軍・第13艦隊の扱いは遊軍である。旧式艦が戦力になるとは思えないという最もな理由だが、ならば呼ぶなとペルミノフ少将は思った。

……ザナドゥのシンパ達を地球連合は飼い慣らせない。だが、それを放置出来るような余裕が地球連合軍にはないという事だと理解してもいた。

地球連合はザナドゥのシンパ達に対して面倒臭い恋人のように扱っていると副官のスズキ大佐は溢していた。ペルミノフ少将もそれを聞いて少し笑ってしまった。

 

ほぼ戦力にならない肉盾に等しいコーネリアス級やマルセイユⅢ世級は旗艦のオズワルドの周囲で戦わせる。

ドレイク級やネルソン級というマトモな軍艦もオズワルドの護衛としている。……元からの第13艦隊、自分の派閥の者達は基本的に防御と火力支援に徹するつもりである。

自分達の主力が旧式艦とはいえ集中砲火すればザフト側からしても幾らか脅威になるはずである。防衛に徹しつつ火力要員として動くつもりである。

ザナドゥのシンパ達には自己判断で動くことを許可していた。自分達の戦術に彼らは勿体なかった。

 

あの軍史に確実に残るであろう撤退戦、『プトレマイオスの撤退』を指揮したのが少女である事に驚いた。

それほどの逸材をコーディネイターの傭兵だからという理由で腐らせる程ペルミノフ少将は狭量ではなかった。

……彼女は緒戦で相当酷い現場指揮官の下に配属されたらしく自由に任せると仄めかしたら驚いていた。

 

「私の古臭い戦術だと居ても居なくても変わらないのだから仕方がない」

ペルミノフ少将は傭兵部隊Xの隊長であるカナード及びマリーヌ少佐やマッド大尉等の艦長達にそう告げた。

ザナドゥのシンパは良くわからないので纏めて呼んだつもりだが、上手く伝わったらしい。素直に敬礼して持ち場に戻っていった。

 

……これまで輸送任務が主だったペルミノフ少将らが出来る戦い方は限られていた。

そのため、本当の『勇軍』とペルミノフ流の『遊軍』とに分業することにした。

何ならペルミノフ少将の旗艦を釣り餌にしても良いとしている。宇宙海賊が相手ならばマルセイユⅢ世級というオンボロを餌にして第13艦隊は良くやっていた。

意外と釣れるのでオススメだと言ったらカナード曰くザナドゥの代表も良くやるらしい。

ザナドゥ代表は意外と自分と気が合いそうな少年であるとペルミノフ少将は思った。

ペルミノフ少将は近日中に想定される世界樹攻防戦で生き残ればザナドゥ寄りの派閥になっても良いかもしれないと思った。

 

 

地球連合はザナドゥのシンパ達をペルミノフ少将に牽制して欲しいと思っているだろう。

だが、ペルミノフ少将は艦隊指揮官に任命されたとはいえ、物資輸送の専門家と自認していた。そこまで求められても困る。出来ないことは出来る者に任せる。

 

ペルミノフ少将はザナドゥ代表・クシーが作ったというMAアルカを非常に高く評価していた。

……アルカを量産するだけで輸送任務の成功率が格段に上がった。特に今後は激戦が予想される。ザフトによる輸送艦への襲撃が増える事は間違いない。

 

その点、ザナドゥ代表がペルミノフ少将に寄越したアルカを応用した物資輸送網のアイディアは素晴らしかった。

メビウスを護衛艦代わりにできるバッテリー換装システムも興味深い。

大型MAのアルカに積んだバッテリーでメビウスのバッテリーを適宜交換すればそこそこの物資を最低限の労力で輸送できた。

そうでなくとも装甲が厚く機動性のあるアルカは保管庫としても機能した。

輸送艦が撃沈されたとしても輸送艦内にあるアルカに物資を積んでおけばほぼ確実に目的地まで届けられた。……本気で量産して欲しい。

マルセイユⅢ世級輸送艦を無理やり武装させた艦隊を指揮させられるくらいならばMAアルカ等で体当たりした方がマシだった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

そんなペルミノフ少将は母艦であるオズワルド内で待機していた。

そして、自分の部下であるマルセイユⅢ世級『ボイエン』の索敵班からの通信が入った。

 

『報告します!…… "鉄屑"より報告します。"鉄巨人"発見、踏み荒らすのは明日の…』

そこでボイエンからの報告は途絶えた。……ザフトに見つかったらしい。

ボイエンの艦長達は通信を敵に傍受されても構わないようにする為に……そして、自嘲の意味を込めて自分達の暗号名を『鉄屑』にしていた。

 

少なくとも明日に『踏み荒らす』程の敵が来る。……それだけの情報を報告してきた大事な部下達が乗る船が鉄屑なわけがない。否、ただの鉄屑で終わらせてなるものか。

 

ペルミノフ少将は即座に地球連合軍にボイエンからの報告を伝えた。

明日が部下の敵討ちとなるか戦死するかわからない。だが、ペルミノフ少将が自身が体験したことのないような正規の大規模戦闘に対して覚悟を決めるには十分だった。

 

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