極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第6話 そもそもオカピーって何?え、給仕用ロボット?…乗っかるとそのうち体重で潰れない?(殴打音)

コズミック・イラ64年4月、私が地球から月面都市コペルニクスに来て3年が経過した。

 

プラントでは独立運動が加速しており、呼応するようにブルーコスモスのテロが頻発していた。

正直、何をやっても焼け石に水である。無いよりはマシと始めたカルト宗教…もとい事業は軌道に乗ってはいる。

軌道に乗るということはある意味最悪でもある。世界がまた戦争の時代になるだろう。

そういう予感から始めた事が上手くいっても些細な変化は起こせても世界の流れは止められない。

 

 

そもそも地球に住む約4億のコーディネイターが行き場を失ったらどうなるのか?

…当然だが犯罪で生きる他ない者が増える。

 

コーディネイターという優秀な素質を持つ犯罪者は地球で大いに活躍し、そして新たな憎しみを生む。

それは事実なので否定しようがない。ブルーコスモスが台頭する下地は社会そのものだ。

この一連の憎しみの火種を裏で手引している存在がいたとしても。

流れを利用しているつもりが自らの生み出した憎しみにいずれは飲み込まれるだろう。

 

 

そもそも希望を子どもに託して生まれたコーディネイターが産んだ悲劇というべきか。

…だが、必ずしもその両親が健全な心根であるとは限らない。

 

コーディネイター処置は完全な技術ではない。どこかしらに不完全なところが出る。

目の色が違うという理由で捨てられるコーディネイターの子ども達がいた。

肌の色の違う子が生まれた、盲目の子どもが生まれた。

そういった齟齬が出ないようにと人工子宮を研究していた企業があったそうだがブルーコスモスに潰された。

 

命を弄ぶ禁忌の領域ではあるがそういった捨て子達が生まれないという点だけ見ればマシかもしれない。

認めたくはないが負の側面に関わることでそういう考えが少し理解できるようになっていた。

 

人工子宮といえば、そこから脱走したというコーディネイターをユーラシア連邦の伝で保護していた。

…容姿がキラに少し似ていたという私情が入っていたことを否定できない。

コーディネイターならば容姿は似ているのもおかしくないのでそれ以上の詮索は辞めている。

 

 

このような有様であるので世界を憎悪しているコーディネイターは多かった。

犯罪者として大成する者も出てきており、地球の治安も不味いことになってきている。

そして、その影響でブルーコスモスに加わる者が次々増えている悪循環だ。

 

 

「負の連鎖を止めるには手を止めるしかない。しかし、その手を止めたら怨嗟に満ちた他の者の手で殺される」

手にある報告書には仲間となった者が殺された顛末が記載されていた。

 

…私は何をやっているのだろうか。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

私はその日、コペルニクスを離れていた。事業という名の綱渡りも厳しくなってきていた。

規模が大きくなり流石に全く顔を出さないわけにも行かなくなってきていた。

本当は20…いや、15歳になるまでは平穏に暮らしていたかったのだが。その前に人類が絶滅するような事になったら意味がない。

 

独立運動の盛んなプラント、その中枢の人物がやってきていた。勿論、プラントではない。

 

月と地球を結ぶ世界初の宇宙都市世界樹、過去の文明を色濃く残すグレイブヤードで観光に来て”偶然”会った世間話である。

 

 

「…どうぞ、粗茶ですが」

囲炉裏でお湯を沸かし、日本茶を淹れて差し出した。親子連れで来ている。

桃色の髪の少女は私と同年代か。シーゲルもとい茂雄は何を考えているのやら。

 

「まぁ、ありがとうございます」

笑顔で受け取り、丁寧な所作で飲む少女。

当然だが毒等は仕込んでいるわけないがあっさり飲むなと好感を抱いた。

 

「…声は同じ。なるほどそういうことか」

シー…茂雄は納得しながらも複雑そうな顔でお茶を手に取るが持て余している。

色々考えているようだが、顔もわからない相手に話ができないと言ったのは先方である。

 

「大人は難しい事を考えなさる…私としては友達で遊ぶ方がずっと大事です」

私は本心から世間一般の過激派へ言った。アスなんたらで遊ぶ方がよほど健全である。

 

「そうですわよね…私もオカピーと庭で遊んでいる方が好きですわ」

悩んでいる父親と比較して桃色の娘は話がわかる。オカピーが何かは知らないが。

 

「私も向上心のある友達をからかったり、物臭な友達に発破かけたりする方が好きです」

私はアスランやキラを思い出して言った。オカピーが何か知らないが似たような者だろう。

 

「ラクス…」

茂雄が娘と私の会話を遮った。面倒だから顔見せだけして帰りたかったのだが。

流石にそうもいかないらしい。

 

「まずはお茶を飲んで落ち着きましょう。話はそれからで良いでしょう?」

私は茶を出したのに飲まない茂雄を指して自分の茶を啜った。

 

ついでに遠巻きに見つめている子を呼んだ。一応、うちの子なんだからと思ったのだが妙にオドオドしている。

どうも私が想像と違ったのか、まだ動揺しているようだ。私よりも年上…とはいえ16くらいだったか。

ラクス嬢を見ろ、ふてぶてしくもお菓子を要求してきたぞ。

私は関係ない話ではないのでハーフコーディネイターの娘を呼んだ。

 

 

…シーゲル・クラインが秘密裏にすすめているナチュラルとの婚姻政策、南米での活動に関する取り決めである。

 

境遇的に私よりも適任なのだから仕方がない。というか画面越しではあんなに張り切っていたというのに。

この娘はコミュニケーションに難があるのかと私は心配した。ラクス嬢は新しい友だちに浮かれていた。

本当にふてぶてしいな、この娘。私は感心した。

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