極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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閑話 世界樹攻防戦2.5 クソゲー開発部世界樹分離事件

 

コズミック・イラ70年2月22日、宇宙コロニー世界樹を巡る攻防戦は地球連合軍の激しい抵抗があったものの、MSジンや高機動のナスカ級を保有するザフトの側に形勢が傾いていた。

 

NJの使用により核動力艦を壊滅させるなど、地球連合軍の物量というアドバンテージをかなり削っていた。

 

……地球連合軍は使用不能となった核動力艦をマニュアルで放つ固定砲台や盾として使う等の狂気の抵抗がなされていた。

本来ならば核動力艦の爆発は危険だが、核動力が停止した為に放射能の流出もほぼ無い。

爆散するまでの間は装甲のある盾となっていた。防衛戦という状況では地球連合軍に利する環境になっていた。核動力艦には万が一再起動した時の為に最低限の人員が残っていた。

 

「……バルカン砲がまだある。ミストラルよりはマシだ。75mmの砲弾で敵を牽制、味方を援護せよ!」

核動力戦艦パウエルの艦長・ジミー中佐はエマエル軍曹達に命令した。……パウエルは主武装の弾薬を全て使い切っていた。

本来は艦にとりつかせない為の牽制にしかならないバルカン砲だが、仮にも戦艦に搭載されている分、ミストラルよりはマシだった。ザフトのMSジンや軍艦を牽制する。

バルカン砲の弾が尽きたら今度こそ肉盾、棺桶である。シャトルも無いし、激戦地なので逃げられない。

 

「ミストラルで戦う奴が気の毒になりますよ!」

砲手はジミー中佐の言葉に軽口で答えた。エマエル軍曹やオオツカ伍長達はバルカン砲の状態を少しでも良くするために尽力していた。

整備士として出来る事はこれが最後である。後は肉盾として少しでも長く機能するように装甲の補修を行うのみ。

 

「バルカン砲ももうほぼ大丈夫だ。……俺は補修で、伍長は動力を頼む」

エマエル軍曹はバルカン砲に関して出来る事はほぼやった。

後は万が一の弾詰まり…ジャムる事だけ一応警戒して人員を残すが、次の仕事に取り掛かる。

万が一でも核動力が復活した場合に備えて動力を点検している人員に作業員を追加、内部で補強している人員にも追加する。

 

「整備士が出来る仕事が無いなら肉体労働を手伝う訳だが。まぁ、普段と変わらんわい」

オオツカ伍長は苦笑して言った。……人員を分ける事になるので彼ら整備士達はこれが今生の別れとなる。

そんな染み染みとした言葉が最後になるとは彼らも思わなかった。だが、仲間と共に苦痛を感じずに逝けた事は幸福だったのかもしれない。

 

「はぁはぁ……棺桶の分際で散々暴れやがって」

士官アカデミーを卒業したばかりのザフトの新兵は無反動砲をパウエルに放った。

死物狂いで抵抗していた固定砲台がバルカン砲しか撃てなくなったとは思わない。

ザフト兵は人力のマニュアルでミサイルや魚雷を放つ戦艦パウエルに恐怖していた。

……パウエルの乗組員がその評価を知れば無駄ではなかったと喜んだかもしれない。

 

だが、

「パウエル……見事な最後だった。そして、彼らに無反動砲を使ったのがお前の敗因だ」

メビウスのパイロットは有線ミサイルを使うまでもなくリニアガンでジンのコックピットを狙い撃ちにした。

……敵を取った彼もまた狙われていた。

 

「敵討ち……というわけではないが、君は少し厄介そうなのでね」

クルーゼは優れた敵パイロットの隙をついてジンの重斬刀でメビウスを切り裂いた。

なるべくMAメビウスは脱出装置ごと潰せというのがザフトの方針だった。緒戦で確保したナチュラルの捕虜の数が足りない事からメビウスパイロットが何等かの方法で脱出して回収されたとザフトも気がついていた。

 

「済まないが隙を見せたのが運の尽きと思ってくれ。捕虜にする暇もなければ回収させるのも惜しい。上からの命令……努力義務というやつだ」

クルーゼはそう言って次の戦場に飛び立った。先ほどの味方が遺した無反動砲を使い、ドレイク級も駄賃代わりに一隻落とした。

……ザフトでは捕虜の扱いについては揉めていた。現場では血のバレンタインの報復として殺戮していたが軍人出身のザフト兵士は捕虜を幾人も確保していた。既にメビウスから脱出した輩は放置するにしても撃墜する時には葬れるなら葬れとクルーゼ達は上層部から言われていた。

 

「現在の戦果はMA32機に戦艦五隻。……ネビュラ勲章は確実だな。味方の援護をしながら戦果を稼ぐ方が良いかも知れない」

クルーゼは現状の戦果からこれ以上はもう焦る事もない。これで良いだろうと判断した。

母艦であるナスカ級高速戦闘艦ヴェサリウスに戻って補給を受けると部下たちにも伝えた。

部下たちも大分疲弊しているようであった。後一隻と少しで十分だとクルーゼは新しい目標を定めた。部下と周囲の援護をしながらあわよくば狙う程度で収める事に決めた。

 

 

ザフト側の優れた兵器群とコーディネイターの兵士達の活躍により戦場は全体的には優勢であったが、まだ地球連合軍の抵抗は続いていた。

そして、場違い過ぎる事で後に兵士たちの間で話題になる例の”アレ”が公に晒されることになる。

 

「……何だ、アレは?」

クルーゼは戦場にいる事を忘れて一瞬素でツッコんだ。世界樹からコロニーと思わしき物が分離していた。

 

『こちらザナドゥ芸術部門と中に居るグレイブヤードの民間人様である!』

糞コラを顔に貼り付けただけの老人達がオープンチャンネルで喧しく叫んでいた。

コロニーには場にそぐわないデコレーションが施されていた。

 

「『ゲーム一筋8周年』だと!?……こんな事をするとは……まさか、コイツら本物か!?」

クルーゼはザナドゥのゲーム開発部が世界樹にあったのかと衝撃を受けていた。

何からツッコんだら良いかわからず、困惑していた部下達はそこをツッコむのかよと思った。

クルーゼは動揺し、咄嗟に敵が出てきた場合の部下たちへの通信を開いていた。

 

「……すまない。今のはなんでもない」

クルーゼは部下たちに素で謝罪した。

現状、混乱しっぱなしだが”アレ”に敵対行為をするわけではないと暗に伝えてもいた。

 

『退け、兵士達よ!我々は白旗を上げているのだぞ!』

相変わらずオープンチャンネルでクソゲー開発部は主張していた。

 

「巫山戯るな!!」

思わずザフトの若い兵士が機銃を撃つ。今は命の取り合いをしている場である。

……攻撃するのはともかくとして全ての人々を代表して彼は言った。

だが、機銃は全く効果がなかった。……グレイブヤードにはアルカとは比較にならない異様な装甲が施されていた。

 

『ええい……か弱い老人達の終の棲家を撃ちよってからに。ちょっと住処がヤバいのでどっか行くだけだ。邪魔をするな!!』

『そうだそうだ!勝手に人ん家で戦争しやがって!……グレイブヤードの独立資金とかメチャクチャ高かったんだぞ、テメェら!』

雑コラで顔を隠した老人達と若い集団がザフトの兵士達を罵倒した。

……か弱い老人達というが下手な戦艦なら沈むジンの機銃で撃たれたのに無傷で彼らは平然とキレていた。

 

『音楽配信会社ばかり儲けやがって!……畜生。この戦争も配信会社が原因なんだろう!?』

ザナドゥ芸術部門は血涙を流したクソコラの二頭身キャラをオープンチャンネルで流した。

呆然とする両軍の兵士達が居る戦場からグレイブヤードは遠くへと離れて行った。

 

「フフ……」

クルーゼはこれも彼らなりの脱出の為の作戦だと理解した。

……クルーゼはあれらのゲームを作る者達らしいなと思わず笑ってしまっていた。

 

「はぁー……」

クルーゼはため息を吐いて戦争再開の為に無反動砲の最後の一発を空に放った。

それが合図となり、何事もなかったかのように、地獄の戦争が再開された。

奇しくも、生きて帰ったら絶対ザナドゥのクソゲー開発部にクレームを入れてやると地球連合軍もザフトも同じ思いを頭の片隅に放り投げて戦い始めていた。

 

 

……この激戦で捕虜になった双方の陣営では、あのクソゲー会社にだけは絶対にクレームを入れてくれと自分達を捕らえた軍に申し入れる程、話題になった。

何故かザナドゥ芸術部門、グレイブヤードは世界樹攻防戦において共通の敵のような扱いをされていた。

当然だが民間人しか居ないコロニーを本気で攻め滅ぼしたい訳ではない。……滅びろ、馬鹿野郎と皆思っていたが。

 

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