極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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閑話 ザナドゥ審査会クソゲー事件会議

コズミック・イラ70年2月22日、世界樹にて地球連合軍とザフトの攻防戦が開始。ほぼ同時刻に世界各地の観測施設で戦闘が観測された。

 

ザナドゥでは緊急の審査会が開かれていた。場所が場所だけに参加よりも避難する者も居た。

現場で戦うカナードとも通信は出来ない。それ以外は出来る限り参加していた。

ベラは私の後ろで控えている。今回は特に何か言うつもりはないらしい。

 

「実は世界樹にあるコロニー、グレイブヤードにザナドゥの支部があるんだ」

私は皆に伏せていた事実を明かした。知っているのは初期メンバーくらいである。

ザナドゥ本部の長官、No.2のティモテ・エペーすら知らない。

 

「……クソゲー開発部でしょ。多分」

赤道連合支部長のフェイが勘付いて答えを言ってしまった。

ザナドゥ芸術部門に対してクソゲー開発部って酷い蔑称だと思う。

 

「……ああ、道理で毎回会社が潰れても即座に復活する訳ですな」

ティモテがクソゲー開発部という蔑称で納得した。

前からティモテは何処にザナドゥの芸術部門の本拠地があるのか疑問に思っていた。

 

「…………」

ヴィクトリア・シュティーフェルは沈黙していた。

ヴィクトリアの場合、下手に言うとクライン派との秘密協定に抵触すると察しているのだろう。

シーゲルやラクスと直接会ったのもグレイブヤードであった。その場にはヴィクトリアも居た。

 

「クソゲー開発部ってよりにもよって其処にあったのね……」

ミケランジェロが何か意味深な言葉を述べてきた。

……私は調べ尽くしたと思っていたが未だ厄ネタがあるのだろうか、若しくは既に把握している事か。

私が現状、彼処で把握しているのはヤバい人工知能とヤバい剣術、5人の暴走爺、他多数……分からない事を考えても仕様が無いので後で考える事にした。

今回は丁度、グレイブヤード在住の幹部も参加していた。世界樹に居るので戦闘の余波で死なないかとセトナから心配されていた。

 

「クシー。私、コレに参加する必要ある?個人チャットじゃ駄目?もう人が多過ぎて苦しい。それに今滅茶苦茶忙しいんですけど」

ザナドゥ芸術部門・代表のアカネが約2年振りに審査会に顔を出した。

奥に引っ込んで怪獣のフィギュアを作って遊んでいる娘である。

芸術部門は面倒臭いから基本的に誰も代表に成りたがらない。当然のように代表のアカネは審査会に対して遣る気が無い。言った事は遣ってくれるので問題ない。

 

「今、君ん家の話をしているのだから。準備はもう終わったと蘊の爺様から聞いているんだが?」

私はアカネ以外の連絡手段を持っていた。アイツ、働かねぇから追い出せないかと蘊・奥に愚痴を溢されていた。

アカネは最低限の働きで最高のクォリティを提出してくるタイプの芸術家である。私がフォローしたら、只の浪費家ではないかとツッコまれた。

 

「ヤダ!鍛錬ジジイと私、どっちを信頼しているの!?」

アカネが糞面倒臭い発言をした。……ヴィクトリア達が面倒になるから止めろ。

 

「君の所のジジイ。……信頼される要素あった?」

私は正直に応えた。誠意ある回答である。

 

「さて、戦争を知らない若造共。眼の前で戦争されたら流石に覚めろ」

イゼルカントが私とアカネのグダグダ具合を見て言葉を述べた。

70年前の再構築戦争で活躍した猛者である。

 

「ボケた爺さんに当時の武器を持たせたらシャンとしたとかいう話があったんだよね」

アカネがイゼルカントを茶化す。話をぶった切られたので少しばかり嫌味を飛ばしていた。

 

「……話を始めましょう。人類の未来が掛かっているのです。皆さんが集まるのが久し振りなのも分かりますが」

マーシャンの少女セトナ・ウィンタースが場を収めた。火星人だそうである。カナードより年上であるそうだが幼い容姿である。私も深くは追求していない。

火星移住支援の第一人者であるイゼルカントも今の火星は知らないというので分からない。

どういう存在なのか知らないが、ミケランジェロの下で暇していたので私が勧誘していた。

審査会の権限は彼女がザナドゥを辞めてマーズコロニー群に帰ってもオブザーバーとしてならば有効であるので好きにして良いと伝えてある。

 

「もう少し数を絞るべきだったかな?皆、下手したら地球もプラントも滅ぶ瀬戸際なのを忘れずに」

私は招集した人員を選ぶべきだったかと少し後悔した。

だが、世界樹を陥落させた後、その足で地球全土に核動力停止や通信網全て断絶も有り得た。

 

「クシーの仮説にさ、中性子阻害云々とかあったけど。本当だったんだね、アレってさ」

アカネがサラッと問題発言をした。アカネは現在世界樹、グレイブヤードに居る。

私も直に体験していない。予測であった。だが、核を封じる手段がやっぱりあったと確信出来た。

核融合まで阻害されないのは安心して良いのか分からない。現状、宇宙戦艦に核融合エンジンはあれども核融合発電は無い。

 

「自分で指示していてあれだけど観測出来たのは果たして良かったかどうか……」

私は少し疲れた声を出してしまった。周りが見ているので気を引き締めた。

……核ミサイルと核分裂型発電だけを狙い撃ちに出来る兵器が実在した。地球全土で使われれば億が死ぬ兵器の存在が確定した。

 

「本当か!?」

ティモテがアカネの発言に飛び付いた。相当驚いている。

私は前からティモテ達にも言っていたのだが実際確認されたら別である。

 

「本当、本当。核動力もそうなんだけどさ、私だけ旧規格で対応しているから通信速度が遅いんだ」

アカネは私が以前、芸術部門でゲーム通信が使えなくなるという課題に取り組んでいたと皆に明かした。それもザナドゥの新規事業を始める際に言っていたので皆分かっている。

だが、実際にデータ化されるのは皆も初めてである。

 

「効果範囲にグレイブヤードも入ったのか。……これ結局なんて名前の兵器何だろうな?」

私はグレイブヤードを核動力ではなくバッテリー式にしていて良かったと少しホッとした。

……グレイブヤードを包み込んでいる陽電子リフレクターはバッテリー式なので現段階では永続的に稼働する事は出来ない。太陽光発電システム等で太陽系内ならば使用し続けても賄える計算だが、核動力が使えないのは惜しい。……核動力が使えるようにする開発もあるだろう。その更に先の対策もあるだろう。対策を考えるのが面倒臭い。

通信阻害のデータはザフト側の実験を偶々観測したものである。再現不可だったが、現象を実際に確認出来るのは危機感の共有に大きかった。

 

「皆もこっちの状況を確認してね?……生の観測データだよ。これは危ない爺さん五人が主体で芸術部門の皆と協力して通信は出来ているんだけど」

アカネはそう言って現在の通信速度を示す数値を提示してきた。

……此方でも確認するが確かにアカネからの通信速度は低下していた。

 

「核動力戦艦は停止しただろう。……どうなっている?」

私は世界樹に居て目視で確認出来る筈のアカネに尋ねた。

戦場でチャフが撒かれていた。通常の通信は阻害されている。

私や開発部達が設計し、アカネも現地で作った特殊通信しか使えない。

 

「思ったよりも抵抗が凄いね。……艦をマニュアル操作でもしているのかな?動かなくなった艦を囮にして戦っている」

アカネは分析した結果を報告してきた。流石に現地に居ても戦争の詳細は分からないようである。

 

「……地球連合軍側で戦っているMS部隊は居るか?」

私は確実に居るであろう地球連合軍のMS部隊について尋ねた。

核動力艦隊を囮にしてまで戦うならば秘匿していたMS部隊を活用する筈である。

 

「MS?……地球連合軍側で戦ってそうなジンは居ないよ。ひょっとしてカナードちゃんに持たせたの?」

アカネが不思議そうな顔で私に尋ね返してきた。……未だ製造途中なので残念ながらカナードには無い。

 

「それは可笑しい事なのですか?」

セトナが私に尋ねてきた。マーシャンの彼女からすればザフトの兵器として有名なMSジンが地球連合軍に居るのはない。地球連合軍の公式でもないので疑問なのだろう。

 

「クシーは地球連合軍、大西洋連邦がコーディネイターを徴兵していると考えていました。鹵獲したジンが編成した地球連合軍の部隊があっても可笑しくないと……」

ティモテがセトナ達に解説する。私の予測なので外れる事もあるだろう。だが、違和感があった私は考えた。

 

そして、気が付いた。愚かな事を仕出かす輩が一件だけ該当した。

 

「……若しかして第3艦隊か!?」

私は思わず叫んだ。馬鹿じゃないのか、アイツら。

 

「補足するけど、第3艦隊はブルーコスモスの過激派に従う連中が多い艦隊よ。まぁ、でも各所から精鋭を集めた艦隊だから全部が全部そうじゃないけど」

ミケランジェロが私の発言に補足した。今でこそザナドゥの医薬学も担当しているが、元が情報屋みたいな事をしていただけにこういう所は本当に優秀であった。

 

「つまり、アレか。あの馬鹿共にMS部隊の権限を握らせている。勝てないにしろ、防衛戦で有利を取れる上に盾のある環境で機動力のあるMS。その部隊を使わない……馬鹿なのか!彼奴等は!?」

イゼルカントがミケランジェロと私の反応から推論して言った。自分の発言を理解してイゼルカントは叫んだ。……そうである。真面目にこういう事をするのは馬鹿でしかない。

 

「大丈夫ですか?」

ヴィクトリアは余りの衝撃により噎せたイゼルカントを気付かった。実際、憤死しても可笑しくない年齢である。

 

「ケホッ……ケホッ……大丈夫だ、心配を掛けた。おい、小僧。無理だと分かっていて言うぞ。……何とか出来んか?」

イゼルカントは私に無茶苦茶を言ってきた。無理だと分かっていると前置きしている辺り相当飲み込むのに必死である。

 

「……此処まで愚かだと事後の対策しか取れない。連絡を取ってみるが9割9分間に合わない」

私はイゼルカントの発言をなるべく尊重した。電話を取った。

 

「もしもし。私だ、ザナドゥ代表・クシーだ。君には済まない事を言う。……盟主のアズラエルを今直ぐ出さないと君は失業する事になる」

私はアズラエル家の邸宅に電話を掛けた。審査会の最中であるが馬鹿共の首魁に何とかさせる。

 

「これ、俺が聞いて大丈夫なんだろうか?」

審査会のメンバーの一人が隣に話し掛けていた。彼は私がアズラエルに直接コネがあると知らない。

 

「我らがザナドゥの代表だぞ。誰と繋がっていても可笑しくない。というか知らなかったのか、お前」

もう一人がツッコんだ。最早ブルーコスモスの一派であるという事実を忘れている仲間にツッコんだ。

 

「貴方達、取り敢えず黙りなさい。クシーがこのまま聞かせるみたいだから」

ミケランジェロが私がこのまま公開でやっている意図を察した。そして、彼は騒つく一部の面子を黙らせた。

 

 

『もしもし、ムルタ・アズラエルですが。……本当にザナドゥ代表ですかね?どの、なんの件ですか?……』

アズラエルの声は何故か焦燥しきっていた。

どちらにせよ輸送艦隊の第13艦隊とカナード達を戦場にブチ込んだ件は後で搾り取るので問題ない。

 

「第3艦隊にMS部隊居るでしょう?今、命令出来る状況ならばMS部隊を使えと命じて下さい。今直ぐ使えば世界樹攻防戦にギリギリ勝てます。今直ぐ使えないなら地球連合軍が壊滅します」

私はブルーコスモスの盟主・アズラエルに訴えた。……世界樹で地球連合軍が負ければ危ないのはアズラエルも同じだった。

ギリギリ勝てるというのは希望込みだが損耗率が全然違う。

 

『……はぁ!?何でそれを……じゃない。そういう奴だよね、キミは』

アズラエルは驚きつつも、一周回って落ち着いて話し始めた。

……アズラエルという人間は結論が事実ならば仮定をすっ飛ばして話が出来る。私はアズラエルを敢えて驚かせ過ぎるようにぶち撒けていた。

 

『……若しも、若しもですよ?そういう部隊があれば直ぐに使えと命じますよ。大体、世界樹で戦闘しているのに何でそんな事が分か……』

アズラエルが糞みたいな事実を言って来た。私は無意味な電話を切った。

 

「済まん、爺さん。無理だった」

私はイゼルカントに謝罪した。アズラエルは戦争に介入出来る直通ラインを持っていない。然も、これは完全に現場の独断であった。

 

「……アズラエルの今の当主の坊主は本業は商人だからな?小僧みたいに出来たら苦労しないわ」

イゼルカントは私の謝罪を一蹴した。アズラエルにそんな能力は無いと断言した。

 

「……これってアレですよね?私でも分かりましたが、盟主は使える者は使えって命じているって事ですよね?」

ヴィクトリアはブルーコスモス盟主・アズラエルの言葉の裏を読み解いて言った。

彼女は南アメリカ合衆国での現地の集落との遣り取りも多く、交渉に長けるようになっていた。

 

「(……この後からアズラエルが前に出て来るようになるのってこういう事だったのね)」

ミケランジェロが何か未来を見ているような独り言を溢した。絶妙に聞き取れない。

 

「地球連合軍敗北が確定になった。なってしまった。もう間に合わない。……二次被害への対応マニュアルは皆読んだよな?」

私は元々負けるにしても酷すぎる内情に二次対策を使用する事にした。最悪のケースの場合、私情全開で被害を減らす方策であった。

 

「……カナード達には申し訳ないけどマニュアルに基付いて行動します。マニュアルにあったように世界樹のコロニー分離で騒動を引き起こして、この戦争に冷水掛けます。この際だからぶっちゃけると芸術部門が双方に喧嘩を売ります」

私は審査会で提案をした。……ザナドゥのシンパやカナード達には多少申し訳ないが仕方が無い。

 

「え、クソゲー開発部が?」「クソゲーが?」「よりにもよって”アレ”が担当するの!?」「いや、グレイブヤードって時点で察していたけどさ……」

……賛成多数のようなので我ながら素晴らしいアイディアだった。

 

「反対は無いようなので可決。よし、遣れアカネ」

私はこの日の為にマナー講座を受講していた。マナーに反する事のない脱出である。

 

「OK!というか、どっちにしろ脱出不可避なんだから仕方がないよね?」

アカネは私の許可に喜び勇んで了承した。実際、世界樹崩壊前に出て行くので変わらない。

今やれば戦争が多少はマシになる。

 

この規模の脱出であればカナード達も私の合図に気付く。……戦争中だが私と通信出来るようにしてくれる。

……また地獄みたいな事をして貰う事になる。本当に申し訳ないのだが、権利義務のある審査員に成るとはこういう事であった。

因みにオブザーバーにはそのような要請は無い。代わりにザナドゥからの恩恵も薄い。

 

この時の私的にはセトナが帰ったりした場合のお土産くらいの感覚であった。

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