極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第42話 世界樹攻防戦④ 暗躍する者と覚悟する者達

コズミック・イラ70年2月22日、世界樹攻防戦の終盤、第3艦隊・司令官であるセオドア准将がザフトから鹵獲したMSで構成されたジン部隊を放出する少し前。

 

アガメムノン級宇宙母艦オルテュギアの事実上の艦長にして、傭兵部隊Xの隊長でもあるカナード・パルスは通信士により、世界樹からクソゲー……グレイブヤードが分離したとの報告を受けた。

カナードはこれまでは努力義務だったが、審査会の一員として義務となった指令を確認した。

……地球連合軍として働いているので無理ならば仕方が無いと言われているので大差ない。

だが、カナードとしたら審査員に成って初めての任務となっていた。

 

「オルテュギアを移動させられないか?出来れば地球が見える位置取り……この辺りだ」

カナードは少し考えた末にオルテュギアの進路を指示した。

カナードは審査員の特権を行使する事にした。……オルテュギアの乗組員達にザナドゥとの通信を聞かせる事にする。

急な事だが、それでも事実上の第13艦隊の分隊長となっているカナードに突然メビウスで飛び出されるよりはマシであった。

 

『捕虜達の反応から推測すると迂回する艦はもう殆ど居ないと思われるけど……この場所にオルテュギアが居れば囮になるかも知れないわ』

ドレイク級護衛艦ナイアデス・艦長であるマリーヌ少佐はカナードの突然の行動に意味を持たせた。

カナード親衛隊『孤高の姫騎士』派閥の長であるマリーヌ少佐はカナードを囮にする事になるという事実に僅かに葛藤したものの思い付いてしまったので進言していた。

 

「……ウチの部隊の偵察型メビウスを近辺の小天体に隠して配置しましょう」

傭兵部隊Xとユーラシア連邦の連携をスムーズにする為にユーラシア連邦軍の正規の軍人と成り、引き続き傭兵部隊Xのカナード・パルス隊長の副官も勤めているメリオル・ピスティス大尉はマリーヌ少佐に同調した。

そして、彼女はクシーから土産に持たされた改良型メビウスの1つである索敵能力を特化させた偵察型メビウスを配置する事を提案した。

クシーが輸送の専門家であるペルミノフ少将に向けて世界樹が崩壊した後を想定して、輸送網を再構築する為に持たせた代物である。

アルカと組み合わせれば物資運搬がスムーズになる。

 

「本来は後方支援用とか言っていたけどこういう防衛戦だと凄い使える。……推しの推しだけあって凄いなぁ」

マッド大尉は偵察型メビウスに関して感想を述べた。僅かながら嫉妬するが嫉妬の力で強くなって来たのがマッド大尉の生き方である。

こうした負の感情を有意義な方向に変換出来る脂質……資質を持つマッド大尉はテロリスト等に走らず、最下層から士官に成り上がる事が出来ていた。

 

『完成したのは数日前、此処まで運用出来るのはウチだからですよ』

傭兵部隊Xのウィッグは通信で会議している面々にツッコんだ。

パイロットであるウィッグは既にバッテリー等を交換して偵察型メビウスに乗り込んでいた。

偵察型メビウスは特化型であったが故にナチュラルのパイロット達が扱う為には追加で数時間の訓練が必要だった。

傭兵部隊Xの傭兵達、コーディネイターだと其処までは必要ではなく、直ぐに理解出来た。

 

……この分担が簡単に出来るのは彼らだからこそであり、地球連合軍としては極めて異色の軍隊だった。第3艦隊とは比較するのも烏滸がましい程に。

 

 

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カナードがザナドゥの審査員としての任務を現在の地球連合軍・第13艦隊の動きと連動し、オルテュギアが囮になる作戦を急遽作成した。

 

『……済まないが、私のジンを自爆させても良いか?そうでなければ無駄だろうが抵抗させて貰う』

オルテュギアの囮に引っ掛かったジンのパイロットであるアローは投降の呼び掛けにそう応えた。

オルテュギアに向かって来たアローの操るジンをナイアデスとメビウスで囲んでいた。

 

「構いません。ウチも積む余裕は……無い訳ではないけれども気持ちは分かるわ」

マリーヌ少佐はアローの提案に同意した。状態の良いジンを鹵獲出来ないのはやや惜しいが下手に争うよりもその方が良い。

 

『助かるよ……。母艦が墜ちた時は敵討ちしてやるつもりだったが。何だかそういう気も落ち着いたわ』

自身の母艦が沈んで最後の賭けに出たザフト兵アローは捕虜となる事を選択した。

アローは現在16歳、士官アカデミー卒業生であった。

……敵の配慮を察してアローは安堵していた。敵も人間だとアローは感じていた。

プラントを守る為にザフトに入隊したアローは士官アカデミーの偏見に満ちた空気に大分染まっていたと自覚した。ジンを自爆させたアローはナイアデスに収容された。

 

「少し、位置取りを変えましょう。軽い戦闘はあった訳だし、擬態がバレる可能性を減らしたいわ」

マリーヌ少佐はザナドゥのシンパ達に自分達が移動する事を告げた。

ザフトの艦隊の残りが未だ居る筈なので引き続き警戒していた。

 

 

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オルテュギアではクシーからの通信が入っていた。乗組員等にザナドゥとの繋がりが漏れるが今更である。

戦場で民間の組織人と通信するという滅茶苦茶はバレたら叱責ものであるが、活躍で誤魔化せなくはない。

 

『カナード、そしてオルテュギアの面々には申し訳ない。私はこれから地球連合軍の本隊に関しての報告をするが、何故私が把握しているかはグレイブヤードの件で察してくれ』

ザナドゥ代表はカナードがオルテュギアの面々を巻き込んだ事を気にせずに言い切った。

彼はグレイブヤードの件は自分が遣りましたと言っているが、直接見た訳ではない彼らは其処まで動揺はしなかった。

……直接見ていたら一発ぶん殴らせろくらい言っても可笑しくない。

 

『……先ず、第3艦隊がこれから遣らかすであろう所業について話そうか。端的に言うと敵の遊軍を止めているであろう君達第13艦隊はこのままだと撤退を知らされずに戦場に置き去りにされかねない』

クシーはスラスラとヤバい事を言い出し始めた。

……第3艦隊はカナード達やザナドゥシンパの居る第13艦隊を良く思っていない。置き去りにされるというのは何となくしっくり来てしまった。

 

『今直ぐこのデータをペルミノフ少将に送って欲しい。……主力に目を起き、判断してくれ』

クシーはオルテュギアにデータを送信した。簡単な謝辞の挨拶を済ませてクシーは連絡を断った。

カナード達はその後も囮作戦を緩く継続しながら、ペルミノフ少将にデータを送った。

クシーと直接会話したカナード達も何時でも撤退出来るように準備をし始めていた。同時に撤退支援、撤退戦の用意もしていた。

第3艦隊はMS部隊を死蔵している事、それを自分達が逃げる為に使い潰す気だろう事、逃げるように撤退する筈である事等の内容はザナドゥのシンパ達は見るまでもなく察していた。……カナード達はクシーから地球連合軍が保有しているだろうMS部隊の仮定を前々から聞かされていた。

 

 

「『自分は戦場に居ないので推論でしかないのでペルミノフ少将の決断に期待する。少なく共早めに旧式艦隊は逃がすべきである。若し、マトモな軍人達を生かす為に撤退支援をするならば、地獄になるので覚悟しておいた方が良い』」

第13艦隊の司令官であるペルミノフ少将はカナードから送付された資料を読んだ。……実際、第3艦隊は不穏な動きを見せていた。

ペルミノフ少将は部下を生かす為に作戦を変更するか少し悩んだ。目は最前線の戦場においた。これ以上は迂回する艦隊を狩るのも難しいという口実でペルミノフ少将は撤退準備をし始めた。……それでも主力艦隊がマトモに撤退してくれる事を祈っていた。

 

だが、

「報告します!第3艦隊が撤退し始めました!」「報告します!第3艦隊はMS部隊を隠し持っていました!」

ペルミノフ少将は次々と来る、馬鹿な味方が遣らかした事についての報告を聞いた。

 

「丸で予言書を読んでいる気分だな。……鉄屑艦隊は直ぐに撤退。我々は撤退支援をする。別働隊……ザナドゥのシンパにも協力して貰うぞ」

ペルミノフ少将は覚悟を決めた。ペルミノフ少将のアガメムノン級宇宙母艦オズワルドは未だ兵装に余力があった。撤退戦は輸送任務で火力を放ちながら逃げるのと大体一緒だ。宇宙海賊と違う点は喰らえば死ぬ確立がやや高いだけ。

 

「はぁー……しかし、戦争って嫌だね。……この年になって若い頃の血が騒ぐとはな」

既に老齢のペルミノフ少将は若い頃の感覚に戻れるかと溜め息を吐いた。

 

ペルミノフ少将は味方を救う為の『輸送任務』に携わる事にした。

輸送のエキスパートが専門分野に携わるだけである。……ペルミノフ少将は何時もの気分で死地に赴く事にした。

 

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