極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ70年2月22日に起きた世界樹攻防戦はザフト側が勝利、宇宙コロニー群である世界樹は崩壊し、デブリ・ベルトの塵と化した。
この戦いでは、地球連合軍とザフト間の戦争の長期化が確定し、同時に様々な問題が表面化した。
マルキオ導師、ザナドゥ代表の連名で仲介されたコルシカ条約等の捕虜の取り決め等は有名である。
又、世界樹攻防戦だけでなくこれまでの緒戦で発生した大量のスペースデブリが問題となっていた。
スペースデブリを放置すれば地球、プラント、その他の陣営に多大な被害を与える事になる。既に墜落や激突等で数々の問題が発生していた。
主に民間の通信衛星等がデブリの衝突で破損する事故が多発している。
特に最悪だったのは地球に衝突する寸前だった小規模コロニーサイズのデブリであった。
後に発覚するザフトの戦略兵器以前において地球最大の危機となったが、ザナドゥ芸術部門が管理するコロニー、グレイブヤードの謎兵器『陽電子衝撃砲』によってそのデブリは破壊された。
……グレイブヤードは移動式の宇宙要塞であるとして地球連合軍・ザフトの双方から非難された。
グレイブヤードが分離独立出来る事も秘匿されていたが、分離して早々に隠し持っていた只の民間コロニーが保有して良いレベルではない戦略兵器が使用された。大規模なデブリは塵となり、人類の危機は未然に防せがれた。
結果だけ見れば英雄的行為である。地球連合以外の諸国からはザナドゥ及びグレイブヤードへの擁護の声もあったが、流石に発覚した兵器の火力が不味かった。
ザナドゥ芸術部門の厄ネタの一つ、五人の暴走爺が作った陽電子衝撃砲は地球連合軍やザフトが監視する中で撤去された。
「何が地球連合軍の野蛮な核だ!?あんな馬鹿げた火力を保有するゲーム会社があってたまるか!?」
ブルーコスモスの盟主であるムルタ・アズラエルはザナドゥ代表を公式で非難した。
……ザフトとしてもあんな火砲を持った移動式宇宙要塞は地球侵略計画に差し障る程の脅威だった。不本意ではあるがザフトも同調して非難した。
ザナドゥ芸術部門の厄ネタである暴走爺達。彼らが作成して見せた火砲は小規模コロニーを消し飛ばせる火力で危険過ぎた。ザナドゥ代表は軍事産業への技術提供を将来に渡って拒絶すると約束し、撤去する事で合意した。
「……偶々進路上の障害物に使っただけであり、グレイブヤードの自衛権の行使の範疇だ。そもそも彼らの居住地で発生した世界樹攻防戦ですら使用していない」
ザナドゥ代表・クシーはグレイブヤードの行為を擁護した。彼は非難されてばかりで不服であった。
……地球連合以外の中立国もコロニーサイズのデブリが墜ちて来た場合に想定された被害からグレイブヤードを擁護した。流石に遣り過ぎとは思われているが。
「というかアレを破壊するのは地球連合軍やザフトの仕事だろう?代理人の廃品回収業者への取り決めとかしていないから発生した問題だ」
クシーは戦闘で発生した余波の片付けをしない地球連合軍やザフトを非難した。
撤去する暇が無いなら廃品回収業者にでも任せていればこんな事にはならないと声明を出した。
「ゲーム会社に遣らせるな。私達がアレを破壊してメリットあったか?……無いよな?」
クシーは小規模のコロニーサイズのデブリを破壊した事で損しかしていない事実を述べた。
ザナドゥはグレイブヤードを改造し、宇宙要塞化したと非難されていた。少なく共、ゲーム会社が保有して良い火力ではない。
移動式の宇宙要塞と化したグレイブヤードが持つ能力は各所から警戒されるには十分だった。
「次又遣ろうとしたら怒られるし、本当に何も出来なくなったじゃないか。……いや、今のは違う。ゴメン、今のは無しで」
クシーは本気で憤慨して余計な事を口走った。クシーの発言はジョークとして聞かなかった事にされた。
……聞かなかった事にしないと真面目に面倒臭くなるので、皆が大凡把握している公然の秘密となった。
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地球連合とプラントに戦争を止めろと主張するザナドゥの所業。
地球連合とプラントはスペースデブリ問題を放置すると又余計な事でザナドゥが暴走して何かしら遣りかねないと共通認識を抱いた事により話が進んだ。
ザナドゥに第二のグレイブヤードを作らせるような口実を作らせない為にも早々にジャンク屋組合は存在を認められた。
廃品回収業者である彼らジャンク屋は個人事業主であったが徒党を組み、自分達の権利を主張し出していた。
ジャンク屋組合はザナドゥが他者の暴走を止める為に他で暴走する事を防ぐ為に、必要悪として認可された。
だが、ジャンク屋組合はジャンク屋組合で数々の問題を引き起こす事になるが未だ問題視されていなかった。
他方で世界樹攻防戦の後、地球連合軍において戦いで生き残った高級将校達が集まり、会議を開いていた。
当然ながら、ジャンク屋組合という新しい組織に関しての話題にも触れられていた。
「奴らの本質は宇宙海賊と其処まで変わらんぞ。……海賊よりはロマンがあるので気に入っているが」
第13艦隊、『鉄屑艦隊・提督』ペルミノフ少将はジャンク屋組合について懸念を溢した。
輸送艦隊を指揮していたペルミノフ少将からすれば個人事業主で好き勝手するジャンク屋は隙があれば盗みを働く輩であった。
「ルールがあるからって制御出来る輩ではないのは分かります」
同艦隊所属のスズキ大佐はペルミノフ少将の発言に同意した。
輸送艦隊としてはジャンク屋を必要悪として目を瞑って来ていた。そのジャンク屋達が堂々と振る舞うようになれば絶対何か遣らかす。
別に鉄屑艦隊的には嫌いではないのだが、迷惑というのが正直な感想だった。
「……其処までですか?私としては下手にザナドゥが叩かれるよりは良い話だと思うのですが」
未だ第1艦隊所属のノット大佐は二人の手厳しい反応に少し驚きつつ言葉を述べた。
第1艦隊・司令官にして地球連合軍の総司令官であるウィルキンソン中将は第3艦隊・司令官であるセオドア准将の所為で戦死された。
旗艦であるアガメムノン級宇宙母艦『スペンサー』に残り、殿を務めたウィルキンソン中将は見事な戦死を遂げていた。
「その名前を口に出すな。……一応、誰が聞いているか分からんのだぞ?」
第2艦隊・司令官であるミハエル少将はノット大佐に軽く注意した。
第3艦隊は良くも悪くも戦力を温存しており、結果的にブルーコスモス・過激派は勢力を増してしまっていた。
ミハエル少将は第1、第2艦隊のマトモな生き残りを集めてこれ以上好きにさせない為の派閥を超えた同盟を結成していた。
……第3艦隊でもセオドア准将の撤退命令を無視して戦場に残ったマトモな軍人達も居たが命令違反をしたとして閑職に飛ばされていた。
「それは私に喧嘩を売っているのか?」「カナードちゃん、不味いって!?」
順に傭兵部隊X・隊長カナードが剣呑な雰囲気を放ち、マッド少佐が押し留めた。
……撤退戦により大尉から少佐に昇格したマッド少佐は流石に相手が不味いと宥めた。
「……申し訳ない。頭に血が登った」
カナードは審査員に選ばれていた。ザナドゥの看板を背負っている自覚により少しカッとなったと反省した。
「……いや、私も部下達も救われた身である。今の言い方に不快を感じるのも最もだ」
ミハエル少将は言葉を撤回した。ミハエル少将はそもそもザナドゥのシンパではない。というか元々はザナドゥを余り良くは思っていなかった。
故に前々からの癖でミハエル少将は言葉に棘があった。ザナドゥの幹部であり、『審査会』の一員であるカナード・パルスが怒りを感じるのを理解し、自分を納得させた。
……今、ザナドゥとの関係が険悪になっても利するのはセオドアのクソ野郎である。未だ遥かにマシなザナドゥと関係を構築したかった。
「私の部下達がマトモに活躍出来ずに徒に戦死して行った原因のクソ野郎の好き勝手にはさせない。……その点は世界樹攻防戦で共に戦った皆が一致していると思います」
第3艦隊の大問題、MS部隊の隊長であったジャン・キャリー少尉はミハエル少将を擁護しつつ、カナードを宥めるように言った。キャリー少尉は自分がこの場に一番相応しくないと思っていた。
傭兵であるカナードは兎も角、最低佐官以上が集まるこの場でたった一人の尉官であるキャリー少尉は浮いていた。
だが、この場に居る面々はコーディネイターである自分の部下達の保護の為に動いてくれており、私の意見も聞きたいとの事で呼ばれていた。
「君等には命懸けで時間を稼いで貰った。評価しないのは地球連合の政治だ。現場で戦った我らはMSの脅威と味方になった頼もしさを十分以上に理解している」
ペルミノフ少将はキャリー少尉を労るように声を掛けた。
……本当にキャリー少尉達の命懸けの特攻のお陰でこの面々を生き残らせたまま、撤退が出来ていた。
大西洋連邦の所業に関しては真っ当な軍人であるペルミノフ少将は憤慨したものの、その目論見自体はキャリー少尉達の活躍である意味で納得出来てしまった。
……核動力戦艦の機能停止時点でMS部隊を投入出来ていれば勝てていたかもしれない。
「……我々、傭兵部隊XもMSを運用出来ると良いのだが……」
カナードはペルミノフ少将の反応を見て言葉を漏らした。
クシーの作成したメビウス等に決して不満はないのだが、自分達もMSがあればもっと活躍出来たと年相応の感情が出ていた。
「……尊すぎて死ぬ。真面目な会議なのにちょっと待って。本当に死ぬ」
マッド少佐はカナードのいじらしい仕草から感情を察し、本気で死に掛けていた。
MSを推し活したいが、流石にそんな物は地球連合軍には無い。
……鹵獲したジンを白く塗って使っている部隊を運用しているキャリー少尉の扱いは極めて不安定であった。
「確かに可愛い……じゃない!歓談も良いが真面目に話を戻すぞ」
第1艦隊所属のウラービー少佐は同性のカナードを可愛いと思ったが、我に返った。
精強なる第1艦隊の生き残りとして僅かだが、揺らいだ。……ザナドゥの罠かと自身を叱責した。
「この集まりが軍内に居るブルーコスモス・過激派の連中を牽制する為の同盟である事を確認したい。……キャリー少尉の部隊はザナドゥ代表が何とかするというが本当に出来るのか、カナード?」
ウラービー少佐はカナードに確認した。大事な事だった。
ザナドゥ代表がどれ程の事が出来るのか第1、第2艦隊の生き残りも、何ならペルミノフ少将も知らない。地球連合誕生から此処までの期間が短過ぎた。
キャリー少尉曰く、自分の部隊の大半は未だ素人だと言うが死線を潜り抜けた生き残りだ。このまま地球連合軍内で死蔵させたくない。ザナドゥ代表が何とか出来るなら何とかして欲しい。
「……大西洋連邦の大統領やブルーコスモスの盟主を脅……頼んで何とかするとザナドゥ代表から連絡がありました。……カナードちゃん、これボクの聞き間違いじゃないよね?」
マッド少佐はウラービー少佐の問に応えた。……カナードが言うとザナドゥと地球連合内の政治的な意味で問題になるのでマッド少佐が応えていた。
だが、一国の大統領や一応はブルーコスモスの構成組織であるザナドゥの代表は自分の所のボスを脅して来ると平然と言っていた。……クシーの滅茶苦茶な発言に慣れていないマッド少佐はカナードに確認していた。
「…………」
カナードは沈黙した。クシーなら間違いなく言うし、マッド少佐の聞き間違いではないので肯定したいが本当に肯定して良いか悩んだ。
カナードは審査会の一員としてザナドゥ全体のイメージを考えていた。その前ならば肯定していたが、流石に脅す相手が相手だった。
カナードは悩んだ末にマッド少佐の問いに対して軽く頷いた。クシーの事を思いやり、カナードは口に出さなかった。
第1艦隊所属のウラービー少佐はその少女らしい仕草を見て脳がグラついた。
マッド少佐は彼女から同胞の気配を感じ取り、会議が終わったらカナード親衛隊のパンフレットを渡そうと決めた。