極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
2月22日、世界樹攻防戦により発生した小規模コロニー規模のデブリが地球に墜ち掛けていた。
世界樹攻防戦で互いに痛手を負った地球連合軍・ザフトの両者共にデブリを見逃してしまっていた。
それだけで無く、地球や月の防衛システムも何故か機能不全となっていた。
あわや地球との衝突が避けられない大惨事になり掛けた。
他方、ザナドゥの審査会ではコロニー落とし寸前の様子を生中継で見ていた。
「防衛システムはどうなっている!機能不全?……バカなのか、アイツは!?」
ミケランジェロは凄まじい形相で外部と連絡を取っていた。何時もの余裕は無く隠す気も無い。……彼は激怒していた。
ザナドゥがこれまで取り組んで来たインフラ整備によって想定された人数が死なないからという理由で一族が暴走したとミケランジェロ……マティアスは察した。
「不味いわ……このままだと……」
ザナドゥが存在しない場合、最低十億人は死ぬ。マティアスはそれを防ごうとする友人に協力していた。
常識の範疇で行われて来た事業である。それを今更になって全て破壊する一族の暴挙にマティアスはブチ切れた。最早、自分含めた一族諸共自爆して責任を取るしかないと覚悟した。
だが、マティアス……ミケランジェロの悲痛な決意は彼の友人が仕出かしていた本気の無茶苦茶により一旦停止する事になる。
「大丈夫だ。……実は奥の手がある。グレイブヤードにはこの世界が本気でどうしようも無くなった場合に備えて開発した『陽電子衝撃砲』というものがあってだな……」
クシーは何かしようとするミケランジェロを止めた。本気で不味いので幹部にも隠していた秘密兵器の存在を暴露する事にした。
「それはあの程度のデブリ……というかコロニーくらいならば消し飛ばせる。最悪、戦争を止める脅しで使うつもりだったがもう隠すのも無理だ。皆にも今回使ったら一先ず解体すると約束しよう。……現状だと一発しか使えないからギリギリセーフ」
クシーは設計上は連射出来るが現状のテクノロジーだと一発しか使えない戦略兵器の存在を明かした。
……当然だが、グレイブヤードに隠し持っていた兵器の存在は審査会の面々も騒然となった。
「成る程、それくらいの火力じゃないと止められんか…………そんな訳無いだろう!騙されんぞ!ギリギリセーフでは無いわ!!加減しろ、馬鹿者!?」
イゼルカントは皆を代表してクシーにツッコんだ。加減しろとアカネを睨んだ。
『あー……あー、私聞こえない。やっぱり通信が悪いのかな?』
グレイブヤード在住のザナドゥ芸術部門・代表アカネは聞こえない振りをした。
アカネも何か遣っていると知っていたが、万が一にも使う事になった場合は責任は全てクシーが取るからというので聞き流していた。……そういう兵器だったのかと知り、ちょっと逃げた。
「ジジイ共、陽電子衝撃砲を準備しろ……オペレーション・メテオを阻止せよ!」
クシーは話を聞いていなかったと思われるアカネは後で叱る事を決意した。
もうコロニー落としの危機で既に陽電子衝撃砲の現場に居るであろう暴走爺に通信を繋いだ。
奥の手であったグレイブヤードの兵装陽電子衝撃砲の使用を許可した。
「聞いているのか!?遣って良いと言っているのだが、何時も勝手に暴走する癖に此処でビビってんじゃねぇぞ!!」
クシーは応答の無い爺五人にキレた。本気で地球の危機なので流石に何時もの余裕は無い。
……ミケランジェロの反応から推測して誰かが裏で意図が引いているとしか思えない。
然し、量子コンピュータが無いグレイブヤードは管理者気取りの物と思われるコンピュータウィルスを阻止出来る筈である。……クシーは脳内でこの後の行動計画を練り直していた。
そして、爺達の様子が映し出された。……奴らは既に動いていた。
『完全に消し飛ばすにはちと、威力が足りんな』『動力シリンダー内部のリミッターを外すしかあるまい』『暴走を止める為に他を暴走させるのは儂らが良く使う手じゃ』
グレイブヤードの暴走爺達はクシーの要望以上の火力を整備し始めていた。
……クシーはこの暴走爺達が余計な事を仕出かしたと察した。
彼らは想定される最大火力よりも更に上の火力に改良していた。今ならば一撃しか使えないので非常に惜しいと考えている。暴走爺達はコロニーサイズのデブリを塵一つ残さず遣るつもりだった。
「……これはどう考えても不味いのでは?」
ザナドゥ本部長官、No.2であるティモテ・エペーはクシーに尋ねた。
正直、大気圏で燃え尽きる程度の破壊でも良い筈である。クシーもその様に発言していた。
ティモテは陽電子衝撃砲の正確な火力は知らないが現場の爺達の暴走っぷりを見て引いた。
「……構わん!このままだと地球で数億人死に兼ねない。責任は私が取る。というか何とかするから早く遣らんか!?」
クシーは陽電子衝撃砲の威力はそのままでも十分だと知っているので叫んだ。
地球を掠める前に何とかしたかったがこのままだとギリギリになり兼ねない。
「お爺さん!しっかりして下さい!」
セトナは本気で死に掛けているイゼルカントに駆け寄っていた。
「うぅ……ロミ、迎えに来てくれたのか?だが、少し待ってくれ……。アイツをぶん殴ってからだ……」
イゼルカントは美しい花畑と小川の向こう岸に亡き息子の姿を見た。
……幼くして一人、いや、今は妻と居る息子には済まないが未だ死ねない。最低でもクシーは一発ぶん殴ってから逝くと決意した。
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コズミック・イラ70年2月25日、ザナドゥの所有するグレイブヤードにある陽電子衝撃砲の撤去が決定した。
同時にザナドゥ代表及びマルキオ導師の連名で呼び掛け、オーブ連合首長国のウズミ・ナラ・アスハ代表によって地球連合及び地球各国とプラントでの戦時国際条約の素案を発表した。
クシーは色々根回ししているが、グレイブヤードの超兵器を撤去する代わりに条約を結べという話であった。
……半ば脅しが含まれている気がしなくもない。というか脅しだと関係者は思った。
捕虜への待遇等の問題が戦争の大規模・長期化により様々発生していた為、地球各国もプラントも戦時条約の話し合いに一応は合意した。
「終わり良ければ全て良し!」
数日後に危篤状態から回復したイゼルカントにぶん殴られたクシーはそう結論した。実は結構ヤケクソになっている。
陽電子衝撃砲は実は壊れて修理しなければならなかった。だが、未だブラフとして機能した。解体するから文句言うなというのは本音である。再建するのにどれだけ時間が掛かるか分かったものではない。
「後は話し合いで蹴りが付く者達だけ。久し振りの休みも同然だな!」
平和の為にと言いつつ、何してくれているんじゃとほざいている大西洋連邦大統領とブルーコスモスの盟主・アズラエルを脅……キャリー少尉が率いるMS部隊についての相談とその『説得』をしなければならない。
……プラントにも対応しなければならなかった。クシーは国連軍の元士官である彼女に餞別として作業用のボールを送ったのだが、その所為でスパイ扱いされているとは。まさか彼女がユニウスセブンに居たとは思わなかった。
「休み所か全然終わっていないですよ。……主、ちょっとヤケクソになっていませんか?」
ベラはクシーにツッコんだ。騒動を起こし過ぎてこれからの予定が滅茶苦茶であった。
……主は口が上手いので何とか諸々の問題を軟着陸させていたが、此処4日で合計30分程度しか休めていない。寝ているかも怪しい。
最初から最後まで全てが無茶苦茶なので部下に振れる仕事でもないので仕方が無いが。
……キラ・ヤマトが主の傍に居れば『クシー』を止めてくれるだろうか。……というかキラを心配させない為に主も無茶苦茶はするが控えるだろう。アスランだけだと主は対抗心を剥き出しにしてオーバーワークしかねない。
ベラはコペルニクスを懐かしんだ。あの頃の主もオーバーワーク気味ではあるが、未だキチンと休んでいた。ベラも忙し過ぎて現在と過去が混濁し、軽く現実逃避で思い返していた。