極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第45話 地球連合軍特別技術合同研究機関とか言うけど地球連合軍MS部隊で良いのでは?……駄目?相変わらず頭固いな、おい

 

コズミック・イラ70年3月1日、地球連合軍は極秘裏にMS部隊創設を承認した。

拠点はユーラシア連邦シベリア・クラスノヤルスク基地、大西洋連邦のアラスカ基地の二箇所になる。

 

世界樹攻防戦で敗軍の象徴となっていた壊滅状態の第1、第2艦隊。それとは逆にマトモに活躍し残った第13艦隊は再編成の為に地球連合軍内で軍隊として機能するように調整されていた。

壊滅的被害が出た第1、第2艦隊の被害状況を考えると一つの艦隊に纏めた方が都合が良かった。

第13艦隊は旧式艦の部隊が多く、新造艦隊への適応する為の訓練が必要でもあった。

第13艦隊は輸送艦隊とは思えぬ活躍振りから後方支援から主力部隊に配置換えになった。

第13艦隊・司令官ペルミノフ少将は輸送艦隊の遊軍で上手くいっただけであると主張した。

だが、第1、第2艦隊の精鋭が第13艦隊に関して何とか調整するというのもあり、地球連合軍に苦言を言いつつ渋々了承した。

ペルミノフ少将は地球連合軍に自分の一部の部下達を軍内の輸送部門に派遣させる事で手打ちにした。

 

ペルミノフ少将はうまい具合に後方に自身の派閥を増やすような行動をしていた。

だが、ペルミノフ少将としては輸送艦隊の第13艦隊が抜けた穴を補填しようとしているだけであった。

ザナドゥ代表から以前提出された輸送網の再構築という案を実行するためには自身の部下を派遣しなければマトモに改革できなかった。

 

ペルミノフ少将は地球連合軍内の政治は苦手だが輸送の専門家であった。

世界樹攻防戦で最も活躍した人物であるペルミノフ少将の意見は無視できない。抜けた分は引き継ぎしなければならないという意見は否定しきれなかった。

改革案まで携えた理路整然とした意見は軍上層部もペルミノフ少将らの派閥が広がる事を認識しながらも認めざるを得なかった。第13艦隊はうまい具合に立ち回っていた。

 

なお、この人事に第3艦隊セオドア准将及びブルーコスモス・過激派から反発が起こった。

世界樹攻防戦で活躍したとはいえ脇役の遊軍で残った敗残兵を纏めていると危険視していた。

 

「活躍させて損耗してくれた方が良いでしょう?……君たちは戦力の温存が上手いですから」

ブルーコスモスの盟主アズラエルは反対派を黙らせた。色んな意味でもう黙れと思っている。

過激派は第13艦隊は偶々活躍した輸送艦隊であり、主力部隊として配置すれば敗北は必然、更に訓練や調整で満足に活躍も出来ないとこの采配を自分達に都合よく解釈して納得した。

当然だが、アズラエルとしてはただの皮肉でしかない。ブルーコスモスの過激派が如何に融通の効かないかを思い知らされたアズラエルはかなりキテいた。

 

「ウチの連中と来たら……どうしてこうも足を引っ張るのだけは得意なのか……」

アズラエルは独り言を溢してため息を吐いた。

性質の悪い事にジブリールがコイツらに同調して支持基盤を躍進させていた。

ジブリールが後継者になりでもしたら地球が終わるのではないかとアズラエルは思い始めていた。……第13艦隊の処遇は奴らを牽制しておく為の手段でもあった。

 

「軍事は専門家に任せようと考えていましたが、金だけ出してこのザマではねぇ……」

アズラエルはもう自分が前線に出てやろうかとすら思っていた。世界樹攻防戦でMS部隊を死蔵するとか巫山戯ているのかとキレていた。

世界樹攻防戦の敗因である第3艦隊・司令官セオドア准将を銃殺出来ないかと腸が煮えくり返っている。だが、マトモな戦力を保有するセオドア准将はまだ使えるので必死で我慢していた。……第13艦隊を主力にと口添えしたアズラエル的には使えるなら使いたいという思惑があった。

 

「大西洋連邦を賭けの担保にした以上は活躍して貰う方がまだマシ……『G』計画が大西洋連邦側にある以上はザナドゥ代表に利権が行く心配もない……はず。ギリギリ手打ちに出来る範囲」

アズラエルはブツブツ言いながらウロウロと忙しなく歩き回る。……最近多くなった独り言と床に落ちた自分の抜け毛に気がついた。

 

「……何でボクがこんなに身内のフォローをしなきゃいけないんですかねぇ?」

アズラエルは軍事産業界やロゴスに向けての言い訳をする前に思いを吐き出した。

 

なお、当然のようにザナドゥ代表達からクレームが来たが、アズラエルはMS部隊の創設の件で何とか手打ちにした。

……いつの間にかMSジンをザナドゥは複製していた。その運用データは提供するというのでアズラエル的には問題なかった。自分の持つ兵器会社にMSのノウハウが反映されるし、『G』計画は大西洋連邦の主導でそちらにデータを流せば文句は言われない。

 

なお、大西洋連邦大統領は何を言われたのかは知らないがアラスカ基地という形で利権を持ってきた程度で収めていた。アラスカ基地で訓練させてデータ収集するのか不明だが、アズラエルからすれば弱腰だと思った。

……幾らでもザナドゥ側は大西洋連邦の弱みを握っていそうである。アズラエルも大西洋連邦が南アメリカ合衆国の一件以外にやらかしていないと言い切れなかった。

 

ロゴスは方々に進出しだしたザナドゥを制裁しようにも世界樹崩壊で本気で地球が危うくなってきたのでこれ以上すると自分達も死ぬので矛を収めていた。

……世界樹攻防戦により核動力艦隊が停止したという情報もあり、ロゴスは急ピッチで非核動力戦艦を作っていた。

正直、ロゴスはザナドゥに規模はともかく技術やら対策やらで既に何歩も先を行かれているのが現状である。

本来ならば邪魔をするところだがザナドゥを妨害をすれば自分達も死ぬ。ザナドゥへの妨害はそこそこにしていた。

……もし妨害を辞めたらザナドゥに軒屋を貸して母屋を乗っ取られると考えている。

従って、ザナドゥに協力するという発想はロゴスになかった。

NJという兵器が発覚した事により将来の海上防衛はザナドゥに握られつつあった。

……自分達の利益が最優先で民衆への被害等は二の次で考えているのがロゴスという組織である。

 

これ以上、ザナドゥ及び代表クシーを活躍させたくない一族の掌で踊らされている事に彼らは気が付かない。しかし、その一族すらもザナドゥの排除がマトモに出来なくなってきていた。あまりに動けば存在が露見するので妨害工作しか手が打てなかった。

もう少しすれば調整が完成する生物兵器や戦略兵器の存在をザナドゥに発見されないように立ち回っていた。

 

……それくらいでクシーが何とかなると考えているなら放置しても良いかもしれないと追放した一族当主の兄から思われているとは知らない。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

第1、第2、第13艦隊は調整と訓練の為に時間を割いていた。

カナード達傭兵部隊Xはその間一時的に休みとなっていた。

その間にMSジン部隊の本格的な訓練がユーラシア連邦・シベリアのクラスノヤルスク基地で行われていた。

キャリー少尉達、第3艦隊に所属していた彼らは今後どうするかは一旦保留されているが、戦死した仲間の遺族や存命の家族達はザナドゥ代表の根回しでキチンと保証され、連絡も取れるようになっていた。……流石にMS部隊の存在自体が軍事機密の中でも機密事項なので時間制限等の制約はある。

 

クラスノヤルスク基地は北は北極海に面し、ユーラシア連邦の木材消費の2割を産出し、希少金属の鉱山がある地域である。……近くにはザナドゥのシベリア支部がある。

ザナドゥのシベリア支部からはジンの予備パーツが運ばれて来ており、訓練で消耗した部品や模擬戦闘で発生した破損はここで補填・修復される。

MSの整備ノウハウや個人の練度、MS部隊としての運用や改善も着実に行われていた。

名目上はこれまでの戦闘データの解析及び実際の運用データの収集を目的とした研究組織となっている。

大西洋連邦軍のジャン・キャリー少尉は部下達と傭兵部隊Xの面々とMSジンの訓練を行っていた。

 

「……これまでは鹵獲したジンを無駄に出来ないという理由で訓練すら却下されてきた」

キャリー少尉は休憩の際にカナード達に対して少し溢してしまった。

……ザナドゥの支援の有無でまるで違い過ぎた。恵まれている者達につい八つ当たりめいた事を溢した事を反省した。

 

「我々は礼を言わなければならない立場であるのに本当に済まない」

キャリー少尉は自身の部隊の部下達に見せた事のないくらいに狼狽していた。

 

「……こうした訓練データもパイロットのバイタル情報も研究という名目ですので気になさらずに」

傭兵部隊Xカナードの副官兼ユーラシア連邦大尉であるメリオルはキャリー少尉に言葉をかけた。……どれだけ大西洋連邦がコーディネイター達やMSへの扱いが酷いのか知れたメリオル達はザナドゥがどれ程異端なのか改めて実感が出来ていた。

MAメビウスやスピアヘッドの権利や非核動力潜水艦で成功しているザナドゥは普通、自身の権益に反するMSを反対する側にいるはずの組織であった。

ザナドゥ代表クシーはザナドゥはインフラ整備事業が本業であると言ってはばからず、MS研究は土木工事に利用できるからセーフと言っていた。

 

「問題ない。このMSジンの訓練データだけで敵側視点でどう動くかわかる。とても役に立つ。……クシーは新規MA開発に興味が薄いがMSのナチュラル用OSを作成するだけで戦争が終わりかねない」

ザナドゥ兵器開発部門・副主任であるルリは技術者として淡々と事実を列挙した。

ルリはユーラシア連邦内にある違法研究施設をテロったクシーが連れてきたコーディネイターである。ルリは15歳前後の年齢不詳の少女であり、カナードが最近になって審査会入りした件には思うところがあるが特に不仲ではない。

なお、現在の開発部主任は北極の基地にいる。開発部主任はナチュラルである。それにもかかわらず技術者として破格の才能を持つように調整されたルリよりもスペックが上という意味不明な怪物だった。

 

「MSジンのOSは大多数のナチュラルでは歩行もままならないのであるから、コーディネイターが少ない地球連合軍では少数の部隊で運用を前提に……」

ルリは関係無くはないが段々話がズレていった。……助手達に引きずられて今の訓練データの分析に行かされた。

コーディネイターの神経接続を前提として柔軟な稼働を可能にするMSという兵器はナチュラルの、地球連合軍が運用するには的になってしまう欠陥品だった。

 

「……コーディネイター、ナチュラル関係なく自由だな。ザナドゥという組織は」

キャリー少尉はルリがコーディネイターである事を察して言葉を述べた。

ルリの助手達は大半がナチュラルであり、キャリー少尉達に失礼したと頭を下げてきていた。

……この光景だけで大西洋連邦だけでなく、地球連合やプラントでもあり得ない異端であると断言できた。

 

「……自由過ぎて偶に困りますけどね。ああいうのとか」

メリオルはキャリー少尉に同意しつつ、カナードが慌てているのを横目で見て言った。

 

「コーディネイターしか扱えないというから地味にショックだったが動かせるではないか!?ハハハ、これは中々興味深い!……本当に手足のように動くな」

突発的にやってきたザナドゥ代表クシーがジンの予備を使って駆け回っていた。

……初乗りではあり得ない動きで塗料の付着する弾幕を全て躱きっていた。

 

「これはこれで悪くはないが改善点は多いな。……少しプログラムを弄るか」

クシーは次の訓練である射撃で動き回る的に全て当てつつも溢した。

クシーはキーボードを叩き、気温や環境によって生じる少しのブレ、自身と機体とのラグを調整してもう一度挑戦してみた。

 

「……ザナドゥ代表はナチュラルだよな?」

キャリー少尉はメリオルにツッコんだ。カナードはクシーの無法っぷりに魅入っているので聞いたら邪魔になると判断した。

 

「……ええ、間違いなく。ザナドゥに所属しているナチュラルの幹部達も大概おかしいですが、ザナドゥのトップが一番……今のは聞かなかった事にしてください」

メリオルはキャリー少尉の問に応えた。ザナドゥはコーディネイターを凌駕する才能を持つナチュラルが多い。その中で一番バグっているのがクシーである。

……トップが一番おかしいと発言するのをメリオルは自重した。カナードに聞かれなくて良かったとホッとした。

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