極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第46話 霧の街のパンデミック未遂

 

ザナドゥでは正式な戦時条約が定まるまでの間、ザフトの捕虜達を確保・収容・保護していた。

放置すればコーディネイター憎しで捕虜への虐待等が発生する可能性が高かった。

……既に発生していたが出来る範囲で保護した。理由をつけて方々から集めていた。

 

ザナドゥは世界各地で治安維持活動を行う組織である。世界各地で暴れる奴らが毎日エキサイトしている。従って、ザナドゥは世界で最も刑務所に類似する施設が充実していた。

地球連合軍はブルーコスモス・過激派でもない限り、理由がないなら地球連合軍はザナドゥに預けていた。

……マトモな軍人の中でも良く考えずに自国の捕虜収容所に引き渡す者も多かった。

 

地球連合はザナドゥが勝手に捕虜の取り扱いをしていると抗議していた。

しかし、国連に委託された業務内に条約規定があるのでザナドゥに預けるのは法的には問題なかった。

地球連合は国連の後継を自称している。その取り決めを遵守している組織であるザナドゥと法的な部分で争うと大分面倒になった。

結果的に現場の兵士達が自主的にザフトの捕虜達をザナドゥへ引き渡す行為も黙認されていた。

 

……とはいえ、このまま黙認しているのは地球連合の面子に関わった。正式な戦時条約を決めておきたいと地球連合の構成国達は考えていた。

 

そんな中でコズミック・イラ70年2月26日にコルシカ条約が取り決められた。戦時の捕虜への取り決めを定めた規則がある。

地球連合はコルシカ条約を元に正式にザナドゥへ抗議してきた。捕虜を引き渡せという話である。

……ザナドゥとしてもマトモに条約が履行されている環境ならば拒否する理由もない。捕虜を引き渡す前に環境を確認してから引き渡すという事になった。

 

地球連合は捕虜への待遇が配慮していると自負している施設をザナドゥに公開した。

だが、地球連合がザナドゥから主導権を取り戻す為に公開した施設は問題だらけだった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

コズミック・イラ70年3月3日、ザナドゥ代表・クシーは大西洋連邦イギリス州にある模範的な捕虜収容所であるノーマン・クロス収容所に案内された。

 

収容所の案内開始して10分でクシーはキレた。

粗探しするまでもなくとんでもない状況なのを察した。何ならもう自分達も危うい状況に陥った。

……わざとなのか疑うレベルの所業だった。だが、反応的にそれはないと判断した。

そもそもこんな事をして大西洋連邦にも収容所にもメリットがない。クシーは現状では当てにならない自分の勘を振り切った。

 

「18世紀初頭の捕虜収容所の方が国の面子を考えていた分まだ環境が良いぞ?……衛生面はアウトだ」

クシーは施設長と軍医に詰め寄った。

突然キレたので呆然とする二人を見て大西洋連邦という比較的恵まれた国の呑気さに苛ついた。

 

「こんなの集団でチフスが流行るわ。貴様らの先祖がやらかしたチフス墓地とか知らんのか?」

衛生環境の判定で早々にアウトである。捕虜がコーディネイターだからと粗悪な水道整備でやらかしていた。

……見ただけで気づく方がおかしいのだがザナドゥはインフラ整備事業でこういう不備は慣れていた。

まだ日が浅く死者こそ出ていない。捕虜に軽く聞き取りしたクシーは部下に封鎖を命令していた。

大西洋連邦は面子の為に虐待こそしていないようだが、クシー的にはアウトだった。

 

「コーディネイターなんだから問題ないでしょう?奴らは中身が違うのだから」

収容所の担当軍医がクシーに食って掛かってきた。

確かに水質は多少問題あったが、コーディネイターが相手である。……問答無用で隔離し始めるとか大げさ過ぎた。

 

「じゃあ、あの患者はなんだ?ウチの簡易検査キットで調べたが新種の腸チフスだぞ。ただの下痢じゃない」

クシーはコーディネイターへの知識に欠ける軍医に逆に聞き返した。……もう既にラインを超えていた。もう少しでイギリスはパンデミックで大勢が死んだ。ザナドゥの業務で病気には慣れているので気がつけたが危ないにも程がある。

事実が先にあるので何故こうなったかの調査に関しては後回しだ。……ロンドン支部長のメアリ・クリスティなら数日で特定するだろう。自分は忙しいので推理小説の展開はそちらに任せる事にした。

 

「……へっ?」

軍医はそこまでの症状ではないと判断していた。腸チフスと診断できるならばもっと酷い症状が……漸く気がついた。

コーディネイターだから基礎免疫が強い。結果的に症状が軽かったのだと軍医は察した。

自分達に症状がまだ出ていないのはある意味で囚人と看守の関係で隔離しているからである。

 

「コーディネイターだから多少手荒でも大丈夫だと思っていたのか?……確かに大多数はナチュラルよりは丈夫だが個人差がある。寧ろ、既存の病気に耐性あるせいで新種の病原菌が誕生しているじゃないか?」

クシーは気がついた軍医の自覚を言葉にした。呆けている暇があればさっさとしろと急かしていた。

 

「今すぐPK-2874型の抗生剤が備蓄されている病院とザナドゥのロンドン支部に連絡しろ」

クシーは対応できる耐性菌のない抗生剤、最近出来たばかりの新薬の調達を部下に命令した。

 

「メアリ・クリスティ支部長に連絡済みです。ロンドン支部に該当の薬の備蓄はあるとの事ですが、足りない場合に備えて耐性菌に有効な抗生剤の開……用意をミケランジェロに伝えておきました」

ベラが淡々とクシーに応えていた。荒事ではない非常時はこれ以上無く頼りになる。……丸投げだがミケランジェロなら一晩で何とかするから問題ない。

 

「いや、しかし。我々にも面子が」

施設長はまだゴネるようである。間抜けな軍医すら顔を真っ青にしつつ奔走しているというのに随分と面子が大事なようである。

 

「……大西洋連邦の面子が丸潰れでそらそうもなるか。だが、本気でそれどころではない事態だと気がつけ」

クシーは施設長の立場を理解しつつ苛立ちを声に出した。隠している時間も惜しい。

 

「……イギリスでパンデミック起こす気か?大西洋連邦は恥を上塗りする文化でもあるらしい」

「ブリティッシュ・ジョークがご所望とは流石ですね」

私とベラは軍医をせっついて患者を隔離させつつ、部下に外部と連絡させた。

ある意味、インフラ整備で発生する地域の病での対策は本業である。ザナドゥの構成員は状況は違えども似たような事には慣れていた。

 

……この一件で大西洋連邦は世界に恥を晒したがザナドゥは悪くないし、寧ろ感謝して欲しい。

またしても貴重な時間が失われた。だが、パンデミックの危機とか洒落にならなかった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

ザナドゥが全力で奔走して何とか新型腸チフスを抑え込んだ3月5日。

ザナドゥ・ロンドン支部長メアリ・クリスティは詳細の報告を受けて部下を下がらせた。

 

「大した被害がなく『お友達候補』が見えて来たのは良かったと思いましょう」

メアリはけたたましく鳴り響く電話を無視していた。大西洋連邦のお偉方であるが、無視して良い。

……メアリは激怒していた。そして、誰にも聞こえずに推理をしていた。

メアリは推理のみならばクシーに勝る自信がある。既に歴史の裏で暗躍する存在を感知していた。そして、コペルニクスでクシーが巻き込まれた。

それ以後のメアリはザナドゥではなく自分の手で『お友達』を葬り去るつもりで行動していた。

 

「どうせ生物兵器なんでしょう?……幾ら霧の街とはいえ都合の良くクシーの行く先で発生しないわ」

メアリは大西洋連邦の裏の顔、人外魔境を知っていた。

ザナドゥに報告すればクシーの邪魔になるとメアリは自分で解決するつもりだったが犯人が浅はかな行動をした。……許してはならない。

 

「……ミケランジェロは教えてくれるかしら?それとも、サー・マティアス?」

メアリは前々からミケランジェロがザナドゥに居るのを不思議に思っていた。

メアリは推理小説のプロットを壊すような真似はしたくはない。

だが、万が一でも生物兵器によってクシーが死んでいた可能性を想像すれば自分の拘りも消し飛んだ。

 

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