極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ70年3月9日、地球連合軍にてMAアルカの制式採用と第13艦隊ペルミノフ少将とザナドゥ代表クシーが共同で提出した広域輸送網案が採択された。
地球連合の決定を待つのも遅いので既にMAアルカの量産ラインを製造・稼働していた。
最低限量産出来た輸送網に必要な分を送ったのだが、地球連合軍は戦艦に最低一つ置きたいらしい。
……輸送網に必要な分と既存の戦艦全部にと用意すればザナドゥの人材を総動員しても足りない。
私はキレた。そもそも支払額が足りないので作れば作るほど赤字になる。
数があればその分人の命を救うと考えれば妥協できる。桁1つ追加すれば私も精一杯考える。
だが、あまりにも人を舐めているので論外である。
「大量に購入するから値段を下げろと……装甲削って良いならば量産出来るが駄目だろう?」
私は無茶苦茶な要求をする地球連合軍の担当者に言った。
ザナドゥは既に売れる前提で作ってコストを下げている。私はデータを見せつけた。
「えぇ……?」
地球連合軍の担当者はデータを見てドン引きした。一部機密で見えないが兵器の仕入れ担当ならばザナドゥの企業努力が半端ないと分かるだろう。
何せ兵器産業はボッタクるのが当たり前だ。……ザナドゥもかなり利益を得ているがアルカに関してはかなりコストカットしていた。
「……資源単価の高騰予測も含まれているが現在でも安いだろう?余剰在庫を置けるのか?製造ラインの管理維持は?……敵の火力が向上したらアルカもまた改修しなければならない」
私は軍の担当者に問い詰めた。人の命を救う代物であり直接戦う兵器ではないので相当安くしていた。
「いや、はい。……仰るとおりです」
軍の担当者は全面的に私の言う事に同意した。ここまで安くしているとは思わなかったのだろう。
万が一でも私が契約を打ち切ったら担当者の首が飛ぶどころでは済まない。
「もう他のところで多少漏れている技術を盗用した模倣品を作らせたのはこっちは把握しているんだ。……コストカットしてこの数を量産しても最低見積もりはザナドゥの三倍以上だっただろう?」
私はスパイが報告してきたアルカの粗悪品を例に挙げた。
報告によれば性能はほぼ全て半分以下でコストは5倍かかるらしい。
見積もりは10倍で効かないはずだが相手はただのバイヤーなので責めないようにした。
……ザナドゥの積み上げてきた技術力である。ジンの無反動砲の直撃で漸く沈むMAアルカを簡単に真似出来て溜まるか。
「今までは見逃したが流石に図々しいにも程がある。……訴えてやる!」
私はキレた。無茶振りにも程がある。……制裁されていなければ出来なくもないがロゴスはザナドゥの邪魔ばかりする。
開発部のルリに怒られたから真面目に訴えるべきだと判断した。
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地球連合はザナドゥ代表・クシーが激怒した件で衝撃を受けた。
……今まで防衛に必要だと言えば無茶振りしてもザナドゥは答えてきた。
地球連合からすれば遂に堪忍袋の緒が切れたように見えた。
構成国の一部は今度は何か仕出かしたのかと思いつつも事後報告の内容を知り、その内容の酷さに絶句した。ザナドゥを財政破綻させる作戦だったのかと思った。
……そんな事をすれば地球が危ういので構成国の一部は地球連合の財務責任者に抗議した。
国を采配する身である構成国の代表である彼らの中でもわかる者にはわかった。今回の件はザナドゥへあまりにもふっかけ過ぎであった。
しかも、これ以上ザナドゥの影響力が増さないように地球連合が内密に模倣品を製造している事も知られていた。
ザナドゥが怒るのは尤も過ぎた。もうこれ以上は不味いとこの件だけは内情が足の引っ張り合いとなっている地球連合構成国も珍しく纏まって否決した。
大西洋連邦はザナドゥに屈するわけには行かないので抗議したが内心はそらそうなると思っていたので形だけ抗議した。
ロゴスは利益で動くのでザナドゥへ制裁していたが、実情のデータまで提出されたのを見て今までキレなかったのに驚いた。
……自分達でやっておいて今更それはないだろうとアズラエルは思った。ザナドゥとブルーコスモスで慣れていた。
一先ずはMAアルカとは無縁な戦艦も含めて全てに1機以上置くとかいう案は否決された。
……ザナドゥとの交渉はもう少し誠実にやるように気をつけた。
地球連合はザナドゥがあまりにも薄利でやっていると若干誤認した。
ザナドゥでもここまで薄利多売でやっているのはアルカくらいなものである。
具体的に言えばメビウスやスピアヘッドは他の企業の場合と比較すれば2割程度安いだけである。
2割安いだけで破格だが、大量に販売しているのでザナドゥの実態は更に安くなっている。……その分はキチンと儲けていた。
この提案をしたそもそもの元凶のブルーコスモス・過激派等が煩かった。
だが、ザナドゥ代表をキレさせると本気で地球連合軍が崩壊しかねないので黙らせた。
地球連合軍は名目上は自分の味方である軍内のブルーコスモス・過激派達に対して自分達の盟主におねだりしろと突っぱねた。
ブルーコスモスの盟主アズラエルは兵器産業に携わってもいた。その為に現地のテロリストに武器を流すのも得意だった。
アズラエルはアルカの性能とそれに見合わぬ安さにドン引きしつつ使える駒には自分の企業で作った類似品を配布した。
……アルカより劣るが権利侵害はしていないし、研究費として考えれば安かった。
アズラエルは極めて真っ当に対応するなとザナドゥ代表・クシーは感心した。
アズラエルにとっては性能がMAアルカ、ゴミ箱未満でも研究費として考えれば過激派に配布してもそこまで痛くはない。
……自分達の生存に重きを置く奴らからのデータも取れるので損はなかった。
第3艦隊は全艦にアルカモドキが配布され、自分達の団結力を高めていた。
……ジンの無反動砲どころか機銃斉射に耐えられるかもかなり微妙だったが備え付けの脱出用のシャトルよりは遥かにマシだった。
過激派に対し、地球連合軍は艦隊の中でも旗艦と現場指揮艦には配置するように妥協した。
情勢を見ながら戦艦に1機搭載出来れば良い。2つも3つも欲張らなければ問題なかった。
地球連合もその程度ならば問題なく対処できた。
なお、地球連合が内密にMAアルカをパクる研究を共同でしていた大企業の下請けの一つ、ハービック社が倒産した。
大企業自身ではないとはいえ直接の下請けなので損失はかなり痛かった。
だが、自社に直接被害があるよりはマシだとして損切りした。
スケープゴートとしてハービック社は切り捨てられた。
……ハービック社はザナドゥの権利侵害をするような協力をするのではなかったと後悔した。
そんな航空機の老舗であったハービック社はザナドゥによって吸収された。
社員が離散する前に会社が吸収された事でザナドゥは大企業の保有する技術の一部を手に入れた。
これは正当に倒産した会社の技術を引き継いだだけなので権利侵害も何も問題ない。
クシーはMAアルカを模倣していた関連企業、特にハービック社を調べていた。何処を損切りするか勘で把握していた。
大企業がこの際にハービック社から引き抜く予定だった技術者もまとめて吸収したザナドゥはMAアルカで焼け太りした。
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ザナドゥの兵器開発部ではクシーが引っ張ってきた利権に動揺していた。
今までに無い規模で目に見える形で権利侵害を訴えてクシーは会社ごと引っ張ってきた。
「ここまでやれとは言っていませんが……言い過ぎましたかね」
開発部主任のルリは言ったら即実行したクシーが覚えていた事に喜び半分驚き半分で溢した。
ルリは先日、クシーにザナドゥへの盗用や権利侵害を放置し過ぎだと訴えた。
そして出てきたのが航空機の老舗であるハービック社である。
旧暦から航空業界に携わってきた老舗中の老舗であった。正直、良く出来たなとルリは思った。
「大気圏内の強行偵察機『フラットマウス』は南アメリカ合衆国や南アフリカ統一機構等ではまだ現役で使っています」
兵器開発部の助手はルリに報告した。兵器開発ではないが運用に目をつけていた。
なお、ザナドゥでは地球連合加盟国以外の兵器輸出に制限を設けられていた。
故に二カ国しか挙げていないが非プラント理事国ではほぼ現役である。
「スピアヘッドは南アメリカ合衆国で主力ですよね?」
ルリはフラットマウスはスピアヘッドに置換されているのを確認した。
何となく言いたいことはわかるがもうフラットマウスは必要なのか疑問視した。
「……地球連合に加盟しましたが規格統一はまだ進んでいません。整備士の事情を考えるとスピアヘッドは中々整備し難いと思います」
助手は言葉を続けた。……優秀なコーディネイターであるルリには若干わかりにくいかも知れない。少し考えて説明していた。
「つまり、地球連合の規格に合わせつつ旧来の整備士が廃業にならない機体を作れば需要があると言う事です」
隣で聞いていた助手その2が補足した。今のでナチュラルならば納得したが、ルリとの差を考えるとこれくらいは言うべきだと認識のすり合わせを行った。
「……ハービック社の開発部に聞き取りをしましょう。スピアヘッドよりも良い機体が生まれるかもしれません」
ルリは助手達の言葉に納得した。だが、スピアヘッドの劣化を作るのでは勿体ないので別機体を考える事にした。クシーの提案する換装システムも追加出来るかは現場の声次第である。
こうして、ザナドゥの新型MAであるセイバーフィッシュが誕生した。
フラットマウスの整備士が少し訓練すればセイバーフィッシュも整備出来た。
地球連合の規格で振り回されて廃業する整備士が少し減った。
セイバーフィッシュはスピアヘッドと比べて整備のしやすさと火力は上だった。
更にフラットマウスのパイロットをセイバーフィッシュに転用出来た。
スピアヘッドはフラットマウスのパイロットからすると機種転換訓練が結構必要だった。
老舗の航空機メーカーのハービック社はナチュラルに優しい技術を持っていた。
ザナドゥは最先端技術を持っているがパイロットの操縦性等は補助AI等でやや誤魔化していた。
MSに対抗出来る兵器となれば火力だけでなく技量も必要だったのは仕方がないのだが、例えばメビウス・ゼロは特殊な才能に依存する兵器である。
そのグレードダウンしたメビウスも多少の才能か長期的訓練が必要だった。
今ではAI等によって敷居が低くなっているが昔は熟練パイロットの人材が戦争で早期に枯渇しないか懸念されていた。
今でもメビウスは訓練不足で出撃すれば敵の簡単なスコア稼ぎになりかねない。
……基本的に訓練すれば乗れる汎用性のある大多数のMAに取ってザナドゥの技術力が故の欠点が存在した。
老舗の伝わりにくいノウハウを吸収したザナドゥ兵器開発部は更に潜在能力を高める事になった。特に換装システムさえ切り替えれば宇宙や空中でも操縦はほぼ変わらずに運用可能な戦闘機型MAはザナドゥだけでなく地球連合にとっても柔軟な戦力配置を可能にした。
……これから技術の進歩が更に加速していく事になるので歴史的に見れば一時的なノウハウではあった。
それでもこうしたナチュラル視点での操縦性への取り組みは無駄にはならなかった。