極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第47話 ウロボロスの怨嗟

 

コズミック・イラ70年3月15日、プラント最高評議会は『オペレーション・ウロボロス』を可決した。

 

第一次ビクトリア攻防戦での些細な勝利により調子に乗ったナチュラル共の継戦意思を挫く為の作戦として提案された。

オペレーション・ウロボロス。その作戦内容は3段階に別れている。どれもザフトの優勢だからこそ問題なく可能だった。……理論上は。

 

まず、核兵器及び核分裂炉からのエネルギー供給抑止となる『ニュートロン・ジャマー』の散布を行う。

これにより地球上のエネルギーを停止させる。また、NJの副産物によって広域通信網を途絶する事で地球連合軍を混乱させる。

ザフトからの核攻撃が出来なくなるがクライン派や民衆の反核感情を配慮した人道的作戦にザラ派も渋々ながら同意した。

作戦実行に際し、プラントのエネルギー供給を世界に伝達する事で被害も最低限になると目算したシーゲル・クラインは容認した。……判断を誤ったと生涯後悔する羽目になる。

 

次に地上における軍事拠点の確保である。

ザフトは3月8日の第一次ビクトリア攻防戦の失敗から地球上の軍事拠点の必要性を実感した。

ユニウスセブンが破壊された焦りから実行されたMSジンの性能頼りだった作戦が失敗した事をザフトは反省していた。

二の舞いを防ぐために、今回は大洋州連合と内密に話がついていた。具体的にはオーストラリア州の湾であるカーペンタリアをザフトが制圧する形となっている。形だけの制圧で事実上の明け渡しである。

一部反対勢力もいるらしいがNJを投下されればわかるとザフトは見積もっていた。なお、ザフトは地球全土へのNJ投下を大洋州連合に伝えていない。

……大洋州連合は大戦犯とも言える行為に結果的に加担した。大洋州連合はNJ投下によりプラントと一蓮托生となった。

大洋州連合は最悪を避ける為に地球各国の人道的支援を行うザナドゥとの関係を維持した。

プラント、正確に言えばクライン派は自身の見積もりの甘さから関係を黙認した。……ザラ派が台頭してくるまでの間はザナドゥと共有している太陽光発電衛星は守られる事になる。

 

最終的には宇宙港やマスドライバー基地制圧による地球連合軍の地上への封じ込めを行う。

宇宙に進出してくる場所を封鎖し、地球連合軍の艦隊を無くす。

他の宙域の地球連合軍の拠点を各個撃破や占領していく事でザフト側の数的不利を無くす事を目標とした。

 

この作戦の最終段階、マスドライバーを封じ込める点を繋ぐとそれは連なる輪に見えた。

それ故に、この作戦は『オペレーション・ウロボロス』と名付けられた。

 

……理論上はどれも地球全土のNJ投下という暴挙があれば可能だった。

ただ、NJ投下をやられた側の地球連合は降伏の選択を取らなかった。感情は理性を上回った。

非地球連合国の大多数は結果的にはプラントのエネルギー支援で生き延びる事になるがそれまでの被害の甚大さに人々は憎しみを抱いた。

 

シーゲル・クラインの被害の見積もりは地球全土が降伏すればの話であった。抵抗する者がいれば破綻した。

理論上は降伏した方が助かるとしても地球全土への攻撃を受けて素直に降伏出来る者は多くはない。

プラントに唯々諾々となるような構図を断じて受け入れられない者達の意見は、ブルーコスモスという存在による暴論も含まれていようが人々は集った。

 

地球連合からすればエネルギー支援があろうがこのような真似をされて黙っていられなかった。

プラントの予想が外れたのは被害に合う大多数が貧困層だった事が大きかった。貧困層より上の人々は自分達がギリギリ死なないからこそより憎悪した。

……死が目の前に迫っている者にとっては生か死かなら生を選ぶが、それを超えれば憎悪となった。

億を超える犠牲があろうが死人に口なし、死んだ同胞の仇と立ち上がった。

……ザナドゥの人道的支援により累計の被害総数はおよそ3億人に抑えられた。

 

ザナドゥが人々を助けたから戦争が止まらなかったと後世のとある学者は見解を述べた。

人類は壊滅的な被害を受けただろうが最終戦争の兵器群は生まれなかっただろうと推測した。

……誰も知らないがザナドゥが存在しない場合、最低でも10億人が死んでいた。それほどの犠牲があろうとも人類は戦争を続けていた。

後世の学者の言う最終戦争の兵器はエイプリルフール・クライシスより前に生まれていた。密かに誰にもバレずに調整をしているだけであった。

ジェネシスはザナドゥが存在しなかろうがザナドゥ代表が生まれる前から形は違えども存在していた。

恒星探査施設として開発されていたジェネシスはどのような形であれ何れ兵器として転用されていた。

 

コズミック・イラという終末が多発する時代はその名が世界を表していた。

無数の世界を観測出来る者達は人類が最も愚かな世界を一つ挙げる際、『コズミック・イラ』と表現した。

 

……その世界に生まれた徒花は一つ咲いただけでは世界の大河を止められない。

だがそれでも、世界の終末を回避しようと足掻いていた。

少なくともこれから起こる最悪の悲劇から7億人の人命を救っていた。

終末の世界を回避する為に被害を容認する一族と歴史の当事者として被害を回避するザナドゥ。

この世界において、相容れない主観で動く彼らは何れ衝突する運命になっていた。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

コズミック・イラ70年3月15日、ザナドゥ代表・クシーはザナドゥ本部にて書類仕事をしていた。ザナドゥの経常収支を確認していた。

 

ザナドゥは多種多様な業種に進出しており、それぞれの担当が処理している。それでも最終確認はその代表もしていた。

 

「……何か凄い規模になったなぁ」

私は何だか他人事の気分で呟いた。当初の想定よりもザナドゥが凄い規模になった。だが、出来ている事は地道なインフラ整備である。

……邪魔されまくるので思うように進まないが凄い頑張っていると思う。

まだ頑張らないといけない。……ビクトリア基地への攻撃からザフトがヤバいことをしてくると直感していた。

 

「軍事産業に手を出したのが良くも悪くも巨大化を後押ししましたね。……このMAドン・エスカルゴってなんですか?」

ベラは私の呟きに言葉を返した。どうも兵器開発部関連の書類に判子を押す前に気になったらしい。

 

「カタツムリみたいな形の対潜攻撃機。……原子力が停止した場合の潜水艦を捜索する為に作ったのだが、何故か結構売れた」

私は書類を最終確認しながらベラに説明した。何か売れたとしか言えない。

 

「『航続距離が極めて長く、高い潜水攻撃能力を有する。恐らく水中用MSに対してもある程度は有効だと思われる』……これ売れないわけないじゃないですか?」

ベラが私にツッコんだ。……確かにそう書いたような気がする。

私も忙しいので思ったことをそのまま書いた。……誰も添削しなかったのだろうか。

航続距離と潜水攻撃能力からこれ行けるんじゃないかと思った。

 

「おかしいな……一応、現在進行系で水中用MSを作っているのだが。自社製品のMAがライバルとかにならないかこれ?」

私は休憩ついでに作った代物が売れている事実にツッコんだ。

……ナチュラル用OSが作れてもドン・エスカルゴは需要がありそうな気がする。

今のところカナード達がMSを運用出来ているだけなので制式採用には至らない。

地球連合はザナドゥがMS開発しても試験運用すら全力で拒絶していた。どうもMAを作れという事らしい。

 

 

そんな感じで忙しい中、ザナドゥ本部にお客様がやってきた。

……先日、イギリスに行って会わないでそのまま帰ってきたのだが気に食わなかったらしい。それ以上に厄介事だと察した。私は頭を回転させた。

どうしてそうなったのか推理するが足りない。……イギリスでの新型腸チフス、アレは事故ではなくバイオテロだったかと私は察した。

 

 

「まるで世界の運命が立ちはだかっているようにも感じるわ。……修正力というのかしら?」

ロンドン支部長のメアリ・クリスティはそう言った。その碧色の左眼、黄金色の右瞳で見た状況を推理して私のMAへの愚痴を察したらしい。

……メアリの発言は他の事柄も含まれている。だが、どれかわからない。

 

「迎えに行けず済まないが、今忙しい。コーヒーで良ければ出すが」

私はメアリの言葉を聞いて少し邪険に扱ったと反省した。

……運命論は嫌いではないが好きではない。もし、本当に世界の運命が立ちはだかっていようが抵抗するだけである。

 

「コーヒーではなく紅茶でお願い。ねぇ、ミケランジェロに聞かなくて良いのかしら?」

メアリは私の言葉を一蹴し、ベラに紅茶を依頼していた。……ついでに私に尋ねていた。

 

「既に用意しています。……忙しいと言いますがこれは殆ど必要ないのでは?」

ベラはメアリの要望に応えていた。ダージリンの香りがする。

 

「必要ない行為はない。地道な作業の積み重ねが発見に繋がる」

私はベラの指摘に反論した。休めという事だろうが、私に取ってはこれがある意味休憩である。

同時に私のメアリへの答えでもあった。私はミケランジェロに関してはそのように対応している。

 

「……そう。わかったわ」

メアリは私の反応で理解したようだ。

……ミケランジェロの件に触れないのは私の我儘である。

 

「少し泊まっていって良いかしら?……今、本国は居づらいの」

メアリは私にイギリス支部を空にすると宣った。……そもそも私に連絡もせずに来るという事は何かあったのだろう。

 

「わかった。……戻る気はあるのか?」

私はメアリが本部に避難せざるを得ない状況だと察した。最悪、イギリス支部からの撤退を含めて確認していた。

 

「勿論。……信用のおける者は置いてきたわ。ロンドンはザナドゥの支部として機能するわ」

メアリは私に返してきた。どうやら敵が誰かわからないが、メアリは諦める気はないらしい。

出来れば私にもわかりやすく説明して欲しいが、ミケランジェロへの追求を辞めた時点で私は仲間外れのようである。

 

「……すみません。二人とも、主語どころか本文を抜いて会話するの辞めて貰って良いですか?意味深に聞こえるだけって凄いストレスになるんですよ」

ベラが私とメアリにツッコんだ。ミケランジェロが何かあるのは察しているベラでも良くわからないだろう。

それでもベラはメアリに何かあってロンドン支部から撤退してきたのは察しているようだった。

というかメアリが私に悟らせないで帰って来るのは本気で凄かった。少なくともザナドゥの監視網を突破してきている事になる。

 

「私にもわからないから心配しなくて良いぞ。まるで空気と会話している気分だ」

私は本心から言った。わかるのはメアリが強大な何かに挑んで敗走したくらいである。

後はミケランジェロが絡むらしい事、諦めるつもりはないのでザナドゥ本部で機会を伺うくらいか。

 

「空気というのは何時でもあるとは限らないわ。宇宙の真空状態ではとても愛おしいものよ」

メアリは私の言葉に反論してきた。実際、洒落にならないのでよく分かる。

大気圏突入や突破の前後は暗殺される可能性が高いので気をつけている。

姉の暗殺は大体優れていた。……雑なのも多かったが。ジブリールは数では姉に上回るが私が脅威に感じた質ならば姉が上だった。

 

「……取り敢えず、主の部屋にもう一つベッド並べておきますね」

ベラは巫山戯た事を抜かしてきた。何時もながら酷い。私で遊ばないで欲しい。

 

「……ちょっと待て。それは無しだ」

私はメアリを守るという点において有益な提案だったので一瞬だけ考えてしまった。

即拒否できなかった。ベラは凄まじいタイミングかつピンポイントな嫌がらせをしてきた。

……ベラはこういう事に関しては非常に頭が回るのだから困った。

 

「…………えっ?」

メアリは思考が停止していたようだ。珍しい事もあると私は思いつつ、放置すると本気でやりかねないと思考を切り替えた。

……自分以上に混乱している者を見ると安心すると言うがそれが私に働いていた。

この隙を利用してベラを止めるために頭を回転させた。とにかくメアリの暗殺阻止が重要である。……私の部屋まで着いてくるとかいう物凄く安全な策の代案を考えた。

 

メアリはそこまで想定していなかったのだろうが、私の部屋まで同行していれば最も安全だった。

……私は暗殺対象となる事に関してエキスパートである。暗殺を回避するという点はこの時代において一番だと断言できた。

……我ながら凄く虚しい称号である。何で他の奴らには暗殺者がダース単位で来ないのか。実に理不尽な世界だと思った。

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