極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

92 / 107
閑話 エージェントとフェイク

 

コズミック・イラ70年3月16日、東アジア共和国の日本・東京銀座にて一人のさえない男が街中を歩いていた。

 

男はブツブツ呟きながら何かを探しているようだ。手元には写真があり、可愛らしいオッドアイの猫が映っている。

 

「キティちゃんね。……金と青の眼。どこにもいないよなぁ」

男はどうやら猫を探しているようだ。

腑抜けた感じのサラリーマンにしか見えない男は何でも屋か探偵かと周囲の人々は関心を逸した。

 

「はい。松田です」

男は電話がかかってきた事を察して自分の携帯電話にでた。……結構高かったのにもうすぐ使えなくなるのかと落ち込みため息を吐いた。

 

『スカウト0064。キティの捜索はどうなっているかしら?』

電話の主は松田の名前を無視して番号で呼んだ。

……松田は『一族』と仮称される存在に仕える末端であった。

地球連合軍特殊情報部隊を率いるマティスはその一族の当主である。マティスはキティと呼ばれるオッドアイの少女の捜索を命じていた。

 

「……日本の銀座の監視カメラに映り込んでいただけではわかりませんって。何で猫なんですか?」

松田は今更な質問をした。写真には認証機能がついており、特定の人物の網膜にのみ本当の写真が見える。

恐らくは十代後半金髪オッドアイの白人のあまりにも特徴的な少女である。

フェイクの猫ではなく少女の写真を誰かしらに見せた方が情報を得られた。

 

『キティと名乗っていたからよ。猫でしょう?日本だと特に』

マティスは松田に言った。日本でなくてもキティといえば猫である。

あまり詮索するとどこかしらに勘付かれそうだった。そこで銀座に偶々いたエージェントに捜索させていた。

キティは入念な仕掛けでマティスを追い詰め、あと一歩でマティスの首を掻っ切っていた。

変装していたがあの瞳は本物であった。……どこの誰か知らないがマティスにとって脅威だった。

 

「そうすっね。でも、やっぱりこれだけじゃわかりませんって。カラコンしていたら隠せるじゃないですか。……俺ならわかるけど」

松田は無茶振りをしてくるマティスに文句を言いつつ、自分ならば特定出来ると断言した。

松田の眼は偽造を見破る事に特化した才能を持っていた。……逆に言うと特出した才能はそれくらいなので正直問題ないならエージェントを辞めたい。松田は自分でも問題あるとわかっているから服従していた。

松田は写真が誰かわからないが『本物』が映っていると認識出来ていた。

 

「……金髪に金と青の瞳のオッドアイの少女を狩つくせば問題ないですよね?そんなの銀座にいたらですけど」

松田はため息を吐いて言った。……周囲に不審がられないようにしたいが思わず口に出てしまった。

松田は殺人者である。理性有る殺人者である松田はマティスの元で我慢して管理されながら殺人を楽しんでいた。……対象のキティ以外は記憶消去して解放しないといけない。

特徴のある人物のみ狩っていれば後が残る。松田は我慢しないといけなかった。

 

『ええ、頼むわ。殺す前に生きたまま捕らえて頂戴ね。遺言を聞きたいの』

マティスは日本の銀座にいるスカウト0064、松田に頼んだ。

プラント理事国の日本はスパイだらけである。それ故に隠れている可能性はあった。

偽物を見破る事の出来るスカウト0064は該当する者を探し尽くせるだろう。

 

「いるなら探してみせますよ。いないなら仕方がないですが。……『らあめん清流房』か。昼食べるので切りますね」

松田はマティスがこれ以上話すことがないと察して電話を切った。

銀座という人通りの多い街であろうが一週間あれば全て探し尽くせる。……既にいない場合は仕方がない。

 

清流房はハゲのおっさんがラーメンを作っている店だった。

なお、松田は店主のラーメンハゲに自分が裏稼業と見破られて少し焦った。店主は松田の事はどうでも良いらしいのでホッとした。旨いラーメン屋を殺さずに済んだ。松田は快楽殺人者だが殺すにしても旨い飯屋は殺したくない。

 

 

マティスは松田から電話を切られたが、彼は託された任務をキチンと遂行すると確認出来たので良しとした。

 

「……いるかしらね。雲を掴むような事をしている気がするわ」

マティスを一族の当主だと確信して殺しに来たキティはロンドンの街どころかイギリスにいなかった。

マティスがキティの一撃を何とか躱して二撃目を警戒していたら即座に撤退していた。

……どこの誰かはわからないが、ザナドゥ代表といい元姉といい最近は面倒な相手が多すぎた。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

コズミック・イラ70年3月17日午前4時、ザナドゥ本部で代表・クシーが何時ものように世界各地の支部からの報告を確認していた。

 

 

「日本銀座支部、例のラーメン屋に暗殺者。……一人引っかかったな」

私はメアリを暗殺しようとする工作員を発見した。少し弄った本物のメアリの映像で釣りをしていた。

もし敵に世界中に監視網があるならばと私は前々から想定していた。散発的にバラ撒いていくつもりだったが初手で引っかかった。……これほどまでに引っかかるとは焦っている証拠である。メアリが相手に何をしたのか気になった。

 

「……寿命減らすわよ。3時間は寝なさい」

ロンドン支部長のメアリ・クリスティが起床し、私に声をかけてきた。

メアリはロンドン支部からの報告に加えて大西洋連邦の全国紙から地方紙は勿論、ゴシップ誌の類まで目を通していた。大西洋連邦に特化しているがやっている事は私と対して変わらない。

メアリは6時間は寝ているようである。……私は1時間半は睡眠するようになった。メアリが寝ろと煩いので30分睡眠は辞めていた。

 

「3時間も寝ると趣味の時間が削れる。最近漸く新作を出せた」

私はそう言ってメアリにミルクティーを淹れて差し出した。

……この暗殺者はどうしようか。メアリも私が別口で探っていると察しているだろう。

 

「新作とはザナドゥ芸術部門で出すゲームの事だ」

私は言葉足らずなのでメアリに補足する事にした。パッケージを見せる。

見る者が見ればザナドゥ特殊孤児院にいるマリーとソーマがモデルだとわかるだろう。なお、作中に二人は一切登場しない。

以前、超人機関にて体験した双子の剣戟からアイディアを得た恐竜狩りのゲームだ。プレイヤーは剣や槍で恐竜を狩る。

なお、絶滅危惧種である恐竜を狩ると重火器を装備した環境保護団体がプレイヤーに襲いかかる。狩る側から狩られる側になるスリルあるゲームである。

 

「……ビルダーズティーね。貴方って意外と庶民的よね」

メアリは私の新作ゲームは無視して、淹れた紅茶の感想を述べた。

ビルダーズティーとは安い茶葉で濃い目にいれ、ミルクと砂糖をたっぷり淹れたものである。

肉体労働や頭脳労働には最適な飲み物だ。今の私やメアリには丁度良い。

 

「高級な品が必ずしも良いわけではないし、安価でも良い物は良い。完璧な紅茶があろうとも今のような状態ではこちらの方が私は好きだ。……何よりマグカップで入れるから多少雑に扱っても問題ないのが良い」

私はメアリに言いながら自分の分も飲んだ。脳に糖分が補給される。

枯渇気味のエネルギーが満たされるような感覚が心地よく感じる。

 

「これは……また兵器か」

私はメアリの反応を伺う前に微妙に朝から嫌な代物を見つけた。

東アジア共和国からMAセイバーフィッシュとMAドン・エスカルゴ、旧式駆逐艦の依頼が来ていた。ザナドゥの潜水艦はユーラシア連邦が最優先となっている。……代わりに旧式艦で良いから数を揃えて対策するつもりなのだろうと察した。

 

「フレーザ級改修A型駆逐艦に……」

私は注文の品を読み上げた。確認も込めている。旧式艦を改修していたが戦力になるかと言われればノーコメントである。数合わせでも最低限はとマシにした程度だ。

 

 

ザナドゥではオーブ連合首長国に高級官僚の子息等を運んだ際に使ったりしていた。

後は民間軍事会社に販売していたくらいだがNJの判明と共に需要が拡大していた。

中国の李国主が教えてくれたが、核動力停止装置はNJという名であるらしい。ザフトの捕虜から聞き出せたとの事だ。

多分、大西洋連邦辺りではNJを複製することが出来たのかもしれない。……その知らせが前々から存在を懸念していた私に来ない時点でロゴスや大西洋連邦はプラントの悪意をまだ軽く考えているようであった。

 

 

「専門外の私でもわかるけど随分な旧式艦ね。日本でザナドゥも絡んで作らせているようだけど造船のノウハウを学んでいるのなら新造艦でも……ああ、そちらは既得権益で無理なのね」

メアリは私の見ていた資料を確認していた。メアリは疑問を口に出した瞬間に自己解決した。

既得権益の兼ね合いでザナドゥは戦艦製造に進出出来ていない。精々がカナード達の宇宙母艦オルテュギアを改造したくらいである。陽電子リフレクターとMS用リニアカタパルトを増設した。第13艦隊の奥の手である。重要な場面で目立たないように投入しているらしい。

 

「……カナード達は恵まれているわね。大西洋連邦の人々は恵まれているけど心は貧しいわ」

メアリはマグカップで顔を隠すようにして感想を述べた。

ザナドゥの旧式艦で得たノウハウと技術をカナード達に反映している事まで察したのだろう。

大西洋連邦はブルーコスモス過激派の魔境であった。……私が深く関わればどうしても感情が出た。

 

「すまない。任せた上に私の我儘のせいで苦労をかけた」

私はメアリの事情を察して謝罪した。

……イギリスでのバイオテロの首魁を追い詰めてギリギリ足りなかったかと察した。私が協力していれば確実に仕留められたかもしれない。 丁度情報がアチラから来たので調査中である。

私の勘は日本に出た暗殺者か工作員は理性のある快楽殺人者だろうと囁いていた。……何だか自白させる前に自害しそうな気がする。放置するのも危険だがどうするか微妙に悩んだ。

 

「良いわ。……今のザナドゥは貴方の我儘のお陰で成り立っているんですもの」

メアリはザナドゥをそう評価した。……私の我儘で過去の後ろ暗い事とか放り投げてザナドゥの人員を勧誘しているのはあった。

私がミケランジェロの詳細を追求したらザナドゥ内部の暗黙の取り決めを破った気がするので躊躇われた。

 

当然だがメアリも大分厄ネタである。絶対諦めないウーマンである。メンタルがオリハルコン並に強い。

……ちなみにメアリは過去の事件で手に入れたという『完全な紅茶』と評されるロストテクノロジーを復活させていたりする。メアリはそれを自分だけで飲んでいる。

その為、彼女に下手な紅茶を出すよりは私が美味しいと思う物を出していた。ベラはそれを知らないので普通に紅茶を淹れて出している。

メアリが拒否しているのを見たことがないので紅茶ならば大体何でも良いのかもしれない。

どうでも良いがメアリは以前、ラクスから学んで紅茶を飲み始めた私に文句を言ってきた。

 

……彼女が本気でキレたら誰にも止められないだろう。

メアリ・クリスティは私を殺せる可能性がある一人である。私はその事を極めて高く評価していた。

放置しても何とかなる気がする。頭がスッキリした私は日本の銀座に現れた奴だけメアリに教えておく事にした。

 

日本支部は地熱発電と非核動力の旧式艦建造で忙しく働いていた。嘗ての潜水艦大国だから潜水艦を投げても良い。

オーブ連合首長国の企業と違ってキチンと取り決めを守ってくれそうだった。

……日本はスパイ天国なので防諜はザナドゥが強化しないといけない。悪意が無くても漏らすタイプであるがこちらが防げば問題ない。

 

……ユーラシア連邦の大統領からも旧式艦建造の申し込みが来そうである。

あの無茶振り大統領は潜水艦は大体何とかなったからという理由で言いそうだった。

今確信したが、大統領はザナドゥで非核動力戦艦を作れとか間違いなく言う。

 

今、インフラ整備で忙しいので後にして貰いたいが旧式艦でもノウハウを蓄積しているザナドゥにも声はかかってくるだろう。

核動力前提の知識ばかりである既存の軍艦を造船している企業群よりも下手すればザナドゥの方が水中用の戦艦のノウハウがあるかもしれない。

……流石に一から宇宙母艦を建造するのはまだ無理だが、アガメムノン級宇宙母艦の複製ならばいけた。

権利侵害なので開発部の研究用以外では作るつもりはない。……緊急時は使うかも知れないがそれは後で謝る。

 

大西洋連邦に関しては迂闊に手出し出来ない。……インフラ整備事業に莫大な投資をしてくれたマイケル君もいるので放置はしないが。

だが、大西洋連邦軍はもう博物館からでも何でも引っ張り出せば良い。気になるがどうにも既得権益で煩いし、ザナドゥが兵器関連で何もしない方が良かった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。