極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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コズミック・イラ70年4月1日 エイプリル・フール・クライシス②

コズミック・イラ70年4月1日、オペレーション・ウロボロスの端緒となるNJ投下作戦は当初の目論見とは裏腹にザフトは手こずっていた。

 

……ある程度近づけばNJをバラ撒くだけなのだが、その後の大洋州連合への降下作戦まで考えると地球連合軍の守りが固かった。

ザフトは世界樹を崩壊させて地球連合の宇宙軍への輸送網を破壊することには成功していた。

 

だが、MAアルカと偵察型メビウスの組み合わせからなる新しい輸送網が構築されていた。

既存の輸送艦による物資輸送と平行してMAアルカによる補給支援が行われていた。

MAなので輸送艦よりも見つかりにくく、一つ破壊しても他でカバー出来る輸送システムだった。

ザフトはアルカの敗残兵回収を厄介に考えていた。だが、アルカの真価は輸送や補給にあった。

 

良くも悪くも地球連合の政争のせいでアルカは真価が発揮出来なかった。敵も味方もザナドゥ代表を無視するので気づかれなかった。

……世界樹攻防戦の敗北と第13艦隊ペルミノフ少将の派閥の口添えでどうにか成立した。

ここに至るまで本来の性能を出せなかった分、ザフトの想定外の地球連合軍の大艦隊が成立していた。

MAアルカは簡単な補給拠点を作成する事ができた。その為に運用するならば小天体か大きめのデブリでもあれば十分だった。

……輸送艦ではこうはいかない。輸送艦が行き来すれば存在がバレるし、小回りが効かない。

アルカが隠れながら出入りできる小規模な補給基地を設置できた。

勿論、正規の施設ではないので損傷した艦の補修や改修は不可能である。だが、戦闘の間だけ補給できるだけで十分効果があり問題ない。MAサイズの簡易な軍事基地が設置できた。

 

デブリでも何でもそれなりの大きさがある等の条件さえ整えば簡易な拠点が作れる。……これは今までザフトがやってきた事でもあった。

MSジンは多目的用途で使用可能であり、作業用の重機の代わりに簡単な拠点を後方に設置していた。

ザナドゥ代表やペルミノフ少将はザフトの手口を真似ていた。

MAアルカという輸送に特化した機体でやれば重機の輸送も可能であり、多目的用途に使用可能なジンよりも効率では上だった。

ましてや前々から準備できる防衛戦では小天体に物資を仮置きしておくだけでも戦闘に際して使えた。

……物資をそのまま放置するのは不味いので定期的に見回りが必要だが、それは旧式艦でも使えば問題なかった。設置した位置さえ分かれば奪われた際にも警戒出来た。

ザフトからすると厄介であるが、無理に攻撃するまでは悩ましい非効率的な仮設基地であった。

何せ防衛側が放棄するならば拠点の内部から爆破する事で簡単に処分できた。ザフトが攻撃して得る物は残骸である。

防衛する側からすれば継戦能力を高めてくれる小規模な軍事基地であった。

 

それは他の防衛戦でも同じであった。L4宙域の資源衛星『新星』の防衛戦では小天体で簡易的な防衛陣地を築きながら対応していた。

質量がある小天体はザフトの主砲でも破壊するのは面倒だった。

人工的な建造物ならば中身がスカスカであるが、中身が重い石で出来た小天体を破壊するとなればそれなりの時間がいる。

 

 

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L4宙域『新星』はザフトの陽動部隊に攻め込まれていた。本命の地球侵攻に際して地球連合軍側の戦力を割く為に先に攻め込んでいた。

地球連合軍が補給を考えず有象無象を集めていたらあわよくば確保出来るかもしれない程度であり、ザフトも本気で攻め込んでいるわけではない。

だが、攻め込んでいるザフトの艦隊はそのあわよくばを新星を確保してザフトの軍事拠点として組み込みたいと考えていた。

 

資源衛星『新星』を守るのは第13艦隊と地球連合軍特別技術合同研究機関の実験部隊であった。

第13艦隊は新星近辺の小天体の近くで交戦していた。敵を引き付けて一気に攻勢を仕掛けて撤退させる計画だった。

……第13艦隊・司令官ペルミノフ少将及び傭兵部隊Xカナード達はザフトが新星を本気で攻め込んでいるわけではないと看破していた。

だが、確保できるならば確保したいと考えている彼らに痛い一撃を加えないと撤退してくれないとも察していた。

資源衛星の存在は地球にとって重要だった。……この後、NJが投下されようが核報復だろうが重要な拠点だった。復興の為の資源である。

第13艦隊の面々は地球の重力に後ろ髪が引かれるような感覚を抱きつつも、地球の為に奮戦していた。

 

「各員、まだ待機だ。……出るのは私の合図を待て」

実験部隊のジャン・キャリー少尉は部下に声をかけた。彼らは小天体に隠れて強襲する隙を伺っていた。

……恩ある第13艦隊の面々が奮戦しているのに自分達はまだかと部下達は焦っていた。

キャリー少尉自身も援護射撃の一つでもしたいが、タイミングというのはあった。

第3艦隊のセオドアの糞とは違い、詳細な作戦を提示してキャリー少尉の判断に任せていた。

自分達は信頼されていた。だからこそ、キャリー少尉も動きたくなる衝動に耐えて隙を伺っていた。

 

「陽電子リフレクターを作動させ、敵本陣に突撃する!敵指揮艦に向け主砲を放て!」

傭兵部隊Xカナードは宇宙母艦オルテュギアに指示を出し、敵の本陣に突っ込んだ。

……強引だが突撃により敵陣には穴が空いた。キャリー少尉は今が好機と察した。

 

「オルテュギアの切り開いた敵陣に突撃する!皆、準備は出来ているな!」

キャリー少尉は突撃の指示を出した。カナードの乗るオルテュギアからも白く塗装された地球連合軍のジンが出てくる。

混乱に乗じて合流し、敵指揮艦を撃墜させる。警戒していても今まで隠れていた分だけ相手は動揺した。

 

第13艦隊は資源衛星『新星』をザフトからの防衛に成功した。

現段階では特別な兵装である陽電子リフレクターもギリギリまで温存しておいたのでザフトにもバレなかった。

……それよりも少数とはいえ地球連合軍からMS部隊が投入された事を問題視した。

鹵獲されたジンで奇襲しただけである。 しかし、決定的な瞬間まで温存していた。

本当の意味でコーディネイターに自分達の運命を託すような運用をする第13艦隊・司令官ペルミノフ少将は地球連合軍でも異質な存在とザフトから警戒される事となった。

 

 

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他方、地球では第5艦隊・司令官ドミトリー・コンスコイ中将が戦死した。

ザフトのエース達は地球連合軍の総司令官を直接叩く事で地球連合軍を混乱させる作戦を取った。

第6艦隊・司令官のジョン・マケイン少将は総司令官の戦死に混乱し、第7艦隊はそれに巻き込まれた。

この状況を見た第8艦隊・司令官ハルバートン准将は混乱を鎮める為に指揮系統を自分が引き継ぐ事を宣言した。

混乱する味方を纏めるには誰かが声を挙げなければならないと判断した。

第7艦隊・司令官エルド・ガブリエル少将は一瞬悩んだが、旗下の艦隊を第8艦隊の指揮下に入れる事を同意した。

ガブリエル少将は第5、第6艦隊の混乱を鎮める事に専念した。

 

……武器弾薬が充実していても古典的でいてどの時代でも有効な首刈り戦術を成功されてしまえば、軍隊は混乱した。

マケイン少将率いる第6艦隊はザフトのエースオブエースに不慣れであり、あまりの理不尽に恐慌状態に陥っていた。

だが、ザフト側もエースを使い潰すような作戦を取り、痛手を負った。その分だけ価値はあった。

後にザフトから『智将』と言われるハルバートン准将はここから巻き返しを計ったものの、NJ投下はバラ撒きであり防ぎ切る事は出来なかった。

 

ザフトはエースを使い潰すような首刈り戦術を取り、地球連合軍を混乱させた。

ただ、その分の効果はあった。ザフトは敢えて一旦引いて見せる事にした。ザフトは首刈り戦術で総司令官を戦死させた。元軍隊出自の古参兵達は地球連合軍の混乱を確信した。

同時にこれから取る戦術にエース達が同意するか悩ませた。

……ザフトは中間管理職として極めて優れた調整力を持つクルーゼの能力を知る事になる。

 

クルーゼはザフトのエースに死ねと言わんばかりの作戦に呆れたが何とか生還、クルーゼ隊の母艦ヴェサリウスへ帰艦した。

NJ投下時にムウと交戦したが、最初から交戦していたら自分も切り上げ時を間違えて戦死していただろうと反省した。何だかんだで直接対峙してしまえばムウへの憎悪がクルーゼの冷静さを上回った。

ムウはメビウス・ゼロを操るのでクルーゼ以外では危ういというのもあった。

……ザフトのエースが何人か戦死してしまったのはかなり痛い。これは数で測れない損失だった。

そして、そんなエース達を犠牲にして得た地球連合軍の混乱した隙を利用して地球連合軍へ被害を与える作戦も敵の智将に妨害された。

そんな屈辱的な撤退だが、一度引くのはクルーゼは賛同した。クルーゼはエース達の犠牲を無意味に帰すような行為と言う主張も理解した上で両者の調停をした。

 

「やらしい手口だ。だが、犠牲があるからこそ有効だ」

クルーゼは狡い古参兵を皮肉を込めて称賛した。

エース達のトップであるという立場からこのような事を言うがクルーゼからすれば引くのが最善手であった。

 

「NJ散布の影響で愚劣なナチュラル……地球連合が混乱するのは目に見えている。皆、忘れてはならないがザフトは一旦引いただけだ」

クルーゼは生き残りのエース達に声をかけた。落ち着いて冷静にコーディネイターという種族に語りかけた。

……分類上、ナチュラルであるクルーゼがこんな事を言うのを内心で嘲笑った。

 

「翌日には大洋州連合・オーストラリア州の湾、カーペンタリアに強襲を仕掛ける。……我が身を最優先で守りたい愚かな地球連合は自分達を守るように折角集めた戦力を分散させなければならない」

クルーゼが冷静にさせたエース達にここまで言うと優秀な彼らは理解を示した。

……確かに判断して引けるのは優秀なのだが、簡単に乗せられすぎていないかとクルーゼは不安になった。

 

地球連合軍は万が一のある可能性に逆らえない。

だが、命令に従えば、大軍であるという最大の長所を地球連合軍は失った。

地球連合軍にとっては致命的な隙が出来た。そして、ザフトにとっては突破口であった。

これが上手くいくと確信出来るのは総司令官が戦死して指揮官が減ったのは大きい。

万が一、狙いが親プラント国、大洋州連合であると見抜いてその軌道上に艦隊を構える事が出来たとしても少数だった。

 

 

クルーゼやザフトの軍人上がりである古参兵達の想定通り、NJ投下でパニックに陥った地球連合から戦略的重要拠点であるマスドライバーの軌道上を守れと司令官達は命令された。

結果、第5、第6、第7、第8艦隊は戦力を分散してマスドライバー基地の軌道上に戦力を配置せざるを得なかった。

……纏まっていればカーペンタリア制圧は防げただろうとハルバートン准将は後に嘆いた。

だが、マスドライバーを優先して守るのは理解出来るので命令に異議を唱える事は出来なかった。

マスドライバー確保よりも地上の拠点確保が狙いと気付けていても出来なかった。

核動力が完全に潰えた以上、宇宙への出入り口となるマスドライバーを万が一でも取られるわけにはいかなかった。

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