書いてみたかったんですよ、こういう系のを。
別に帝国艦隊をサボってるわけじゃ無いんですよ許してくださいお願いしま(以下略
ゴホン…まあ、前置きはこれぐらいにして、本編レッツゴー
これは、たった一つの手紙が紡いだ物語。
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2021年7月6日、俺は何か本を借りてこようと、昼休みに図書室へと向かっていた。7月の広島は当然と言えば当然だが蒸し暑く、少し移動するだけで体から汗が出てくる。
少し早歩きで廊下を進み、図書室の前に着く。上履きを脱ぎ、靴箱に入れてから扉を開ける。その瞬間、中からひんやりとした空気が自分の肌に届き、爽快感を覚える。中に入ると、先ほどの暑さは何処へやら、非常に涼しい空間となっていた。中には図書委員と数人の先客と先生が一人おり、勉強をしていたり、本を読んでいたり様々なことをしている。
周りを観察するのはほどほどにして、俺は本を探そうと本棚を眺める。そこから数分が経っただろうか、数学・物理の本がたくさん置いてある本棚のところに、本と本の間からはみ出しているなにかがあったのだ。
(ん?なんだこれ?)
そう思い、はみ出しているなにかを手に取る。そのはみ出している何かの正体は手紙だったようだ。「なぜこんなところに手紙が?」と思った俺だったが、下手に触ったりするのも気が引けたので、その時はすぐに元の場所に戻し、その近くにあった物理の本を読むことにした。
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そろそろ休み時間が終わろうかと言う頃。俺は読んでいた本を元の場所に戻そうとした時、またあの手紙が視界に入ってくる。少し考えた後、なぜか俺は手紙を持って帰ろうと考える。手紙を戻そうとした本に挟み、その本を図書委員の元へ持っていく。
「これ、借ります。」
「分かりました。クラス番号と名前は?」
「3年1組16番中浦龍二です。」
そう言うと、図書委員がクラス全員の名前やクラス番号などが書かれた紙を取り出し、俺を探す。見つけると、その横に書いてあるバーコードを読み取り、次に本のバーコードを読み取る。
「はいどうぞ。」
「ありがとうございます。」
受け渡された本を持ち、図書室を出る。廊下に出ると体感気温が一気に上がり、汗があふれ出てくる。上履きを靴箱から取り出し、適当に廊下に置いて履く。こんなクソ暑い廊下に必要以上に居たくない俺は、来た時と同じように、早歩きで教室へと戻るのだった。
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学校が終わり、いつものように帰路に着く。すると、近所のおばちゃんが声を掛けてくる。このおばちゃん91歳なのだが、正直91歳とは思えないくらい元気な声で話しかけてくる。
「やあ!元気かい龍ちゃん!」
「元気だよー、おばちゃん。」
「そっけない返事だねえ、寂しくなっちゃうじゃない。」
「疲れてるんだから許してくれよ。」
「そんなもんかねぇ...じゃ、またね。」
「うん。ばいばい。」
そう言い、近所のおばちゃんと別れる。両親によると、俺が幼いころから気にかけてくれていたらしい。俺からしたら、実のおばあちゃんみたいな感じだ。...ちょっと元気すぎるけど。
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家に帰ってからしばらくした後、俺は自分の部屋で手紙を取り出す。手紙の中には何が入っているのだろうと、少しワクワクしながら中身を見てみる。だが、中に入っていたのはただの古い紙だけだった。文字が書いているわけでもない。
「はぁ~...ワクワク返せよ...」
そんな独り言を言いながら古い紙を眺める。
(...俺が何か書いて、また学校に置いといてやろうかな?)
紙を眺めていると、俺はそんな考えが浮かぶ。そうと考えるとやるしかない、と早速紙を取り出して、“この手紙を見た人がいたら返事をしてください”と書いた。その紙を手紙の中に古い紙の代わりに入れる。
(明日、ちゃんと戻すことを覚えとかないとな。)
そう思いながら、俺はその日を終えた。
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次の日の朝、俺は学校に行く準備をしようと、荷物を整理していた。
「これで、よし...っと、手紙をちゃんと入れとかないとな。」
独り言を言いながら手紙をカバンの中に入れようとする。その時、持ち方が悪かったのか、手紙の中身が外に出てしまった。
「おっといけね...って、ん?」
だが、外に出たものは俺が昨日入れた紙ではなかった。古ぼけた、文字の書いてある手紙。不可解な現象に俺は困惑する。
(えっ?でも俺昨日ちゃんと...えっ?)
昨日ちゃんと紙を入れた記憶があるので、誰かが中身を入れ替えたぐらいしか説明がつかない。とりあえず、難しいことは考えないことにして手紙に書かれていることを読んでみる。
“
?誰はたなあ。澤西は私、てしまめ初
”
最初は何が書いてあるかわからなかったが、歴史が好きな俺はすぐに右読みであることに気が付いた。
「初めまして、私は澤西。あなたは誰?...か。誰だよ西澤。」
すぐさまツッコミを入れる。俺はこの不思議な現象を解き明かそうと、手紙に細工がされていないかなどを確認していたが、そういった類のものは一切見当たらなかった。そうこうしている間に時間は流れ、もう家を出なければ行けない時間になっていることに気づいた。
「やっべ!早く行かなくちゃ!」
とりあえず手紙を元に戻し、カバンの中に入れておく。
「行ってきまーす!」
そう言い、一旦は学校へと向かった。
ーーーーーー
昼休み、再び俺は図書室に居た。右手に持っているのは、昨日借りた本とその中に挟んである手紙。俺は図書室の端っこの席で本を開く。
(うーん、なんで入ってたんだろうこの手紙...)
手紙を本から取り出し、手紙の中身を再び見る。
(そもそも何で右読みなんだ?ミリオタか歴史オタクかよ。)
そう思いながら手紙を見る。そして、見ているうちに返事を書いてみようかなと思う。俺は、なぜか内ポケットに入っているシャーペンを取り出し、手紙に返事を書く。
“
こちらこそ初めまして、私は中浦。最近暑いですね。
”
今は生憎、新しい紙を持っていないので、直接古い紙に書き込む。書き込み終わった後、中に手紙を戻す。そもそも、返事が返ってくるかどうかすら定かではないのに、内心どんな返事が返ってくるのか楽しみで仕方がなかった。
ーーーーーー
その日の夜、俺は部屋にカメラを仕掛けてから寝ることにした。手紙の返事を書いている奴を特定するためだ。そもそも、どうやって入ってきているのかも見当がつかないし、手紙の返事を書くためだけに毎晩毎晩、自室に侵入されるのは怖いし迷惑だ。だが、そんなことを思いつつも、心の中でちょっぴり「どんな人が返事を書いているのだろう。」とか「どこから侵入しているのだろう。」とか興味が湧いているのだが。
ーーーーーー
次の日の朝、いつもより一時間ほど早く起きる。そして、起きるなり早速手紙の中身を確認してみる。すると、手紙の中身は違うものに入れ替えられていた。中に入れられていた古い紙はさらに古い紙になっている。だが、書いてある文章は昨日まで書いていたものに付け足したようになっており、どうしてこんなことをするのかが気になるが、とりあえず文章を読んでみる。
“
。すまいざごうとがりあ事返、んさ浦中
。すましいがねお事返たま、らたっか良。ねすでい暑近最にかした
”
また、右読みの文字で返事が返ってきた。こちらとしては読みずらいことこの上ない。
「えーっと...中浦さん、返事ありがとうございます。確かに最近暑いですね。良かったら、また返事おねがいします。...か。文字の質感的に、西澤さん?は女子みたいな感じに思えてきたな。ミリオタか歴史オタクの女子...うん、悪くない。」
勝手に想像を膨らませながら手紙を読む。そしてその後、自分の部屋の様子を撮影した映像を確認する。
「さてと、どんな人かな?」
録画時間は7時間強ほどであり、確認するのにはめちゃくちゃ時間がかかりそうだ。とりあえず、一時間ほどかけて確認できるところは確認しておく。淡々と流れる自分の部屋の映像。自分の寝相も伺え、「俺って結構寝相悪いな。」と思った。だが、肝心の手紙の返事を書いている相手が一向に現れない。そうこうしている間に、朝の準備をしなければいけない時間になったので、映像を見るのをやめた。
ーーーーーー
学校が終わり、家に帰ってくると、再び作業を開始する。だが、映像の全てを見ても犯人は現れなかった。
「...は?」
映像を見終わって出た言葉はそれだった。常識的に考えてあり得ない。手紙に触れもせず、手紙がどうかした様子もなく、中身を入れ替えるなど。この時ばかりは本当に「神様っているのか...」と思った。だが、しばらく時間をおいて冷静になり、この現象の法則性と返事を書いている相手の特定をしようと考える。そして、新しい紙を取り出し、文章を綴る。
“
貴方は何処に住んでいるのですか?私は広島市に住んでいます。
”
この質問に返答が返ってくるかはわからないが、とりあえずその日を終えることにした。
ーーーーーー
次の日、俺は昨日と同じく、起きるなり手紙を確認する。手紙の中身は、昨日入れた紙ではなく、古ぼけた紙になっており、それを見た瞬間返事が返ってきたのだと察する。そして、どのような返事が返ってきたのかを中身を出して確認する。
“
。よすでんるいでん住に市島広も私
。すでいたみてっあかつい
”
今回も右読みの文。どうやら、彼女は俺と同じ広島県に住んでいるようだ。「いつか会ってみたいです。」か、できるものなら会ってみたい。そう思いながら俺は返事を書くことにした。
“
私も出来るものなら会ってみたいです。
”
その紙を中にしまう。その後はいつもと同じように準備をし、学校へと向かった。
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場所は再び昼休みの図書室。今回は、手紙とは関係なく普通に本を読みに来た。
「これで良いか。」
手に取った本は近代日本史の本。読み進めていくと、明治維新や日清戦争、日露戦争、大正デモクラシー、関東大震災、昭和恐慌、大東亜戦争など、たくさんのことが説明されていた。そして、最後の方に本の特典なのかどうか知らないが、ミッドウェー海戦を報じる当時の新聞が挟んであった。古ぼけた紙にびっしり書かれた文字。俺はそんなものが挟んであるとは知らなかったので、ラッキーと思いながら手に取る。そして、手に取った瞬間俺は似たようなものを掴んだことがあるような気がした。
(ん?この感触...手紙?)
そう、手紙だ。毎回返事が送られてくる、あの古ぼけた手紙。それに非常に感触が似ている。その時はただの偶然か、とそれ以上考えるのをやめた。
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家に帰って、朝出した手紙を見る。
(まさかな...)
とりあえず、そのことは置いておいて、別で確かめたいことがあるので今日はそれを検証する。とりあえず、手紙の中身を出してみる。中に入っているのは、朝に入れたものと同じだった。
何を確かめたいのかと言うと、いつ手紙の中身が入れ替わるのかと言うことだ。毎朝、起きると入れ替っていたことから、夜のどこかの時間で入れ替わっていると予想を立てたのだ。その予想を確かめるべく、今日は夜中ぶっ続けで、手紙の中身を逐一確認するという地獄の様な作業をする。
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作業を開始してから約一時間、現在時刻は11時59分。と思っている間に12時丁度になった。手紙の中身を見てみると...古い紙と入れ替わっている。これで、12時丁度に入れ替わることが分かった。ついでに、手紙の中身が入れ替わるとき、何か兆候のようなものはないということも分かった。そして、早速中身を確認してみる。正直、俺はこの現象を...いや彼女との文通を楽しんでいた。
“
。すでいしれう
。うとがりあ
”
内容は、彼女からの素直な賛辞で、少し照れてしまった。
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その後も、俺はこの現象を解き明かそうと、彼女と文通を続けた。そして文通を続けるうちに彼女の事もどんどん知っていった。
“
。のな人いくし優くごすはんさ父お
。どけいないはに家てけか出に事仕は今
”
お父さんは仕事に出かけて家にはいない事。
“
。あないたい飼かつい。のなき好が犬は私
”
自分は犬が好きな事。
“
。のるてっ困てくな少が物べ食
!よるあいぱっいもとこいし楽もで
”
毎日食べ物が少なくて困っている事、それでも楽しいことはたくさんある事。ちなみにこの日から手紙と一緒に食べ物も手紙に入れるようになった。
“
。のたっゃちし嘩喧、ていが達友に校学女等高
?なかいいらたしうど
”
高等女学校に通っている事、友達と喧嘩しちゃった事...。
彼女を知っていくうちに、俺は彼女の居場所も分かった。学んだゆえに、分かってしまった...多分76年前の、1945年の広島だ。どうやら、日付は同じらしい。それも文通をしている間に分かった。
...でも、そんなことはどうでも良かった。この現象を解き明かすという当初の目標を俺は忘れていた。いや、最初から「この現象を解き明かす。」などと理由を付けて、結局は“彼女との話”がしたかっただけなんだ。
...ただ、楽しかった。朝起きて、手紙を開いて、学校に行って、帰ってきて、返事を書いて、明日を待つ。彼女から返事が返ってくるのが、彼女と会話をしているのが、ただただ楽しかった。顔も見たことがない彼女とのやり取りは、俺も人生を彩ってくれた...。だが、生憎俺は歴史を知っている。1945年の広島がどうなるかを。彼女とのやり取りができるのも短い期間であることを...。
一夜を超えるたび、彼女のタイムリミットは近づいていく。寂しかった。まともに女子と会話すらできない俺と文通という手段で話してくれた彼女がいなくなるというのは...寂しかった。
ーーーーーー
8月4日、向こうの歴史が史実と同じならば、今日が彼女と話せる最後の時だ。いつもは楽しい学校の帰り道も、今日は帰りたくはなかった。1日が過ぎてしまう、彼女がいなくなってしまう。どうしたら彼女を救えるだろう、いや、そもそも彼女を救ってもいいのか?タイムパラドックスが起こってしまうのではないか?。家に近づくごとにどんどん歩幅が小さくなる。その時、後ろから声をかけられた。
「そんなに暗い顔して、どうしたんだい?」
声の主は、近所のおばちゃん。
「…いや、テストの点数が悪かっただけだよ。」
俺は、咄嗟に嘘をつく。言ったとしても、信じてもらえるわけがない。過去の人間と…彼女と文通をしていることなど。
「…彼女と話せなくなるのは悲しいかい?」
「えっ….?」
おばちゃんから発せられる言葉に、俺は困惑する。バレていたのか?どうして知っているんだ?
「お母さんから聞いたんだよ、毎日誰かと文通をしているって。」
「…はは、バレてたんなら言ってくださいよ。」
お母さん経由ということに疑問は晴れる。どうやらいつの間にか見られていたらしい。
「…で、何かあったのかい?」
優しくかけられるその言葉、俺は別に話しても良いかと思い、これまであったことを全て話した。
ーーーーーー
まだ一ヶ月にも満たない彼女との思い出。俺にとってはかけがえのないもの、それをおばちゃんに全て話した。話終わった後、おばちゃんは質問をしてくる。
「で、助けたいのかい?」
「え?」
おばちゃんはそんなことを言う。そりゃ助けたい、彼女に死んでほしくない。助けられるものなら助けたい。そう思う俺におばちゃんは間髪入れずにいう。
「だから、タイムパラうんたらとか難しい話は置いといて、龍ちゃんは彼女に助かってほしいのかい?」
…俺は…もうわかっていたのかも知れない。ただ、彼女に生きていてほしいと、心の内から願っていることを。
「…助かってほしい、助けたい。」
「それが龍ちゃんの答えだよ。ならさっさと帰りな。」
「うん、ありがと。おばちゃん。」
そう言い、俺は家に帰る。助けたい、その一心で。
ーーーーーー
家に帰って、部屋着に着替える。そして、紙に文章を綴っていく。ついでに、遊び心を入れてみる。最後だし、別に良いだろう。
“
あなたと文通を初めて、もうすぐ一ヶ月ですね。
今この瞬間も含めたこの期間、私の人生はとても楽しいものになりました。
しかし、私は知っています。あなたと文通できるのが、きっとこれで最後だということを。知っ
てしまいました。信じられないかも知れませんが、8月6日。広島はたった一発の爆弾で壊滅す
るでしょう。だから逃げてください、あなたには生きてほしい。
最後に送る手紙にこんなことを書いてしまって申し訳ありません。
でも、あなたには生きて欲しいのです。
また文通でも良いので、話せるならまた話したいです。
本当にありがとうございました。
"
そう書いた紙を手紙に入れる。第一のメッセージはもちろん、第二のメッセージも届いてくれたら嬉しい。
ーーーーーー
次の日。
手紙の中身を見ると、そこには何も入っていなかった。
「…」
手紙は届いたのだろうか?彼女は無事だろうか?そんなことを考えながら、いつも通り手紙を書いてみる。
“
無事ですか?
"
それを中にいれ、次の日を待つ。せめて無事ぐらいは確認したいものだが、こちらから確認する術はない。彼女が返事をくれるぐらいしか…。
ーーーーーー
次の日の朝、手紙を開けてみる。中にあったのは、昨日入れた“無事ですか?"と書いた紙。どうやら、
「…おかしいな、目から水が…」
その水はますます勢いを増す。もう耐えられなくなった俺は、出しっぱなしの布団に顔を埋め、泣いた。
ーーーーーー
その後、晩飯を食べていると、お母さんからあることを言われる。
「部屋で泣いていたようだけど、どうかしたの?」
その発言に、俺は少しドキッっとするも、お得意の嘘で乗り切る。
「いや、机に足の小指ぶつけだだけ。」
「そう、ならいいけど…」
そこで会話が終わると思われたが、母はまだ質問をしてくる。
「そういえば、結構前から部屋に手紙を置いているけど、誰かと文通でも始めたの?」
その質問に、俺は少し疑問に思う。俺が手紙を書いているのを、知っているんじゃ無いのか?と。
「…いや置いてるだけ。」
「そう…」
とりあえずこれもその場の嘘で乗り切る。だが、俺の中には先ほどの疑問が残った。
ーーーーーー
「どうゆう事だ?おばちゃんが知っていて…母さんが知らない?」
彼女の安否と共に、その日は、その事もすごく気になった。夜も眠れないぐらい。まあ、彼女の安否がわからなくなってからは、よく眠れない日々が続いているのだが。
ーーーーーー
そこから数日後、俺がいつも通り家に帰っている最中、近所のおばちゃんと出会う。
「やあ、龍ちゃん。元気かい?」
本当は元気じゃないが、とりあえず答えておく。
「元気だよ。」
「…嘘だね、元気じゃない顔をしている。」
「…」
おばちゃんに思考を読み取る特殊能力でもあるのかと疑いたくなってくる。
「…そんなに彼女の安否が心配かい?」
「!…」
その言葉に、俺は返答を返す。
「おばちゃん…いや、あなたは、一体何者なんです?」
「…私の口から言うより、これを見た方があんたは理解が早そうだ。」
そう言うと、おばちゃんは懐からあるものを出す。何度も見てきた、たった一つの手紙。なぜあなたがそれを?そんなことは考えなかった。俺は、その手紙を受け取る。そして、中身を見てみる。いつも通りの古ぼけた紙。そこに書かれた文字。
“
うとがりあ
"
書かれていたのは、その五文字だけ。だけど、心が安堵に包まれれる。
そして、おばちゃんの正体も判明する。
「あなた、だったんですね…無事で…良かったです…!」
「…本当に、ありがとね。」
姿は当時のものでない。でも、目の前にいるのは、正真正銘、彼女だ。俺と文字を交わしてくれた、たくさんのことを教えてくれた、彼女だ。
ーーーーーー
そこから、暫く経った後。
「手紙を書いてみようと思って。でも、文章が思いつかないから、とりあえず白紙を入れておいたんだ。そしたら返事が返ってきてね。」
「この手紙を見た人がいたら…返事をください。みたいな感じでしたっけ。」
「この手紙を見た人がいたら返事をしてください。だね。最初は本当に驚いたよ。」
「ええ、俺もです。」
「そこからの日々は楽しかったねえ。」
「ええ、俺もです。」
「途中からお菓子も一緒に送ってくれてたのも助かったねえ。」
「試しに入れてみたら送れましたから。」
「ま、積もる話はここら辺にしようか。」
「ええ、改めて、無事で良かったです。」
「ああ、そうだねえ。」
「じゃ、俺は帰ります。」
そう言い、地面に置いた荷物を持つ。そして、帰ろうという時、彼女…いや、今はおばちゃんか。おばちゃんが言ってくる。
「…最後の手紙は今も取ってるよ。」
「…?…っ///」
「嬉しかったよ、当時はね。」
「…ありがとうございました。」
「ふふっ、可愛いねえ。それじゃ。」
そう言い、おばちゃんは手を振る。
「…さよなら。」
俺も手を振りながら、それだけ言い、帰る。
その日の帰り道は、いつもより気分が良かった。
ー完ー