GT悟空はヒーローガールの片割れとして転生するようです 作:のぞむ
「わぁ~…!」
高原を見回したソラは声を漏らす。
高原一帯には大きな野菜畑が広がっていた。
現在クウ達は休日を利用して、ヨヨが作った野菜畑にやって来ていた。
「これ、全部ばあちゃんが作ったんか!?」
「そうよ」
「今年から始めてこれって…ヨヨさん凄すぎ!」
あげはは驚きつつ自分の感想を口にする。
「といさん!」
するとエルが畑のそばに吊るされている鳥の模型を指差す。
「ヨヨさん、あの鳥はなんですか?」
「あの鳥さんはね、他の鳥さんが野菜を食べてしまわない様に、畑を見守ってくれているの」
スイの疑問にヨヨがそう答える。
「へぇ~。あんなに精巧な鳥の模型を作れるなんて凄いですね」
「フフッ…実はあの鳥さん、ツバサさんが作ってくれたの」
「えっ?」
「え、えっと…航空力学の研究の過程で少し作り過ぎちゃったんです。そしたらヨヨさんが欲しいと言ってきたのであげたんですけど…畑に使うって言ってくれたらもっとちゃんと作ったのに…」
「十分凄いわよ」
「オラもそう思う!あんな立派な案山子なら鳥も野菜に手を出せねぇさ」
「あ、ありがとうございます」
ヨヨとクウからそう言われ、ツバサは素直に礼を言う。
それから一同は野菜の収穫を始める。
まずはトマトの収穫から始めるようだ。
「トマトはな、尻の方に星みてぇな模様がある奴が甘ぇんだぞ」
「あら、クウさん詳しいわね」
「確かに、さっきも案山子の事を知っていたし…」
「へへっ、これでもオラ、前世じゃ農家やってたんだ!」
「えっ!?クウちゃんって前世で農家やってたの!?」
「初耳だよ~!」
「私もです!」
あげは、ましろ、ソラはそう言って驚きを隠せずにいる。
クウの前世。孫悟空は働いてない無職だと思われがちだが、前世の妻であるチチとの約束もあり、魔人ブウとの闘いからブウの生まれ変わりであるウーブを連れて出ていくまでの十年間は農家としてしっかり働いていたのだ。もちろんその間コッソリ修行もしていたらしいが…
「フフッ、そういう事なら頼りにしてるわ」
「おう!」
ヨヨからそう言われ、クウはハッキリと返事をする。
ある程度野菜を収穫し終えた一同。エルとカカロットのお世話をあげはとスイに任せ、クウ、ソラ、ましろ、ツバサは新しい種を撒く準備をしていた。そんな中、ソラとツバサがヨヨが持ってきた土を不思議そうに見ていた。
「これは…新しい土ですか?」
「これはね、おばあちゃんが作った肥料だよ」
「えっ?肥料も自分で作ったんですか?」
「えぇ。生ゴミと土を混ぜてしばらく置いておくの。それを繰り返すと、自然の力で栄養満点の土になるのよ」
「凄い…ヨヨさんはどうしてそんなに物知りなんですか?」
ツバサはそんな質問をヨヨにする。
「気になる事を調べ始めると、また新しく気になるものが見つかるの。例えばハーブについて調べていると、ハーブを使ったお料理の事が気になってレシピを調べたの。それでお料理をするとどうしても生ゴミが出ちゃうでしょ?何かに使えないか調べてみたら、肥料を自分で作れるという事を知ったの。せっかく肥料もあるからと思って畑を始めたら、野菜についても勉強するようになったの」
「へぇ~!」
ヨヨが詳しく説明するとクウが関心するように声を出す。
「全部繋がっているんですね」
「えぇ。知りたいという気持ちは、繋がって広がっていくものだと私は思うわ」
ヨヨの言葉にツバサは何やら考え込んでいた。
するとすぐそばからお腹の鳴る音が聞こえてくる。
「あっ…お腹ペコペコです!」
「オラも腹減っちまった~…」
「フフッ…そろそろお昼を食べようかしら」
「そうだね!」
それからクウ達はレジャーシートの上でお昼を食べる事になった。レジャーシートの上にはましろが作ったサンドイッチが並べられていた。
「美味しそうです!」
「これってましろが作ったんだよな?」
「うん!それとこれも!」
そう言って楽しそうなましろが取り出したのは三種類のソースであった。
「ましろさん、これって?」
「ディップソースだよ!採れたての野菜をこれにつけて食べよ!」
「フフッ、それじゃあ頂きましょうか」
「はい!」
ヨヨの号令でクウ達は食事を始めようとする。
そんな中、ツバサはジッと空の上を見つめていた。
「ツバサ、どうしたんだ?」
「…あの、これから雨が降るかもしれません」
「え?」
「こんなに晴れてるのに?」
全員が不思議に思っていると段々と空が雲に覆われ、少量の雨が降り始めた。
「本当に降ってきました!」
「少年、当たったじゃん!」
「本降りになるまえに屋根のある場所に移動しましょうか」
「そうだな!」
そうして屋根のある場所へ避難したクウ達は改めて食事を始めるのだった。
「う~ん!ピーマンをカレーマヨで食べると止まりません!」
「ホントにうめぇな~!あげはも食ってみろよ!」
「えっ!?」
「あげは?」
いつも余裕そうな素振りを見せているあげはが突然焦ってるかのような表情になってしまい、クウが首を傾げる。
「あげはちゃん、ピーマン苦手?」
「い、いやいや!そんなわけないじゃん!私、大人なんですけど!?」
そう言ってあげははピーマンを手に取り、カレーマヨをつけてぱくりと食べる。
「あれ…美味しい!カレーマヨのおかげで食べやすい!」
「あげはちゃん、それ、ピーマンが嫌いな人の感想だよ?」
「アハハ…それにしてもこの雨、いつまで降るんだろ?」
スイは曇っている空を見て呟く。
「すぐに止むと思いますよ?」
「ツバサくん、さっきも天気を当ててたけど、どうしてわかるの?」
「雲を見たんですよ。朝は小さかった雲が、雨を降らせる大きい雲に成長したんです」
「凄いです!ツバサくん!」
「おばあちゃんみたいに物知りだよ!」
「ああ!大したもんだ!」
「そんな…空を飛ぶ為には天気も大師なのでそれを勉強してて…あっ」
「ツバサ?」
「…知りたいという気持ちは繋がっていくものだと、私は思うわ。空を飛ぶ為に勉強していた事が、みんなを雨から守ってくれているわ」
ヨヨの話をツバサは静かに聞く。
「…私ね、何かを学ぶ事と畑は似ていると思うの。学んだ事は肥料になって、あなた達の夢の種を育ててくれる。けれどその種がいつ芽吹くかわからないから、学んだ事は全部無駄だったんじゃないかって不安になるのよね…でも大丈夫。いつか必ず花開く時が来るわ。しかも自分の思いもよらない花が咲く事もある。勉強の為に作った鳥の模型が、畑を守ったりするみたいに」
「ヨヨさん…」
「君達を倒す作戦を考える為に、こんな山奥に来たのに…まさかここで会う事になるとはね」
そこへ聞き覚えのある声が聞こえて、一同が振り向くとそこにはバッタモンダーの姿があった。
「バッタモンダー!」
「これも僕達の宿命か…カモン!アンダーグ・エナジー!」
「ランボーグ!!」
バッタモンダーは鳥の模型にアンダーグ・エナジーを注ぎ込み、ランボーグに変えてしまった。
「あーーーっ!それ、ツバサが作った鳥の模型だぞ!」
「使える物はとことん使う。それが僕のやり方さ」
「っ!…いきましょう!」
『うん(はい)!』
ソラ、ましろ、ツバサ、あげははミラージュペンを取り出し、プリキュアに変身する。
『レディ・ゴォー!』
『ひろがるスカイ!プリキュア!!』
「ランボーグーッ!」
まずはランボーグが羽を飛ばしてクウ達に攻撃を仕掛ける。
「ハッ!」
バタフライがシールドで攻撃を防ぎ、その間にクウとスカイが気弾を、プリズムが光弾をランボーグに放つ。
しかしランボーグは素早くそれを避けてしまう。
「何て素早い動きなんですか!」
「流石ウィングが作った模型だな~!」
「い、いやぁ、えへへ…!」
「照れてる場合じゃないよね!?」
クウから褒められ、照れてしまっているウィングにプリズムがツッコミを入れる。
「私に任せて!二つの色を一つに!ブルー!ホワイト!温度の力、サゲてこ!」
ミックスパレットの力で辺りの温度が冷え込み、その影響でランボーグが凍り付く。
「ミックスパレット、あんな事も出来るんだ!」
「できる!」
「あう~!」
エルとカカロットを連れて離れたところで闘いを見ていたスイはミックスパレットの力に驚いてしまっていた。
「ハァーッ!!」
プリズムが放った光弾は当然凍って動けないランボーグに直撃する。
「いくよ、クウ!」
「おう!」
次にスカイとクウが高くジャンプし、上空にいるランボーグにパンチをしようとする。
しかし、空を飛べない筈のランボーグが突然上昇して攻撃を避けてしまった。
「いぃっ!?」
「えぇっ!?」
「どうして!?凍って動けない筈なのに!」
「上昇気流です!あのランボーグは、上空に向かう空気の流れに乗ってるんです!」
困惑する一同にウィングが説明する。
「だったらオラ達も空中戦だ!いくぞ!」
クウが舞空術で空を飛ぶとプリキュア達もクウに続いて舞空術で空を飛ぶ。
「ランボーグ!」
ランボーグはクウ達に羽を飛ばして攻撃を仕掛ける。
「そんなもん、オラ達には通用しねぇ!」
「クウの言う通りです!」
クウとスカイは目にも留まらぬスピードでランボーグの上空に移動し、ランボーグを地面に叩きつける。
「クウとスカイ、凄い…!」
二人の強さにスイは目を輝かせていた。
「ウィング、バタフライ!」
「はい!」
「任せて!」
「全ての色を一つに!ミックスパレット!レッド!イエロー!ブルー!ホワイト!まぜまぜカラーチャージ!」
「プリキュア!タイタニック・レインボー!!」
「アタック!!」
「スミキッタ~…」
浄化技を喰らったランボーグは浄化される。
「ミラーパッド!OK!」
スカイもしっかりキラキラエナジーをミラーパッドにチャージする。
「クソッ!こうなったら…そろそろあれを使うか」
「ん?」
バッタモンダーは一瞬だけクウを見てこの場から撤退していった。
それから虹ヶ丘家に帰ったクウ達。
夕暮れ時になったタイミングでクウは家を出ようとしていた。
「あれ、クウ?」
そこへ通りかかったソラがクウが家を出ようとしている事に気づく。
「こんな時間にどこに行くの?」
「…ちょっとな、用事が出来ちまった。すぐ戻るから心配すんな」
そう言ってクウはドアを開ける。しかしすぐに外には出ず、ジッとしていた。
「クウ?」
「…ソラ。おめぇは今でもヒーローになりてぇんだよな?」
「えっ?…も、もちろんだよ!」
「そっか…ならでぇじょうぶだ!」
クウは二カッと笑みを浮かべてソラを見る。
「いいか?その気持ちを忘れんな。それさえ忘れなかったら何があってもおめぇは負けねぇ!覚えとけ」
「う、うん…」
「…じゃ、行ってくる!」
そう言ってクウは家を出ていった。
そしてこの日から、クウがソラ達の元に帰ってくる事はなかった…