GT悟空はヒーローガールの片割れとして転生するようです 作:のぞむ
エルレインとの出会いから数日程の時間が流れた。
スカイランドの城から離れた場所にある草原にはカイザリンとカイゼリン、二人の父親であるカイザーの姿があった。
「…来た」
カイザリンがそう呟くと同時に、三人の前にエルレインがやって来た。
「…お父上を説得できたのですね、カイザリン、カイゼリン」
「一番説得を頑張ったのは、カイゼリンだよ」
そう言いながらカイゼリンに視線を移すカイザリン。三人が出会ったあの日から、カイザリンとカイゼリンは数日かけてカイザーを説得していたのだ。
「カイザー…あなたとこうして話せる日が来る事、私は嬉しく思います」
エルレインはカイザーにそう言うが、カイザーの方は先程からだんまりしたままだ。
「…話す前に、一つ訊ねたい」
だんまりしていたカイザーだったが、ここでようやく口を開いた。だがそんなカイザーを見て、カイザリンは違和感を感じていた。
「プリンセス・エルレイン…もしこれが、貴様をおびき出す罠で、余の部下がこの瞬間、都を襲っていたら…」
カイザーがそう告げた次の瞬間、都の方から大きな騒音が聞こえてきた。
「この気…スキアヘッドか!」
カイザリンはすぐさま舞空術で都へ向かおうとするが、突如目の前にアンダーグ・エナジーの球体が現れ、カイザリンは球体の中へ閉じ込められてしまう。カイザリンを閉じ込めたのは勿論カイザーだ。
「お姉様!!」
すかさずカイゼリンがカイザリンの元へ駆け寄って助けようとするが、あろうことかカイザーはカイゼリンまでも球体に閉じ込めてしまった。
「それでも戦いを終わらせたいと!余を許せると言うつもりか!?」
カイザーはアンダーグ・エナジーのビームをエルレインに向かって放つ。それによりエルレインが居る場所が煙に包まれるが、そこからエルレイン…いや、キュアノーブルが飛び出してきてカイザーに拳をぶつける。
「カイザァァァァァァーーー!!」
「そうだ…それが力だ!!」
そこから二人は死闘と言っても良いレベルの戦いを繰り広げていった。この戦いを止めるべく。カイザリンとカイゼリンは球体からの脱出を試みようとするも、この球体には力を抑える効果があるようで、カイザリンでさえも脱出する事が出来ずにいた。
それからカイザーはアンダーグ・エナジーを使って辺りにあった石などをランボーグに変化させるも、ノーブルはマジックアワーズエンドという手にエネルギーで作った剣で切り裂き、ランボーグを浄化していった。
「ハァァァァァーーーー!!」
「ウォォォォォーーーー!!」
ノーブルとカイザーは互いにトドメを刺すべく、走り始めた。動きが速かったのはノーブルの方で、彼女はカイザーに向かって剣を振りかざそうとしていた。
しかし、ノーブルの剣がカイザーを切り裂く事はなかった。切り裂かれたのは、二人の間に入ってきたカイゼリンだった。
「カイゼリン!!」
カイゼリンと遅れて球体から脱出する事が出来たカイザリンは急いで彼女の元へ駆け寄る。切り裂かれたカイゼリンの胸からはアンダーグ・エナジーが漏れ出ていた。そしてカイザリンも感じていた。自分の片割れである妹の気が段々と減ってきている事を…
「そ、そんな…カイゼリン…!」
「わ、私は、なんという事を…!?」
当然愛する娘が傷ついた事で動揺するカイザー。そしてこの戦いを止めようとしたカイゼリンを傷つけてしまった事を懺悔するノーブル
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!」
雄たけびを上げるカイザリンは大きく気を膨れ上がらせていた。
「な、なんだ!?これは…!?」
「あ、あれは…!?」
カイザーは気を爆発させたカイザリンを見て動揺していたが、そんな中ノーブルは感じ取っていた。カイザリンの中に眠る『野獣』を…
「…お父様、これが…これがあなたのやりたかった事なんですか!?」
「っ!?」
父親を問い詰めるカイザリンの眼からは涙が零れ落ちていた。
「俺やカイゼリン。それに民達を守りたかったのはわかっています…けどこんな結末じゃ、本当に無意味な戦いじゃないか!!」
「カ、カイザリン…」
「君だってそうだ!キュアノーブル!君は言ってたじゃないか!戦いが生むのは涙だけだって…カイゼリンは、そんな君の言葉を信じてお父様を説得したんだ。でも君は怒りに身を任せて戦う事を選んだ…これじゃ君はお父様と…アンダーグ帝国と何も変わらないじゃないか!!」
「あ、ああ…!」
「い…良いんです…お姉様…」
そんな中、朦朧とする意識の中でカイゼリンが口を開いた。
「二人を…許してあげて…ください」
「カイゼリン…お前…!」
「お、お父様…私みたいな弱い者でも、お父様を守れた…これで…力が全てじゃないって事に…なり…ませんか…?」
愛する娘の言葉を聞いたカイザーの眼には涙が浮かんでいた。
「お、お父様を…許して…」
カイゼリンはノーブルの方を見て、そう口にする。
「…カイザー!あなたの力でカイゼリンの傷を塞げませんか!?」
「ア、 アンダーグ・エナジーに、そんな力は…」
「出来る筈です!今のあなたなら…!」
「…お父様!」
「…わかった、やってみよう」
朝日が昇る中、カイザリン達はエルレインに連れられてスカイランドの都へとやって来ていた。
「まさか、この力にこんな使い道があったとはな…」
カイザーは自身が抱き抱えているカイゼリンを見ながらそう呟く。彼女の切り裂かれた胸にはアンダーグ・エナジーで塞がれていた。
「皆さん…私は、過ちを犯しました…」
エルレインはスカイランドの民達に語り始めた。
「怒りに身を任せ、戦いが生むのは涙だけという事を忘れてしまいました…でも彼女達が…カイザリン・アンダーグとカイゼリン・アンダーグ…この姉妹達が私達の目を覚ましてくれました。彼女達の勇気と優しさが、戦いを終わらせたのです!」
そう言ってエルレインはカイザリンとカイゼリンの手を取る。
「この夜と朝の間、美しい瞬間に、スカイランドとアンダーグ帝国は和平を結びます!!」
こうして、スカイランドとアンダーグ帝国は争いをやめ、和平を結んだのであった。
それから数日後、カイザリン達はエルレインの誕生日を祝うべく、スカイランドの城を訪れた。カイゼリンはエルレインに彼女を模したお手製の人形をプレゼントとして渡したそうだ。
それからカイゼリンとカイザーは先に帝国へと帰っていき、カイザリン達は城へ残っていた。
「ごめんなさい。あなただけ残ってもらって…」
「良いんだ。気にしないで」
カイザリンはエルレインと向かい合って椅子に座っているが、カイザリンはどこかバツが悪そうな表情をしていた。
「…この前はゴメン。やっぱり言い過ぎたよな…」
「気にしないでください。あなたの言い分が正しかったのですから…今日は、あなたの話を聞きたくて残ってもらったんです」
「俺の話…?」
「あなたがあの時見せたあの力…あれはアンダーグ・エナジー由来の物ではありませんよね?是非教えてほしいのですが…?」
「…少し長くなるけど、それでも良いかな?」
「はい、構いません」
「…信じられないかもしれないけど、俺は…」
それからカイザリンはエルレインに自身の秘密を語った。自分が前世の記憶を持つ転生者だという事、あの力が元居た世界由来の物だという事、前世での自分の生涯を…
「なるほど…それがあの力を持つ所以という事ですか…」
「信じてくれるのか?」
「はい。あなたが嘘を吐くような人ではない事はわかっていますから」
「…ありがとう。エルレイン」
「…それにしても、前世のあなたは随分と波乱万丈な人生を送っていたのですね。特に子供の頃に首の骨を折られたという話はとても強烈です…よく生還出来ましたね」
「ハハ…カイゼリンにも同じことを言われたよ」
「笑い事じゃありませんよ…」
あまり気にした様子の無いカイザリンに少し呆れてしまったのか、エルレインは溜息を吐いてしまっていた。
それからエルレインと一通り話をしたカイザリンはアンダーグ帝国へ帰ってきた。だが彼女に出迎えはなく、代わりにある人物の気が減っていくのを感じていた。
減っていく気を持つ人物を知っているカイザリンは急いでその人物がいる場所へ向かっていった。
「お父様!!」
そこでカイザリンが目にしたのは、槍で貫かれて倒れているカイザーであった。カイザリンはすぐに彼の元へ駆け寄った。
「カ…カイザ…リン…」
「何があったんですか!?」
「ス…スキアヘッド…だ」
「え…?」
「余は…奴に貫かれてしまった…そして…カイゼリンを…連れていって…ゴホッ!」
「わかりました!だからもう喋っちゃダメです!」
「カ…カイザリン…出来れば余の娘であるお前に…こんな事は頼みたくない…だが…頼む…カイゼリンを…助けてやってくれ…お前の…手…で…」
そう言ってカイザーは目を閉じ、気は完全に消えた。つまり息絶えてしまったのだ。
カイザリンは無言で立ち上がり、カイゼリンとスキアヘッドが居る場所へと向かっていった。
「カイゼリン!」
カイザリンが駆けつけると、カイゼリンはポッドの様な物に入れられており、苦しんでいるようだった。そんなカイゼリンの側にはスキアヘッドの姿もあった。
「…お戻りになりましたか、カイザリン様」
「スキアヘッド!何故お父様を殺したんだ!?」
「…あの男が、アンダーグ・エナジーの本当の価値を理解していなかったからだ」
「なにっ…!?」
「そして、この小娘には偽りの記憶を埋め込み、再びスカイランドを攻め込む時まで、最高の『入れ物』として成長してもらうつもりだ…」
「っ…!」
スキアヘッドの身勝手な言い分を聞き、カイザリンの手は怒りで震えているようだった。
「せっかくだ。お前にも入れ物としての素質がある。この惨めな妹同様「…ろ」…なに?」
「カイゼリンから離れろぉーーーーーー!!!!」
一瞬だった。カイザリンがスキアヘッドに接近し、殴り飛ばしたのは。
「なっ!?」
「ハァァァァーーー!!」
そこからカイザリンはスキアヘッドの腹部に無数のジャブを喰らわせ、蹴り飛ばした。
「ダァァァーーーー!!」
更にカイザリンはスキアヘッドに向かって連続エネルギー弾を当てていった。
「ハァ…ハァ…」
エネルギー弾を撃ち終え、息を吐くカイザリンだったが、彼女には休んでいる時間がなかった。カイザリンはカイゼリンを助け出そうとポッドに近づいていく。
「待ってろカイゼリン!すぐに助け…!?」
突如カイザリンは何かに貫かれたかのような感覚になる。自身の胸を見てみると、カイザーに突き刺さっていた物と同じ槍が突き刺さっていた。
「入れ物は…渡さん…!」
後ろにはスキアヘッドの姿があった。だが彼もかなりのダメージを負っているようだ。息を粗く吐き、右腕にはやけどを負っていた。
「…カイザリン・アンダーグ。貴様は危険な存在だ…ここで始末する…」
カイザリンにトドメを刺そうと、スキアヘッドが近づいてくる。カイザリンはわかっていた。自身が負った傷はかなり深く、もう助からないと…
「…ごめん、カイゼリン」
そう呟いたカイザリンは両手の人差し指と中指を合わせ、額に添える。
「太陽拳!!」
「ぐっ!?」
突如カイザリンから眩い光が放たれ、スキアヘッドはあまりの眩しさに目を閉じてしまう。
「っ…逃げられたか」
目を開けた時には、既にカイザリンの姿がなかった。
「カイザリン!!」
エルレインは城の中にある医務室に慌てた様子で入ってきた。医務室のベッドには手当を受けたカイザリンの姿があった。
何でもエルレインは城の衛兵から重傷を負ったカイザリンがやってきたと伝えられ、急いで医務室へ来たのだという。
「カイザリンの容体は…!?」
「…尽力しましたが、あまりにも傷が深く…おそらく、もう長くは…」
「そんな…!」
「エ、エルレイン…」
エルレインが来た事に気づいたカイザリンは彼女に向かって手を伸ばす。
「カイザリン!」
エルレインはすぐさまカイザリンの手を握った
「お、お父様が…カイゼリンが…」
それからカイザリンは自分の命が尽きようとする前に、こうなってしまった経緯をエルレインへ全て伝えた。
「そんな…カイザーが…!」
「ス、スキアヘッドは…いずれまた…スカイランドに攻め込むつもりだ…だから…何か…手…を…考え…て…」
そう告げたのを最後に、カイザリンの手がエルレインの手から落ちていき。彼女の目も閉じられた。
「カイザリン!カイザリン!」
エルレインは涙を流しながらカイザリンに呼びかけるが、彼女から返事はなかった。エルレインに視線を送られた医者は、ただ首を横に振る事しか出来なかった。
「しかしプリンセス…カイザリン様が仰ったことが本当なら、何か手を打っておきませんと…」
「…手はこれから考えます…行きますよ」
エルレインは衛兵にそう告げ、医務室を出ていこうとする。
「行くって、どちらにですか?」
「ここから辺境にある、『回生の遺跡』です。そこにカイザリンを安置すれば、彼女を生き返らせる事が出来る筈です」
「ですが、それはただの伝説では…」
「やってみる価値はあります。それに、アンダーグ帝国に対抗する事が出来るのは、カイザリンしかいません。彼女はスカイランドの…いいえ、スカイランドとアンダーグ帝国両方の希望なんです!」
「プリンセス…承知しました!」
それから数人の衛兵を連れて回生の遺跡へやって来たエルレイン。カイザリンは水晶の中に封印され、その中で少しずつ傷を癒していた。
「…私の友、カイザリン…あなたが目覚める頃、既に私はこの世にいないでしょう…ですが私も、黙って見ているような事はしない…必ずスカイランドとアンダーグ帝国を救う手段を遺します…」
そう言ってエルレインは遺跡を後にした。
そして、カイザリンがクウによって封印を解かれたのは、あれから300年も後の事だった…