GT悟空はヒーローガールの片割れとして転生するようです 作:のぞむ
「ここが、アンダーグ帝国…スイさんの生まれ故郷なんですね」
「うん」
スイが開いたトンネルを通り、一同がやって来たのはアンダーグ帝国だ。クウとスイは道着を身に纏い、ソラ達は既にプリキュアに変身していた。流石に危険だという事でカカロットはヨヨに任せてある。
『ランボーグゥーーーー!!』
そんなクウ達の前に現れたのは大量のランボーグだった。
「スイちゃんを出迎えに来た…って感じじゃないよね…!」
『ランボー』
それは、一瞬の事だった。襲い掛かって来るランボーグ達をクウとスイがまとめて一掃したのは。突然の事でスカイ達は呆然としてしまっていた。
「…プ、プリズム!浄化しましょう!」
「うん!」
「バタフライ!僕達も!」
「そ、そうだね!」
呆然としていたプリキュア達だったが、スカイとプリズムが『アップ・ドラフト・シャイニング』、ウィングとバタフライが『タイタニック・レインボー』でランボーグ達を浄化した。
「す…凄いよ二人とも!全然動きが視えなかったよ!」
「私もクウとスイさんの動きを追うのが精一杯でした!これが修行の成果なんですね!?」
「ああ!」
興奮気味にそう口にするスカイとプリズム。それにはクウも悪くない気分の様だ。
「先へ進もう!スキアヘッドとカイゼリンはここの最下層にいる筈だ!」
スイの一言を聞いた一同は、二人がいるであろう最下層へと向かっていった。
あれからランボーグの大群による襲撃があったものの、クウ達はそれを軽々と突破し、あっという間に最下層へと足を踏み入れていた。地面の下にはアンダーグ・エナジーの海が広がっていた。
「なんだアレ?」
「アンダーグ・エナジーの海だよ。あそこに落ちたらひとたまりもないから注意してくれ」
「は、はい!」
「…待ってください、誰か来ます」
何者かの気を感じ取ったウィングはクウ達にそう伝える。
「来たか…」
クウ達の前に現れたのは、カイゼリンだった。
「あ、あの人が、カイゼリン・アンダーグ…」
「本当に、スイさんにそっくりです!」
一同が驚いている中、カイゼリンはマジェスティを睨んでいた。
「…プリンセス、よくおめおめと私の前に現れたものだ」
「えっ…?」
カイゼリンの憎しみの籠った言葉に、マジェスティは困惑した表情を見せていた。
「…聞かせてくれカイゼリン。何でおめぇは今までマジェスティを…エルをしつこく狙ってたんだ?」
「…良いだろう、聞かせてやる。300年前、アンダーグ帝国とスカイランドは和平を結んだ…だがプリンセス・エルレインは…キュアノーブルは!私達を襲い、お父様とお姉様を殺したのだ!!」
『えっ!?』
それからカイゼリンが語った過去に、この場にいる全員が驚いてしまった。だがそれは真実を知ったからではない。スイから聞かされた過去とはあまりにも食い違っているからだ。
「そんなの嘘だよ!!本当にエルレインが襲ってきたのなら、どうしてスイは今ここにいるの!?」
「!?」
マジェスティの言葉にハッとなるカイゼリン。
「…それは、私にもわからない。だが、私の脳裏には今もあの時の光景が目に焼き付いている…確かに、お姉様はあの時…」
「カイゼリン」
動揺するカイゼリンにスイが近づく。
「お前の持つ記憶は、スキアヘッドに植え付けられた噓の記憶なんだ」
「嘘の…記憶…!?」
「辛いだろうが思い出してくれ、カイゼリン。あの日、お前とお父様に起こった本当の出来事を…!」
「…そうだ、あの日、エルレインの誕生日パーティーは、何事もなく終わって、お姉様がエルレインと話すからと、お父様と一緒にアンダーグ帝国に戻って…それから…お父様が…スキアヘッドに…あ、ああ…いやぁぁぁぁぁーーーー!!」
カイゼリンは頭を抱え、悲鳴に近い叫び声をあげる。そう、全てを思い出してしまったのだ。
「カイゼリン…」
全てを思い出し、頭を押さえるカイゼリンをスイは優しく抱きしめた。
「すまなかったな…お前を300年も一人にしてしまって…」
「お姉…様…?」
「…大きくなったな、カイゼリン。成長したお前を見れて、俺は嬉しいよ」
スイに頭を撫でられているカイゼリンの目には涙が溢れ出ていた。彼女が感じているのは、長年会えなかった最愛の姉の温もりだった。
「お姉様…お姉様ぁぁぁ…っ!!」
それからカイゼリンはスイの胸の中で泣き続けた。
「落ち着いたか?」
「はい…申し訳ありません。取り乱してしまって」
「良いんだ。お前が300年も抱えていた物が溢れ出たんだから」
「カイゼリン」
カイゼリンが落ち着いたのを見計らい、クウが彼女に話しかけた。
「おめぇは、これからどうしたいんだ?」
「…わからない。スキアヘッドは、私を愛していると言っていた…だが、きっとそれも嘘なのだろう…私には、どこにも居場所は…」
「そんな事はありません!!」
自身を卑下しているカイゼリンにスカイが声をかけた。
「あなたの居場所は、ここにあります!あなたにはスイさん…カイザリンさんというお姉さんがいるじゃないですか!」
「私の居場所は…ここにある…」
「そういうこった。おめぇは一人じゃねぇんだ…そうだ!おめぇに会ったら言っときてぇ事があったんだ!」
「言っておきたい事…?」
「おめぇ、スイからオラの話を聞くのが好きだったんだろ?なんか照れくせぇけど、ありがとな!」
「えっ…?」
カイゼリンはクウの言葉に疑問を抱くが、その言葉の意味はすぐに理解した。
彼女は幼い頃、スイから前世の父親の事を伝え聞かされていた。その人物は自身の憧れであり、初恋の男だった。
「まさか…お前は…!」
「!…危ねぇっ!!」
突如、カイゼリンに向かって一本の槍が向かってきていた。槍はカイゼリンを貫くかと思われたが、スイが間一髪で槍を弾き飛ばした。
「出てこいスキアヘッド!いるのはわかっているぞ!!」
「…何度も教えた筈だ。力が全て…それは、アンダーグ・エナジーの海から生まれた私達にとって、議論するまでもない事…」
その言葉が聞こえてきたのと同時にトンネルが開かれ、そこからスキアヘッドが現れた。
「カイゼリン・アンダーグ、そしてカイザリン・アンダーグ…お前達姉妹は最期まで、愚かな生徒だった」
「スキアヘッド…貴様…!」
「違う」
突如スキアヘッドの周りにアンダーグ・エナジーが溢れ出て、スキアヘッドを覆いつくした。するとスキアヘッドの姿が変わり、より禍々しいものへと変貌した。
「私はアンダーグ・エナジーの化身…名はダークヘッド」
「ダークヘッド…それがおめぇの本当の姿なんだな」
クウ達は即座に戦闘態勢に入るが、ダークヘッドは特に動かずにいた。
「無駄だ。お前達は私と闘う事すら出来ない」
「そりゃどういう事…だ…!?」
突然の事だった。クウは膝を地面につけ、そのまま倒れてしまった。
「クウちゃん!?どうした…の…?」
「プリズム…!?」
「な、なに…これ…!?」
「ち…力が…入らない…!」
「な、なんで…!?」
「みんな!」
プリキュア達はクウ同様力が抜けるように倒れてしまった。動けるのはスイとカイゼリンの二人だけだった。
「アンダーグ・エナジーの海から生まれた者にとって光が毒であるように、お前達にとってこの海は毒になる。ここまで近づいて、無事で済むわけがなかろう」
「お、おめぇ…こうなる事がわかってて、ここでオラ達を待っていたんだな…!」
ダークヘッドの言う事が事実なら、現状闘えるのは元はアンダーグ帝国の人間であったスイだけだろう。
「…カイゼリン、クウ達を頼む」
「お、お姉様…?」
そう言い残し、スイはダークヘッドへ向かっていく。するとスイは気を解放しようと構えた。
「…ハァァァァーーー!!」
気を最大まで解放し、スイはダークヘッドを睨む。
「あ、あれが…スイちゃん…?」
「と、とてつもない気です…!」
「…ダァーーーーッ!!」
「まも」
「遅い!」
バリアーを張ろうとしたダークヘッドにスイは一瞬で接近し、ダークヘッドを殴り飛ばした。そこからはスイの独壇場だった。ダークヘッドもアンダーグ・エナジーのビームで対抗していたが、クウと共に精神と時の部屋でピッコロの修行を受けたスイの敵ではなかった。
「ハァァァーーッ!!」
そこからスイはダークヘッドを地面に叩き落した。ダークヘッドの体力が消耗しているのを見るに、かなりのダメージ与える事が出来たようだ。
「あのダークヘッドを…いともたやすく…」
スイとダークヘッドの闘いを見ていたカイゼリンは驚きを隠せないでいた。ダークヘッドの実力は常に彼の近くにいたカイゼリンにはわかっていた。だがスイを相手に手も足も出せず、一方的にやられているのだ。驚くのも無理もないだろう。
「…フフフ…ハハハハハ!!」
一方的にやられていたダークヘッドは、突然高笑いをしてしまっていた。
「なにが可笑しいんだ?」
「…奴の言う通りだった。まさかお前がここまで力をつけていたとはな…ならば」
するとダークヘッドは自身の手にアンダーグ・エナジーの球体を出してきた。そのアンダーグ・エナジーからは、これまで感じた事もないとてつもないパワーが溢れ出ていた。
「させるか!」
すかさずスイは気功波をダークヘッドに向かって放った。ダークヘッドがいた場所に煙が出ていた。
「…なるほど。これは素晴らしい力だ」
煙が晴れた先には、ダークヘッドの姿があった。かなりのダメージを受けていた筈だが、ほとんど回復してしまったようだ。
「ダ、ダークヘッドの奴…とてつもねぇ気だ…!」
「…では、次は私の番だ」
「っ!?」
ダークヘッドの攻撃に備えていたスイだったが、一瞬の内に接近されてしまい、そのまま殴り飛ばされた。
「ぐっ…ハァーーッ!!」
そこから気功波を放ったスイだったが、ダークヘッドはそれをバリアーで防いでしまった。
「何も言ってないのに、バリアーを!?」
そこからダークヘッドは大量のアンダーグ・エナジーのビームをスイに向かって放った。全て避けようとしたスイだったが避けきれず、そのままビームの餌食になってしまった。
「ぐ…ぅ…!」
「ほう、まだ生きているか…」
ダークヘッドは地面に膝をつけているスイに近づく。
「カイザリン。これを覚えているか?」
するとダークヘッドは右腕の袖をまくり、そこに残っている火傷の痕を見せる。
「この火傷は300年前、お前につけられたものだ。この火傷の痕を見る度、貴様への復讐心が駆り立てられるのだ」
そこからダークヘッドは槍を作り出し、それをスイに向けた。
「さらばだ、アンダーグ帝国の愚かなる面汚しよ」
そう言ってダークヘッドは、スイに向かって槍を振り下ろした。
「なに…?」
しかし、その槍がスイを貫く事はなかった。
「スカ…イ…?」
スイの目の前にいたのは、動けない筈のスカイだった。スイを庇うように彼女の前に出たスカイが代わりに貫かれていた。
「スイ…さん…よかっ…た…」
そう呟くと同時にスカイは倒れ、変身も解除されてしまった。
「ソラさん!!」
スイはすぐにソラを抱き上げる。
「どうして…こんな…!」
「わ…私…動けなかった筈なのに…スイさんが危ないって思ったら…不思議と動けちゃいました…」
弱々しい声色のソラは、右手でスイの頬に触れる。
「昨日の事…覚えてますか?スイさんに…伝えていない事があるって…」
「ああ!覚えてるよ…!」
「私…スイさんの事が…好きなんです…」
「え…?」
「変…ですよね…今になって告白するなんて…」
そう口にするソラの眼には涙が浮かび上がっていた。
「すみません…スイさん…なんだか…ねむ…く…」
そう言ったのを最後に、ソラの瞼が閉じ、右手も力なく落ちていった。
「そんな…嘘だよ…こんなの…!」
「ソ…ソラさん…こんな事って…!」
「くっ…!」
「フン…余計な事をしてくれた…だがどちらにしろ、お前達はここで死ぬ。キュアスカイは犬死だったわけだ」
プツン
何かが切れたような音がした。
「うぉああああーーーーーーっ!!!!」
そして木霊したのは、スイの叫び。
「こ、これは…!?」
ダークヘッドはスイの姿を見て、驚愕していた。
紅色で短かったスイの髪は長くなり、銀色に逆立ち、瞳の色は黄色から赤色に変わっており、彼女の周りには薄紫色のスパークが発生していた。
そしてスイが流していた涙は上に上がっていき、消えていった。
この話はZの悟飯覚醒時に流れたあの名曲を聴きながら書いてました。