狂った道化になりたくて!   作:道化A

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ディアボロス教団

 シャドウ、本名シド・カゲノーと出会って一ヶ月くらいたった。

 

 この一ヶ月でシドも私と同じ転生者であることが分かった。

 詳しく聞いていないが、陰の実力者になる修行の途中で死んだらしい。

 この世界に転生しても陰の実力者を目指して修行し、シャドウとして活動しているそうだ。

 シドと私は方向性こそ違うが似た者同士のようだ。

 

 そして陰の実力者を前世から目指していた関係で異常な戦闘技術を誇っている。

 パフォーマンス重視とは言え、霧化してスライムと一体化した私が全力で倒しに掛かっても心底楽しそうに攻撃をさばいていた。

 霧化とスライムと一体化することの弱点も簡単に見抜かれた。

 

 霧化は霧散することで攻撃が直撃しないため、圧倒的な魔力量による飽和攻撃以外でダメージを一切受けない強みはあるが、質量が軽いせいで風圧で吹き飛ばされる為に戦闘より逃走などの方が向いている。

 スライムとの一体化は霧化の弱点である軽さをカバーできるが、霧散することで攻撃を無力化する強みがほとんどなくなる。

 斬撃や打撃なら問題なく無力化出来るが、大量の魔力を纏わせた範囲攻撃からスライム内の霧化で粒子になっている身体を魔力で守る必要がある。

 粒子一つ一つが纏っている魔力は本来の魔力に比べれば極わずかで、霧散して余波程度の力で弾かれ直撃を受けないなら少ない魔力で十分だが、スライムの中では弾かれずに直撃する。

 まあ極論だと、霧化していても風圧や魔力の余波で粒子が弾かれる前に粒子を守りを突破するだけの魔力をぶつければダメージは入るのだが、スライムだとそれが当たり前になるだけだ。

 その為、魔力制御に余程の差が無ければ普通にダメージを受けることになる。

 

 シド曰く、「それだけ魔力制御に差があるなら、スライムに魔力を通して防げばいいだけだから無駄」とのことだ。

 

 全く持ってその通り、無駄だ。

 無駄に洗練された無駄な技術でしかない。

 だが、不死身の怪人というパフォーマンスとしては悪くない。

 戦闘を一番に考えれば無駄な技術でも、パフォーマンスを一番に考えれば素晴らしい技術だ。

 

 現状、私の知る中で一番の魔力制御能力を持つシドでも、スライムと一体化した私にダメージを入れられない。

 とは言え、シドの魔力制御能力は成長過程で未だに伸び続けている。

 いずれは、スライム化した私にダメージを与えるくらい出来るようになるだろうね。

 

「ヒャッハー!!てめぇら金目の物を出せ!」

「な、なんだぁ?このチビ共は?」

「おらぁ!金出せって言ってんだろぉ!」

 

 シドの頭の品性のない言動に呆れている間に、シドがスライムソードで盗賊を虐殺していく。

 私が出したアドバイスを基に改良されたシドのスライムの実験と、資金調達、ついでに盗賊の虐殺をしに来たわけだが、ほとんどシドが片付けてしまった。

 シドにはたまに、私より余程狂っているんじゃないかと思わされるよ。

 

「やれやれ、私の分も残しておいてくれ……」

 

 シドに声を掛けながら近づこうとしたら、背後から首をはねられた。

 

「舐めてんじゃねぇぞガキが!」

「君を舐めてもまずそうだし、舐めるわけないじゃないか」

「なっ!?」

 

 はねられた首をくっつけながら返してやれば、化け物でも見るような目で私を見て来る。

 敵を前に固まっている盗賊を前に肩を竦めてため息をつきながらスライムで真っ二つにする。

 

「敵を前に呆けるなんて、とんだ間抜けだね」

「首をはねられた人間が何事も無かったかのように喋り出せば、普通は驚くと思うけど」

「君は驚いても呆けて固まるようなことはしないでしょ」

「それもそうだね」

 

 一分もせずに全滅した盗賊のことなど無かったように、シドと一緒に戦利品をあさる。

 美術品等は扱いが面倒なので放置して、金貨や宝石、貴金属を回収する。

 戦利品を回収している最中、変な魔力を感じてそちらに視線を向ければ布が掛けられた檻があった。

 気になったので布を取ってみれば、檻の中には腐りかけの肉塊が入っていた。

 驚いたことにこんな状態でも生きているようだ。

 

「どうしたのジョーカー?」

 

 腐りかけの肉塊を見ている私に、シドが声を掛けて来る。

 

「これ何か分かる?」

「ん?あれじゃない、悪魔憑きってやつ」

「ああ、あれってこんな風になるんだ」

 

 人間がこんな風になるとは、なかなかに恐ろしい病だ。

 

「あれ?この波長」

「魔力暴走だね」

「やっぱり」

 

 ただ、普通は魔力暴走でこんな酷い状態にはならないと思うんだけど。

 遺伝的な疾患と魔力量で発現するタイプの病気かな?

 病気的には魔力暴走を引き起こすだけで、魔力暴走が治まらずに肉体が時間を掛けて崩壊してるのなら、魔力暴走を治せば治るかな?

 

「ねえ、それ僕が貰っていい?」

「ん?別に構わないけど、どうして?」

「この魔力暴走を制御出来れば、魔力の神髄に近づける気がするんだ」

「ん~、確かに魔力制御の訓練にはなるか」

「ジョーカーは、もう制御出来るんでしょ。なら、僕にやらせてよ」

 

 まあ、シドがやりたいなら私がする必要はないか。

 

「いいよ」

「じゃあ、僕はこのまま実験するから今日は解散かな。しばらくはここで実験すると思うから、盗賊狩りはしばらく無しで」

「分かった。たまに様子を見に来るから、頑張ってね」

「じゃあ、またね」

 

 シドは自分の取り分の戦利品と悪魔憑きを持って廃村の無事な建物中に運んでいった。

 しばらく暇になったわけだし、私も魔力制御技術磨いておいた方が良いね。

 うかうかしてるとシドに追いつかれそうだし。

 

 

 

 シドが悪魔憑きを拾って一ヶ月くらいたった頃、あの廃村を訪れればちょうどシドが悪魔憑きの魔力暴走を制御している最中だった。

 折角来たので、様子を見ていると魔力暴走が治まり、腐りかけていた肉塊は人に戻っていく。

 完全に人に戻ると、金髪のエルフの少女の姿になった。

 シドが治療したわけじゃなさそうだし、やっぱり魔力暴走が原因で身体が崩壊してたのか。

 

「目が覚めたか?」

「……っ!?私の身体、嘘!?」

 

 悪魔憑きの症状について考えていると、少女の目が覚めたようだ。

 シドはシャドウとして格好つけながら少女の疑問に答える。

 

「君を蝕んでいた呪いはもう解けた。もはや君は自由だ」

「あなたが、私を?呪いって?」

 

 呪い?悪魔憑きは病気じゃなかったということ?

 ここ一ヶ月、悪魔憑きに魔力を流して実験していたわけだし、私の知らない何か知る機会でもあったのか?

 

「呪いというのは……君達、英雄の子孫に掛けられた忌まわしき呪いだ」

 

「「……」」

 

 私と少女が何も返さずにいると、シドは更に説明を続けた。

 

「驚くのは無理もない。だが、君も知っているだろう。三人の英雄が魔人ディアボロスを倒し世界を救ったという御伽話を、あれは本当にあったことさ」

 

 まあ、魔物や魔力がある世界だから、御伽話になるようなことが実際にあっても不思議ではないね。

 

「魔人は死の間際に呪いをかけた。それが君を腐った肉塊に変えたものの正体だ」

 

 なるほど、普通の魔力暴走とは違うのは、それが原因か。

 遺伝によって受け継がれるウイルスのようなものが、魔力を暴走させ肉体を崩壊させていたわけね。

 この一ヶ月でそんなことまで調べているとは、陰の実力者を目指しているだけのことはあるね。

 

「だが、何者かが歴史を捻じ曲げ、君達を悪魔憑きなどと蔑まれるようにした」

 

 確かに、英雄の末裔が悪魔憑きなどと蔑まれるのは、普通に考えたらおかしなことだ。

 多くの人を救った英雄の為に、呪いを解く方法が解明されていてもおかしくない。

 実際に、呪いの内容は魔力を暴走させることなのだから、呪いの症状が分かれば対策などいくらでもたてられただろう。

 

「誰が、そんなことを」

「黒幕は……知らない方が良い、知れば君にも危険が」

「構わないわ、一体何者なの」

「そ、そうか。ならば、教えよう。……ディアボロス教団。魔人ディアボロスの復活を目論む者達だ。奴らは決して表舞台には出てこない。我が使命はその野望を陰ながら阻止すること、かな」

 

 今、かなって言わなかった?

 もしかして私達の標的今決めた?

 この場のノリで格好つけるために決めた?

 雰囲気を壊さないために、あえて言わないけど、本当に目標それでいいんだよね?

 

「我が名はシャドウ。陰に潜み、陰を狩る者」

 

 本当に勢いで決めた感あるけど、大丈夫?

 この子の人生台無しにした連中だし、狩るって言った以上やっぱりやめたは通じないと思うよ?

 

「困難な道のりになるだろう。だが、成し遂げなければならない。英雄の子よ、我らと共に歩む覚悟はあるか?」

「病、いえ、呪いにおかされた日に私は全てを失いました。醜く腐り果てるしかなかった私を救ってくれたのは貴方です。だから、貴方がそれを望むなら、私はこの命をかけましょう。そして罪人には死の制裁を……」

 

 少女がシドが差し出した手を取ると、シドのスライムが彼女の身体を隠すような外套に変わる。

 

「それでシャドウ、彼?は一体?」

 

 話がある程度落ち着いたのか、少女が私のほうに視線を向けてシャドウに問いかける。

 

「彼はジョーカー、我の相棒を務める者だ」

「ご紹介に預かりました、ジョーカーです。こんな見た目ですが、男であっていますよ」

「そう。よろしく」

 

 まあ、膝裏辺りまである黒髪に、女性よりの中世的な顔立ちをしているから間違われることもよくある。

 ただ、私はいつからシャドウの相棒になったのだろうか?

 

「君を見つけたのも彼だ。礼を言っておくといい」

「そうだったのね。ありがとう、ジョーカー」

「いえいえ、偶々見つけただけですのでお気になさらず」

 

 少女に紳士的な態度で返して居ると、シャドウが話し始めた。

 

「敵は恐らく、強大な権力者とかだ、真実を知らずに、操られている人も沢山いるだろう」

「でも、立ち塞がる者に容赦はしない」

「そうだね、そんな感じ」

「他の英雄の子孫を探し出して保護しないと」

「そ、そうだね」

「組織も拡張して拠点もしっかり整備しないと」

「はぁ」

「その為には、資金集めもしないといけないわね」

「……」

 

 おお、シャドウが少女に押されている。

 なかなか優秀な子だね。

 

「じゃあ、ええっと、そうだな。僕らの組織は『シャドウガーデン』。そして君はアルファと名乗れ」

 

 

 

 こうして私は流れで、『シャドウガーデン』のNo.2になり、『ディアボロス教団』とかいう組織を潰すことになった。

 そんなシャドウガーデン結成から三年が経ち、メンバーも増えて今では9人になっている。

 私とシャドウ以外の7人を『七陰』という幹部として将来的に組織を運営していくそうだ。

 

 七陰のほとんどはアルファが見つけて保護してきた子だが、イータという子は私が愉快犯として活動している際に偶然見つけたので、治療して保護した。

 私の科学知識に興味があるようでとても良く懐いている。

 私も狂った道化としてたくさんの研究をしてきた身、もはや研究が趣味と言っても良いレベルだ。

 だから、私が教えた知識を凄い早さで吸収し、楽しそうに研究する姿を見ると私まで楽しくなって一緒に色んな研究をしたものだ。

 仮にも組織のNo.2を任されている身で、一人を特別扱いするのは良くないと分かっているが、イータを愛弟子のように特別扱いしてしまっている。

 

 他の七陰にもスライム操作の指導や戦闘訓練の相手など、私に出来る程度のことはしているが、イータと比べればかなり少ない。

 イータに教えていることを他の七陰に教えようとしたことはあるが、ほとんどがついて来れなかった。

 アルファとガンマは知識としては理解できているようだが、応用や発展、技術的な方面にはついて来れなかった。

 まあ、教えていることが専門的過ぎて特別扱いも最近はある程度容認されてるからいいけど、最初の頃はアルファにすごい小言を言われていたしなぁ。

 

 まあ、なんだかんだで七陰のみんなとも仲良くやれている。

 そんなある日の夕方、家で本を読みながらのんびりしていると、イータが窓から入ってきた。

 

「おや、珍しいね。何かあったのかい?」

「マスターの、お姉さんが、攫われた」

「それはまた大変なことになったね」

 

 クレアさんが誘拐される理由として思いつくのは、悪魔憑きの兆候があったことくらいだけれど、すでにシドが治している。

 どこかからクレアさんに悪魔憑きの兆候があったことが漏れたのかな。

 

「私に報告に来たってことは、救出作戦は今夜で私も参加ということかな?」

「うん、アルファ様が、呼んで来てって」

「そう。夕食を食べた後、出来るだけ早く向かうよ」

「分かった」

 

 イータの報告を聞いた後、読書を再開する。

 イータはソファに座っている私の隣に座り、本を覗き込んでくる。

 

「イータ、戻らなくて大丈夫なの?」

「アルファ様は、呼んで来てって、言った。ジョーカーと、一緒に戻れば、大丈夫」

「それは屁理屈な気がするけど、まあ戻ってもやることがないならいいか」

「うん、やることない」

「そう。後でお小遣いあげるから、街で夕食買って食べてきなよ」

「分かった」

 

 読書しながら、途中にイータの質問に答えて夜まで過ごす。

 夕食を食べて家に居なくても大丈夫な時間になると、すぐにイータと一緒にアルファ達と合流する。

 しかし、合流場所にシャドウの姿はなかった。

 

「おや、シャドウはまだ来ていないのかい?」

「いいえ、彼は一人で先行したわ」

「ふむ、来るのが遅かったかな?」

「距離を考えるとむしろ早かったと思うわよ。私達もまだ作戦を練っている途中だったもの」

「それなら良かった。待たせていたら悪いからね」

「イータと遊んでいて遅くなったわけではないのでしょう。なら、怒ったりしないわよ」

「流石にそんなことはないよ。家を抜け出して問題ない時間まで動けなかっただけさ」

「ならいいわ」

 

 イータが私と一緒に戻ってくることは想定内だったみたいだね。

 まあ、私もイータも作戦会議にあまり必要はないから、別にいなくても良いということなんだろうね。

 

「まあ、シャドウが先行したのなら、私達も急いだほうがいいね。最低限重要人物以外の速やかな虐殺、教団に関する情報の確保だけ共有しておけば大丈夫でしょう」

「……ええ、そうね」

「それじゃあ、私達も向かおうか」

 

 教団のアジトに移動しながら、アジト内で行動を共にする組を決める。

 『私、イータ』、『アルファ、ベータ、ガンマ』、『デルタ、イプシロン、ゼータ』の3組。

 私は一人でも良かったが、アルファが何があるか分からないから一人行動は危険ということでイータと組むことになった。

 シャドウは良いのかと思ったけど、あの規格外に危険も何も無いか。

 圧倒的な不死性を誇る私を唯一殺せるだろう人間だ。

 シャドウをどうにか出来る相手がいるのなら、私達に勝ち目は無い。

 まあ、シャドウが先行している以上、私達が着いた頃には終わっている可能性もあるのだけどね。

 

 

 教団のアジトに侵入してすぐに、スライムソードを伸ばし闇に紛れ、気配や魔力を悟らせずに敵を殺していく。

 

 スライムと一体化した状態の目である疑似アーティファクトは、肉眼では見えないような僅かな光や微弱な魔力でも綺麗に視認できる上に、目くらましになるほど強い光は半透明になり視界を遮らない。

 そして360度に対応し、100メートル以内なら壁で完全に光が遮られていない限り、曲がり角などの肉眼では見えない範囲も視認可能で、魔力は知覚できる範囲なら壁で遮られていても見える。

 

 つまり、相手が肉眼で私達を視認出来る範囲に来る頃には、スライムソードで斬り殺されている。

 そうなると、私と同行しているイータの仕事は、私のスライムソードに対応できる強敵が現れない限り何もない。

 

「とても楽で、いい」

「まあ、アルファが決めたことだから良いか」

 

 他の組もデルタの組は基本デルタが暴れてるだけだろうし、アルファの組もアルファがほとんど倒してるだろうしね。

 スライムソードの射程に入った敵を皆殺しにしながら奥を目指す。

 壁の向こうに居ようが、お構いなしに壁を貫いて殺していく。

 

 敵をほとんど殺した頃に、アルファ達と合流する。

 シャドウが先行したわりには敵が残っていたが、呆気なく終わりそうだ。

 アルファ達と合流したホールには無数の死体が転がっていた。

 他の組も返り血はついているが、傷一つつけられてないな。

 

「貴様ら何者だ!」

 

 ホールの奥の通路からそこそこ偉そうな男が出てきた。

 取り敢えず、彼を生け捕りにして情報を聞こうかな。

 その前に、私達が何者なのか名乗ろうか。

 七陰の前に立ち、No.2として彼の問いに答える。

 

「私達は『シャドウガーデン』。陰に潜み、陰を狩る者」

「貴様ら此処が何処か、分かっているのか?」

「知っているとも、私達は全てを知っている。ディアボロス教団のことも、悪魔憑きの真実も全て」

「!?その名を、その秘密を、どこで知った!」

 

 ディアボロス教団の名前を聞いて彼は、剣を抜いて私に斬りかかって来る。

 剣を半身になって躱し、剣を持つ手を捻って剣を奪い、彼の鞘に戻しながら足を引っかえて転ばせる。

 

「無駄な抵抗はしないで貰えると助かるのだけれど」

「こ、この!」

 

 立ち上がりながら剣を抜こうとするので、柄頭を足裏で蹴り飛ばして鞘に押し込む。

 その衝撃で彼も一緒に飛んでいったが、魔剣士なら大した怪我はないだろう。

 

「実力差が分からない程に愚かなのかい?」

 

 彼はこちらを悔しそうに睨んだ後、懐から赤い錠剤の入った瓶を取り出した。

 

「舐めるなよ小僧!」

 

 あの錠剤が彼の奥の手なのだろう。

 あれを呑む前に奪うことは簡単に出来る。

 けど、あの錠剤の効果を私達に教えるために、自ら被検体になってくれるなら止める必要はないね。

 

 彼が錠剤を呑むと、先ほどより魔力量が爆発的に増え、目が赤く光った。

 魔力の波長的に魔力暴走を起こしてるようだけど、力づくで抑え込んでるね。

 しかし、悪魔憑きと同じ魔力暴走を起こして魔力量が増える錠剤ね。

 魔人ディアボロスの力を自分のものにしようとした実験の失敗作ってところかな。

 

「ジョーカー!?」

 

 錠剤について考えてた所為で、真っ二つに斬られてしまった。

 そこから更に三回程斬りつけて、彼は勝ち誇ったように微笑む。

 

「これは失礼、少し考え事に夢中になっていたよ」

「なっ!?」

 

 彼の目の前で何事も無かったかのように、元に戻れば勝ち誇った顔が絶望に染まる。

 

「ば、化け物め!」

「酷いね、これでも私は歴とした人間だよ」

「お前のような人間が居てたまるか!」

 

 諦めずに叫びながら斬りかかって来る彼の剣を奪い、再度鞘に納めて転がす。

 

「そろそろ諦めない?君が何をしても全て無駄に終わるって、そろそろ気づいてるんじゃないかい?」

 

 私の問いに彼は奇声を上げて剣を抜いて地面に振り下ろした。

 土煙と破片が周りに飛び散り、その下にあった隠し通路があらわになる。

 そしてその隠し通路の中に彼は逃げて行った。

 後を追おうかとも思ったけど、すぐにやめた。

 

「逃げたわね」

「すぐに追います」

 

 隠し通路を覗き込み、後を追おうとするベータを止める。

 

「その必要はないよ」

「え?」

「この先には彼がいるもの」

 

 どこで何をしているかと思えば、私が取り逃がすことも想定内ということなのかね。

 全くもって怖い男だよ、君は。

 

 逃げた彼の処遇をシャドウに任せて、私達はクレアの解放とアジトに残っている教団の情報の回収作業に移た。

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