私はまだ途中ですが、早くも泣きそうです。
ジェシカ、大きくなって・・・・(泣
どこぞのオート標準フルバーストするモビルスーツみたいな装備してかっけえな。
今回はパトリオット視点となります。
その日もいつもと変わり映えのしない1日であった。
曇天の空に、静寂な空気。
拠点を行き交う者は生きるのに最低限の物資が確保されていることに安堵し、監視隊や軍の脅威に怯えることのない1日に感謝した。
豊かであるなどとは到底言えない。それでも以前より不安に押し潰されそうな顔をするものは大きく減った。
喜ばしいはずだ。
それにも関わらず、私はどこか時が止まってしまっているかのような感覚に陥っていた。
『そのどこに未来などと呼べるものがあるのですか!』
『私達はその未来を掴むため、前に進まなくてはならないのです』
あれ以来、何度もその言葉が胸の内で繰り返される。
(分かっている。いずれここを出なければならなくなる)
今も徐々に規模を拡大していく私達は、いずれ自らを賄うことすら厳しくなるだろう。
彼らは間違っていない。だが、正しいとも言えない。
この国で、私達の共存を目指すなど無理な話だ。
既に都市の住民は骨の髄まで鉱石病への忌避感が刻まれてしまっている。土地も豊かではない。
彼らに虐げられてきた私達感染者もそれは同様だ。その恨みは血を以てしか洗い流せないだろう。
自らを守ることすら難しいこの土地で、そんな両者の共存など実現するとは思えない。
私がこれまで歩んできた道程が、それを不可能だと断じていた。
何度も繰り返されたように、辿り着く結論もまた変わらなかった。
だが、この日は違った。
「ミスター・パトリオット。お話があります」
今思えば、あの一言から私の時間は再び歩みを進めたのだろう。
私は件の人物、タルラとイグナスに呼び止められた。
この2人が揃って私を訪ねることは珍しい。特にここ最近イグナスは頻繁に都市へと通っていたか。
「何だ?」
「いい加減、はっきりしていただけませんか? ここまで成果を挙げているにも関わらず南方遠征に賛同していただけない、その理由を教えていただきたい」
「いつまで現実を見ないつもりだ。ウルサスの精鋭を相手に真正面から戦うなど自殺行為だ。君達が目指す感染者と非感染者の共存など、この国では夢物語だ」
これもまた幾度も繰り返してきたやり取りだった。私の結論は変わらない。
「君達が想定するほどこの世界は単純ではない。血を流す覚悟も無しに、現状を変えることなどできはしない」
彼らは若く、経験不足で、現実を知らない。ここまで感染者を率いて守り自衛組織として維持してきたことは称賛に値する。
だが彼らの願う未来は優しく、甘すぎる。それに賛同することなどない。
だが、彼らは違ったようだ。
「では、覚悟を示せというのですね。いいでしょう」
そうしてタルラはレイピアを、イグナスは腰に差した短剣を抜き放ち、私に向けた。
未だ人が行き交う集落の只中で、2人は敢然とした態度で宣誓した。周囲が騒然とする。
「私達は、貴方に決闘を申し込む!」
「何を」
「俺達の持てる全てを以て、貴方を打倒し証明します! 俺達の理想が、決して夢物語などでは無いことを!」
何をしている?
衆目の中相手に武器を向け宣誓するなど決闘の作法の中でも百年以上前のものだ、前時代的にも程がある。
それに加えて、儀礼に則りここまで本格的に決闘をするのならば互いに命を懸ける必要がある。
「貴方を倒せるのならば、近衛兵相手に力不足ということもないでしょう、ミスター・パトリオット?」
「本気か?」
「ええ。これは貴方に私達の覚悟を示すための戦いです。この命すら賭けましょう」
武器を構える2人を見据える。どうやら、本気で命を懸けて私と戦うという。
覚悟を示す、か。果たしてこの決闘の如何がそれを示すことになるのだろうか。
彼らがその意見を変えていないのならば、その覚悟とはいわば何も失わないために失う覚悟を持つということだ。明らかに矛盾している。
それに武力だけではない。彼らが相手しようとしているのはウルサスという国そのものだ。
軍も、政府も、市民も、文化でさえ敵に回す。その重みはこの世の誰にも正しく測れるものではない。
だが彼らを、彼らを慕う者を見て、『あるいは』と感じてしまったことも事実だ。
私達が保護していた凍原の感染者と都市から来た感染者の間にもはや溝など存在しない。
イグナスが時折連れてくる商会の非感染者は、鉱石病の有無など気にせず、何も変わらないまま私達に接している。
隠れ潜むだけだった感染者達は、豊かではないが確かな平穏の中それぞれの生きる道を見つけ始めている。
それは、彼らが確かに私に示し続けてきた成果であった。
ならば。
「いいだろう」
背負っていた戟を掴み、石突を大地に打ちつける。
衝撃で地が揺れ、屋根や木の枝に残った冠雪が散る。
あわや大地が怒ったと錯覚しそうな地響きに遭っても、こちらをまっすぐ射貫く2組の双眸。
「その決闘受けよう。来い、場所を変える」
彼らが国に、世界に挑むだけの力を備えているか。
そして私がこの先、どう戦うか。
見定めようではないか。
そして私達は拠点から少し離れた空き地へとやって来た。
この周辺は拠点同様針葉樹によって囲まれている。これならば外の注意を引くこともないだろう。
広さも十分、アーツを使用しても周りに被害は出まい。
タルラとイグナスが私の向かい側に居並ぶ。彼らの後ろには倒壊を免れたのか泰然とした杉が1本、根を下ろしていた。
この何もない空き地で毅然と立つあの杉が、私と彼らを対比しているようだ。
私の周囲には何もない。あるのは、この身1つ。
見届け人としてついてきた戦士の1人が、我々の中央からやや離れた場所に立つ。
準備は整った。
「最後に今一度問おう。
「「はい!」」
「ならばよい。手加減はせぬ」
「では、はじめ!!」
開始の合図が出された。もはや息をするよりも自然に戦闘態勢に移行する。
油断など微塵もなく、前方の2人を視界に収める。
彼らが散開する。タルラは向かって右へ、イグナスは向かって左からそれぞれ私を挟撃する形で迫ってくる。
タルラのアーツは炎を操る。遠距離からアーツで攻撃するかと思ったが接近してくるか。ならば右手の戟1本で対処できる。
一方でイグナスの戦闘能力については未知数だ。警戒しておかなければならないが、戦士としての直観から彼に武の才はない。にも関わらずタルラ同様接近してくるのであれば中遠距離の攻撃手段は無いとみていい。
ならば、攻め手が判明している
ほんの僅か、意識をタルラへと偏らせた。
その直後。彼らの中央から
「!」
咄嗟に左の盾で防ぐ。それらは1つたりとも盾を貫くことはなかったが、思わぬ方向からの攻撃に動揺した。
氷柱が放たれた方向を見ると、そこにはこちらにアーツユニットを構えた自分の義娘が立っていた。
「言いましたよね?! 俺達の全てを以て証明すると!」
イグナスが吠え、さらに距離を詰める。その間にも、氷柱は次々とこちら目掛けて飛来し盾を揺らす。
(なるほど、
恐らくあの杉の木の後ろに最初から控えていたのだろう。私がここを指定することまで想定済みか。
(しかしエレーナまで味方につけたとはな。以前から君達に賛同していたが、ここまで手を貸すとは)
氷柱に足を止められている間に、タルラが剣を手に間合いに入る。
さらにフロストノヴァは射角を変え上空から放物線を描くように氷柱の雨を降らし、それらに対処する私の死角を縫うようにイグナスが短剣を構え接近してくる。
よく練られた連携だ。
「だが甘い」
戟にアーツを込め、逆袈裟に振り上げる。たったそれだけの動作で迫っていた氷柱の雨は砕け無数の結晶へと姿を変えた。
その衝撃で僅かにタイミングを遅らせたタルラの振るう剣を、振り上げた戟の柄で受け止める。
二の太刀を振るう彼女の眼前に盾を構え弾き、体勢を崩した彼女を
半身となった身体を反転させ、死角に踏み込もうとしていたイグナスを正面に捉える。彼の顔が驚愕に満ちた。
こちらは既に構えを終わらせている。一度この戟を突き出せば彼はそれを捉えることもないまま貫かれるだろう。
こちらに尚も向かってくる彼は退くつもりはないらしい。決死の覚悟を以てその剣を振るおうとしていた。
ならば致し方ない。
「殺すつもりでいく」
今まで何千、何万と振るってきた軌道をなぞる様に突き出す。それは最短に、最速に、最大に、彼の命を奪うべくその中心目掛けて突き進む。
「イグナス!!」
彼の名を叫ぶ誰かの声が聞こえた。
だが、この一撃はもはや止まらない。
私が戦場で幾度も敵兵の命を摘み取ったように、彼の灯を消すだろう。
それがいつかの自分と重なって、独りごちた。
(ああ、私はまた、
だが、その一撃が彼を貫くことはなかった。
絶死の一撃は、そこに割り込んだ業物と、それを振るう1人の武者によって防がれていた。
その見知った相貌に、思わず目を見開く。
「貴方は・・!」
「久しいな、ボジョカスティ。いや、今はパトリオットだったか」
「何故、ここに?」
「古い約束を果たしに。後はそうだな」
そう言ってへラグは突如屈んで体勢を低くした。
その先には、鈍く輝く剣を振りかぶったイグナスが待ち構えている。
「未来に賭けに来た」
「うおおおおっ!!!!」
横の一閃。だが遅い。
すぐさま盾を引き戻し構える。
(? 何故笑って)
彼の表情に違和感を覚えた直後、振りかぶった剣は何故かそのまま盾を
つい反射的に動きを止めてしまう、だが歴戦の経験が否応なしにすぐさま活動を再開させた。
目の前の彼は危険だ、早急に排除しなければならない。
自らの直観が鳴らす警鐘に従い、すぐさま右手に構えた戟を振り下ろす。
(躱せまい!)
だがその一撃も、またしても彼に逸らされ地を削るだけに終わった。
「へラグ将軍・・・!」
「20年前、一度私と勝負したいと言っていたな」
そう言って構える彼は得物こそ違うが、かつて戦場で目に焼き付けた姿を髣髴とさせた。
「こうして再会したのだ、しばらく付き合ってもらうぞ」
短い言葉は宙に溶け、数多の剣閃が降り注いだ。