南方遠征を機に、俺達はますますその勢いを増した。
元から凍原の感染者の希望だったパトリオットとスノーデビルに加え、都市近郊を中心に活動していたことで名を知られていたタルラと俺達の商会。
加えて、今ではチェルノボーグのヘラグを中心とした感染者診療所も負傷者治療や都市の情報を提供してくれている。
そして、先日の一件以来妙に身内からの監視の目が厳しくなった俺は、当然彼らと接する時間が増えた。
戦闘員である彼らの時間を削るのも、と思っていたのだがそれは思わぬ形で解決した。
その結果
「こんにゃろ!」
「どうした? 腰が入っていないぞ!」
「うるせえ待ってろ絶対一本いれてやる」
「前のめり過ぎだ!」
「のわっ!?」
なぜだか俺は現在、タルラと木刀を使って組手をしていた。
(といっても実質俺のための訓練になっているが)
今も、全体重を込めた一撃を体をずらしただけで流され、あろうことか振った力を利用して体勢を崩された。
前に乗せられた体重を制御できず、敢えて前転するように地面を転がりすぐさま立ち上がる。
追撃を警戒する俺を、タルラは木刀で肩を叩きながら興味深そうに眺めていた。
「まったく。普段の勘の鋭さは何処に行ったんだ?」
「お前レベルの奴に通用するわけねえだろ!?」
何がひどいって、こちとらアーツも奇策も全部使ってるのにタルラは剣術の範囲ですら手加減しているのである。
普段俺は戦闘の際、魂も同時に視るようにしている。
それは相手の心理状態から相手の動きを予測することができるからだ。
攻撃の意思やフェイントの誘いなどはそれが顕著だ。だから戦闘に関しては素人に毛が生えたレベルの俺も、ある程度の人間には対応できる。
だがこいつを含む達人レベルの人間は話が別だ。素のスペックが違い過ぎて
いざ戦闘スイッチが入ると息をするようにフェイントを混ぜてくるし、アーツの剣を当てようにも掠りすらしない。
それどころかようやく次の手を予測できたと思ったらそれに対応した動きに瞬時に切り替えられる。
後出しじゃんけんに負けるなと言われている気分だ。
俺もウルサス人なので種族的特徴である頑強さは備わっている。前世と比べれば俺は相当強くなっているはずだが、そもそもここはテラの大地であるからして、個人間の戦闘力の格差が激しい。
俺にはどこぞのチェンソー猫ガールのように、滞空中のヘリから紐無しバンジーしてヒーロー着地かますほどの力はない。
結局俺の木刀はタルラに一撃すら与えられず、その日の訓練はお終いとなった。
休憩中、辺りには俺達と同じように組手を行う戦士達がいた。彼らが振るう武器がぶつかる音が、しんとした森の中で心地よく響く。
2年前よりも遥かに賑やかになった拠点では、最近になってより訓練に励む奴が多くなった。
それは俺達が今勢いに乗っていて成長をより身近に感じるからだろうか。
戦闘だけじゃない。諜報員や工作員としての訓練も導入してしばらく経つ。
幸いこっちには軍人だったパトリオットら遊撃隊がいるし、商会の伝手で発破やプログラミングを生業とするものもいるので育成については問題ない。
彼らに教えを乞う形で、そういった技術に長けた人員の育成と結果の検証を行っている真っ最中だった。
その中には、俺が見知った顔もあった。
「まさかサーシャが戦闘員に志願するとはな」
「あいつも思うところがあるんだろうさ。実際、サーシャの射撃アーツと隠蔽アーツの適性は相当なものだったしな」
俺達の視線の先、太い丸太を的にしてボウガンを構える訓練生の中には、サーシャの姿があった。
原作通り、サーシャはファウストとして迷彩狙撃隊とリーダーを目指すらしい。
(子どもを戦わせたくないってのは、エゴなんだろうな・・)
構えたボウガンの先を見据えるサーシャは、他の訓練生に比べて明らかに小さい。
それでも、彼から感じる気迫は他の誰にも負けていなかった。聞いた話では、既に彼を慕う部下のようなものまでいるらしい。見れば今も狙撃隊の1人の射撃姿勢を修正し指導までしていて、その姿は何とも威厳と風格に満ちたものだった。
そんな所にも、彼が将来レユニオンの幹部として1つの隊を背負う人間であることを感じる。
「イーノも、目指すものを見つけたようだな」
「ああ。兄貴としては嬉しい限りだよ」
といっても、イーノは原作のように指揮官になりたいわけではないが。
そのために真面目に勉強に励む彼を見て、胸にこみ上げるものがあった。
俺達のかわいい弟分の成長に感動していると、タルラは射撃訓練の様子を見ながらポツリと言った。
「だから君も、最後まで見届けるんだぞ」
・・・ああ、そういう事かよ。心配性な奴だな。
あれ以来、特にタルラは俺の安全について気を回すようになった。
ここ最近の俺との稽古も、大方俺が何か無茶した時に生き残れるようにとか考えているんだろう。
「言われなくたって分かってるよ。それに俺は一応非戦闘員だぞ? 無茶をするのは一番後だ」
「そういってミスターと碌な対策も無しに一騎打ちしようとしたのはどこの誰かな?」
わりと痛いところを突かれたな。
あの時はさすがにヒヤッとしたし。
「君は熱くなると周りが見えなくなる性質だからな。放っておけない」
「あのタルラ様に言われるとは、自重することにするよ」
「ああ、是非そうしてくれ」
ちょっとした冗談にも真面目に返されては反応に困る。
さっきから全然こっち見ないし。
「約束を、覚えているか?」
「どのだ?」
唐突の質問に戸惑う。そんな漠然としたことを聞かれても、候補が多すぎて困る。
思えば、タルラとはいろんな約束をしたものだ。
それらの多くは、未だ果たせていない。
とりあえず、思いつくものを挙げていく。
「最初に会った村での勧誘の言葉か? それとも鉱石病が治せるようになるって賭けの話か? あ、その後のタルラの妹に会わせるってやつか?」
これでも商売人だ。記憶力はいい。加えてお前との約束だ、忘れるわけがない。
それでも、タルラは首を縦に振らなかった。
え、まじで。俺なんか忘れてる?
一向に正解を引けなくて冷や汗をかき始めた俺にタルラは不満げに言った。
「どれもそうだが、違う」
「何じゃそりゃ、なぞなぞ?」
ここでいきなりトンチを出されても困るんだが。
さらに頭を抱えることになった俺に、タルラは苛立って声を荒げた。
「君はいつも”俺達で”と言った!」
こちらを振り向き、俺を真っ直ぐ捉える彼女はいつになく真剣だった。
その仄かに揺らめく灰の瞳に、吸い寄せられる。
「私とともにこのレユニオンを守り、妹と会い、鉱石病に打ち克った世界を見ると君は誓った」
「・・・そうだな」
「戦士に二言は無いのだろう? なら約束を果たすその時まで、ずっと私の傍にいてくれ」
「・・・・」
こちらに詰め寄るタルラの勢いに押され、言葉を失っていた。
いつになく真剣で切迫していて縋るような声音に、俺としたことが動揺しているようだ。
(まあ、そのつもりではあるんだけど。その言い回しだとさすがに恥ずかしいな)
勿論そういう意味ではないのは分かってるんだけど!
ていうか顔近えよ、照れるだろ。
どう返事したものか頭を悩ませていると、拠点の方が何か騒がしいのに気付いた。
タルラも気付いたようで、剣を掴みそちらを見つめている。
やがて遠くから1人こちらに向かってくるのが見えた。
「イグナスさん!」
慌てて走ってきたのはアリーナだった。
どうしたんだ、確か今の時間は子ども達に勉強を教えていたはずだが。
よほど急いでいたのか、俺達の前で立ち止まる彼女は声も出せないほど息を切らせていた。
落ち着かせようと傍に寄り肩を支える。
ようやく呼吸も落ち着いた彼女が焦燥に駆られた声で言った。
「助けてください、イーノが!」
事態を把握した俺は全速力で駆け出した。
「やあ、兄さん」
「どうしたイーノ? 随分散らかしてるじゃないか」
急いで駆けつけた俺は、今子ども達の教室として使っている建物の一室にイーノと2人きりとなっていた。俺達、そしてレユニオン全員にとって日常の象徴であるはずのそこは、今は机や食器、筆記用具の残骸が転がっていて、先程まで平和な授業をしていたとは思えない有様だった。
「ああ、これかい?
「俺も非感染者なんだが?」
「兄さんは特別だよお。あの薄汚いブタどもとは違う」
イーノは俺に信頼の籠った目で言った。
けど、今その信頼は嬉しくないぜ。
それはお前のためにならない。
「僕の喉にこの源石を埋め込んだあの女や、それをただ見ていた大人達、路地裏から僕達を追い出した奴らも皆僕がこの手で殺してやるんだあ」
アーツの残滓だろう。右手に集まる冷気を見つめながら喜色を浮かべるイーノ。
その姿はとてもあの温厚で引っ込み思案な弟と同じには見えない。
鉱石病は時に感染者の意識に干渉し、記憶障害や精神疾患等の症状を発症する。
イーノはそれに加えて、感染した時その原因となった母と父を自らの手で殺害している。
それらが相まってイーノは時折、他人に対して攻撃的な性格に豹変してしまう。
それが常態化したのが原作のレユニオンメンバー、メフィストになったイーノだ。
あの時と違ってタルラに成り代わったコシチェイに唆されるようなこともなく、抑制剤の定期的な服用で鉱石病の進行も抑えることができている。
そのおかげで普段は問題ないのだが、ふとした時にこうして症状が表に出る。
今も復讐する相手を考えては笑みを浮かべる俺の弟は、狂気の中にある。
(そうだよな、お前だって怒るよな)
両親から日常的な暴力を振るわれていたイーノ。彼の味方は、当時隠れて一緒に遊んでいたサーシャだけ。
抵抗することもできず、遂には実の母親に感染者にされた。
そして、自らの手で彼らを殺害し、特異なアーツと引き換えに好きだった
そんな境遇の彼は、誰よりもあちら側に陥りやすい。
(けどな)
「さすがにおイタが過ぎるぜ、イーノ」
「何を言うんだい、兄さん?」
俺はゆっくりとイーノに近づく。
「僕は自分のやりたいことを見つけたんだ! あいつらをねじ伏せて、ぼろぼろにして! 命乞いをさせてから惨めにこ」
「てめえは医者になりたいって言ったんだ!!」
突然の大声に怯むイーノ。
俺はそんな弟の胸倉を掴み引き寄せる。
「狙撃アーツの訓練で怪我したサーシャの傷を癒して、いいアーツだって言った俺にお前はそう言ったんだ」
俺が褒めた時、それはもう嬉しそうに微笑んでいた。
なれるかな? なんて不安そうに聞くこいつに、俺は頑張って勉強したらなって励ました。
内心、心の底からそうなって欲しいって願ったさ。
あの引っ込み思案なイーノが初めて口にした願望が、誰かの為になろうとするもので。
とても嬉しかったんだから。
(あの時の誓いを汚すんじゃねえ)
「イーノ。お前はいつも俺やタルラみたいになりたいって言ってくれるよな?」
「そうだよ、強くてかっこいい、兄さんやタルラ姉さんみたいな」
「人を家畜と呼び虐殺するような奴にか?」
え? とイーノは言葉を失う。
「イーノが言ったのはそういう事だ。人をねじ伏せて、惨めに殺してやりたいなんて宣う奴は只の殺人鬼だ」
「違うよ! 兄さんや姉さんは違う、そんな人じゃない!」
「ならお前が目指すものも違うだろ!」
戸惑うイーノの瞳の奥をしっかりと見据える。
「兄さん、ぼ、ぼくは・・・」
やっと自分の状態がおかしい事に気付いたのか、縋るように俺の名前を呼ぶ。
そうだ。お前はそんな奴じゃない。
恥ずかしがり屋で、争い事が苦手で、歌や詩を読むことが大好きな俺のかわいい弟だ。
イーノを抱き寄せる。未だ幼い体躯は、俺の片腕にすぽっと収まってしまった。
「自分に負けるな、イーノ。兄さんの俺が保証する、お前は優しいやつだ」
「でも、ぼくは、あいつらを、うっ!」
頭を抱え、うずくまるイーノ。
急なストレスで負担がかかったのだろう。早く何とかしてやらないと。
『誰かを癒すアーツか。イーノらしい、優しいアーツだな』
かつてイーノに言った言葉を思い出す。
(兄貴として、行動で示さないとな)
イーノを抱きしめたまま、腰のベルトから短剣を取り出す。
鞘に納めたままのそれを逆手に持ち、胸の前で掲げるように構える。
そして、目を開き彼の魂を捉えた。
目の前にあるイーノの魂は、ささくれ立ち、赤い光を放っている。
怒りや復讐心、苛立ちに包まれたそれに短剣の柄側を向けアーツを発動する。
(イメージしろ。イーノの魂を癒す、慈愛の光を)
短剣を握りしめ、集中する。
するとアーツユニットからは普段の長剣ではなく、白いヴェールのような光が延びていく。
それはやがてイーノの魂を覆い、体を抱きしめるのと同じように、それを優しく抱擁した。
撫でるように、労わるように、
一瞬、中からこちらを突き破ろうと抵抗され眉をひそめたが、それも時間が経つにつれ収まっていく。
そしてしばらくの抱擁の後、イーノの魂は元の穏やかな光を取り戻していた。
「兄さん・・・」
アーツを解除しイーノに向き合う。すっかり正気を取り戻したらしい。怒られないかびくびくしながら俺の名前を呼んだ。
よし、もう大丈夫そうだな。
相手の精神状態への干渉なんて魔王ぐらいにしかできないと思っていたが、ぶっつけ本番でうまくいって良かった。
今まで視るか斬るくらいしかできなかったが、レユニオンに加入して以降何度か実戦でアーツを使っていたのに加え、動物相手にアーツの活用法を模索していたのが役に立った。
「俺に謝罪はいらないぞ。でも、先に謝る相手がいるよな?」
「う、うん。でも、みんな怖がらないかな・・」
さっきまでの自分の行動を覚えているのだろう、不安を零すイーノ。
「安心しろ、俺も付いてってやるから」
そうして下を向くイーノの手を掴み、外へと連れ出す。
「・・うん。頑張るよ」
力を込められた掌から、彼の勇気と俺への信頼を感じた。
そうしてイーノを連れ出した庭先は、雪がある程度取り除かれ人が数十人は入る広さをしている。
拠点の人数の増加に伴い、保護すべき子ども達が増え学び舎となる建物も増築した。
それもあり、イーノ達が普段生活しているここも、少し小さめの校庭といった広さだ。
そんな何をするにも目立ちそうな場所で俺は、
「すみませんでしたあ!!」
「ごめんなさい!」
今、五体投地する勢いで土下座をかましていた。
その角度、手の伸ばし、見える頭頂、全てがパーフェクトだ。
それは前世のどんなサラリーマン、かの○○ザワさんすら真っ青な見事な土下座だった。
一方、俺の横ではイーノが腰を45度曲げて謝っていた。
俺達の前方、頭を下げた先にはイーノと一緒に授業を受けていた子どもたちとアリーナ含む先生達がいた。
「何してるのイグナス~? お腹痛いの~?」
「イグナスちっちゃくなってる~。変なの~!!」
「やーい唐変木、鈍感、スケコマシ~!」
完璧な土下座を披露する俺の周りを、子どもたちが揶揄いながら回っている。
(ぐぐぐ、こいつら後で覚えとけよ!)
どうも拠点の子どもたちは酒の一件でこっぴどく叱られる姿を見てから俺を舐めている節がある。
そろそろ大人としての威厳を取り戻さなければならない、というか誰だこいつらにスケコマシなんて教えたやつ!
情操教育上よろしくなくてよ。どう思いますかアリーナ先生!?
俺が屈辱的な罵倒を浴びせられる一方、イーノは先生と子どもたちに危惧していたほどの拒絶はされず、謝罪をしっかり受け入れられていた。
「でも、僕、色々壊して、皆んなにもひどいこと言っちゃったし」
「大丈夫よイーノ。貴方が本心で言ったわけじゃないって、みんな分かっているから」
アリーナが宥める。他の先生方も優しく首肯している。
一部の生徒はまだ不安そうにしているが、そうじゃない子もいる。今も何人かがイーノに寄って励ましてくれている。サーシャ以外の友達だろうか。なんにせよ、嬉しいことだ。
「むしろこちらこそごめんなさい。貴方一人にイーノを任せてしまって」
「それは気にしないでください。兄貴として当然です」
それに関しては兄として弟の面倒を見なくてはという思いがあったのに加え、イーノのアーツも原因の1つだ。
前も語った通り、イーノは原作では医療アーツの発展として感染者を意のままに操る能力を持っていた。
それが自分の部下限定なのかそうでないかは定かではないが、龍門で敵だったはずのチェンに回復の効果が及んでいたような描写があったのだ。ならば感染していない俺が対応するのが安全だろうと判断したまで。
大人同士でやり取りする中、励まされるイーノはそれでも気が済まないのか
「やっぱり、僕も兄さんみたいにどげざ? したほうが」
「「「それはしなくていいわ(ぞ)」」」
やめろ、やめろ。お前にはこんな悲しい必殺技覚えてほしくない。
これは大人の、大人による、大人のための由緒正しき謝罪法だ。いたいけな少年がやるのはただの虐待である。
「でも」
「いいか? お前はまだ子どもだ。子どもは大人に迷惑かけていいもんなんだよ」
それでも食い下がるイーノを立ち上がって優しく諭す。
「申し訳ないってんなら健やかに育て。お前なら、鉱石病なんかに負けないって信じてる」
そう言って俺はイーノに微笑みかけた。
大人ってやつは子どもの面倒を背負ってこそだからな。
兄貴なら尚更だ。
イーノの髪を少し荒く撫でてやる。驚く彼はそれでも嬉しそうにこちらを見上げた。
まったく、かわいい弟を持ったもんだぜ。
「兄さん、額に泥が・・・」
「うわ~イグナス土塗れ~!」
「さっきのもう一回やって!」
「かっこわる~い!」
・・・なかなか、大人のように格好よくはいかないものだな。
結局、俺の有難い格言は子ども達の揶揄いを助長させるだけに終わった。
(だが、
騒動も無事治まり、俺は明日の準備をするため自室に戻っていた。
ベッドと机が並ぶ6畳ほどの空間で、1人考える。
正直、時期としては微妙なところだ。
だが俺達の規模も実力もそれなりになってきた。
そして規模が拡大するのに伴って厄介ごとや内部での問題、それにイーノのような重度の鉱石病感染者も増えている。
今はこれまでの信頼の積み重ねや充実した支援体制によって大きな問題にはなっていないが、このまま放置すればいずれ表面化するだろう。
それらに有効な、根本的な解決策が必要だ。
顎に当てていた右手が机を撫で、引き出しに指をかける。
机の引き出しを取り出し、
そこにあるものを手に取り、暫く眺める。
浮かぶのはレユニオンの、あいつらの笑顔。
それを守るために、できることは何か。
「毒と薬は紙一重、ってな。腹をくくれ、俺」
そうして右手に掴んだ
その行く先と、齎す未来は、俺だけが知っている。