明日の方舟よ、良い旅を   作:アルパカ戦士

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お久しぶりです。
投降頻度が落ちて申し訳ないです、今後の構成や矛盾点等無いか探すのに時間がかかって中々進みませんでした。やっぱアークナイツ文字量狂ってるぜ。

今回のイエラグイベも早くストーリー読みたいです。最初だけしか見れてませんが自分は「とある名前を考えるユカタンとスキウース」で気ぶりじじいになっちまいました。


エピソード2 方舟の兎

 静まった暗い一室。

 

 ―グォングォン―グォングォン―

 

 私の周囲からなんとも聞きなれない大仰な音がしている。

 見上げた視界一杯には冷たい金属の板が広がっていて、無機質なそれに息苦しさを感じる。

 

 狭い、独りだけの暗闇。何をするでもなく仰向けでただ時が過ぎるのを待つ。

 

 棺桶の中もこんなものなのだろうか。

 そんな考えがふと頭を過った。

 

 私がこの命を失ったとき、この身は朽ちていき、こんな冷たい箱に納められ、そして―

 

 

「よし。これで今日の検査は終了だ」

「・・・分かった」

 

 時間感覚も曖昧になってきたその時、足側から声が聞こえた。

 

 このいつまで経っても慣れない時間にようやく終わりを告げられ安堵する。

 

 機械的な駆動音とともにこの身を横たえた寝台が自動で動く。

 ここしばらくで見慣れた白い天井を見上げながら、体を軽く拘束していたベルトが外されるのを待ち体を起こす。

 

 寝台のすぐ傍には白衣を纏ったフェリーンの女医がいた。

 手にした画板に何かを書き込みながらこちらを見る。

 

「体調に変化はあるか?」

「いや、問題ない」

 

 薄い貫頭衣を脱ぎ籠から服を取る。

 慣れた着替えを手早く済ませた頃には彼女も必要事項を記入し終えこちらを見ていた。

 

 目を合わせようとしたが、またすぐに目を逸らしてしまう。

 彼女の翠の瞳は、相変わらず感情を読みにくかった。

 

「先に結果だけ伝えておこう。源石融合率、血中源石密度どちらも比較的高いが進行は今のところ収まっている。やや栄養不足の気はあるが、そこに関しては不足と言うより偏っているといったところだ。保健衛生班に献立の参考を送らせよう」

「そうか」

 

 いい知らせだ、今までこまめに抑制剤を打っていた甲斐もあったらしい。

 その2つは鉱石病の進行度合いを測るうえで重要な項目な上、今のところ上がることはあっても下がることはない。

 

 これまで何度かアーツを使いながらも数値を維持できているという事は戦線離脱の恐れも無いだろう。

 

 

「だが、食事か」

「ああ。だが安心してほしい、君の体質については理解している」

 

 ケルシーはつい先程まで私が横たわっていた寝台に触れる。

 そこからは空調だけでは説明できない冷気を感じた事だろう。

 

「何分、君の症状は特殊だ。何か違和感を感じればすぐに申し出て欲しい」

 

 礼を言いつつも、その時が来たとして何かできるわけでもない。

 黒い手袋に覆われた自分の手を見つめる。

 

 

 今もこの身を苛む冬の呪い。

 命の熱も、味覚や触覚も失って久しい。

 

 唯一酒や香辛料の刺激だけが食事に色を持たせてくれる私にとって、それらは自覚するのは難しく他者からの評価によってようやく気付けるものだ。

 幸いあちらで献立を考えてくれるそうだし、この艦には食堂もある。あまり改善に手間もかからないだろう。

 

「その時はまたこちらから尋ねよう。では、そろそろ行く」

「どこか急ぎの用事でもあるのか?」

 

 何気ない質問にピクリと身じろぐ。

 別にやましい事ではないが、彼女の前でそれを言おうとするのはどこか気後れする。

 

 だが、私が回答を渋っているのをじっと見つめる姿に根負けし彼の元へ向かうことを告げた。

 

「ドクターの執務室にな。アーミヤから午前中の秘書業務を代わって欲しいと言われている」

「・・・・そうか」

 

 特に何を言うでもなくそう返事し、手元のカルテに視線を落とす彼女。

 何かを書き足すでもなく、先程書き終えたばかりのそれをじっと見つめている。

 

 そもそも、ドクターはこのロドスの幹部に当たる。

 当然社外秘の情報などもあるだろうにそれを同盟相手とは言え赤の他人に任せるのはどうなのだろうか?

 

 ここに来てからよく話すようになったアーミヤからは大丈夫だと太鼓判を押されてはいる。

 だが今のドクターを取り巻く環境はかなり特殊だ、ケルシーも彼にどう接すればいいか手探りな印象を受ける。

 

(何か言うのも野暮か)

 

 彼らの関係に口を出せる程、私は彼らと時を同じくしていない。

 それきり私達の間に会話はなく、いつもの診察は幕を下ろした。

 

 

 

 

 そして診察室を出てから1時間ほど。

 

 ロドスの業務の多くを裁決する立場にあるドクター、彼に割り当てられた執務室内に私はいた。当然、部屋の主もそこにいる。

 

 頭をすっぽりと覆うバイザーに、ロドスのロゴが入ったコートを着込んだその姿はどう見ても不審者だ。

 しかしそれもここ数ヶ月ですっかり見慣れてしまい、今やバイザーの奥に微かに伺える表情を捉えずともその僅かな身動きからある程度読み取れるようになっていた。

 

 

 そんな彼の様子を私は今斜め後ろから静観している。

 いつもより背筋が曲がっており肩も丸まっている。頻繁に顎に手を当て考え込む仕草。

 そしてデスクの端には殆ど中身のないカップと理性回復剤なる見るからに怪しげな薬品が転がっていた。

 

 熱心に業務に打ち込む彼に声を掛ける。

 

「ドクター」

「なんだい?」

「昨日は何時間睡眠を取った?」

「・・・3時間程かな」

「よし、今すぐ寝ろ」

 

 彼が手にしていた資料の束を奪い諭す。

 

 本当ならば力ずくで寝室にまで運んでやりたいところだが、触れるわけにもいかない。

 彼もそれが分かっているのか無理に資料を奪い返そうとはせず、椅子に腰かけたまま無言の抗議の後、デスク上の端末に向き直る。

 

 どうやら意地でも机にしがみつくつもりのようだ。

 

「無理をするな。そうやって身の丈以上に抱え込むのはお前の悪い癖だ」

「だが、その間にも助けられる人がいる」

 

 言ったところで聞かないのは承知の上だ。

 体は貧弱なようだが、こういったところでは頑固な奴だ。

 それはここで生活し始めてなんとなく感じている。

 

 ふと奪い取った紙の束を検める。

 

「これは、学術書か?」

「ああ。鉱石病と神経の関係から意識障害が発生するプロセスについて考察したものだ」

 

 手に取ったそれを見るも、そこには億劫になってくるほど文字とグラフが敷き詰められ理解すらできない専門用語が挨拶のように使われている。

 それを机に戻そうとして、比較的広いはずのデスクの殆どが紙の束で埋まっていることを思い出した。

 ロドスの幹部として各部隊の報告書や支部からの通達そして次の作戦の計画書など、彼の承認を待つ書類が積み重なり層を成していた。

 

 私は外野の人間だ、内容に関しては元より理解できるはずもない。

 ただ、気が遠くなるような業務を処理しつつそのような論文まで身近に置いていることから、彼が鉱石病の研究に精を出していることは分かった。

 

 

「それに、こうして読んでいるだけでもどこか見覚えがあるような気がしているんだ。私の記憶を取り戻すことに繋がるかもしれない」

 

 そう。彼は以前の作戦で救出されるより前の記憶を失っている。

 当然それまでの彼の研究内容なども思い出せず、鉱石病研究の発展への道は未だ閉ざされたままだ。

 

 だが彼はそれ以外の面、作戦指揮能力や人心掌握によって成果を上げ続けており、また今回のように記憶を取り戻すため様々な試みをしている。

 

 

「アーミヤやケルシー、このロドスの従業員、世界中の鉱石病に苦しむ人達にとって鉱石病治療薬の完成は悲願だ。もちろん君にとっても」

「・・・・」

「君がいつか、命の熱を感じられるように。誰に憚ることなく、大切な人を抱きしめられるようにしてあげたい。してみせる」

 

 今はまだ何もできなくて申し訳ないけど、なんて。

 そう言ってまたパソコンに向き直りキーボードを叩きつつ、もう片方の手では書類にサインをして選別していく。

 

 そうやって私達の為に奮起してくれるのはありがたい。

 だが、私にはもうそうやって身と心を削りながら業務に没入する姿は嬉しさよりも心配の方が勝るものになっていた。

 

 何が彼をそこまで駆り立てるのか。

 彼の事情について知っている事はそう多くないが、これだろうなというものはある。

 

 私は画面の前に手をかざし無理矢理作業を中断させた。

 また無言の抗議をする彼をしっかりと見据える。

 

「私は、以前のお前を知らない。だが今のお前には好感が持てる。私にとっての“ドクター”とはお前だ」

 

 私の言葉にしばらく呆然とするドクター。

 やがてバイザー越しに顔に手を当てると、ふぅーと深いため息を吐いた。 

 

 

「・・・参ったな」

 

 表情は依然として伺えない。

 それでも、困ったような情けない笑顔を浮かべているように見えた。態度もいつものような見栄を張ったようなものではなく素に近くなったと感じる。

 

「イグナスからも同じことを言われたよ。似た者同士だね」

「ふん、あんなそそっかしい奴と一緒にするな。むしろお前達こそよく似ている」

「私と、イグナスがか?」

 

 意外そうに聞き返すドクター。

 全く。自覚が無いところも含めてそっくりだな。

 

「頑固で、周りに心配をかけてばかりいるという事だ。改めろ」

「だが」

「因みにあいつは無茶をし過ぎてタルラからこってり絞られた。中々面白かったぞ、見る分には滑稽だ」

「・・・・」

 

 先程似ていると言われた人間の愉快な末路を聞き押し黙る。

 チェルノボーグから帰ったあの日、一緒に居た迷彩狙撃兵から告げ口を受けたあいつはそれはもうおかんむりだった。

 翌日、やけにげっそりとしたイグナスを見たが誰一人として肩を持つことはなかった。

 触らぬ神に祟りなし、という奴だ。自業自得ともいう。

 

 

 実際、本当によく似ている。

 本人に直接的な力は無くて、それでも誰かの為にひた走れる姿が多くを引き寄せる。

 

(私も、その1人になるのだろうか?)

 

 しょげるこいつを視界に収めながら、私がロドスに来てしばらくしたあの日を思い出す。

 

 

 治療の為に訪れた見知らぬ土地。

 思えば慣れない環境で少し気を張っていたのもあるだろう。

 いつもと違い私の事を知らない者が大勢いる中での生活は、私にとって精神的に疲労を感じさせた。

 それに加えて気温の変化なども重なり、1人廊下を歩いていた時体が急に重くなった。

 

「はあ、はあ」

 

(最近は無かったからな、油断した)

 

 もはや自力で立っていられなくなり、壁にもたれながらゆっくりと腰を下ろした。

 息が上がり手足が震える。

 

 一緒にロドスに来た兄弟達は傍にいない。先に向かっていてくれと行かせてしまった。

 

 

 運悪くそこは人通りが滅多に無い区画で私の異変に気付く者もいない。

 甲板での作業の音だろうか、時折金属音が空しく辺りに響いて私の弱った頭を揺らし続けていた。

 

(大丈夫だ、大丈夫)

 このまま独りここで死ぬのかと、情けない不安を必死に払拭しようと心の中でそう繰り返す。

 

 そのまま耐えしのげばいい、そう思っていた時頭上から声がした。

 

 

「大丈夫か?」

「! 触るな!」

 

 他意は無かった。触れれば凍傷を引き起こしてしまうと考えた咄嗟の行動だった。

 

 それでも容体を案じて声を掛けた者にする態度ではない。

 

 だが彼は特に気分を害するでもなく、それどころか何か他にできることはないかと尋ねた。

 

 少し肌寒いがこれも一時的な症状だ、じきに収まる。

 そう伝えて楽な姿勢を取れば、彼は近くの空き部屋からシーツと毛布を持ってきて私に触れないよう慎重に被せた。

 

「寒くないか?」

「ああ。大分マシになった」

「温かい飲み物を取ってくる」

「いやいい、それよりもいいものがある」

 

 幸い手足は辛うじて動かせるようになった。

 懐から特製のキャンディーを取り出し口に含む。

 

 含まれたアルコールの酒精と香辛料が体を温めた。

 

「それは?」

「・・・キャンディーだ。食べてみるか?」

 

 こちらを心配そうに見つめる彼。そんな重い空気を吹き飛ばしたくてかけたちょっとしたイタズラだった。

 何も疑わず差し出された飴玉を口に含み、直後に悶絶する姿を見て体調が悪いながらつい笑ってしまった。

 

 その後私を探しに来た兄弟達とアーミヤが私を医務室に運びその場は流れた。

 

 

 

 あの日以来、私はこうして暇を見ては彼の元を訪れている。

 

 見舞いに来たイグナスの話で彼が話していた期待の人物、ドクターであると知ったというのもあるし、あの日面倒をかけた恩もある。

 

 最初は1日だけのつもりだったが、過労で理性を失ってはオリジムシを調理しようとしたり道行くオペレーター達とハイタッチしていったりと奇行に及ぶ姿を見て気になって仕方がなくなり気付けばこうして今も世話を焼き続けている。

 

 時計を見れば丁度午後に差し掛かるところ、食堂も今ならば空いていることだろう。

 

「とりあえず作業は一旦中止だ。食事にするぞ」

「私はここで」

「砂虫の串焼きなんてゲテモノを食べようとしていた奴のことなど信用できん。文句を言うならばまたあのキャンディを口に放り込むぞ?」

「それは勘弁願いたいかな」

 

 そうやって苦笑いしつつも手にした見積書を中々手放さない彼。

 

 仕方がない。

 

「今日の健診で食事の偏りを指摘されてしまってな。見張ってくれると助かる」

「・・・分かった。お供するよ」

 

(そういうところだぞ)

 

 ようやく重い腰を上げた彼を連れ立って執務室を出る。

 思わず声に出ていたそれは、ドアの開閉音にかき消され届くことはなかった。

 

 

 昼休憩の時間も過ぎた食堂は想像通りラッシュ時の騒がしさの鳴りを潜め、ポツポツと時間をずらした職員が端で黙々と食事をするのみだった。

 

 

 空いている席に2人で座りトレイを置く。

 

 対面に座る彼は、なんとフードを外した。

 食事をするのだから当たり前だが、ここ数ヶ月謎だった素顔があっさりと晒されたことにフォークを持ったまま固まる。

 

「・・・どうした?」

「いや、今初めて素顔を拝めたが案外普通なものだ」

 

 種族は分からないが、あれほど大仰なフードの下にあったと思うと拍子抜けだ。

 

 病的なまでに白く、細い。眼光は普段から考え事をしているからか鋭いが、ふとした拍子に柔らかくなる目元が妙に印象的だった。

 

 とても戦士とは言えない相貌。そんな彼が、私達と同様鉱石病の根絶という見果てぬ夢を追うという。

 

 

 そんな事を考えていると、視界に何かが映り込んだ。

 顔を上げると、スプーンに乗ったカレーライスが目の前に差し出されていた。

 

「食べるか?」

「・・・何故その思考に至ったか聞いてもいいか?」

「いや、ずっとこちらの皿ばかり見ているし自分の料理には手を付けないから」

 

 それは単に熱を冷ましているだけだ。

 凍てつくこの体には、常人が温かいと感じるものですら沸騰する煮え湯に感じられてしまう。

 それに味覚もほぼない私からすれば食事はただの栄養補給だ。

 ケルシーからバランスを考えるように言われはしたが、それも栄養の話。食事を楽しむことのない私からすればどれだけ冷めようが変わりはしない。

 

 それを、この男はどうやら他人の食事を羨ましがっているように映ったらしい。

 

「大丈夫、ちゃんと息で冷ましている」

「そういう問題ではないのだが」

 

 だが、自分の食事を進めるでもなく他人のために何度もスプーンに息を吹きかける姿がなんだかおかしくて。

 

 差し出されたそれを口にくわえる。

 辛口のスパイスが効いているのか舌に僅かな刺激が残り、嚥下したそれが喉を通って腹に収まった。

 

 人肌以下に冷まされたはずのそれが、やけに温かく感じた。

 

 

 自然と笑みがこぼれたのを、向かいの彼は見逃さなかったらしい。

 

「美味しいかい?」

 

 彼も私の体質については知っているだろうに、なんてことの無いように聞いてくる。

 

「まあ、悪くないな」

 

 素直に感じた事を伝えるのはむず痒くて、ついそっけなく返してしまう。

 

「そうか、それはよかった。キッチン担当の皆んなが喜ぶ」

 

 そんな私の態度に気分を害するでもなく、満足そうにそう言ってまた食事を再開する彼になんだか形容しがたい感情が溢れてきた。

 

 一度戦場に赴けば未来を予見したかのような指揮官としての手腕を発揮するのに、目の前でカレーを頬張る様子は一般人と何ら変わらない。

 何ならばその華奢な体躯のせいで年少のオペレーターよりも頼りない。

 

 

 にも関わらず、誰よりも大きな目標に向け突き進む姿にいつの間にか目が離せなくなっていた。

 

 

『お前にもきっとできる。助けになって、支えになってやりたいって思える、そんな奴が。そいつはきっとそれに応えてくれるよ』

 

 ふと思い出した言葉に心臓が跳ねた。

 

(いや、まさか・・・)

 

『そいつは人誑しな上に女難の相が見える』

 

 確かに上官としてだけでなく1人の男として彼を慕う者は多い。

 アーミヤやあの医療部の顧問も彼に人並み以上の関心を寄せている。

 

 

 かつて、揺らぐ篝火に照らされながら告げられた言葉の数々が脳裏に過る。

 

 それに心当たりが多すぎて、鼓動が早くなっていく。

 先程食べたカレーが再び熱を持ったかのように、口の中が温かくなる。

 それ程着込んでいるわけでもないのに、滅多に出ない汗が全身から噴き出る。

 

 

 あいつは情けない奴だし無茶ばかりする馬鹿者だ。

 それでも、あいつは虚言を吐いたことはない。

 

 

 つまり、私の伴侶とは―

 

 このロドスに来てから世話を焼き続けてきた日々が唐突に色を変える。

 自身では名付けもしなかった感情に、言い逃れようもない正しい言葉を与えられてしまった。

 

(いや落ち着け。まだそうと決まったわけではない)

 

「今から、少し突拍子もない事を聞くが気にせず答えて欲しい」

「なんだ?」

 

(あいつめ。恨むぞ)

 

 なんだか顔が熱い。

 言葉が喉から中々出てこなくて、何度も息をつきようやく核心を突く質問ができた。

 

 

「お前は、口の中でカップラーメンを作ることができるか?」

「??????」

 

 あまりにも脈絡の無さすぎる質問に、ドクターは数秒思考を停止していた。

 

 

 




 後日、ケルシーからドクターの特技を聞いたエレーナ:
「イグナスめ、本当にあいつは何者だ? というかこうなることを知っていたのか? いや待てそれよりも今後ドクターとどう接していけばいいんだ? 今でさえあいつの顔を思い浮かべるだけでなんだか顔が熱くなるというのに、いやそもそも私が彼を()()思っているとは限らないわけでこれは単に人間的に好感が持てるというだけでそれ以上でもそれ以下でもないただの」
1号君:
「姐さん?」
アーミヤ:
「エレーナさん?」
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