明日の方舟よ、良い旅を   作:アルパカ戦士

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 投稿してすぐお気に入りに追加して下さった方々を見て嬉しいと同時にうお〜注目されちゃってるぅ〜とハラハラしてました。
 思いつきで書き始めたものですがなんとか完結を目指していきます。
 
 ちなみに私は二アール家に脳を焼かれた歴1年未満新米ドクターです。

 あらすじで言ったフロストノヴァはまだ出番先なので許してください。


第四話 ファーストコンタクト

 とある村 12月14日

 

「よしてくれ。もうここは金銭どころか明日食う飯すら底をついたわ」

「うるさい。定例調査に反抗するとは感染者か貴様!」

 

 今、私の胸中は体を突き破らんばかりの熱で満たされていた。

 アーツではない。ただ純粋な怒りだけで人はこれだけの熱を発することができるのか。

 

 私があいつをこの剣で貫き、当てもなく逃走してから3年の月日が流れた。

 

 逃げた先にある村で、私はとある老夫婦に出会った。

 最近子供を亡くしたのであろう彼らは血だらけだった私をあろうことか匿い、まるで本当の娘のように接してくれた。

 

 そんな恩人が今、不当に、悪辣に、ただ己の欲求を満たすためだけに虐げられている。

 爺さんが突き飛ばされた。足を痛めたのだろう、滅多に弱音を吐かない彼が顔を顰め痛みに堪える顔を見て、私の中の何かが弾けた。

 

「何をしている?」

「なんだお前は。随分と値の張りそうな服だ。その服装をどこで手に入れた?」

 

 不躾な視線が私の体を上下する。今私が身に纏っているのは忌々しいあのコシチェイの下で着用していた軍服だ。既に奴の頭の中はこの服をどこで売り飛ばせば高い値段がつくのか算段しているのだろう。どこまでも他者から奪うしか頭にない奴だ。

 

「何をしていると聞いている?」

 既に剣は鞘から解き放たれている。切先を向けてやると、監視隊の男は狼狽えた。

 

「貴様っ、何をする!」

(爺さんを傷つけた報いを受けるがいい!!)

 

 この後、どうなろうが知ったことではない。たとえ感染者監視隊が列を成してやってきても、私が全て追い返してやろう。

 この光景を見過ごすという悪に比べれば、なんということはない。

 私は奴目掛けて剣を振るおうとして、

 

「あの〜、少しよろしいでしょうか」

 

 だが、その時は訪れなかった。

 

 

 

 

 

 

(あっぶねえええ!!ギリギリだったじゃねえか!)

 

 実家を離れ新たに商会を設立しそれを軌道に乗せ、それと並行してタルラの逃亡先の村の特定を進めていた。そしてやっとそれらしき女性の噂を聞きつけ立ち寄ったと思えばこれだよ!

 

 いかにも今たまたま立ち寄りました風に装っているが、来る途中の別の村で監視隊が村に向かったと聞いてからはガンダッシュしてきた。背負っていた交易用の商品が重くて死ぬかと思ったわ。

 

「・・・」

「誰だ貴様は?」

「失礼しました。私しがない交易商を営んでおりますダーリ商会のイグナスと申すものです」

 

 いきなり現れた俺に困惑しているようだな。いや、タルラは先ほどの雰囲気を引きずっているのか未だ視線は鋭いままだが。

 タルラは既に剣を抜いていて、今にも監視隊員に斬りかかろうとしている。逆に、そこまで反抗されるとは思っていなかったのか監視隊員の方は腰が引けている。

 だが、このままタルラに襲わせるのはまずい。こんなクソ野郎でも、ここで始末するにせよ返すにせよこの村で騒動があったのがバレてしまう。それを防ぐには奴を完全にこちらに従わせた上で五体満足に返さなければならない。

 

「貴様も俺に歯向かうつもりか?」

「そんな、滅相もありません。ただ私としてはこのような村から搾取するのは、些か非効率的に過ぎるかと」

 ほんの僅かに皮肉を込めて、そう言う。相手もそれに気付いたのか眉を顰める。

 

「ほう。貴様もこいつらを庇うのだな」

(よし。乗ってきた)

 

 さりげなくタルラとは逆方向に移動し注意をそちらから逸らす。

 頼むから今は大人しくしててくれ、タルラさんや。あんたがこいつを威嚇していると萎縮してこちらの策に乗ってこなくなる。

 視線を向けると、さすが貴族として教育を受けてきただけあるのか軽く首肯して見せた。

 

「俺はあくまで国に決められている定例調査を行おうとしているに過ぎん。それをそちらの都合で拒絶するならばそれ相応の対価というものが必要だろう」

 すっかり饒舌になったこいつはまるで自分が正しいことをしているかのような物言いだ。タルラと比べて武器も持っておらず敵意も感じない、しかも交易商ということで適度に金を持っていそうな俺を相手にして緊張がほぐれたのだろうか。

 視線が俺の背負ってきた荷物へ向けられる。

 俺もそれに合わせ、まるで貴重なものを守るようにそれを背後に隠す。

 

「貴様のそれはなんだ?」

「!これはいけません!他のものなら差し上げます、どうかこれだけは」

「うるさい!いいから中身を見せろ!」

 そう言って俺から無理やり大型のバックパックを奪いその中身を検める監視隊員。その顔は中の瓶のラベルを見ると喜悦に満たされた。

「これだけの酒を持っていたとは。これらは没収するとしよう。」

「そんなっ!それは我が商会の商品です。どうかお返しください。」

 できるだけ情けなく、膝すらついて嗜虐心を煽るように嘆願する。

 するとどうだろうか。こいつはまるで見せつけるかのようにそのうちの一本を開け一気にグラスに口をつけ呷った。

 俺の読み通りに。

 

(かかったな)

 

「これは!なんとも旨い酒だ」

「ああ、なんてことを」

「これで手を打ってやろうというのだ。俺の慈悲深さに感謝するが」

「それはこの地を治めるバルドイ男爵の地へお納めする予定のもの。一体どうすれば」

 

 その言葉を発した瞬間、喜悦に塗れた顔が固まった。

 

 そうだ。お前は今、自分よりはるかに権力が強い人の所有物を無理やり奪って、あろうことか飲んじまったんだ。

 

「ま、待て」

「バルドイ男爵は厳しいお方だ。自らに納められるものが誰かに奪われでもすれば、報復のため問い詰められる。嘘偽りは許されません、私の口は今起こったことを語るしかないでしょう」

「待てと言っている!!」

 どこか芝居じみたセリフを語っていると、大きな声で遮られる。見れば、呷っていた酒を震える手で握りしめ、雪すら積もる寒空にもかかわらずその額には汗が浮かび上がっている。

 

 そうだ、焦ってくれ。

 短絡的な思考に陥ってくれ。

 それが俺たちの活路になる。

 そのまま、監視隊員の喚きを意に介さず如何に男爵が自分への反抗者に対して非情なのかを1人語り続けた。

 

 監視隊員の手にはいつの間にかナイフが握られていた。いいね、実に短絡的だ。

 俺を帰せば貴族にチクられるもんな。

 

 タルラがそれに気づいて剣を構えるがそれも視線で抑える。

 

 今回の肝はこいつを従順かつ”無傷”で返すことだ。タルラの剣やアーツではどうしても傷がつく。

 ここは俺にまかしとけ。

 

「どうされました?監視隊員の方」

 ようやく、今気付いたとでも言うように振り返る。

「おい、さっきの話。俺が酒を飲んだ話は男爵には誤魔化せ」

 ナイフをこちらに向け、どこか血走った目で脅してくる。

 俺はゆっくりと腰に刺していた短剣型のアーツユニットを引き抜く。

「仮に誤魔化しますと言って」

 

「それをあなたは信じられますか?」

 

 笑みを浮かべながら言うと、逆上した監視隊員が突撃してくる。

 

 ウルサス人は基本的に頑強で、こいつは曲がりなりにも軍人として訓練を受けた人間だ。その無力化は骨が折れるだろう。

 

 だが、俺は例外だ。

 

 アーツユニットを起動させ、指輪型と短剣型に意識を沿わせる。

 視界がフィルターを通したように移り変わる。

 向かってくる監視隊員を視界に映すと、心臓の近く、体の中心に白いモヤが浮かび上がってきた。

 

 一方、短剣型アーツユニットからは今視界に映るモヤと同じものが溢れ、鈍く輝く長剣の刃を成した。

 

 これが俺のアーツ。

 それらはあらゆる生命に宿る根源、核、魂。

 それらを視認し干渉する、原作でも使用者の少ない精神干渉系アーツ。

 

 延ばされた剣の腹を、奴に浮かぶ魂目掛けて振り抜く。

 

「グハッ!!」

 すると、奴は膝を折り悶絶した。

 その身には振り抜かれた斬撃の跡も、血一滴すら浮かんでいない。

 当然だ。俺が干渉したのはあくまで魂のみ。魂は魂で、同質のものでしか物理的に干渉できない。

 

「な、なんだこれは!」

 

 もう一度繰り返すと奴はまた悲鳴を上げ地に臥した。

 

 今は満足に立てもしないだろう。

 魂を直接揺さぶったのだ。肉体の頑強さなど関係ないし、何より外傷は一切ない。

 

「まだ続けられますか?」

 そして、何度でも繰り返せる。

 

 数回魂を揺さぶったくらいで奴はすっかり戦意を喪失していた。

 

 ここまで追い詰めれば大丈夫だろう。いざというときは男爵に告げ口されるという弱みがある以上、ここでのことは表沙汰にできない。

 蹲る監視隊員の男を見下ろす。

 

「ここで起きたことは見逃してあげましょう。本当ならば貴方を男爵へ突き出すこともやぶさかではありませんが、連れて行くのも手間ですし、どこぞの野盗にでも襲われたことにしましょう」

 まあ、責任を問われればすぐ真実を話すが。

 そう言ってやれば、監視隊員の男は尻尾を巻いて走り去っていった。

 

 

 

 

 さて、取り敢えず危機は去ったな。

 走り去っていく男の後ろ姿を見送り、その場にいたもう3人に近づく。

 いつの間にか、監視隊員に襲われた老人に2人の女性が寄り添っていた。

 

 龍人族の女性が熊人族の老人の介抱を止め、俺を見つめる。中途半端に下がった眉尻からは、友好的ではあるがどこか困惑するような感情が見てとれた。

 まあいきなり現れて事情も聞かずに監視隊に楯突くなんて何考えてるかわからんよな。

 そんな彼らに、持っていた荷物から薬類の入った木箱を取り出す。

 

「これをどうぞ。脱臼などに効く軟膏です」

「ありがとう、見知らぬ商人の方。だが、薬代が払えない」

「ああ、それならご心配なく。困った時はお互い様ですから」

 そう言って取り出した軟膏を爺さんの足首に塗っていく。

「おお、痛みが嘘のように引いていくわい」

「それは良かった。今回はお試しということで、次回からもお安くしておきますよ?」

 冗談っぽくウインクでもかましながら宣伝すると、老人も笑顔を浮かべた。

「それは嬉しいのう!まあ、儂の財布は素寒貧じゃがな」

「もう、お爺さんたら。恥ずかしいわよ」

 付き添っていたもう1人の鹿人族の少女も安心したようだ。うわあ、生アリーナさんじゃないか、おっとりお姉さんという感じで想像通りだ。

 

 処置も終え、爺さんに肩を貸しながら彼らの家へと入れてもらった。

 

「改めて、私は爺さんの娘のタルラだ。先程は助力していただき感謝する。あのまま私が追い返していたら、より事態を重くしてしまっていただろう」

 彼らを代表してタルラが頭を下げる。確かに、原作でもそのせいで後から大規模な監査が行われ、それらから娘達を守るためこの爺さんは自ら感染者と名乗りを挙げ結果監視隊に殺されてしまう。そしてタルラはその怒りに飲まれ、村ごと監視隊を焼き払ってしまった。

 

 原作で起こった最初の悲劇を無事躱すことができた。

 そのことだけで、早くも感無量な気持ちだった。

 

「なんとか丸く治めることができて良かったです。彼ら監視隊は仕事熱心ですからね。感染者だけでなく無実の市民も取り締まるくらいですから。」

 僅かに監視隊への皮肉も込めて、タルラ達を労う。だが、タルラ達4人の顔はどこか複雑だった。

「奴らはこの地にのさぼる害虫だ。無垢な市民を傷つけ、一度感染者と見るや家畜の方が遥かにマシな扱いを平気でする。感染者も同じ人だというのに。」

 そう言って拳を握るタルラからは隠しきれない憤怒が漏れ出ていた。

「あまり感染者を公に庇う言動は避けた方がいいですよ、タルラさん。要らぬトラブルを招きます。」

「なら君は感染者など捨ておけと?仮に私達が感染者だとしたら助けに入らなかったのか?」

「そんなわけないじゃないですか。」

 ヒートアップしてきたタルラにも冷静に言葉を返す。

 老夫婦とアリーナは不安げに成り行きを見守っている。アリーナとさっき処置した爺さんは2人とも感染者だと言うことを隠して生活しているので複雑だろう。

「彼らも同じ人です。ただ完治の難しい病を患っているというだけで、違いなんてない。ただ見ず知らずの商人にそう公言するというのはリスクを負う行為でしかないということです。」

 

 タルラは先導者や革命者としては優秀だが、その分直情的だ。

 今も感染者を拘束し源石鉱山で強制労働させる監視隊という存在は、彼女にとって許し難いものだろう。

 俺もそうだ。だが、それを公言してしまっては国の方針に逆らっていますと宣伝するようなものだ。

 今も、感染者なら取り締まっても構わないとも捉えられる発言など聞き流せばいいのに、律儀に俺の認識を改めようとした。彼女はその辺りの現実との折り合いを良しとしない。

 

 屈服しない。

 声を挙げることを躊躇わず、常に仲間の先頭に立ち、自分を裏切るかもしれないものでさえ仲間にする。そしてその後裏切られてもなお、彼らの事情を考えそれを受け入れた。

 そんな現実の見えていない、理想主義なところは特に身近で彼女を支え続けたアリーナからも注意されていた。

 

 でも、そんな彼女だからこそ、レユニオンは形作られていった。

 

 そんな彼女だからこそ、

 

「ですが、貴女のその勇気と覚悟は、美しいものです。」

 

 救われてほしいと、そう思ったのだ。

 

 そう告げた俺に、やっとタルラは口元を緩めた。

「つまり、君は私の同志だという認識で構わないのだな?」

「ええ、貴女のその直情的ですぐ力任せで解決しようとする癖はどうかと思いますが。」

「む。そこは反省しておこう。」

 俺の諫言に少しむくれたような表情でそっぽを向く。

 お前そんな顔もできたのかよ。くそっ、可愛いじゃねえか。

 かっこいい系の女子が唐突に子供っぽくなるとかギャップで燃え、じゃなかった萌えちゃうから気軽にしないでくれ。可愛い。

 ともかく、話題を先に進めなくては。

 

「貴女ならば、この雪と閉塞感に包まれた国で、多くの感染者の希望を担い彼らを救うことができるかもしれませんね。」

「随分と私を高く評価してくれたものだ。」

「ええ、私これでも人を見る目は確かでして。」

 何せ、直接人の根幹である魂を視認できるのである。最初に父さんに習ってアーツを使った時、俺の転生チートこれじゃね?と確信したくらいには便利だ。原作ヒロインのように記憶を覗いたり夢を見せたりはできないものの、魂の輪郭や色、形状等から感情や思考をある程度読み取ることができる。

 このアーツはうちの家系で遺伝により継承されているものらしく、代々このアーツを使ってその人が善人か悪人か、はたまた将来大成する器かを見定め商売を成功させてきた。

 

 先程アーツを使って監視隊員を撃退した後、軽く彼女を覗かせてもらった。

 

 正直、見惚れてしまった。

 強大で、その光は彼女の白銀の髪に似て神々しく、周りすら明るく照らさんと強く輝いていた。

 

 それを見ただけでわかる。彼女は強く、優しく、誇り高い人だと。この自らを守ることすら難しい極寒の不毛の大地で、こんな人がまだいたのかと感動すらしたのだ。

 

 俺も感染者をなんとか助けられないかと努力はした。失業者を雇って望む人は比較的感染者差別が軽いクルビアやリターニアなどに渡航できるよう手配したりそこで職を失わないよう技術を身につけさせた。

 だが、この国の体制に、この世界の常識に歯向かおうとはしてこなかった。

 だって無駄だから。

 

 でもタルラは違った。

 誰からも、世界全てからも存在を否定される中で。

 それは間違っていると、そう声を挙げ自らを導いてくれる存在がどれだけ救いになるか。

 

「もしその手をより遠くへ伸ばしたいと言うのであれば、協力しますよ。」

「!話を聞かせてもらおうか?」

 そうして俺は今まで感染者を密かに雇って各地に匿っていること、その地を拠点として感染者を助けて回ることを提案した。

 幸い、準備期間として3年間はあったのだ。ウルサスは広大で未開の地も多く、各地を交易で巡ってきた俺は既に隠れ拠点をいくつか作り上げていた。

 原作でも村を焼き尽くしてしまった後、生き残ったアリーナと共に他の村に移動しその後は各地の感染者を監視隊などから助け戦力を拡大していったのだからそれを少し早めるだけだ。

 これ以降もまだまだイベントはある。特にレユニオンの幹部メンバーはこの後の戦力的にもハッピーエンド的にも逃したくないから、ある程度は原作の流れに沿った方が良いだろう。

 

「先導者としての器を持ち、何より感染者である貴女が自ら率いるのであれば、彼らもより団結し今までにない強固な組織になるでしょう。」

 俺の言葉にタルラとアリーナ、そして老夫婦に緊張が走る。

「なぜ私が感染者だと?」

(いや、さっき平然と炎使ってたじゃん。)

 感染者監視隊員とのいざこざに割り込む直前、薄っすらとだがその剣は炎を纏っていた。

 剣がアーツユニットの可能性もあるが、商人としての目利きではあれは切れ味鋭いただの剣だ。まあ、確か最終決戦で龍殺しの剣と打ち合ってた業物だけど。

 とにかく、そのことについて指摘すると。

「だからいつも言っているじゃない。後先考えず行動するのは良くないって。」

「全く、そんなんだから嫁の貰い手もないんだよ。近くの坊主に列獣(クマ)より力任せだなんて言われてどんな顔すればいいか分からなかったよ。」

 ・・・・なんかすまん。

 身内からの総攻撃に遭って流石に堪えたのだろう。仄かに頬を染め両脇からの口撃に肩を縮こまらせてしまった。

「あ〜、こほん。どうでしょう?貴女は各地の感染者をその手で助け感染者の自衛組織を創り、私はそのパトロンとして物資や情報の支援を行う。互いにいい協力関係を結びませんか?」

 部屋の中で誰一人言葉を発しないなか、焚き火の薪が弾ける音だけが時折響いた。

 

「1つ聞きたい。」

「なんでしょう?」

「君が感染者を救いたいという思いは本物だ。その瞳を見れば分かる。だが何故感染者でもない君がそこまでする?」

 

 貴女達のハッピーエンドが見たいからです。

 なんて言えるわけもなく。

 

「幸せになってほしい人達がいましてね。その人達が感染者なので、彼らが安心して生活できる場所を作ってあげたいんです。」

 しばらくの沈黙の後、タルラの口からは実に彼女らしい返事が聞けた。

「わかった。こちらこそよろしく頼む。ともにこの地に感染者の故郷を創り上げよう。それと、対等な仲間である以上畏まった言葉は不要だ。」

 そして右手を差し出す。俺もその手を掴んだ。

「ああ。よろしく頼むよ、タルラ。」

「先程言っていた人達も、是非紹介してくれ。」

「ああ、いつか紹介する。きっと驚くさ。」

 

 こうして俺達は無事、ハッピーエンドへの第一歩を踏み出せた。




 実は8章のpvを見た日からこんな小説ねえかな〜と思ってました。

 

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