明日の方舟よ、良い旅を   作:アルパカ戦士

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ネクラスが30連で3人来ました。
これはもう運命。

リードとネクラスの演じ分けすげえ。流石CV能登さん!



第七十四話 とある狙撃手の独白

 それは大君がウィンダミア公爵の移動戦艦を襲撃する1日前。

 決戦の日に備え、皆が寝静まった時の事だった。

 

「おいドクター。それは一体どういう事だ?」

 

 Scoutが鋭い声で問う。

 薄暗い地下廊下を照らすのは切れかかった蛍光灯のみ。時折明滅する照明が彼に対面するドクターの姿を気まぐれに映す。その不気味さに思わず尻込みしてしまう者もいる場面だが、Scoutはそれに当てはまらない。

 

 一流のサルカズ傭兵である彼はそんなことでは怯まない。何より、彼の胸中を埋め尽くしているのは不可解な疑問とそれに対する怒りだった。

 

「俺を護衛から外す? 何の冗談だ」

「聞いてくれScout。これはとても重要な事なんだ」

「ああ聞いてるさ。俺があんたの命令を聞き逃すなんざありえない。ドクター、あんたは俺に()()()()()()()と言ったんだ」

 

 

 そう漏らす彼の言葉にはいくつもの感情が混ざりこんでいた。

 肝心な時に傍で守る事の出来ない不安、そして頼ってもらえない怒り。歴戦のエリートオペレーターである彼が滅多に見せないそれらにドクターも狼狽える。

 

(俺はもう、あんな事は御免だ)

 

 一大決戦の日。彼から離れて任務に向かう。その状況がどうしてもあの日と重なる。

 

 まだロドスがバベルであった頃、疲弊していく日々に一筋の希望を見出さんとテレジア達は賭けに出た。

 カズデルの炉を制圧し、これでテレシス陣営を抑えることができると胸を撫でおろした直後の事。

 

 バベルは唐突に、終わりを迎えた。

 

 ロドス本艦に戻った時には、全てが手遅れになっていた。テレジアは死に、ドクターは意識不明の重体となった。

 バベルの明日を語った作戦室は流れ出た血で赤く染まり、誰もが声を上げることすら出来ず絶望に包まれた。

 

 

 自分がもっと敏ければ。

 何かを思いつめた様子だったドクターの異変を無視せず気にかけていれば。

 

 後悔は先に立たず、背後に立ってScoutを罵り続けた。

 

 だからこそ。ヴィクトリアの公爵の同盟関係が成立し本艦防衛の心配がなくなった今、今度こそドクターを守るのだと固く誓いこの地へ赴いたのだ。

 

 それだというのに。

 

「いいか? あんたの名はカズデル軍事委員会に広く知れ渡ってる。真っ先に命を狙うべき、凄腕の指揮官としてな。そんなあんたが自らあの空を飛ぶ船に乗り込むってだけでも俺は受け入れがたかったんだ。それに加えてエリートオペレーターの大半を余所に回すだって? あんたの指揮が突飛なのはいつもの事だがそれにしたってやり過ぎだ」

「Scout・・・」

 

 ドクターが言葉に詰まる。

 

 ドクターにとってScoutは優秀なエリートオペレーターであり、あまり干渉はしてこないものの下された任務は期待以上に遂行し、常に一歩引いた位置で周りを見ている優れた同僚だった。

 そんな彼がこうまで対立してくる事は今まで無かった。だからこそ、ドクターは戸惑う。

 

 彼がドクターを見つめる視線に、自分ではないどこか遠くを見ているような印象を受けていた。

 その先に映る者が誰なのか、ドクターはもう察していた。

 

 

 そして、だからこそ。ドクターは譲る訳にはいかなかった。

 

 

「・・・この状況、軍事委員会側が最も崩したい勢力はどこだと思う?」

「・・・そういうことか」

 

 ドクターの言いたい事が分かったScoutは一先ず口を閉ざす。

 

「ザ・シャードと飛空船に向かう私達は違う。こちらは確かに精鋭揃いだが、それでも少数だ。後でいくらでも数と兵器の暴力で押し返せる。一方で移動戦艦を持ち出されたら彼らもロンディニウムを占領し続けるのが難しくなり撤退せざるを得なくなる。そして最初に都市に接近するウィンダミア公爵の移動戦艦にはロンディニウムから逃れた大量の市民が避難する」

「そこを狙ってくると?」

「可能性は高い。加えてシージ達もそれに同行する。長年ロンディニウムを占領し続けた彼らだ、それに元はヴィクトリアの公爵陣営と結託して地下王墓を利用し蒸気騎士を殲滅した。あの諸王の息にまつわる伝説を耳にしていたとしてもおかしくない」

 

 それは聞けば聞く程に妥当性のある指摘だった。

 いかに優れた英雄であろうと単騎で軍を相手取ることはできない。軍事委員会の、特にテレシスやマンフレッドといった俯瞰的な視座を持つ者ならばそれは理解しているだろう。報告によればこの戦争が始まるまで大公爵が互いに牽制するようパワーバランスに気を遣っていた印象も受けた。彼らが一番の脅威と考えているのがヴィクトリアの公爵が保有する移動戦艦の戦力である可能性は高い。

 

 

 だが頭では理解できたとしても、それに心から納得できるかは別の話だ。

 

 

「だからってドクターの安全を脅かしてまですることか? それにウィンダミア公爵はヴィクトリアの中でも一番の武闘派だ。彼女なりの自衛はできるだろう」

「軍事委員会側は何らかの手段でこのロンディニウム周辺を自由に移動できるようだ。おそらくリッチの技術によるものだ。その場合、移動戦艦のど真ん中にいきなり王庭の一角が出てくる可能性すらある」

「! ならなおさら」

「私は大丈夫だ。それに、戦っているのは私だけじゃない。アーミヤもシージもタルラもイグナスも、全員が誰も犠牲にしないために全力を尽くしている」

「・・・」

「私も、誰も失わないために手を尽くしたい」

 

 

 再び沈黙が訪れる。

 譲る気の無いドクターと、過去の悲劇の再演を危惧するScout。言葉を発しない彼らに代わって、その背後から仲裁の声がした。

 

「ドクターの事は私に任せてくれ」

「・・・フロストノヴァ」

 

 いつの間にかScoutの背後を取っていた彼女に、Scoutは少しばかり眉を顰める。

 

 白い外套に身を包んだコータス。遥か北のウルサスの地で感染者を保護していたレユニオンという組織の幹部。そして今やアーミヤに並んで誰よりもドクターの近くにいる女だ。

 そんな彼女の外套にはロドスのマークが刻まれている。レユニオンの暁色のスカーフを今もなお腕に結んでいるのは彼女が両者の肩書を諸共背負うという覚悟の表れだと知っている。

 

 Scoutはそんな彼女の事が内心気に食わなかった。だがそれは、フロストノヴァの事を認めていないという訳ではない。むしろ逆だった。

 

 どうしても過去のドクターを重ねてしまう自分とは違い、フロストノヴァは純粋に今のドクターを見つめ続けた。そして過去を失った焦りから負担を抱え続けるようになった彼をその手で引き戻して見せた。

 過去と現在の二度に渡って自分が出来なかった事を成し遂げた彼女だからこそ、Scoutは2人の並び立つ姿に嫉妬にも近い感情を抱いてしまう。

 

 そんな彼女が任せろと言ったのだ。自分の内のほの暗い感情とは裏腹に、自分以外にドクターの事を任せられるとすれば、彼女かアーミヤ、もしくはケルシーだけだろう。

 

 ドクターの横に並び、こちらを見据えるフロストノヴァの姿にScoutは大きく息を吐き、遂には折れた。

 

「分かった。お前にドクターの事は任せる。俺は与えられた役目を全うしよう」

 

 

 信じて、送り出した。そしてScoutは避難するヴィクトリア市民に紛れウィンダミアの移動戦艦へと潜入した。

 

 大衆に紛れ倉庫を抜け出し、有効な射撃ポイントを探っていると突然艦の様子が騒がしくなった。そして甲板を見下ろすと床を突き破ってかのブラッドブルードの大君が姿を見せたのだ。

 結果的に、状況はドクターの懸念通り最悪に近い形となったわけだ。

 

 万が一にも気取られないよう、Scoutは待ち続けた。大君のアーツがシージの肌を掠ろうと、ウィンダミア公爵のソードガードが深手を負おうと。死を嗅ぎ取る彼の嗅覚が鈍るその瞬間を狙いすました。

 そしてウィンダミア公爵へと王手をうった大君が戦場で目を瞑った時、Scoutはようやく引き金を引いた。

 

 狙撃手の銃弾は、一発で戦況を変える。

 その言葉通り、彼は絶望的な状況を見事ひっくり返して見せた。

 

 

 自身の偉業を気にも留めず、Scoutは狙いを定め続ける。

 そんな彼の脳裏にここに来る前のドクターの一言が過る。

 

『君を信じてる。私の、そして仲間と友人の理想を、守ってくれないか?』

(仲間と友人、か。ドクターがなあ)

 

 バベルの時代。度重なる衝突と犠牲に摩耗していったドクターの姿をScoutは見ていた。廊下ですれ違うオペレーターには目もくれず淀んだ瞳で研究室へと向かう後ろ姿。鉱石病抑制剤の研究と言って腕に源石を突き刺す自傷染みた行為。冷静に、冷徹に、まるで機械のように人を死地へと向かわせていく彼の底冷えた声。

 何度も説得した。そんな彼の姿を見ていられなくて。だが言葉を交わすたび間に入った見えない壁がその厚みを増していったのを感じた。

 そしてドクターがどんなものを抱えていたのかを追求せず、彼の駒となり戦場で自分の性能が最大限に発揮される快感に逃れ続けた。それがバベルの理想を掴む最短の道なのだと、そう目を逸らした。

 

 何故バベルがあのような結末に至ったのかは分からない。死人は語らず、生き残ったドクターも過去を失った。

 それでも、こうして頼られた。ならば応えなければならない。何故ならドクターの思いは今もなお変わっていないのだから。

 

 

 数年前のチェルノボーグでのドクター救出作戦。あの時Scoutはこれ以上ドクターを戦闘指揮に参加させないようにするべきだと考えていたのだ。自分達の知らない多くを背負っていたのだろう彼を、もうこれ以上追い詰めないように。

 にも関わらずドクターは自ら指揮を執った。レユニオンを騙る暴徒から市民を守るため、そしてチェルノボーグに生きる多くの命を天災から救うために。

 無線に流れるドクターとイグナスの会話を聞いた時、Scoutは確信した。

 

『この大地が、安らかに眠れるために』

 

 敬愛するテレジア殿下の祈りは、今なお受け継がれている。

 

 

 例え彼が自分の知っていたドクターとは別人となってしまっていても。

 彼の中にはもう、自分との繋がりが残っていなくとも。

 エリートオペレーターとしての矜持が、それを果たせと心で叫ぶ。

 

 

 ならばあの日とは違う。

 彼の望む全てを失わせないために。

 

 

 ボルトアクションのハンドルを手早く引き薬莢を吐き出す。息をするより自然に次の装填を終えたScoutは、スコープを覗き込み標的に狙いを定める。

 

 再びその銃弾はドゥカレへと放たれる。戦闘機動中で必ず当てるべきだった先程とは違い確実に息の根を止めるため、頭蓋を撃ち抜かんと一直線に進む。

 

 

 ドゥカレは血で作ったベールでそれを遮った。だがその隙を見逃す程ウィンダミア公爵の抱えるソードガードは甘くない。負傷したウィンダミア公爵に代わり、眼前の敵を排除するため剣としての役目を全うする。リターニアの高塔を壊滅させた光の利刃、振るわれる2振りの刃が薄くなった大君の防御を徐々に削りとっていく。

 

「はあ!!」

「たお、れろ!!」

 

 光すら置いていかれたと錯覚する程の高速機動に加え、遥か彼方からの正確無比な狙撃への警戒は流石の大君も劣勢を強いられる。

 ソードガードの剣閃が一筋の切傷を刻み、Scoutの銃弾が体表を掠る。遂にはアーツによる回復も追いつかなくなってきた頃、大君は血の濁流を生み出し周囲の全てを薙ぎ払った。

 

 

 咄嗟に退いたソードガード達の前に立つ大君は、心なしか息を荒げていた。彼の足元に広がる紅のカーペットに傷から零れた血の滴が波紋を作る。

 

「・・・いいでしょう。今は退くとします」

 

 受け入れがたい事実を呑み込んで、大君は退却を決めた。

 大君が自身を血のヴェールで覆う。

 

「逃がすか」

 

 Scoutが引き金にかけた指に力を籠める。銃弾に籠めるアーツの出力をさらに一段引き上げれば、ブラッドブルードの王庭のアーツさえも貫ける。

 

 その姿は見えなくなったが、目を離すことなくずっと捉え続けていたのだ。おおまかな位置は把握している。

 

 その頭があるであろう位置を狙う。

 だが。

 

 

『土石の子らよ、ようやくカズデルを築き上げたか』

「!」

 

 Scoutの視界が突然揺れる。

 自身を丸ごと揺さぶられたような感覚に、照準がぶれ片手を床につく。

 

「何だ、今の感覚・・・」

 

 一瞬、()()()()()()()()。そしてその違和感は徐々に大きくなり遂には眼前の景色が塗り替えられていく。

 頭に直接語り掛けてくるような、人の声。

 

『炎魔・・・クイロン・・・魔王、ゴルドル・・・』

 

 掠れた、古いサルカズの言語。目の前に広がる草原。そこに佇む灰色の城壁。

 まるでその場に居合わせたかのような臨場感だが、時折会話の中から拾える人の名前や名称は耳を疑うもの。クイロンやゴルドル、どちらも7千年も前に実在した魔王の名だ。今はもう失われたとされる王庭の一席である炎魔に、移動都市ですらない、白亜の城壁。それらは全て伝説に残る遥か昔のカズデルを指しているように思える。

 

(何だこれは? 過去の幻?)

 

 幻だと認識した途端、霧が風に流されるように全てが吹き飛ぶ。

 

 気が付いた時には、Scoutはウィンダミアの移動戦艦の屋上に座り込んでいた。辺りは静寂に包まれている。命の遣り取りの気配は遠く消え去り、動揺する兵士の声が逆風にかき消され途切れ途切れに聞こえた。

 

 地面に突いた手を見下ろす。拍動が強く感じられ、心臓の音が耳元でなっているかのように感じられる。

 Scoutの、サルカズの血が煮えたぎっていた。

 

 Scoutが甲板を見下ろす。

 既にそこに敵影はなく、さらに下層の騒ぎも収まったようだ。つまり、大君と一緒に乗り込んできた聴罪師の兵団も大君とともに忽然と姿を消したわけだ。

 

 先程の幻が何だったのか、疑問は残る。サルカズに干渉する類の大規模な巫術、あるいはアーツですらない何か()()()()()()()()()()()()()

 だが考えても結論は出ず、戦闘の終了を悟ったScoutは一先ず銃の構えを解き、口元を覆っていたスカーフを指にかけ下ろし息を吐いた。

 

「くそ、しくじったな」

 

 敵を取り逃した事に、苛立ちを風に乗せるしかなかった。

 

 

 

「お母様!」

「デルフィーン・・・無事か?」

「それより早く医者を! 傷口は私が押さえます!」

 

 甲板では脅威が去ったのを確認したデルフィーンが急ぎ負傷したウィンダミア公爵の元へと駆け寄った。そしてデルフィーンは震える手でウィンダミア公爵の脇腹を押さえる。

 それに一瞬呻くものの、すぐに持ち直し彼女は自らの娘の頭を抱きしめた。

 

「先程、剣を振るい奴を退けたな。よくやった」

「そんな事! お母様に比べたら、全然大した事ありません」

 

 今もそうだった。動揺して視野が狭くなっていたが、押さえる傷口の出血は想定よりもずっと少ない。

 よく見れば傷口は半ば焼け爛れていて、体に空いた空洞を歪に塞いでいた。ウィンダミア公爵が出血を止める為自らその光の利刃で焼いたのだ。

 

 致命傷の間際、一発の銃弾によって生まれた僅かな猶予。それに喰らいついた驚異的な勘と反応速度。そして咄嗟の場面で施された処置。

 

 どれか1つでも欠けていれば、デルフィーンは母を失っていただろう。

 自分を抱くその体の温かさを自覚する度、それを思い知らされるようで思わずその身を抱きしめた。

 

「まだまだ、学びたい事があるのですから・・・」

 

 いつになく弱気な娘の姿に、致命傷スレスレの怪我を負ったにも関わらずウィンダミア公爵は目を丸くし、嘆息した。

 

(先程の剣撃。あれ程までに成長していたのだなと感心したが、まだまだ子どもだな)

 

 それを恥とは思わない。自らの娘にそうあれと望んだのは自分自身なのだから。

 策謀渦巻くヴィクトリアの貴族のトップとして、それに慣れるような日々はまだいいだろうと。

 

 

 喜ぶだろうかと、そう想像しながら用意したミリタリーコートに比べ、その腕にすっぽり収まる最愛の娘の背丈は少しばかり小さい。

 

「帰ったら、仕立て直さなくてはいけないかもな」

 

 僅かに頬を緩ませながら、ウィンダミア公爵は懸命に自分の傷を押さえる娘を撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴィクトリア ブレントウードの廃村

 

 

「ほう? 大君が仕損じましたか」

 

 部下からの報告に、意外だと僅かに瞠目する。

 かの残虐な魔王殺しが目的も果たせずに撤退するなど、予想外の出来事であった。

 

「いかがなされますか?」

「・・・サルースに儀式の準備を急がせなさい。()()()()、原初の源石を呼び醒ます計画は想定よりも早く進むでしょう」

「それと、もう1つ」

 

 気まずげな部下の言葉を、クイサルトゥシュタは悠然と待った。

 そして予想通りの状況に、彼は笑みを浮かべ首肯した。

 

「よろしいのですか?」

「貴方達では無為に戦力を失うだけです。それに彼女は私の肉親。その身を傷つける事は許しがたい」

 

 そうして部下を下がらせた。

 

 ロンディニウム近郊の、ブレントウードに程近い荒野の中。

 見捨てられた廃屋が並ぶ町で、彼は1人待ち人を待った。

 

 そこに静かな足音が近づいていく。

 

「クイサルトゥシュタ」

「クイサルシンナ」

 

 相対する2人。

 そしてそれを見守る白いサルカズの少女。

 

 旧き魔王は、それに愉悦を含んだ笑みを浮かべた。

 その後継の器は、決死の覚悟を持って彼を睨みつけた。

 

「今日ここに我ら一族の悲願が叶う」

「いいえ」

 

 両者ともに鞘走る。

 冷たい鉄の音がすらりと流れた。

 

「ここで、私達一族の呪いを断ち切ります」

 

 その刀身が、互いを鈍く映していた。

 

 

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