戦場より、愛を込めて   作:亥露

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第八話 映画でエンカウント

『ゲート発生、ゲート発生。遠征艇が出航します。付近の隊員は注意をして下さい。繰り返します。ゲート発生、ゲート発生……』

 

 無機質な音声が流れ、黒い円状の穴にまるでかのトリオン兵を想起させる様な物体が飲み込まれていく。彩葉はそれをガラス越しに眺めていた。

 

 あれから五日後。入念に入念の検査、訓練を重ね、今正にA級トップの三部隊が旅立ったのだった。飛行機よりも、鳥よりも高々と飛ぶ遠征艇に乗って。

 

(寂しくなるなぁ)

 

 彩葉は白衣のポケットに左手を突っ込み、右手でホットココアを飲みながら友人たちが乗って行った遠征艇を見上げる。其処にはもうゲートも何もなく、ただ埃が舞っているだけであった。下の方では作業員の人間が齷齪と後片付けをしていた。

 

 休日であるにも関わらず、彩葉は忍田と共に朝五時に出勤をし、トリガーの最終確認を行った後、敵地に乗り込む精鋭達を見送ったのであった。現在は八時。彩葉が出勤してから三時間は経過していた。心なしか彩葉の顔も疲れが出ている。

 

 忙しかった日々は音速の様に過ぎ、後に残ったのは静寂だけ。

 

 その静寂が一気に彩葉の眠気を遅い、誰も居ないのを良いことに大きな欠伸をする。確かに昨晩は早めに寝たのだが、その睡眠だけでは足りず、六時を過ぎた時には瞼が痙攣していた程だった。

 

「彩葉。それは眠気ではなく眼精疲労だ。病院へ行きなさい」

「んなこたぁ分かってんですよ。行けるものなら行ってますって……ふわぁぁぁ……あ?」

 

 彩葉は何処からか聞こえたかも、誰が発しているかも分からない声に反応しつつ欠伸をした。けれどもその声は何処となく聞き覚えがあり、欠伸をしたままで顔を向ける。

 

「人前で大きな欠伸とははしたないぞ」

「どわぁぁ!」

 

 彩葉は思わず後ろに倒れ尻餅をつく。そして彩葉を嗜めた男性は、そんな彩葉を見て鼻で溜息をつく。

 

 ──城戸政宗。界境防衛機関『ボーダー』の最高司令官。

 

 スーツに髪はオールバックと言う、いかにも厳格そうな見た目で、更には目元の傷までその威圧を助長させていた。

 

「びっくりさせないで下さいよ」

「気配を感じ取れない君にも落ち度があると思うのだが」

暗殺者(アサシン)じゃねーんですよ私は」

 

 彩葉は頭をガシガシと掻きながら立ち上がる。城戸はそれを横目で見ながらまた溜息をついた。

 

 彩葉の破綻している敬語は今になって始まったことでは無かった。けれども彼女が今までボーダーに貢献していた事も事実で、それ故に城戸は彩葉の態度を黙認していた。

 

「つーかあれですね。座ってないと支配者感薄れますね城戸司令」

「別に出してはいない」

 

 彩葉の言葉に、城戸は表情を変えずに返答をする。彩葉はココアを飲み干し近くにあったゴミ箱に投げ入れた。

 

 彩葉と城戸は仕事上会話をする事も多く、それ故に彩葉もこうして軽口を叩けるのだった。本来ならば問題になるであろう言動も、許されている。

 

 ──諦められていると言った方が正しいのかもしれないが。

 

 彩葉の言動に突っ込むのは上層部では根付メディア対策室長くらいなものだった。

 

「この数ヶ月、すまなかったな」

「へ?」

 

 城戸の謝罪の意図が分からず、彩葉はココアの空き缶を投げ捨てた格好のまま固まる。

 

 しかし直ぐに思い当たる節があり「あぁ」と溢した。

 

「気にしないで下さいよ。仕事なんで。それに私も楽しくさせて貰ってますし」

 

 彩葉の言葉に、城戸は目を伏せながら「そうか……」と呟く。その様子だと何処か納得していない反応だった。

 

 恐らく仕事量の事だろう。確かに遠征は他とは比べるまでもなく特別なものだ。だからこそ技術者(エンジニア)の仕事が増えるのは必然的で、彩葉も泊まり込む事も多かった。それを城戸は責任を感じているのだろう。

 

 弱ったなぁ──とまた彩葉は頭を掻く。彩葉は別に相手に責任を感じて欲しいとかそう言うのは無く、ただ本当に気にしないで欲しいと言うのが本音ではあった。

 

 しかし城戸はそれでは納得しないのだろう。城戸はその顔から誤解をされやすいのだが、根は優しい子供思いの人間なのだ。それを彩葉は理解をしている為か、城戸の事を無碍には出来なかった。

 

「うーん。じゃあ礼はボーナスで良いですよ。それか昇給。最近欲しい本があるんですよねー」

 

 彩葉はそうあっけらかんと言った。その全ては本音で、彩葉は金さえキチンと払ってくれればそれでよかった。

 

「でもまぁ、それで城戸司令が納得しないのであれば、またご飯にでも連れてって下さいよ」

 

 そう言うと、城戸は少し目を見開く。

 

 ──それは、彩葉の少しの気遣い。

 

 ちゃんと自分は大人に甘えられるよと言う、意思表示。

 

 それは即ち無理をしていないと言う事の証明でもある。

 

「──分かった。来週あたりに何処か予約をしておこう」

「やったー。叙々苑がいいです」

「普通の食事処だ」

「ちぇー。ケチ」

 

 城戸は彩葉の言葉に苦言を呈しながらも、その顔は先程と違い何処か穏やかなものがあった。それを見て彩葉は少し安心をする。

 

 忍田程では無いにしろ、彩葉は城戸の事をキチンと尊敬すべき上司だと思っていた。だからこそ城戸が見当違いの責任を負うのは避けたかったのだ。

 

「ふあぁ。私仮眠室で寝てきます。今日午後からは休みなんで」

 

 欠伸をしながら彩葉は出口へ歩いていく。

 

「休みを取っているのだったら家に帰って休んだ方がいいのでは無いか?」

 

 城戸は純粋な疑問をぶつける。彩葉は午後から休暇を取っていると言っていたが、そもそも午前の仕事はもう終了していた。それならもうタイムカードを切って家でゆっくりした方が有意義に感じられる。

 

 だがしかし彩葉はそれを否定した。

 

「いやぁ、家よりこっちの方が時短になるんですよ」

「何か予定でもあるのか?」

 

 城戸の言葉に彩葉は笑って返す。

 

「小夜子と午後に映画見にいく予定なんですよ」

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

「実はね! この映画の監督あの有名な人で……ほら、パンフにも書いてるでしょ? この人! いやぁ、好きなゲームがアニメ化するって聞いてテンション上がったわー!」

 

 小夜子の説明に彩葉は無表情で聞く。いや、聞いていなかったかもしれない。ただ耳に入れ、其の儘反対方向の耳へ流す事を、人は静聴とは言わない。

 

 小夜子は確かに映画を見にいくと言った。それについてきて欲しいと言われ、それを了承したのは彩葉だ。それに一寸の違いもなく、紛れもない事実だった。

 

 だけれど。

 

 そうだけれど。

 

(……まさか3だとは思わんじゃん)

 

 そう、小夜子が見ようと言ってきたのはシリーズものの最新作に当たるものだった。

 

 確かに確認を怠った彩葉にも責任はある。だけれど小夜子も小夜子だと彩葉思った。

 

 あの時シリーズものだと言ってくれれば彩葉は前もって勉強をしてきていたのにと。だけれど今憤慨したって後の祭り。劇場での携帯電話の使用は禁止されている為、動画投稿サイトで前作の流れを見る事も出来ない。

 

 ──詰んでいる。

 

 映画の時間は恐らく二時間前後。それまで彩葉は何も知らない世界を延々と眺めるしか無かったのである。

 

 映画の題名は『天空の湖。一人の勇者と独りの少女』だった。なんでも勇者が天空の島に行って湖を見つける話──だとか。

 

 それを聞いた時天空の湖ってなんだよと彩葉は思った。と言うより何処かで聞き覚えのある題名だとも。

 

(ジブリに訴えらてしまえ)

 

 こんな事ならあの時どういう作品を観るのかと聞いておけば良かったと、彩葉は今更ながらに後悔するのであった。唯一の救いは入場と共に買った葡萄味の炭酸飲料くらいだろうか。ポップコーンも買ったらどうだと小夜子に言われたが、今はあまり腹も減っていなかった為、飲み物だけにしたのだった。

 

「あ、あのね」

 

 ふと言われ、彩葉は右側に座っている小夜子に目をやる。小夜子は気まずそうに目を泳がせながら手をもじもじさせていた。

 

 自分の今の反応が気に障ったのかと彩葉はギクリとしたがそうではなかったらしい。

 

「前作と前々作を知らなくても、この話楽しめるから! だから彩葉にとっても面白い作品だと……思う……な……」

 

 小夜子は段々と声が小さくなっていき、最後にはか細い声になる。

 

 ──ただ一人じゃ不安だからと言って連れて来た訳ではなかった。

 

 彩葉にもこの作品を観て欲しくて、感動して欲しくて、小夜子は彩葉を連れてきたのだった。これを一緒に観るのは絶対に彩葉が良いと。そう思ったのだ。

 

「──そう、じゃあ楽しみにしてる」

 

 そう言って彩葉は小夜子に微笑みかけた。すると小夜子は今までにない程の笑みを見せて「うん!」と頷く。

 

 確かに観てもないのに退屈そうにするのは流石にあんまりだった。もしかすると内容は彩葉が思っているより面白いものかもしれない。そうなると今見切りをつけるのは少し勿体無い気もする。

 

 そう思い、彩葉はパンフレットを見る。そこには話の全体のあらすじがイラストと共に書かれていた。

 

 世界を旅している勇者が天空の孤島にある湖を目指す。そしてそこで出会った一人の少女が湖の秘密を握っていて──と言う内容だった。

 

(──安直なタイトルだな)

 

 彩葉は改めて大丈夫かと心配になる。けれどもこれは小夜子おすすめの映画。期待しても良いだろう。

 

「──あれ、彩葉ちゃんと志岐さん?」

 

 ふと、声がする。

 

 聞き馴染みのある声だった。そこ声を聞いた瞬間、彩葉の心が晴れやかになっていくのが分かる。

 

「──賢。それに義人も」

 

「ひょあぁ!」

 

 そこには制服ではなく、私服の佐鳥と半崎が立っていた。何故二人が此処に──と思ったが、半崎を見て納得をする。

 

 きっと佐鳥も半崎に連れられて来たのだろう。

 

「奇遇だねぇ。しかも席が隣だなんて」

 

 佐鳥はそう言って彩葉の左隣に座る。その言葉に彩葉は二人が座る席を見た。彩葉達が座っていたのは座席の丁度真ん中くらいだった。通路右側に小夜子が座っており、その左隣に彩葉が座ってる。そして佐鳥達は左方向から来た。なれば座る順は右から小夜子、彩葉、佐鳥、半崎の順だった。

 

 ──小夜子の隣が空白だったのが救いだろう。

 

 小夜子は佐鳥達が来た為、彩葉の腕にしがみつき、上目遣いで二人を見ている。因みに先程の奇声は小夜子の声だった。

 

「志岐さんもやっぱり来てたんだ」

「ひ、ひゃい! えっと……今日公開って言ってたから……はい……」

 

 半崎は前屈みになって小夜子に喋りかける。端と端だが、彼らの声は充分届いた。小夜子はいまだに彩葉の腕を離そうとしない。その事実に彩葉と佐鳥は顔を見合わせて苦笑をする。

 

「賢も義人に誘われたの?」

「うん。しかも今日の朝にだよ? 信じられる?」

「え、何で」

 

 彩葉も身を乗り出し半崎に聞く。

 

 半崎は首を傾げながらさも当然だと言うように彩葉の問いに答えた。

 

「LIENの一番上にあったからだけど。逆にそれ以外あんのか?」

 

 彩葉は佐鳥の肩に手をやる。流石の小夜子も佐鳥に哀れみの目を向けていた。

 

「……あの、お二人さん。そうやられると逆に虚しいんですが。佐鳥泣いちゃう」

「泣けよ」

「半崎には言ってない!」

 

 うわぁぁんと、佐鳥は彩葉の腕にしがみつきながら泣き真似をする。彩葉はそんな佐鳥を聖母の様に受け入れた。尚右腕は小夜子が使用している為頭を撫でることは不可能である。

 

「まぁそれに入場特典のこのポストカードが欲しかったし。佐鳥が来たおかげで俺の推しも引けたし、そこは感謝してる」

「本当に感謝してくださいよ。後でバーガークイーン奢ってよ」

「しょうがねーな」

 

 佐鳥と半崎は微笑ましく会話をしていた。そんな会話を聞きつつ、彩葉は小夜子の顔を見る。小夜子はそんな彩葉に気付いたのか顔を逸らし手を離す。

 

 ──けれども彩葉はそれを許さず脇に挟み込む様にして小夜子の腕を自身の腕に固定をした。その枝の様に細い腕の何処からそんな力が出ているのかと疑問に思う程である。

 

「……小夜子。もしかして私をくじ引き要員として連れて来たわけじゃあ……」

「ないないないない! そんな事あるわけないじゃん! 馬鹿だなぁ彩葉は! あはは!」

 

 小夜子の分かりやすい嘘を彩葉はいまだニコニコと笑みを貼り付けて詰め寄る。

 

「そう言えば私特典の事を全く知らなかったなぁ。まさかそんなシステムがあったなんて」

「いやぁ……あはは。面目ない」

 

 小夜子はこれでもかと言う程冷や汗をかく。

 

 居た堪れなくなった佐鳥は、二人の間に割って入ることにした。

 

「まぁまぁ落ち着いて。それでもこの映画面白そうって話題になってたらしいし。志岐さんの事許してあげよ?」

「……賢がそう言うなら」

 

 佐鳥の介入で、小夜子は漸く解放されたのだった。

 

「……じゃあ小夜子」

 

 ホッとしたのも束の間。彩葉は腕を組んでハッキリとした口調で小夜子の名を呼ぶ。小夜子はまだ何かあるのかと肩をビクつかせた。

 

「──来週の日曜。私の買い物に付き合ってよね。ドタキャンは無しだから」

 

 彩葉はそう言って微笑む。その言葉に小夜子は今日一の笑みを溢す。

 

「うん!」

 

 その様子を、半崎と佐鳥は静かに見守っていた。そして二人は目を見合わせて微笑む。──手のかかる友人達だと。

 

 ブー。という音と共に辺りは暗くなる。それは上映を意味した音だった。

 

 先程まで騒がしかった室内は一変。一気に静寂が訪れる。

 

 彩葉は映画の内容に期待しながら深く椅子に腰掛ける。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

「どうだった?」

 

 半崎の質問に、佐鳥と彩葉は顔を覆い答える。

 

「めっちゃ良かった……」

「せやろ」

 

 二人の合わさった声に小夜子は静かに同意をする。

 

 四人が居るのはバーガークイーンと言うハンバーガー屋だった。大手チェーン店であるバーガークイーンは三門市に四店舗も構えており、値段もそこそこに安く、味も絶品の事から学生にも人気な店だった。そしてハンバーガーを好物としている佐鳥はよくこの店を贔屓にしておりました店内には佐鳥の手書きサインも飾られている。

 

「まさかあの湖にあんな秘密が隠されていたなんて……しかもあの女の子にあんな過去があったなんて……佐鳥は泣いちゃいますよ」

「分かる。しかも何あのBGM。絶対泣かせに来てるでしょ」

 

 本来の二人より感動している二人を見ながら半崎と小夜子は目を合わせる。結果としては損はさせなかったが、これ程までとは。

 

 小夜子は映画を見ながらもちゃんと彩葉が楽しめているか横目で確認すると、あの人の心が無いと噂されている彩葉が滝の様に泣いていたのだった。ついでにその向こうにいた佐鳥も。その姿に若干引いたのは小夜子と半崎の二人だけの秘密だった。

 

「これを機に二人ともあのゲームしねぇ? ぜってー面白いから」

「でも佐鳥パソコン持ってなーい」

「買ったら良いだろ。A級はB級と違って給料良いんだし」

「あれ?棘ない?」

 

 半崎の言葉に佐鳥は顔が引き攣る。確かにA級は固定給が付いており、佐鳥はその上広報部隊にも属している為その分のギャランティは上乗せされている。パソコンを買うのにも遜色はないだろう。

 

 だがしかしパソコンを買うのにもどれを買って良いのやら分からないのだ。

 

「しょーがねぇから一緒に買いに行ってやるよ」

「マジ!? 助かるー!」

 

 和気藹々とする二人を横目に、チラリと小夜子は彩葉の方を向く。彩葉はチーズバーガーを食べており、溢れてくるレタスに四苦八苦していた。普段食べなれないものだから当然だろう。

 

「……彩葉はやる?」

 

 小夜子の言葉に彩葉は「んー」と考える素振りを見せる。

 

「……気が向いたら?」

「それ絶対にやらないパターンじゃん」

 

 そう言って小夜子は肩を落とす。二人でゲーム出来るのは楽しそうだが、けれども彩葉がやる気がないのだったらこれ以上食い下がっても意味はない。それに彩葉は立場上忙しい立ち位置にあるのだ。そんな暇はないだろう。

 

「そうだ! 折角だし食べ終わったら四人で遊びにでも行かない? カラオケとかゲームセンターとか!」

「私は良いよー」

「俺もー」

「えッ」

 

 佐鳥の申し出に半崎も頷き、あろう事か彩葉も頷いた。嘘だろうと小夜子は心の中で悲鳴をあげたがその後理解してしまう。

 

 彩葉は佐鳥の言葉を絶対に否定しない。どんな状況であろうと必ず。

 

 小夜子は項垂れる。

 

 此の儘一人で帰ってしまおうか。でもそれはそれで少し寂しい。だけれど男と一緒となるには些か緊張してしまう。

 

 いくら佐鳥と半崎が他の男より比較的喋りやすいからと言って、緊張しないわけがない。

 

「小夜子」

 

 彩葉の言葉にハッと我に帰る。彩葉は真っ直ぐと小夜子を見ていた。

 

「大丈夫。私も一緒だから」

 

 彩葉の言葉に、小夜子は段々と胸にあったモヤモヤが少しだけ晴れていく感覚になる。これは恐らく彩葉に対する絶対的な──信頼。

 

 彩葉と一緒にいれば何とかなると、小夜子の中の本能がそう告げていた。

 

 ──彩葉が一緒なら、良いかと、小夜子は心が揺れる。

 

 偶になら、こんな日があっても良い。

 

 そう思いながら小夜子はその首を縦に振るのであった。

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