ギフトは授業参観でした   作:ニンカタ

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肉親がよくある異世界ファンタジーの様子を見たらどうなるかな〜という発想から。まぁよくあるって言っても少し古いかな?


ギフトは授業参観でした

 

 

 「男性型魔族が3。女性型魔族が3。そして獣型魔族が6。よしよし、依頼通りですね。欠損も少なく、状態がとても良い!感謝します、勇者殿!!」

 「…良かったぁ……少し強くやり過ぎだかなぁって思う奴もいたんで……」

 「ハハハ、少々傷がありますが治せる範疇です。お気になさらず」

 

 王国フェルメール設立研究所MARS(マーズ)。彼等から受けた依頼は敵対する魔族の実験体を出来るだけ傷が無く手に入れて欲しいという内容だった。

 戦いにおいて傷を付けず等と面倒な注文があった為か勇者専用依頼掲示板オラクルにては不人気で最後まで残っている始末であった。

 

 (まぁ報酬もショボイしな)

 

 渋られた要因は他にもあった。単純に労力に対して報酬が少ないのだ。しかもこのような依頼は裏方。別に解決しても多くの人に感謝される訳では無い。

 人気なのは大体、前線で魔族を殺しまくるような駆除依頼だ。駆除すればしただけ報酬が加算され、更には助けた人々からの感謝の言葉や羨望の眼差しまで貰える。そうとなりゃ誰だって後者を選ぶだろう。問題として前線に出るには相応の力が必要だがそれも…

 

 (ギフトがあるしな~……俺のはそこそこだけどさ)

 

 ギフト。召喚されし勇者達に備わる一騎当千の力。ハズレを引かない限りはこの世界に数多存在する強者達を、容易く屠れる程の力を手に入れる事が出来る。

 

 「……送りました。状態が良かったため、A判定を勇者マナユキ殿に与えます」

 「え!?そんなにくれるんですか!?」

 「このような面倒な依頼を受けてくれたお礼も兼ねてですので、お気兼ねなく」

 (よっしゃ!!A判定!これなら少し贅沢出来るな)

 

 勇者評価制度。これは勇者が王国フェルメールに対してどれほどの役に立ったかを数値化する制度だ。一番上からA、B、C、D、Eの5段階で評価される。良き評価が多い勇者にはそれ相応の報酬を。そして良くない評価が多い勇者にはそれ相応の待遇を。

 

 これを勇者間の間では勇者カーストと呼んでいる。大っぴらには言わないが、大体は皆その認識を持っている。

 異世界に来てまでカースト争いがあるというのは非常に面倒だが、出来てしまっているものは仕方ない。そう仕方ないのだ。

 

 【依頼完了を受理しました。勇者ランクCのマナユキ殿。自身のランクに沿った部屋へと帰還して下さい】

 「了承しました」

 

 少し浮かれるマナユキの脳内に凛とした大人の女性の声が響く。これは勇者達を管理する部署からの魔法による念話だ。勇者は基本この念話に従い行動する。

 

 (ま、仕方ないよな。こんな物付けられちゃあな…)

 

 自身の首に付いている青色の首輪を触りながらマナユキは内心で愚痴る。

 この世界における勇者の扱いは至ってシンプル。使える奴隷だ。フェルメール王は遠回しに、それでいて長ったらしく自分達を持ち上げてはいたが、この扱いを見れば実質そんなものだろう。

 

 ……まぁ色々と思うところはあるが、此方は命を握られているのだ。従うほかあるまい。この扱いに最初は不満が爆発しそうだったが、何とか持ち堪えた。普段は役に立たないもう1つのギフトであるが、あの時ばかりは助かった。

 

 「さーて、早く帰らないとな。遅れると減点減点、と」

 

 規則を守らない者に厳しいのは故郷も異世界も同じらしい。もうすぐ姿を消しそうな夕日を視界の端に入れつつマナユキは勇者達に充てがわれた住居へと足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 「げ…」

 

 もうすぐ自分の住居へと着くであろう。そんな時であった。マナユキの表情が歪む。そして直ぐ様路地裏の影へとマナユキは足を踏み入れた。

 この時にはギフトを使用しており、余程視線の先に映った相手にマナユキが会いたくないのかが分かる。

 

 大きく肥えた体。まん丸とした顔。そしてあまり普通とは言い難い容姿。彼の名前はサカト。マナユキと同じ勇者である。 

 

 「ほら!早く来いよユア!!」

 「は、はい!!すいませんサカト様!!」

 

 サカトが手に持つ鎖の先には一人の女の子がいた。…名前は知っている。話した事も一応はある。

 

 ユア。彼女は勇者である。なのに何故あのような立場に居るのか。それは彼女の勇者としてのランクが低いからだ。

 

 

 

 自分達はある日突然この国に呼び出された。総勢40名。2ーCのクラスメイト。それくらいの共通点しかない高校生の集団である。教師は居なかった。授業と授業の間の休憩時間だからだったのか。それとも自分達を導くような存在が居ると不都合だったのか。それは分からない。

 

 唯一つ言えるのは、導く者が居ない子供達の集団の結束は、容易く崩れるという事だけだ。

 

 

 スクールカースト。どの学校にもある暗黙の了解。概念。幸運な事に自分は上でも下でも無かった。故にこのカーストが崩れて、逆転しても。そこまでの驚きや不幸がなかったのだろう。

 

 サカトは下のカーストだった。そしてユアは上のカーストだった。イジメまではいかなかったが、所謂いじられキャラくらいの扱いをサカトはユアに受けていた。

 

 その時の彼の屈辱がどれほどのものかは分からない。知らない。自分は関わらなかったから。でも今のサカトの様子を見るに耐えられない程の屈辱だったのだろうと予測は出来る。

 

 召喚された時の皆の動揺具合は今でも憶えている。このような展開を知らないが故に喚き散らす者。もしかしたらという希望に頬をほくそ笑む者。他にも色々とだ。でも唯の高校生である自分達が叫んだ所で良い方向に転がる筈はない。

 

 逆らった同級生が見せしめにリンチされた時。自分達はこの場においての立ち位置を自覚せざるを得なかった。それからは皆従順だった。近くの兵士に言われるまま行動し、一人一人占い師のような見た目をする老婆の前へと立っていく。

 

 E。B。A。C。B─淡々と老婆は自分達の価値を告げていく。自分はCランクであった。あの時はCか…と不満を持っていたが、今の自分達の状況を見るとこのランクで良かったと思っている。

 

 Aランクは国にとって絶対に置いておきたい存在。Bランクは使い勝手が良く便利な存在。Cランクはまぁ使える存在。Dランクは居ても居なくても良い存在。そしてEランクは要らない存在。

 

 

 Eランクになった同級生達は嘆いていた。その中にはかつてカースト上位の人もいた。一人が同級生へと噛みつく。お前は自分よりも下だっただろうと。すると兵士達はまた動いた。

 

 ……Eランクの人にも最低家の人権はあるとフェルメール王は言った。故に殺す事はないとも。

 だけど人権はあるとは言ったが、支援するとは王様は言わなかった。だからEランクの人達の生活は劣悪だ。最低限の食料は与えられるが、それだけ。風呂に入るにはお金を稼がないといけないのだ。

 

 でも今までとは違うこの世界で、力も無くどうやって生きていけば良いというのか。そんな時にある生徒が王様へと質問をした。

 

 「Eランクの人を自分の所有物にする事は許可されますか?」

 

 答えはYESであった。実際、最低限の力すら無いEランクの人達にとっては上意の人に飼われるというのも1つの手だろう。誰かもしれない者に扱われるよりかは、である。

 こうして自分達勇者間の中に奴隷と主人という関係性が生まれた。

 

 

 

 (早くどっか行かないかなぁ…)

 

 マナユキはこれがあるから余り他の勇者達とは関わりたくないと思っている。一応は安定してきた生活。だがそれはあくまで一人ならばという話だ。他の人間を連れて生活出来る程にマナユキの懐は大きくはない。だがそんなことは傍から見れば分からぬこと。故にマナユキは隠れる。

 

 (……やっぱ居るよなぁ…)

 

 視界を切り替える。するとサカトとユアの周りには4人の人が立っていた。しかし2人にはそれが見えないらしくそのまま4人が止める様を無視して歩いていく。

 

 「…行ったか。はぁ…ダルい…」

 

 先程までの喜びが嘘のよう。これから起こる事を意識してしまいマナユキはため息を吐く。

 自分ではどうしょうもないのだ。だからその様な顔を見せないで下さい。お願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 マナユキの部屋は少しリッチだ。ベッドは良いものを使っているし、トイレや風呂も一応は付いている。この世界での暮らしという観点から観れば上澄みの方である。

 

 「あ~美味かった」

 

 ドラゴン肉の丸焼き。ファンタジー世界でしか味わえないであろうこの食事だけは悪くないと思っていない要素だ。鶏に近いが、脂はしっかりとある。上手く自分の語彙力では表現出来ないのが少しもどかしい。

 

 「……そろそろ時間か」

 

 故郷の時間であれば20時くらいであろう。何時もの日課とはいえ、先程の光景を見た後だと少し気が滅入る。この後に起こる事が容易に想像出来るからだ。しかしこれは家族と約束したこと。嫌だからと無碍にすることは出来ない。

 

 (授業参観…開始)

 

 目を閉じる。そして再び開いたマナユキの瞳は黒から翠色へと変化していた。

 

 

 

 「頼む!!お願いだマナユキ君!!ユアを!ユアをあの下卑な男から救ってくれ!!」

 「下卑!?人の子供になんて事を言うのよ!!」

 「下卑じゃなくてなんて言うのよ!??アンタの息子が私達の大事な娘に何したのか見たでしょ!!?」

 「サカト…どうしてあんな事を……」

 

 土下座をしてマナユキに頼み込む男。言い争う2人の女性。そしてサカト…サカトとただただ悲しそうに呟く男。ここまで見ればある程度察しはつくだろうが、彼等はサカトとユアのそれぞれの両親である。

 

 (……前にも言いましたが、自分は財力、権力、そして戦闘能力。全てにおいてサカト君よりも下です。自分がユアさんを助けようとしても返り討ちにあうのが関の山です)

 

 これは事実だ。サカトはAランクと判定された程の強力なギフトを持つ。そんな彼に立ち向かってもCランクの自分では歯が立たない。それに自分がサカトに逆らうような真似をすれば国も黙っていない。自分とサカト。どちらが国にとって必要なのかは明白だからだ。殺されはしないだろうが、勇者評価制度にかなりのマイナスが加えられるのは間違いない。悪いがそんな危険を被ってまでユアをどうにかしようとは思わない。…ユアの両親達には申し訳ないが。

 

 「ユア…ユア……っ…!!」

 「あなた…」

 

 分かってはいる。ユアのお父さんも自分に頼んでもどうしょうもないのは分かっているのだ。しかしコンタクトが取れるのは自分しかいない。だからこそ、彼は自分に縋るしか無いのだ。

 

 「はいはい!!マナユキは疲れてるから今日はここまでにして下さい!」

 「悪いですが、時間切れです」

 

 そう叫びながら三十代くらいの女性と男性が4人の間に割り込んだ。未だにいがみ合う母親達は女性が。項垂れるユアのお父さんの手を引くのは男性が。そしてサカトのお父さんは出て行く一同の後にふらふらとした足取りでついて行った。

 

 (キツイ…)

 

 自分のもう一つのギフト。それは授業参観である。効果はクラスメイトの肉親が彼、もしくは彼女達の様子を観察出来るという良く分からない能力だ。

 

 あちらからはどのように見えているのか聞いてみた所、自分の子供とその周辺がホログラムのように浮き出てその様子を見れるらしい。この観察能力はクラスメイト達の両親が見たいと願えば何時でも見れるらしく、知らないだけでクラスメイト達は自分の行いを家族に見られているのだ。

 

 そしてこの能力の厄介なところは自分しか見ている肉親達と会話が出来ない事だ。先程サカトがユアに対して横暴な行動を取っている事を諌めようとサカトやユアの両親達が何度も叫んでいたが、それはサカトにも勿論ユアにも欠片も届かない。

 

 自分の子供が狂っている様。自分の子供が虐げられている様をただ見せられるのは本当に悪辣だと思う。

 

 

 

 

 「マナユキ…大丈夫か?」

 (大丈夫…ではないけど、今日はご飯が美味かったからマシ…かな?)

 「美味い飯食えば大体のことは…うん。まぁそれはそれか」

 (そこは励まさないのかよ…)

 「思ってもないとこと言うのもね…」

 

 父に声を掛けられ、思考の海から帰ってくる。勿論だがこの授業参観には自分の両親もカテゴライズされた。自分の行動を常に見られてるというのは少し…いやかなり嫌だが、会えないと思っていた家族と会えるのは単純に嬉しかった。

 

 (梨華はそっちに居る?)

 「うん。居る」

 (そっか、なら良かった)

 

 自分には妹がいる。同じ学校に通う1つ年下の妹が。特段仲が良いとは言えなかったが、この地獄のような異世界に放り込まれるのは可哀想だ。だから何度も訊ねているが妹が此処に来ていない事を肯定されると少し安心する。自分にも肉親の情とやらがあったらしい。

 

 (で、どうなのそっちの世情はさ?)

 「相変わらずだな。お偉方はお前達を助ける為に鋭意努力していますとか言ってるが、お前達の居る場所が物理的に行けない場所だからか、頭を悩ませてるらしい」

 「……本当に、どうにかして欲しいんだけどね…」

 

 ため息3つ。自分のギフトにより発生したホログラム。それは映像に残せるものだったようだ。そうじゃなくても実際に見せれば信じては貰える。

 ──高校集団失踪事件。巷ではそう言われているらしい。この事件の真相を誰かの家族が警察に話したところ瞬く間に話が広まった。

 神隠し事件というだけでも珍しいのに、異世界なんてものまで絡んできたのだ。そりゃあ故郷の人々の興味を惹くには十分。いやそれ以上か。

 

 

 

 

 ざっくり言ってしまえば他の国による集団拉致事件。しかも拉致されたものは命を賭けた戦いを強要されているときた。この情報が流れた時の荒れようは凄まじかったらしい。

 

 (離れると気になるものなんだなぁ…)

 「まぁそっちには娯楽もないらしいしな」

 

 両親の手前余り大っぴらには言えないが、此方の娯楽等、暴力。ギャンブル。後は…そういう行為だ。依頼が無い時は暇で仕方ない。なので自分は両親に頼み故郷の話を良く聞かせてもらっている。

 

 「で、次は何時行くわけ?」

 (ブッ!?)

 「今更カマトトぶってんじゃないわよ。あんたも男だから抜かないとキツイでしょ?」

 「嫌でも母さん…そんなにストレートに聞かれるとね…?」

 

 命の危機が迫ると…とは聞いた事があるが。いざそのような状況に陥ると本当に我慢が利かない。なので偶に見ないでくれると助かる時間を親父にコッソリと言っていたのだが、バレバレだったらしい。

 

 「…未成年には〜とか言うべきなんだろうけど、それで変に拗らせても大変だしね。行きたい時はハッキリ言いなさい。良いわね?」

 (……はい)

 「母さん……もう少し遠回りに……」

 

 後日。マナユキは部屋に女の子を呼びました。その時は誰もマナユキの事を見ていませんでした。

 




誰かが垂れ込まないと、手段を選ばない親とかが動いたので実は悪くない行動だったり。家族を人質に取られたらマナユキも従うしかないしね。
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