オベリスク・ブルーの令嬢   作:交響魔人

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二話目です。


VSサイバー流

「おはよう、万丈目」

「公方院か。」

「その様子だと…時間切れだったようだな?」

「まぁな。とはいえ、底は知れた。」

 

 新入生歓迎会を終え、初日の授業が始まる前に雑談を交わす。

 中等部から一緒だった事もあり、知らない仲ではない。

 

 

 万丈目グループの三男。長兄は国会議員、次兄は大企業の幹部に対し落ちこぼれ扱いされている。

 エリートであることを立証するために、日々の努力を怠らない事。

 

 多大なストレスをデュエルアカデミア中等部では禁止されていない、『アンティルール』という良識ある者から眉を顰める行為で発散している事。

 

 

「放課後に、デュエルしないか?」

「いや…今日は気分が乗らない。」

「わかった。」

 

 

 そう言った後、公方院は席へ戻ってテキストを開く。

 

 

『それにしても、内容が今更過ぎる…。基礎は大事ではあるが…。』

 

 

 

 授業を担当するのは、クロノス教諭。

 

 基本的なカードの種類から始まり、それぞれ細分化されたカードに関する内容となった。

 目新しい事は何も得られない。そう思っていた公方院だったが。

 

 

「え、えっと、その…」

「もういいノーネ。これぐらいの事も答えられないナンーテ。所詮はオシリスレッド…ナパ?」

 

 スッと挙手するのは宗形だった。

 

 

「シニョール宗形。わかるノーネ?」

「はい。フィールド魔法は、フィールド魔法ゾーンに置かれ、お互いの場に一枚しか存在できません。新たなフィールド魔法が発動された場合、古いフィールド魔法は破壊されます。多くのフィールド魔法の効果はお互いのモンスターに適用されます。そのため、闇属性デッキの使い手が闇属性モンスターの攻撃力を上昇させるダークゾーンを発動した場合、相手が同じ闇属性デッキであれば相手モンスターも強化してしまい、場合によっては押し切られる事もあります。状況に応じて使うべき時、発動せずに温存しておくという選択が重要となります。フィールド魔法を採用するのであれば、採用するフィールド魔法は二枚に留め、テラ・フォーミングを採用するという事が望ましいです。」

「…アングリチョ」

 

 

 クロノス教諭だけでなく、その場の生徒全員が呆気にとられる中。

 公方院は挙手する。

 

 

「ど、どうしたノーネ?シニョーラ公方院?」

「何故同じフィールド魔法を三枚投入せず、一枚をテラ・フォーミングにするのが望ましいのか?テラ・フォーミングをいれるぐらいなら、フィールド魔法を三枚積む方がいいはず。」

 

 

 

「いや、テラ・フォーミングでサーチする方がキーカードを引き当てる可能性が高くなる。」

「だが、フィールド魔法を二枚引いてしまった後に、テラ・フォーミングを引いてしまったら?」

「そこまで考慮するなら、そもそもデッキによるとしか言えない。フィールド魔法の重要性が高いデッキであればフィールド魔法を三積みした上で、テラ・フォーミングを採用するのもありだ。闇属性デッキを組んでいるのであれば、ダークゾーン二枚にテラ・フォーミングを1枚採用、というのが適している。」

 

 切り返され、公方院は思考をめぐらす。

 フィールド魔法を三積みするか、それとも二枚に留めてテラ・フォーミングを採用した場合、どちらがフィールド魔法を安定して引き当てられるか。

 

 その思考は、途中で止められた。

 

 

「そ、そこまでナノーネ!論点がすり替わっているノーネ!」」

 

 クロノス教諭が待ったをかける。

 確かに置いてけぼりになっている生徒がチラホラ居る。

 

 

 

 

 

 

 放課後。

 

 

 遊城十代達ともはぐれてしまった宗形は、デュエルアカデミアを散策していた。

 すると、見慣れない男子生徒と公方院が一緒にいるところを見かけた。

 

 

 近づくと、どちらもデュエルディスクを展開する。

 

 

 

「一体どうしたんだ?」

「オベリスク・ブルーの上級生、御影 田尾志(みかげ だおし)先輩とデュエルするところだ。」

 

 

 

「おい、一華クン。俺と交際するなら、俺の許可を得ずに他の男子と会話をする事は許されないぞ。」

「まだ交際すると決まったわけではありませんが。」

 

 

 

 男女の交際がデュエルの勝敗で決まるという世界に、やや遠い目をする宗形。

 

 

 

 

 

「「デュエルッ!!」」

 

 

公方院 ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

御影 ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

 

 

「先攻は譲ろう」

「ならば私の先攻、ドロー!モンスターをセット、カードを1枚伏せてターンエンド。」

 

 

 

公方院 ライフ4000

手4 フィールド セットモンスター 

    魔法・罠 伏せ1

御影 ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

 

 

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、ハリケーンを発動!場の魔法・罠カードを全て手札に戻す!」

「ハリケーン?チェーンはありません。」

「ここで魔法カード、パワー・ボンドを発動!手札のサイバー・ドラゴン2体を融合!現れろ、サイバー・ツイン・ドラゴン!」

「?!サイバー流!」

「パワー・ボンドにより攻撃力は2倍になる!」

 

 攻撃力5600になったサイバー・ツイン・ドラゴンが咆哮を上げる。

 

 

 

「…あれ?公方院は知らなかったのか?オベリスク・ブルーの生徒という事は中等部の先輩だろう?」

「いや、中等部に御影という姓の生徒は居なかった。」

「という事は、ラー・イエローで入学してそこからオベリスク・ブルーへ昇格した訳か。」

 

 

 そう考えると、御影先輩はオベリスク・ブルーの制服を纏っているが、新入生同様、新品同然だ。

 

 

 

「そうだ。しかし、このサイバー・ツイン・ドラゴンを前にしても君は怯えないのか。」

「攻撃力5600で二回攻撃が可能な融合モンスター。私の場にあるのは壁モンスターのみ。これを戦闘破壊すれば先輩の勝ちですね。」

「という事は、そのセットモンスターは戦闘では破壊されない壁モンスターか、あるいは厄介なリバース効果モンスターといったところだろう?」

「…大した名推理ですが、このままターンエンドですか?」

「いや。俺はここでこの雑魚モンスターを召喚する。」

 

 

 カードの正式名称も言わずに場にカードを置く先輩。

 場に出てきたのは、一刀両断侍だった。

 

「?!そのモンスターは!」

 

 

 低レベルでステータスも低い戦士族だが、その効果は「セットモンスターを裏側表示のまま破壊する」という物。

 

 

「バトルだ!雑魚モンスターでセットモンスターを攻撃!モンスター効果発動!セットモンスターを裏側表示のまま破壊する!」

「ペンギン・ソルジャーが?!」

「やはりリバース効果だったか。だが、そんな雑魚カードなど俺には通用しない。」

 

 

 弱者を甚振る行為に悦楽を感じている醜悪な上級生に、宗形は苦言を呈する。

 

 

 

「サイバー流は、リスペクトデュエルを教えていると伺いましたが?」

「ああ、リスペクトしている。攻撃力が低い雑魚カードでも、効果が優秀なら使い道がある。こんな風にな。というわけで、サイバー・ツイン・ドラゴンでダイレクトアタック!」

「きゃあああああああっ!」ライフ0

 

 

 

 ライフが尽きた公方院は、その場に座り込んでしまう。

 

 

 ハリケーン、一刀両断侍で盤面を処理してからのワンショットキル。

 改めて、ライフ4000でのサイバー流の恐ろしさを感じる宗形。

 

 

「さて、これで。」

 

 公方院に手を伸ばそうとする御影先輩の前に、宗形は立ちはだかる。

 

 

「邪魔だ。オシリス・レッド。」

「俺とデュエルして下さい。」

「オシリス・レッドのお前が、オベリスク・ブルーの俺とデュエルだと?身の程をわきまえろ!」

「カードを持てばデュエリストは皆同じ。」

「…いいだろう、オシリス・レッド。デッキがあったところで、オシリス・レッドとオベリスク・ブルーの間には埋められない差がある事を思い知らせてやる!」

 

 

 

 

 

 

「「デュエルッ!!」」

 

 

宗形 ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

御影 ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

 

 

「先攻は譲ってやる。」

「なら、俺の先攻。ドロー!魔法カード、手札抹殺を発動!互いに手札をすべて捨てて、新たに捨てた枚数分、ドローする。」

「くっ…。」

 

 

 手札交換をしようとした宗形は、御影先輩が捨てた手札を見て目を見開く。

 

 

「サイバー・ドラゴン、融合、サイバー・ドラゴン、ハリケーン、ならず者傭兵部隊。」

「雑魚モンスターはともかく、サイバー・ドラゴンが…。」

「ならず者傭兵部隊と一刀両断侍がデッキに入っているなら、増援も入っているはず…。魔法カード、スター・ブラストを発動。ライフを500支払い、手札からレベル5のサモン・リアクターAIのレベルを1つ下げる。」ライフ4000から3500

「知らないカードだ…。ライフをコストに上級モンスターを生贄無しで召喚する魔法カードか。」

「サモン・リアクターAIを生贄無しで召喚!カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

 

 

宗形 ライフ3500

手2 フィールド サモン・リアクターAI

    魔法・罠 伏せ1

御影 ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

 

 

「僕のターン、ドロー!俺は魔法カード、増援を発動!デッキからレベル4以下の雑魚戦士族モンスターを手札に加える。俺はゴブリン突撃部隊を手札に加えて、召喚する!」

「ここで、サモン・リアクターAIの効果発動!」

「何?!ぐううううっ!」ライフ4000から3200

「相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚した時、相手に800ポイントのダメージを与える。」

「だが、攻撃力はこちらが上!バトルだ、ゴブリン突撃部隊でサモン・リアクターAIを攻撃!」

「サモン・リアクターAIの効果発動!効果を発動したターン、相手モンスター1体の攻撃を無効にできる!」

「面倒な…。だが、攻撃が無効になった事でゴブリン突撃部隊は攻撃表示のままだ。俺はカードを1枚伏せてターンエンド。」

 

 

 

 

宗形 ライフ3500

手2 フィールド サモン・リアクターAI 

    魔法・罠 伏せ1

御影 ライフ3200

手4 フィールド ゴブリン突撃部隊

    魔法・罠 伏せ1

 

 

「俺のターン、ドロー!トラップ・リアクターRRを召喚!さらに永続罠、リビングデッドの呼び声を発動!墓地からマジック・リアクターAIDを特殊召喚!」

「モンスターを3体並べたところで、お前の雑魚カードではゴブリン突撃部隊すら倒せない!」

「ここで、サモン・リアクター・AIの効果発動!場に表側表示で存在するこのカードとトラップ・リアクター、マジック・リアクターを墓地に送り、ジャイアント・ボマー・エアレイドを特殊召喚!」

 

 

 場に推参するのは、大型の爆撃機。

 

 

「こ、攻撃力3000!くそっ、ゴブリンみたいな雑魚カードでは役不足だな。」

「役不足というのは、実力があるのにふさわしい役を与えてもらえないという意味で誉め言葉だ。魔法カード、マジック・プランターを発動!場の永続罠、リビングデッドの呼び声を墓地に送ってカードを2枚ドロー。ジャイアント・ボマー・エアレイドの効果発動!手札のキラー・トマトを墓地に送り、その伏せカードを破壊する!」

「チェーンして罠発動!和睦の使者!このターン、俺は戦闘ダメージを受けない!」

「俺はカードを1枚伏せてターンエンド。」

 

 

 

宗形 ライフ3500

手2 フィールド ジャイアント・ボマー・エアレイド 

    魔法・罠 伏せ1

御影 ライフ3200

手4 フィールド ゴブリン突撃部隊

    魔法・罠 

 

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、天使の施しを発動!三枚ドローして、二枚を捨てる。」

「…捨てたカードは、サイファー・スカウターに、スピア・ドラゴン?」

 

 やや統一感が無いカードに、宗形はやや困惑する。

 

「俺はゴブリン突撃部隊を守備表示に変更。さらにモンスターをセット。」

「あっ…。」

 

 

 それまで黙ってみていた公方院は、ふと気づく。

 

 

「トラップ・リアクターは罠を、サモン・リアクターは召喚に反応してダメージを与えていた。となればジャイアント・ボマー・エアレイドにも」

 

 

 鋭い洞察力を見せる公方院に、宗形は答える。

 

「その通りだ。ジャイアント・ボマー・エアレイドの効果発動!相手がモンスターを召喚・特殊召喚した場合、そのカードを破壊し800ポイントのダメージを与えるか、カードをセットした時、そのカードを破壊して800ポイントのダメージを与える!ただし、この効果は相手ターンに1度しか使えない。今セットしたモンスターを破壊する!」

「くそっ、サイバー・ポッドが!」ライフ3200から2400

 

 

 爆撃を受けて破壊されたのは、厄介なリバース効果モンスター。

 物騒なセットモンスターを見たジャイアント・ボマー・エアレイドと宗形の背中に冷たい汗が流れる。

 

 

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド。」

 

 

 

宗形 ライフ3500

手2 フィールド ジャイアント・ボマー・エアレイド 

    魔法・罠 伏せ1

御影 ライフ2400

手3 フィールド ゴブリン突撃部隊

    魔法・罠 伏せ1

 

 

 

「俺のターン、ドロー!ジャイアント・ボマー・エアレイドの効果発動!手札のフェイク・エクスプロージョン・ペンタを捨てて、伏せカードを破壊する。」

「落とし穴が…。」

 

「魔法カード、死者蘇生を発動!墓地から…。」

 

 サモン・リアクターAIを復活させようとした宗形はふと気づく。

 

 

(御影先輩の墓地に送られた、サイファー・スカウターはゴブリン突撃部隊を戦闘破壊出来るし、スピア・ドラゴンは守備表示のゴブリン突撃部隊を攻撃すれば大ダメージを与えられる…。一見まとまりがないデッキ構築に見えたが、デュエルアカデミアの環境に即したデッキなのかもしれないな。)

 

 何せ初期ライフは4000、その中にあってゴブリン突撃部隊はレベル4の戦士族で攻撃力は2300ある。

 オシリスレッドの周りならまだしも、オベリスク・ブルー及びラー・イエローの生徒であればデッキに入れている生徒が多くてもおかしな話ではない。

 

 

 

 

「スピア・ドラゴンを特殊召喚!バトル!スピア・ドラゴンでゴブリン突撃部隊を攻撃!このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、攻撃力が守備力を超えていれ貫通ダメージを与える!」

「うわあああああああっ!くそ、オシリス・レッドのくせにスピア・ドラゴンのモンスター効果を知っていたか!」ライフ2400から500

「ジャイアント・ボマー・エアレイドで、ダイレクトアタック!」

「うぎゃああああああああああ!」ライフ0

 

 

 

 

 

 

「俺の勝ちですね。」

「馬鹿な、俺がオシリス・レッドの一年に…。今日のところは引き下がってやる。」

 

 

 そういうと、御影先輩は逃げていく。

 

 

 

「…助かった。ありがとう。」

「礼はいい。君が無事で良かった。」

 

 




アンチリスペクト物だと書けなかった、「ラーイエローからブルーに昇格した先輩」「低ステータスのモンスターを雑魚呼ばわりするが、使える雑魚モンスターは使う」
 キャラクターを書けておおむね満足です。
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