「シニョーラ公方院!次の月一試験で、対戦してほしい相手がいるノーネ!」
クロノス教諭の発言に、公方院は困惑する。
「クロノス教諭、月一試験は同じ寮の生徒とデュエルするはずですが。」
「彼らを昇格させるか否かを判別したいノーネ…。」
真っ先に思い浮かぶ顔がある。一度敗北したにもかかわらず、再起して自分を打ち負かした少年、宗形。
あのチョコは完食してくれただろうか?負けるつもりは微塵も無かったので自分で食べる為に甘さひかえめにしていたのだが。
彼が甘党だったら自分に対しての評価が下がったかもしれない。
「シニョーラには、この三人の誰かと戦ってほしいノーネ!今までの月一試験のデュエル内容も添付しているノーネ!」
さて、随分と用意周到な…。
提示された内容を一通り確認した公方院は大きくため息をつく。
「トラブルを招きかねないデッキばかりだな。だからこそクロノス教諭は私で見極めようというのだろうが…。」
筆記は問題なく、実技でも連勝している生徒。だが、その勝ち方が快く思われていない。
禁止カードを使っているわけでもないのだが。そういう生徒を昇格させる事に反対する声が大きいのだろう。
この後、「三人連続相手をする。」と報告。クロノス教諭は驚いていたが、了承した。
月一試験。
「それでーハ、これからシニョール達の試験を行いますノーネ!」
「あの教諭?三人いるんですけど。」
「どういう組み合わせですか?」
「ふわぁ…眠い。」
「シニョール達の相手は、シニョーラ公方院なノーネ!ささ、上がってくるノーネ!」
オシリスレッド三人はオベリスク・ブルー女子を前に困惑する。
「今回の実技試験で勝利すれば、貴方達はラーイエローへの昇格が認められる。」
「なんだ、楽勝だな。」
「それは楽しみだ。私はこのデュエル、一つのデッキを新たに組んだ。このデッキでデュエルをするが…、一つだけ条件がある。」
「条件?」
「蓮壇 宏佑(れんだん こうゆう)。お前とのデュエルだけ、私が先攻を貰う。」
「…はぁ?」
「ただし、お前は手札10枚から初めていい。どうする?受けないなら実技の点数は0点になり、昇格話も立ち消えるが。」
眠そうな態度の蓮壇は、目を見開く。
「いいぜ。なら俺から始めさせてもらう。」
「それでーは、デュエル開始ナノーネ!」
「「デュエルッ!!」」
公方院 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
蓮壇 ライフ4000
手10 フィールド
魔法・罠
「私の先攻、ドロー!魔法カード、手札抹殺を発動。5枚のカードを捨てて5枚ドロー。」
「ま、まさか!デッキ破壊が狙いか!」
そのセリフに、宗形は反応する。
「それは無いな。だったら、一人だけ手札10枚から始めさせたりはしない。」
「ああ。しかし、あの三人は全くデッキタイプが異なる。その三人と連続デュエルなんて。」
三沢大地はオシリスレッド達が勝つと考えていた。
公方院は闇のデッキ破壊ウイルス、人造人間-サイコ・ショッカー、宮廷のしきたり、増援、ペンギンナイトを捨てる。
対戦している蓮壇は、連弾の魔術師、火炎地獄、昼夜の大火事、天使の施し、ファイヤー・ボール、盗人ゴブリン、火あぶりの刑、火の粉、革命、強欲な壺を捨てて新たに10枚を引く。
「来たか。デス・ウォンバットを通常召喚。カードを2枚伏せてターンエンド。」
公方院 ライフ4000
手2 フィールド デス・ウォンバット
魔法・罠 伏せ2
蓮壇 ライフ4000
手10 フィールド
魔法・罠
「あれは、プレイヤーへの効果ダメージを0にするモンスター!」
「なるほど。連弾の魔術師と効果ダメージの連続攻撃で一気に倒す彼のデッキへの対策カードとしては最適だな。」
「俺のターン、ドロー!なるほど、だからこその先攻か!だけど、そんな対策カード1枚で勝てると思うなよ!連弾の魔術師を召喚!バトルだ、デス・ウォンバットを攻撃!」
「罠発動、ドレインシールド。攻撃を無効にして、1600ポイント回復だ」ライフ4000から5600
「何!俺はカードを4枚伏せてターンエンドだ。」
公方院 ライフ5600
手2 フィールド デス・ウォンバット
魔法・罠 伏せ1
蓮壇 ライフ4000
手6 フィールド 連弾の魔術師
魔法・罠 伏せ4
「私のターン、ドロー!サレンダーは受け付けるぞ?デス・ウォンバットを生け贄に捧げ、マジック・キャンセラーを召喚!」
「げえええっ?!」
「あれは!魔法カードの効果を無効にする上級モンスター!」
「終わったな。魔法カードを封じられたら【連弾バーン】に打つ手はない…」
「バトル。マジック・キャンセラーで連弾の魔術師を攻撃」
「ぐう!」ライフ4000から3800
「ターンエンド。」
公方院 ライフ5600
手2 フィールド マジック・キャンセラー
魔法・罠 伏せ1
蓮壇 ライフ3800
手6 フィールド
魔法・罠 伏せ4
「俺のターン、ドロー。カードを1枚伏せる。ターンエンドだ。」
公方院 ライフ5600
手2 フィールド マジック・キャンセラー
魔法・罠 伏せ1
蓮壇 ライフ3800
手6 フィールド
魔法・罠 伏せ5
「何故、サレンダーをしない?ここから勝ちに行けるカードが、お前のデッキには眠っているのか?」
「無い。」
きっぱりと言い切られ、公方院は開き直っただけか、と内心で評価を下げる。
「だが、それでも最後まで戦う。俺は、デュエリストだからだ!」
『だったら何でバーンデッキなんて使うんだよ!』
『先攻さえ取れたら勝ち確定のデッキを使いやがって!』
周りのデュエリストがヤジを飛ばす中。公方院は真意を見抜く。
「さしずめ、連弾の魔術師が初めて手に入れたモンスターか?だからその効果を最大限に生かすデッキを考えて、そのデッキにたどり着いた、と?」
「…ああ。そうだ。カード名にも俺の姓が入っていたし。」
「少し、お前の事が分かった。不意打ち又佐を召喚。このカードは一度のバトルフェイズで二回攻撃出来る。バトルだ、不意打ち又佐とマジック・キャンセラーでダイレクトアタック!」
「ぐうううううっ!」ライフ3800から2500、2500から1200、1200から0
『けっ、ざまぁみろ!』
『なんだよアイツ、先攻取ってあのモンスターを出して、防御札伏せれば勝てるのか。雑魚だな。』
敗者には冷たいのがデュエルアカデミア。それが普段から嫌われている者ならなおさらだ。
「さて、次はそちらが先攻でも構わない。どうする?」
「先攻は貰うぞ。ラーイエローへ昇格するのは、この虫壁 均(むしかべ きん)だ!」
「「デュエルッ!!」」
公方院 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
虫壁 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「俺の先攻、ドロー!モンスターをセット、カードを4枚伏せてターンエンド!」
公方院 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
虫壁 ライフ4000
手1 フィールド セットモンスター
魔法・罠 伏せ4
「私のターン、ドロー!魔導戦士ブレイカーを召喚。効果発動、魔力カウンターが一つ乗る。バトルだ」
「バトルフェイズ開始時に永続罠、グラヴィティ・バインド-超重力の網-を発動!これでレベル4以上のモンスターは攻撃宣言を行えない!」
「ならばメインフェイズ2に入る。ブレイカーの魔力カウンターを一つ取り除き、一番右端の伏せカードを破壊する。」
「神の宣告が…」
「カードを2枚伏せる。ターンエンドだ。」
公方院 ライフ4000
手3 フィールド ブレイカー
魔法・罠 伏せ2
虫壁 ライフ4000
手1 フィールド セットモンスター
魔法・罠 グラヴィティ・バインド-超重力の網- 伏せ2
「ええっ?!ど、どうしてあの卑怯なグラヴィティ・バインドを破壊しないんスか!」
「一番厄介なのがあの永続罠なのに、どうして…。」
翔と十代が違和感を覚える中、三沢と宗形も内心頷く。グラヴィティ・バインドは制限カード。打ち抜けば後々の行動がやりやすくなるはずなのに。
「俺のターン、ドロー!セットモンスターを反転召喚、デス・ラクーダ!これによりカードを1枚ドローする!」
「ここで永続罠、聖なる輝きを発動、互いにモンスターをセット出来ない。」
「なっ?!」
サイクル・リバースデッキの天敵カードを発動され、虫壁は絶句する。
「…俺は、共鳴虫を守備表示で召喚。ターンエンドだ。」
公方院 ライフ4000
手3 フィールド ブレイカー
魔法・罠 聖なる輝き 伏せ1
虫壁 ライフ4000
手1 フィールド デス・ラクーダ 共鳴虫
魔法・罠 グラヴィティ・バインド-超重力の網- 伏せ2
「私のターン、ドロー!ではそちらのモンスター2体を生け贄に捧げ、溶岩魔神ラヴァ・ゴーレムを特殊召喚!」
「何だと!」
灼熱の魔神が出現し、虫壁は慌てる。
「そうか!だからグラヴィティ・バインドを破壊しなかったんだ!」
「これで、虫壁は自分の永続罠で攻撃すらできず、毎ターン、ダメージを受ける。」
宗形と三沢は先ほどのプレイングの真意を悟る。
「カードを1枚伏せ、ターンエンド。」
公方院 ライフ4000
手2 フィールド ブレイカー
魔法・罠 聖なる輝き 伏せ2
虫壁 ライフ4000
手1 フィールド 溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム
魔法・罠 グラヴィティ・バインド-超重力の網- 伏せ2
「俺のターン、ドロー!このスタンバイフェイズに、1000ポイントのダメージを受ける…!」ライフ4000から3000
ラヴァ・ゴーレムのダメージを受ける虫壁。
「速攻魔法、サイクロン!俺は、自分のグラヴィティ・バインドを破壊する!」
「おっと。ならば永続罠発動!宮廷のしきたり!これがある限り、互いの永続罠は破壊されない。」
「なっ?!」
「さて、お前は蓮壇と違い、潔く負けを認めるか?」
勝利を得るのは難しいと悟り、虫壁は堰を切ったように話し出す。
「俺は、地元でこのデッキをずっと使ってきた。そうしたら、俺のデュエルは卑怯だ、つまらないと言われて誰もデュエルしてくれなくなった…。だから俺は、アカデミアに来た。ここなら、俺のデュエルを受け入れてくれる奴がいるかもしれないと思ったから。だけど、ここでも俺のデュエルは嫌われる…。デュエルしてくれるのは、十代と三沢と宗形。まぁ、蓮壇と桒山もデュエルしてくれるが…大抵俺が負ける。」
「何故そのデッキを使う?嫌われたくないなら、ある程度周囲に合わせる事も出来たはずだ。」
「俺の主力モンスター、イナゴの軍勢とスカラベの大群は、ゴミ箱に捨てられて居た。ステータスが低くて弱っちい、闇属性の昆虫族とかキモイとまで言われて。だから俺はこいつらを使う事にしたんだ。キラートマトを守備表示で召喚。ターンエンド。」
嘘では無いのだろう。少なくとも、公方院は彼の発言が嘘とは思えなかった。
共鳴虫とキラートマトは、防御カードを引けず場を繋げるためのリクルーターなのだろう。
公方院 ライフ4000
手2 フィールド ブレイカー
魔法・罠 聖なる輝き 宮廷のしきたり 伏せ1
虫壁 ライフ3000
手0 フィールド 溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム キラートマト
魔法・罠 グラヴィティ・バインド-超重力の網- 伏せ2
「私のターン、ドロー!このターンで終わらせる。バトルだ!」
「な、何?!攻撃も出来ないのにバトルフェイズ?!」
「速攻魔法、造反劇を発動!ラヴァ・ゴーレムのコントロールをバトルフェイズ終了時まで得る!」
「そんな事に何の意味が…。攻撃出来ないのにコントロールを奪ったところで…あっ!」
虫壁は気づいたようだ。だが。
『何でわざわざ奪うんだろう?』
『プレイングミスだろ?さっきのお涙頂戴話に感化されたんじゃないか?』
まるで分っていないギャラリーが居る。
「罠発動!火霊術-「紅」!ラヴァ・ゴーレムの攻撃力分のダメージを受けろ!」
「うわあああああ!」ライフ0
『ハハハ!見ろよ、虫野郎が燃えているぜ!』
『飛んで火にいる夏の虫ってやつだな!ざまぁみろ!』
ギャラリーのたわごとを無視して、公方院は三人目と向き合う。
「さて、最後はお前だな。」
「バーンデッキ、ロックデッキへの対策は凄かったが…この桒山 善之(くわやま よしゆき)は一味違うぞ!」
「そうか?お前のデッキへの対策が一番最初に終わったが。」
「抜かせ!」
「「デュエルッ!!」」
公方院 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
桒山 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「さぁ行くぞ、俺の先攻、ドロー!魔法カード、手札抹殺を発動!」
「デッキ破壊の定番だな。これで残り30枚だ。」
公方院は魔法吸収、可変機獣ガンナー・ドラゴン、魔のデッキ破壊ウイルス、D.D.クロウ、妖精の風を捨て、新たに5枚引く。
「俺はモンスターをセット、カードを3枚伏せ、魔法カード、太陽の書を発動!メタモルポットをリバース!効果発動、互いに手札をすべて捨てて、新たに5枚ドロー!」
公方院はE・HEROワイルドマン、ある獣族、マジックブラスト、シールドクラッシュ、リロードを捨てて新たに5枚引いた後、宣言する。
「これで残り25枚となるが…。ターンを終了してもらうぞ。」
「は?」
公方院 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
桒山 ライフ4000
手5 フィールド メタモルポット
魔法・罠 伏せ3
「では、私のターンだ。」
「ま、待て!なんで強制的にターンが回っている?!」
「おかしいっス!きっとイカサマっス!」
「決めつけんなよ、翔!何か理由があるんだろ。俺にはさっぱりわかんねぇけど!」
「しかし、一体全体どういう事なんだ?」
翔、十代、三沢が混乱する中。
「そうだ!ネコマネキングだ!相手によって墓地へ送られたら、強制的にターンを終了するモンスター!」
宗形が気づき、それに対し公方院はいたずらが成功した子供のような顔で、墓地からカードを一枚提示する。
「ぐっ!め、メタモルポットの効果で墓地に送ったカードにそのカードが!」
「そういう事だ。では改めてドロー!このままバトルだ。」
「モンスターが居ないのにバトルフェイズ?まさか!」
「速攻魔法、造反劇!メタモルポットのコントロールをバトルフェイズ終了時まで得る!そのままダイレクトアタック!」
「たった700ポイントのダメージなど!」ライフ4000から3300
「速攻魔法、ライバル・アライバル!互いのバトルフェイズ中にモンスター一体を召喚する!私はメタモルポットを生け贄に捧げ、マジック・キャンセラーを召喚!」
「げぇええええ!」
「ダイレクトアタック!」
「うわあああああ!」ライフ3300から1500
「私はカードを3枚伏せてターンエンド。」
公方院 ライフ4000 デッキ:24
手0 フィールド マジック・キャンセラー
魔法・罠 伏せ3
桒山 ライフ1500
手5 フィールド
魔法・罠 伏せ3
「お、俺のターン…ドロー。モンスターをセット、ターンエンド。」
公方院 ライフ4000 デッキ:24
手0 フィールド マジック・キャンセラー
魔法・罠 伏せ3
桒山 ライフ1500
手5 フィールド セットモンスター
魔法・罠 伏せ3
「私のターン、ドロー!バトルだ、マジック・キャンセラーでセットモンスターを攻撃!」
「ニードルワームの効果発動!デッキの上からカードを5枚墓地に送れ!」
「墓地に送られた、闇よりの恐怖のモンスター効果発動!相手の効果でデッキか手札から墓地へ送られた場合に特殊召喚する!」
「ば、馬鹿な…」
防ぐ手段がない桒山は心が折れる。
「何故デッキ破壊を使う?」
「…ライフを削るのがデュエルモンスターズの主流だとわかっている。でも、俺は、デッキ破壊で勝利したとき凄くうれしかったんだ…。」
「なるほど、共感は出来ないがその価値観に敬意は払う。終わらせるとしよう、闇よりの恐怖でダイレクトアタック!」
「うわあああああ!」ライフ0
「そこまでなノーネ!シニョーラ達のラーイエローへの昇格は無くなったノーネ。これからは心を入れ替えてデッキを組むノーネ!」
勝利はしたものの、公方院はどっと疲れた。
これは教師が本来するべき仕事では?いや、でも生徒の自分に任せたという事は信頼の証…。うん、進学や就職に有利に働くと考えれば大きなプラス…。
そう自分に言い聞かせた。
後日。
『何故だ!砂漠の裁きを使えばサイクル・リバースデッキは何もできないはずだろ!』
『デッキ破壊対策に闇より出でし絶望を使ったのに負けるんだ!おかしいだろ!』
『くそ!デス・ウォンバットを入れたのに、ヴォルカニック・クィーンとかいうモンスターに生け贄にされて負けた!』
どうやら、あのデュエルから嫌われ者達を倒して鬱憤を晴らそうとしたオベリスク・ブルーとラーイエローの生徒は返り討ちにあったらしい。
ちなみにサイクル・リバースモンスターは自身の効果で表示形式変更を行うので、砂漠の裁きによる影響は無い。
宗形はため息をつくと、十代を探しに行った。ちょっとまともなデュエルをしたくなったから。