裏ボスになりたくて!   作:ぐえ

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かえせ

なんでこんな僕らしくないことをしてしまったんだろう。アルファたちに酷いことを言ってしまったな。姉さんにもだ。違和感はあった。でも気づけなかった。ずっと憧れていたのに、あの存在になろうと。

 

僕は陰の実力者に...

 

意識が...途切れ.....君は.....

 

 

アウロラ「返せ!」

 

シドの体に突き刺さった赤い触手が何かドス黒い魔力を抉り出す。

 

クレア「シドッ!!」

 

触手が抜けた途端に力を失い倒れた彼を咄嗟に支える。しかしクレア自身も技の影響で身体中から血を吹き出し状態は決して良くなかった

 

「こんなになるまで…痛かったでしょ。ごめんね早く助けてあげられないで」

 

「状態は思ったより最悪ね。逃げずに全ての攻撃を受け止めて戦ってたみたい。どれだけ体が丈夫でもこのままじゃ死ぬわ」

 

「そんな!でもあんたなら回復ぐらいできるんじゃないの?!」

 

「やってるわ!でも脳みそになんだか分からない怪我が広がってるの。病気ならそこを取り除けばいいけど、脳にそんなことしたらすぐに死んでしまうわ」

 

「シャドウガーデンの力を借りるのはどう?」

 

いつのまにかアレクシアが這って彼女らのところまで近付いていた

 

「多分その傷は七陰がつけたんでしょ?なら治し方も知ってるはずよ」

 

「例え知っていたとしても助けてくれるかは分からないわ」

 

「でもそれしか方法がないんでしょ。なら…」

 

 

彼女らの背後から轟音が響く

 

 

雷とも獣の叫び声とも言える音が耳をつんざく

 

 

「なに、これ、耳がぁ」

 

「うぐぅ…」

 

「そんな、ただの魔力の塊でしかなかったはずなのに…二人とも彼を逃すわ」

 

一瞬の痛みと共に彼女らの怪我が一気に治る

 

「一体何!?」

 

「急になんなのよ!」

 

「とにかく彼を担いで逃げるの。急いで!」

 

クレアがシドを担いで走る。よく見れば彼女らの背後には赤黒いモヤが広がって彼女らを包もうとしていた

 

「ちょっ何これ!?」

 

「このまま南南東に進めばシャドウガーデンらしき人間が多くいるわ」

 

「その前にこれ何とかしてよ!到着する前に飲み込まれる!」

 

「ダメよ。私はあなたの魔力を使ってるの。失敗すればあなたの魔力が無くなってそのまま死ぬわ。死ぬ気で逃げなさい」

 

「こんのー!!」

 

クレアたちは全力で走るが、赤黒いモヤの方が速く広がる。

 

「(これじゃあ時間の問題ね。一か八か…!?)」

 

その時、クレアたちに向かって反対から走ってくる女がいた。

 

「ハァアアアアア!!!」

 

クレアの上を飛び越えその金髪の女性は赤黒いモヤを吹き飛ばす。

 

「ローズ先輩!?」

「会長!?」

 

「急いでシド君を!すぐシャドウガーデンの仲間が来ます!!」

 

二人はまたすぐに走り出す。ローズは剣圧でモヤをいくらか遅らせてくれているが、飲み込まれるのも時間の問題だろう。

 

「このッ!」

 

空斬を飛ばすことのできないローズでは10秒持ち堪えるのが限界だった。赤黒いモヤがローズを包み込む。

 

「…何も起こらない?」

 

多少魔力が吸われた感覚もするが、身体に異変は起こらない。それよりシャドウはどこへ行ったのだろうか。シド君を担いでクレアさんとアレクシアさんが逃げていたのを見つけて665番たちにあとを任せて強引に来てしまった。

 

あれはまさかシド君を狙ってる?

 

「急がないと!」

 

ローズが駆ける

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ラムダ「シド君が担がれてる?確かにそう666番は言ったのだな?」

 

665番「は、はい!」

 

ラムダ「そうか、ではお前も仲間の介抱に向え。今戦える戦闘員は全員集まれ!!B地点に瀕死のシャドウ様がくる可能性が高い。捕獲用のアーティファクトをありったけ持ってこい。全員で確保する!!」

 

665番「え?でもシド君って確か666番ちゃんの…」

 

ラムダ「666番には言うな。いずれバレるだろうがな」

 

 

ジャックの奇襲に耐えたナンバーズやガーデンの実力者がすぐに戦闘体制を整え向かう

 

 

カイ「なんだアレは…」

 

オメガ「魔力の塊?」

 

ニュー「あの中にシャドウ様がいるわけではないのよね」

 

パイ「でもボスは担がれてる?」

 

ガーデンに動揺が広がるが、すぐにもあの魔力体が到着しかねないので行動を開始する

 

ラムダ「私とアーティファクト持ちは黒い霧を食い止める。他はシャドウ様とクレア様の安全を確保してくれ」

 

ラムダは別に準備期間の1ヶ月間何もしていなかったわけではない。自分の体を限界まで鍛え上げた。それでも七年鍛えた七陰の足元には及ばないがイプシロンだけが使えたあの技に辿り着こうとしていた。

 

ラムダがクレアたちを飛び越え剣を振り上げる。

 

「だぁああああああ!!」

 

振り下ろされた剣から発生したそれは魔力の斬撃と呼ぶには不格好だが今はそれが良かった。飛ばされた魔力の渦にモヤの動きが止まる。

 

「今だッ!!!」

 

いつの間にかモヤを囲んでいたナンバーズがアーティファクトを使用する。そのアーティファクトから出る透明な結界が赤黒いモヤを完全に閉じ込める。

 

「これで足止めにはなるだろう。問題はあっちだな。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ウィクトーリア「シャドウ様の身体の内側ににありえない程の傷が刻まれている。このままでは...」

 

ウィクトーリアがシドの身体を魔力で回復させるが何をやっても傷が治る気配がない。

 

クレア「この傷を付けたのはあんたたちなんでしょ!何か治し方を知らないの!?」

 

ウィクトーリア「申し訳ございませんクレア様。私ではこの傷を治す方法を持ち合わせておりません」

 

放射線の傷は単なる魔力による治療では治すことは出来ない。ただ死を少し遅らせるだけでしなかった。

 

「これが放射線か...」

「こんな状態でシャドウ様は戦われていたのか」

「一応アーティファクトで確保するべきなのでは?」

「こんな状態のシャドウ様を放置するつもりか!」

「しかしもしお目覚めになられたらこの場にいる全員死ぬぞ!」

 

この場にいる者は全員シャドウに救われている人間だ。誰も彼を殺したくはない

 

アレクシア「さっきからごちゃごちゃと!こいつがまた暴れることはないわよ!もう身体に取り憑いていた魔神ディアボロスはもう切り離したんだから!」

 

ウィクトーリア「おい、お前それは一体どういうことだ!!」

 

アレクシア「ど、どういうことってあなた達知らないの?」

 

彼女たちの間に一人の魔女が舞い降りる

 

「こんにちわ。シャドウガーデンの皆さん。」

 

「何者だ!」

 

アウロラ「ただ彼の状態を説明しにきただけよ...あなた達の最期の戦いに彼は死力を尽くしたわ。そもそも彼はあなた達悪魔憑きとはなんの関係もないのにね。それでもあの化け物を倒した。でも倒した後が問題だったの。彼の身体の中にディアボロスの怨念が入り込んだ。その結果があれよ。」

 

アウロラは結界の中にある魔力のモヤを見る。

 

「彼は耐えていたわ。あなた達が平和に暮らせるようになったのを見届けた後もずっと一人で、あなた達に心配をかけないように。でも長くは続かなかった。彼の精神がディアボロスと融合してしまった。すぐに破壊衝動に包まれなかったのは彼の優しさゆえなんでしょうね。」

 

「では...シャドウ様は我々を見捨てた訳ではないのだな...」

 

「えぇ。彼があなた達をどう思ってたのかは私にはわからないけど、大事にされていたのね」

 

「そうか、そうだったのか...う、うぐっ、あぁ、ほんとうに...よかった....」

 

ウィクトーリアが涙を流す。ゼータ様が泣くことを耐え忍んでいたのに自分が泣くのはありえないと。今まで表情を消していた。しかしこれはダメではないか。私達のためにシャドウ様は御身を犠牲にしていらしたのだ。不甲斐なさと感じてはいけないはずの嬉しさに挟まれて思考がままならない。

 

「ごめんなさい。ごめんなさい。あぁ、あぁあ、あぁあああああ」

 

周囲のガーデンも緊張の糸が切れたかのように泣き出す。

 

ようやく到着したローズもガーデンの様子に気づき、事情を理解する。いや、もともと彼女は察していたのだ。あの時から。

 

「やっぱりシド君だったんですね...」

 

彼女の中には感謝の気持ちもあれば、今まで自分を利用していたことに関して聞きたいことがいっぱいあった。でも、彼女もここにいる女性たちと気持ちは同じだ。

 

「生きててくれて良かった」

 

シドの無事に安堵した

 

 

 

「シド、あんた、皆に慕われてたのね」

 

つられたようにクレアも少し涙ぐむ。私もずっとこの子に助けられていたのだ。悪魔憑きの症状が出たときだって急にシドにストレッチをしてもらってから治った。ずっと変な話だと思っていた。学校で次々に起きた事件もシャドウに助けられなければ何度も死んでいた。この子は私に分からないようにずっと私を助けていてくれたんだと今分かった。

 

「姉失格ね。ありがとシド」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキッ

 

 

 

 

 

 

ニュー「結界が!」

 

気を取り直したナンバーズが戦闘態勢に戻る

 

「何だアレは」

「モヤが一点に集中している...!」

「さっきの話の通りならこのまま魔神が復活するんじゃないか!?」

「いや、アレは、そんな…」

 

ラムダ「クレア様、アレクシア王女お願いがあります。先程とは反対方向に逃げてください。我々が時間を稼ぎます。先程の戦いの近くに金髪の美しいエルフがいらっしゃいます。その方ならシャドウ様の傷を治せるでしょう」

 

クレア「ねえ、それって一体...」

 

ラムダが立ち上がり背を向ける

 

ラムダ「この化け物に勝てるのはシャドウ様かアルファ様しかおりません」

 

 

 

 

モヤが形をなし、結界が完全に破られる。そこから荒れ狂う魔力の暴力が全員を襲う

 

 

 

 

 

 

 

『彼を返してもらおうか』

 

 

 

 

 

 

そこにいたのは漆黒の衣をまとうシャドウの姿をした何かだった

 




シド君は体の中に何かあったことに気づいてないですし、耐えてたとかそんな感覚ないです。
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