裏ボスになりたくて! 作:ぐえ
アウロラ「ここまで来たわ」
ゼータが彼女達の前まで地面を裂きながら吹き飛ばされてきた。
クレア「そんな…」
デルタとイータもすぐそばで戦っている。しかしこのままでは時間の問題だ。
「ごめんなさい」
「!?」
クレアは、いやアウロラでさえ彼女が起き上がるのに気付かなかった。さっきはうつ伏せで気付かなかったが、あまりに浮世絵離れしたその美しさにクレアは息を呑む。
「平和な世界を楽しんでいた。あなたただ一人の犠牲の上にあった世界を。それに気付かず独りよがりなことばかり言っていたわ。私にあなたの隣に立つ資格なんて無い。」
彼女から流れる涙はあまりにも美しかった。
「それでも言わせて」
彼女は手をそっとシドの頬に添えた。
「愛しています」
アルファが口吻をする。彼女の魔力が優しくシドを包み込む。全てを癒やすかのように。
長い口吻だった。別れを惜しむかのような。
「ちょっ!」
「クレアよしなさい」
アルファが口吻をやめる。
「続きは千年後に待ってるわ。」
立ち上がった彼女はシャドウに向かい歩を進める。
「ねえ!シドは治ったの?!」
「えぇ」
「だったら早くシドを連れて逃げて!」
「いいえ大丈夫よ。彼が起きたときには本当の平和が待っている。」
アルファが剣を作り出す。
「それじゃあ始めましょうか。」
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アルファとシャドウの剣がぶつかり合う。シャドウの身体が何度も切断されていき、そのたびに再生と学習が行われる。
「(再生と学習だけではない。魔力総量が増えている。彼と同じように1の魔力を100にしている訳ね。問題はない。このまま技を構築する。)」
シャドウの身体が泣き別れとなり足蹴りで吹き飛ばされる。下半身は溶け、上半身から再生する。
アルファが攻めてくるタイミングに合わせシャドウの触手が伸びる。
狙いはシドだった。
「!?」
ザンッッ!!
「シドは任せて!私が守る!!」
「ありがとうクレアさん」
シャドウの再生が終了し、再び剣が交わる。しかしアルファにはあまりに遅かった。
剣での戦いに不利を感じたのか、剣を弾かれた瞬間に即座にバールを作り出す。二本のバールから生み出される攻撃は速くはなったが、技の冴えが劣る。アルファにはもちろん効かない。
再びバールを弾き飛ばされ今度は空中に飛び弓矢を作り出す。
発射された矢はあまりに速くクレアの目には映らない。しかしその矢すらアルファは弾いていく。
弾かれた矢はそれでも速度を落とさずアルファの周りの地面を貫通していく。
「ウガァアアアアア!!」
アルファに気を取られていたシャドウはデルタの接近に気付かない。地面に落とされたシャドウをアルファが攻める。
落とされたシャドウは人差し指をアルファに向けていた。
「させない!」
ベータがシャドウの足を斬りつける
姿勢の崩れたシャドウの指先からレーザーが飛ばされる。そのレーザーは対流圏、成層圏、ついには熱圏すら超え宇宙に飛び出していく。
アルファがその腕を切り飛ばし、再生が追い付かないほどの速さで切り刻んでいく。そのまま首を飛ばす。
「イータ!」
「任せて...」
イータのスライムがシャドウの首を包み込む。そこに他の陰も補助するかのようにスライムで捕縛していく。
「だめね、足止めは効かない。爆発するわ。全員離れて」
次に起こることを予測したアルファの一声で全員が距離を開ける。瞬間、即座に爆裂し、爆炎の中からシャドウが身体を回復させ現れる。
『...貴様らは何を望む。』
「!?」
『シドの幸せかい?』
『ならば貴様らのやっていることは全て間違っている。』
「何が言いたいの?」
ガンマが単純に疑問を呈する
『僕はあのときシドの中に入った。』
『我は彼の肉体を奪おうとした。だがそれは許されなかった。』
『多少の影響しか与えることが出来なかったんだ。』
『だが見えた。』
『シドの全てを。』
『そして理解した。』
『シドのあり方を』
『我は彼の望む世界を作ることができる。』
『君達はシドが好きなんだろ?なら僕が君達の望みを叶えてあげるよ』
「シャドウ様の望む世界...」
「み、皆どうしたのです!?」
『デルタ。貴様はシャドウとまぐわりたいのだろう?』
『君の願いもボスの幸せも叶えてあげたいんだ。』
「聞いちゃ駄目よデルタ!」
『イプシロンよ、貴様の秘密を彼は知っている』
「んな!?」
『シドが君のことをどう思ってるか教えてあげようか?』
「黙れ!」
「お前がシャドウ様を騙るな!」
ベータがナイフを投げる。それをシャドウは掴み取る。即座に爆発。爆炎の中ガンマがシャドウを斬りつける。
しかしガンマの剣は空を切る
「そんなッ」
シャドウはガンマの背後にいた。アルファだけはシャドウの動きが見えていた。
『ベータにガンマ、貴様らも彼との幸せな生活を望んでいるのだろ?』
『だがそれはシドの望みじゃない。』
『我はその2つの望みを両立させることができると言っているのだ。』
「だから主の身体をもう一度奪い取るって?」
「私はマスターがほしい...お前じゃ、ない...!」
『君たちじゃ彼に幸せを与えることはできないんだよ?』
「勘違いしないで。彼は自分で望みを叶えられないほど弱くないわ。あなたの戯言は聞くに耐えない。どんな言葉であってもそれは彼のものじゃない。懐柔できるなんて思わないほうがいいわ。」
『…』
『…』
緊張が高まる。まだシャドウの手に剣はない。アルファもまだ構えない。
「ガルルルル...」
他の陰も構え始める。しかしシャドウとアルファはまだ構えない。全員動けずにいた。静寂に包まれる。
「ッ!!」
アルファの構えとシャドウの剣の精製が同時に起こる。
アルファの突進。剣のぶつかりあいに制したアルファがシャドウを吹き飛ばす。その時速およそ500キロ。互いの速度が段々本物へと迫っていく。魔力の発散によりシャドウが空中で動きを止める。即座にアルファの追撃が入る。剣の打ち合いが続きデルタがその戦いに追いつく。シャドウの動きをデルタの野性的な動きで乱していく。
他の陰も動きをサポートする。
シャドウの肉体から黒いものが分散し、6体の分身を作り出す。
「こいつ等!」
アルファ以外の動きが止まる。
ゼータが即座に首を刈り取ろうとするが
「受け止められた!?グッ!!」
そのまま蹴り飛ばされる。
「強い...!」
「けどそれは悪手よ。」
アルファがシャドウ本体の腕を飛ばす
「随分力が制限されているわ。」
七陰全員がそれぞれ一対一の状況に持ち込まれる。しかし有利なのは依然としてアルファの方だった。
アルファの連撃にシャドウは追いつけなくなる。足蹴りにより更に遠くへ飛ばされる。
「そろそろ頃合いね。あなたのお陰であの子達とも距離が取れたわ。」
シャドウとアルファが空中へ浮かんでいく。
アルファの本気が発揮される。
魔力の激流
しかし粗雑なものではない
濃密で繊細な魔力が空間を満たしていく
シャドウは相殺する術をまだ持ち合わせていない
勝つなら今しかない
「アイ」
シャドウは手をかざす
しかし今さら無駄な行動である。
「アム」
「アルファ様!?それを撃ったらあなたが死にます!」
イプシロンが叫ぶ
「やめて!」
アルファの死を皆が予感する
「ごめんね皆。彼を任せたわ...」
アルファの身体が輝く。しかし身体の内側はボロボロであった。
「アトミッ!!??」
その技が放たれることはなかった。
「失敗?違う!私達の技を学習した!!」
『ようやく気付いたか』
『だけど遅いよ』
アルファの腹に剣が突き刺さる。
「カッ!?...(私の負け。結局何も果たせなかった。)」
アルファが吐血する。既に内臓はぐちゃぐちゃだ。
『貴様のお陰で我は彼と近しい力を手に入れることが出来た。』
『ありがとう。痛み無く殺してあげる。』
シャドウの魔力が激流を起こす。それは彼のモノと寸分違わなかった。
「アルファ様!!」
「やめろぉお!!」
「うぐっ!?邪魔するなぁあ!!」
シャドウの分身体が七陰の行く手を阻む。
『これだ。これが欲しかった...!』
『アイ』
『ア厶』
「やめて、お願い、アルファ様ぁああああ!!」
シャドウの魔力が霧散し、分身体が掻き消える
「「「「「「え?」」」」」」
『なんだ...』
『これは...』
一つの陰がアルファの前に現れた
「し、ど...?」
「夢の中に君がいた」
「え...」
「幼い頃の君だ。僕に微笑むんだ。愛してるって。僕はその気持ちがよくわからなくて、どうしようもなくて逃げるんだ。でも君は優しいから。そんな僕のそばにいてくれた。」
「それ、は...」
「それで君達と戦って、会話して、分かった。愛されるってこと...それに僕が君達を愛してるってこと。」
「...」
「ありがとうアルファ。君が僕のそばにいてくれて良かった」