裏ボスになりたくて! 作:ぐえ
アルファの肉体がシドによって回復される
「あたたかい…」
アルファの意識が途絶える
「イータ、アルファを頼む」
近くにいたイータにアルファを任せ、再度ソレと向かい合う
「さて、始めようか」
シドとソレが剣を交えた。
『僕はキミだ』
『我はお前だ』
「それは違うかな」
ソレの猛攻を全てシドは捌ききる。
『違わないね。僕を殺すのかい?それは孤独だよ。』
『お前の家族も友人もアルファでさえお前を理解し得ない。』
「そうなのかもね。でもコレは僕にとって一番大事なことだ。僕だけが分かっていればそれでいい。」
ソレの大振りをシドはまともに受け止め、地面まで吹き飛ばされた。すぐに追撃が始まり、砂埃から現れたシドと何度も剣をぶつけ合う。
『そんなことは分かってる!』
『お前の記憶も考えも全て我は見た!』
『僕は影野実に幸せになって欲しいだけだ!!』
「…」
『お前は強い。精神も身体も。だから孤独を奥深くに閉じ込める。』
『僕はそれに触れた。だから分かる。君には理解者が必要だ。じゃなきゃ、君が、君が、...可哀想だ』
アルファは彼の話を聞く。彼の声に嘘偽りはない。シドはどんな孤独を抱えているのだろうか。私はどこまでいっても彼を理解できない。しかし彼は見てしまった。だからシド以上にシドのことを理解してしまったのかもしれない。
「夢の中で沢山の人に出会った。」
シドが独りごつ。
『何を言っている』
『またアルファの話かい?』
「アルファだけじゃない。僕が戦っていた相手が皆夢の中で現れたんだ。すごく変な気分だったよ。皆の気持ちが入ってくるんだ。でもその中に初めて見る子がいたんだ。その子はすごく弱くてちっぽけで、すぐに死ぬんだろうなって思ってた。」
その言葉を聞いたソレは遂に剣を止めた。
『待て。そんなはずはない…』
『覚えてるわけがない!』
目に見えるようにソレは狼狽える。
「その子は僕を倒そうと画策するんだ。でも彼女にとって僕は魔王で、近づこうとすると彼女の肌が焼けていく。」
『やめろ』
「それでこのまま死ぬのも可哀想だったから少し喋っていたんだ。最初は嫌そうな顔をしてた。でも次第に僕の話に興味を持つんだ。つい僕も色んな事を話してしまってね。彼女は笑ったり驚いたり最後には”お前はアホか!?”ってよく言っていた気がするな。」
『やめてくれ』
「会話の内容はあんまり思い出せない。でも全ての話を聞き終えた彼女はすごく悲しそうな顔で近づくんだ。でも彼女は僕に近づけない。近づくと死んでしまうから。だから僕は…」
『やめて!!』
魔力の激流が再度流れ、それはシドに襲いかかる。
その剣をシドは受け止めない。しかし剣はシドに到着すると一人でに崩れ去ってしまった。
「君だったんだね。」
シドがソレを抱き止める
『もう沢山よ』
『分かってるの。与えられたモノに貴方が満足しないぐらい。』
『でも貴方の幸せを願わずにはいられなかった。』
「ありがとう。でも僕は自分でできるよ」
『私の身体は機械と変わらない。自我を使いすぎたせいで、すぐに私は殺されてアイツがまた現れる。ホントはこんなはずじゃなかった。貴方のせいよ。だから...貴方がわたしを殺して』
「それは無理だ」
『どうして!奴は貴方を学習した。貴方でも殺されかねない!!』
「君は僕と融合して、後で僕が自我を目覚めさせるようにしてたんだろ?なら僕も同じことをするだけだ。」
『それって…』
「君は死なせない」
ソレの肉体から何かが引っ張り出される。ソレが自らの自我を食い尽くす前に。
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「シド!!」
クレアがようやくシドに追いつく
「ポチ…」
「シド君!!」
そこにはアレクシアを抱えたローズや他のガーデンたちも大勢いた。
「シャドウが二人...!?」
「どうなっている…」
アレクシアやベアトリクスが目を覚まし、状況が飲み込めないでいる。
「皆に身バレしてしまったね。でも陰の実力者としては最高のタイミングだ。」
シドの目の前に立つソレはシャドウの形をしていても本能でしか動かないディアボロスそのものであった。以前と違うのは身長が2メートル半を超え、まるで筋肉を解放したシドのように筋肉が膨張していること、そしてその強さ。シドの能力を手に入れることで自身に圧倒的な進化を与えた。
『…』
日が落ちる。徐々に暗くなる陰の世界を満月の光が照らしてくれる。シドはいい時間だと思った。
「本能だけの存在となったモノよ。我の力を手に入れ何を望む。」
ディアボロスが笑顔で顔を歪ませる。彼の本能にあるのは破壊だけ。
「そうか、ならばこい。貴様の望みは我を倒せば成就されるだろう。」
『!』
互いに魔力の激流を発生させる。
「クッ、なんだこの爆風は!」
「立ちあがることも許されないのか...!」
互いの魔力が天へと昇る。しかし爆発は起こらない。互いに互いの魔力の流れを崩している。先に集中力を切らした側が負ける。
次の動きも同時であった。
剣が精製される。シドはアルファに触れた時に少しだけスライムを手に入れていた。しかしそれも少量。互いの力が拮抗すれば負けるのはシドの方。そうディアボロスは考えた。
だが現実は違う。
二つの剣が交わる。力が拮抗することはなくディアボロスが作り出した剣が寸断される。
『!?』
「何がおかしい?」
シドの次の攻撃をディアボロスは防御壁を作り出し、受け止めようとする。しかし壁ごと剣を持っていた腕が切り飛ばされる。
「お前は我を学習しているのだろう。ならばその学習速度より速く強くなればいい。単純な話だ。」
再び作り出された剣をバラバラにしたシドはディアボロスを弾き飛ばす。
『AAAAAaaaaaa!!!!!』
ディアボロスの叫びが木霊し、その口からレーザーが飛ばされる。それは星にすら影響を与えかねない彼の技だ。それを体を捻ることで避け、そのまま顎を蹴り飛ばしレーザーの方向を上空へ変える。下手をすれば周りにいる彼女たちに当てかねない。
しかしディアボロスは気付く、彼が今周りの人間を庇って戦っていることを。即座に踵を返し、一番近くにいたガーデンの人間に迫る。
「「!?」」
「逃げろ78番、55番!!」
人質にして場を膠着させる必要はない。殺して奴の気を引く。少しでも集中力を崩すために。
ディアボロスの手から鉤爪が作り出される。それはデルタの攻撃に近しかった。
「ゲスなことをする」
シドは二人を抱き寄せ、剣を逆手に持ちディアボロスの鉤爪を防ぐ。
「シャドウ様…」
「我々のことなど…!」
「迷惑をかけた。」
「「!?」」
「お前たちにも随分世話になった。死なせはしない。」
ディアボロスは状況が不利だと判断し、ベータのように正確にナイフを投げる。その刃はアレクシアへと向かっていた。
シドはディアボロスをすぐに押し返し自分の得物を投げ、アレクシアにそのナイフがぶつかる前に爆破させる。爆炎がアレクシアに迫る前に彼は移動しアレクシアを抱きかかえ避ける。
「あなた!」
アレクシアにも言いたいことがいっぱいあった。しかし、いざ対面すると何も言えなくなる。
「舌噛むよ」
すぐに近づいてきたディアボロスが剣を振り下ろす。それを片手で受け止め、衝撃が地面に走る。
「ホントにポチなのね」
「そうだよ」
「バカ」
「せっかく助けたのにバカは酷いな」
「ホントにバカよあなたは...」
「...そうだね。君にも救われた。君が僕に剣を向けなかったら、僕はここに立てていなかったかもしれない。」
ディアボロスが剣を再度振り上げる
「主!」
「マスター!」
彼女らのスライムが投げられ、それがシドの体に溶け込まれていく。
「だからアレクシア」
ディアボロスの剣が分解され、無数の剣となり宙に浮かぶ。ゼータやイータが得意とする技だ。
「ありがとう」
「...うん」
アレクシアの身体をスライムが包む。気にするものがなくなったシドは剣を作り出し、音を置き去りにした。
空中に浮かぶ剣を全て叩き落とし、即座にディアボロスとの間合いを詰める。再びシドとディアボロスの剣が交じった。シドの成長速度に追いつこうとディアボロスは彼を学習しながら、最適な技を繰り出していく。ディアボロスが最適な技として選んだほとんどの技はシド本人とアルファの剣技だ。彼女の剣技ならばシドに追いつくことができる。
「速くなったな。場所を変える。」
シドは体を低く屈めディアボロスの足元に入り込む。そのまま上方向へと蹴り上げ、ディアボロスを空へと飛ばす。
もちろん爆風が生まれるが、それをシドは放置した。周りにいた七陰を信じていたからだ。七陰は周りの一般戦闘員や、アイリス達でさえ巻き込まないように全員をスライムで包み込んでいく。
「行ってください!」
「どんなことがあっても地上は私たちが守り抜きます!!」
「任せる。」
シドはそのまま上空へと飛翔していく。
だが雲の上から何かが飛ばされる。
「矢か」
シドに一直線に向かってきたその矢の軌道を剣で逸らしていく。最後に来た矢は逸らすのでなくそのまま打ち砕く。
雲を超えた時、それは待ち伏せていたように姿を現す。イプシロンのように周りの魔力と同化していた。
「気配を消していたようだが丸見えだ」
結局奇襲は意味を成さず。そのまま正面からの斬り合いとなる。
『アイアム』
「アイアム」
『「アトミックソード」!!』
互いの魔力によってできた剣は全てを薙ぎ切っていく。しかしそれは一発限りの攻撃ではない。ぶつかり合う全ての攻撃がシャドウの最強の技だった。
『GaaaaaaaaAAAAAAA!!』
互いに本命の技は邪魔しあっているので威力は低いが、それでも当たれば確実に両断される。
「獣よ、空は我の支配下にある」
ディアボロスの肉体の動きが急に止まる。彼の最高硬度の糸で肉体を束縛された。逃げられはしない。
シドから再度アトミックソードによる斬撃が飛ぶ。
『I AM THE ALL RANGE』
「ほう」
『ATOMIC』
あの糸から逃げ、なお斬撃を防ぐための最適解をディアボロスは出す。
そして…
「これで最後にしてやろう」
結局ディアボロス女体化を諦めきれませんでした