裏ボスになりたくて!   作:ぐえ

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彼に恋した女の子の話


私と貴方

あの化け物に食い尽くされないようにディアボロスによって作られた新しい自我、それが私だ。

 

しかしディアボロス程度ではあの化け物を倒すほどの自我は作り出せなかった。いずれ食われる。それまでこの人間の記憶でも覗いていよう。

 

私は精神の中心核に近づかないように彼の記憶を覗く。

 

こいつ、私と同じで魔界から来た人間か。道理で理を超えているわけだ。

 

いや、違う。この人間はあまりに貧弱だ。確かにこの魔界ならば最強に近いのだろう。だが魔力すらない世界ではあまりにも今とはかけ離れて貧弱だ。

 

そもそも何故鍛える。鍛える必要がどこにある?

 

分からない。もっと奥深くまで潜ろう。こいつの根幹にあるのはなんだ。

 

「どこだここ?」

 

!?

 

こいつ精神世界に入ってきたのか!?

私の存在がバレたら消し炭にされる!

 

「あ、そこにいる子。ここがどこだか知ってる?」

 

あえ?こいつまさか私が誰だか気付いていないのか?あそこまでの激闘を繰り広げたんだぞ?覚える価値もないと言いたいのかこいつは!!

 

「知らない」

 

「そっか」

 

なんなんだこいつ!私と戦っていた時と雰囲気が違いすぎるだろ。あの時はもっとこう、なんというか覇気?みたいなのがあったのに!

 

「ねえ君死にそうだけど大丈夫?」

 

誰のせいで死にかけていると思っているんだ。こいつは

 

「ち、近づくな!!」

 

私の身体が少し焼けただれる。やはりこいつの精神は異常だ。この私が近づかれただけで死にそうになるなんて。

 

「これは近づけないな」

 

こいつもようやく自分と私の関係に気付いてきたらしい。

 

「別に大丈夫。私から離れて。」

 

「そっか、じゃあ…」

 

奴が消えた。おそらく本体の肉体が目覚めたのだろう。差し詰め奴にとって私は夢。すぐ私の存在も忘れる。

 

私も生き残る方法を探そう。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

また来やがった。

 

「こんぐらいの距離だったら大丈夫かな」

 

「う、うん」

 

変に拒絶して機嫌を悪くされるのもあまり良くない。この空間は奴そのものだ。私まで影響される。

 

「ところで君って誰なの?」

 

「分からない」

 

嘘だ。流石にここでバレたら殺される。

 

「ずっとここにいたの?」

 

「うん」

 

変に動いても消滅するだけだからな。

 

「もしかして修行してた?」

 

「は?」

 

「そんな狭いところで体を動かさずに耐えてる訳だから何かの修行かなって」

 

こいつバカなのか?それともそんな修行までしてたのか。あとでもう少し記憶を見てみよう。

 

「ここから出られないだけだ」

 

「そっか、じゃあ暇でしょ」

 

暇か、まだ作られてからそんな長くない私にはその概念がよく分からない。

 

「…」

 

「あ、じゃあ次来る時は何か面白い話でも持ってくるよ。」

 

「そう」

 

ふん。私はお前の記憶を覗けるのだぞ。意味のないことだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

それからこいつは何度も来た。意外にこいつの話を聞くのはいいかもしれない。この空間は奴の精神。ならば嘘のつきようはない。こいつの考え方やあり方まで分かる。

 

こいつのつまらない話を聞くのは癪だが、こいつをとりこむためならば有用だろう。

 

「それで僕こう思ったんだ。こいつはデルタよりバカだってね!」

 

「うっそだぁ!デルタよりバカは言い過ぎだって」

 

「いやいや、それでね。多分これはまだ君も記憶を見ていないと思うんだけど、、、」

 

「あ」

 

ふん。ようやく行ったか。これで少しは一人になれる。あいつが言いかけていた記憶でも見るか

 

……

…………

 

いや、それは今度でもいいか。この前のあいつの話のあたりの記憶をもう一度見よう。新たな発見があるかもしれん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…暇だな

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

こいつバカだ。陰の実力者ってなんだよ。意味わかんねーよ。

 

「プッ厨二病かよ」

 

「厨二病じゃあない!!」

 

ずっとこいつはこんなこと考えていたのか。私を殺しかけた時も、主人公っぽい奴の前でカッコいい振る舞いがしたかっただけとか一周回って笑いが出てくる。

 

「ほんとにお前はどうしようもない奴だな」

 

「誰にもいうはずじゃなかったんだけどね」

 

「この空間では嘘をつくことができないからな」

 

私はできるがな!

 

今日の話もおも、、、いや情報収集のためにこいつと会話してやってるだけだ。こいつの話なんてなんの面白みもない

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お、できた」

 

「何が?」

 

「ショートケーキ。ここが僕の記憶と繋がってるならこんなこともできるんじゃないかなって」

 

これはスイーツか。ミツゴシとかいう店にいるこいつの仲間が作ってるらしい。

 

こんなものを作り出したところで私にその味がわかるわけないだろう。そもそも味覚がないし。

 

「でも…」

 

「まあ無理強いはしないよ。」

 

そう言ってパクッとこいつは食いやがった。どうせ私が食っても味なんてしないのに

 

「一口ちょうだい」

 

「はい。これ」

 

どうせ口の中に入っても消えるだけ。そう、なんの意味もない行い。

 

 

アム!

 

 

「なんだこれ!!!!!!」

 

「うわ、びっくりした」

 

初めての感覚だ!今まで記憶の中でこいつが食べていたのはこんな感覚を得るためだったのか!!手と口が止まらない!!

 

「何これ!これが”味”なの!?」

 

「はは、美味しい?」

 

「分からない。でもこれが美味しいって感覚なのか!!?」

 

「まあアルファが作ったんだし不味いわけがないんだけどね」

 

エルフってすごい!!

 

「き、今日はどんな話をするんだ。」

 

「そうだなーじゃあこんな話でも…」

 

……

…………

………………

 

「お前あんなことしながらそんなこと考えていたのか」

 

「そりゃあ覇王誕生の瞬間だよ?僕の人生設計のためにも布石は大事だからね」

 

「多分ローズはお前のこと…」

 

「僕のこと?」

 

「いや、なんでもない」

 

「ふーん。そろそろ時間かな」

 

「そうだな」

 

「またね」

 

消えた消えた。ほんとにめんどくさい奴だ。そろそろ私もあいつを操る方法見つけないとな〜

 

あ、ショートケーキ食おう!あの感覚はたまらん!

 

「ふんふんふーん」

 

よしあいつの記憶から取り出せたぞ。

 

あむ!!

 

 

 

あれ?味がしない。どうして?

あんなに美味しかったのに。

 

そうか!あいつは味の記憶を持ってたからあーやって美味しくできたのだな!

 

味の記憶を探せばもう一回食べられるはずだ

 

 

うーん見つからない。どこか一つにまとまっているな。もっと奥の方まで行ってみよう。

 

 

あった!!

よし早速味見といこ…う?

 

 

ここら辺の記憶はあまり見ていなかった。まだ奥の方に何かがある。

 

 

なんだこれ。わざわざ奥にしまい込んでいるのか。

 

 

こいつの根幹に関わる何かなのかもしれない。

 

 

せっかくだ。開いてみよう。

 

「ウグっ」

 

なんだこれ寂しい、のか?私が?いや、あいつか。あいつの感情が私に影響を与えているみたいだ。

 

でも、もう少しだけ見てみよう。

 

……

…………

………………

 

私はあいつをくだらない考えを持ってる人間だと思った。でもあいつにとってそれは大事なことで、曲げられないことだ。

 

でも自分を理解する人間は誰もいない。

 

 

あいつはそれでもいいと思ってる。

 

 

私は共感はできないけどあいつの、彼の理解者になった。だから彼が自分の感情を押し込めてることに気づいた。

 

そういう感情は普通の人ならどうやっても漏れ出てしまうのだろう。でも彼は強かった。だからできた。

 

私は…

 

『取り込め』

 

「ッ」

 

私の本能が訴えかけてくる。

 

 

ショートケーキを食べて落ち着こう。

アムッ!

美味しい!!

 

 

 

 

 

 

でもさっきの方が美味しかったな。

 

この違いはなんだ?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

あれから彼とは何度も会った。

 

「今日は何食べる。またショートケーキか。好きだねぇ」

 

「世の女性はそれはそれはケーキを恐れているんだよ?」

 

「そりゃあ太りやすいからね。食べ過ぎたら危ないんだよ」

 

「何故太るのがダメなのか?うーん例えば好きな人がいたらその人に綺麗な姿で見られたいとかなんじゃないのかな」

 

「君は太らないだろ」

 

「え、そうじゃなくてってどういうこと?」

 

「僕の好きな人?いたことないから分からないな。でも結婚するなら地味な子かな」

 

 

彼に本当に寂しいという感情があるのだろうか。いや、彼も気づけていないのかもしれない。私には見ることができるから、彼より彼のことが分かる。

 

 

ねえ実くん。私ね、貴方のことが…

 

 

また彼が外の世界に戻ってしまった。

 

そもそも伝えてどうする。私はただの精神だ。いつか彼と一緒には居られなくなる。

 

それに今私の本能は私を邪魔に思い始めている。このまま食い殺されるか、ジワジワと消滅して実くんに忘れ去られるのか。

 

 

 

なら彼に彼の望む世界を与えたい。

 

 

きっと彼は私のことなんて覚えてくれないだろう。でも私は彼に幸せになってほしい。

 

あぁ、そうか私はこのために…

 

『取り込め』

 

お前の言う通りにしてやる。でも結末は彼のモノ。それだけは変えない。

 

彼の精神空間に揺らぎが起こる。今なら中心核に影響を与えることができる。そこから侵食して彼の身体を一時的に乗っ取る。

 

彼の力で世界を一新したあと、もう一度彼に身体を返せばいい。その時には私も私の本能も消え去るだろう。

 

でもそれでいい

 

 

 

私は貴方を好きになったから

 

 

「またひとりぼっちになったんだね影野実くん」

 

 

私だけは貴方を見守るから、だから貴方は一人じゃない

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「これで最後にしてやろう」

 

シドの押さえつけられた魔力がついに解放された。

 

魔力の崩しが意味を成さなくなった。

 

シドは悠然と構える。ディアボロスも自分に対する魔力崩しが無くなったことに気づく

 

『GYAAAAAAAaaaaaAAAAA!!!』

 

怒りの咆哮が世界を包む。わざわざ自分の魔力の流れなど崩す必要がないとそう言いたいのだろう。ならば見せてやろう。

 

お前の持ち合わせない圧倒的な魔力量の暴力を

 

二人の魔力が広がっていく。

 

『「アイ」』

 

『「アム」』

 

 

そして

 

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