裏ボスになりたくて! 作:ぐえ
夜の闇を消し去る光が星に降り注ぐ
空から何かが落ちてくる。
「アレは…」
落ちてきたのはなんだろうか、だが魔神ではない
「ボスゥウウウウ!!」
デルタが誰よりも速くその場へと追いつく。そして大きく飛躍し、ソレをキャッチする。
他の陰は全力でスライムを展開し着地点にクッションを作る。
衝撃音が響き、スライムがデルタ達包みこんだ
「これは…」
「魔力が何か違う。」
「まさか...!?」
「いやでも匂いは本物と変わらないよ」
「アレじゃない...と思う」
スライムが解かれデルタの無事が確認される
「ぼす、ぼす、ボスゥウ!!!...えっ!?」
「どうしたのデルタ!?」
全員がその何かを確認するために集まる
「こ、これは...」
「シャドウ様が...」
確かにソレはシャドウに似ていた。
性別を除いて
「...実くん」
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あの日からシド・カゲノーは消えた。シャドウという存在も。そして自身諸共魔神ディアボロスを消滅させたという話だけがあの場にいた者たちから広まったという。
「よし!これはいいぞ!」
遠い辺境にて一人の少年が喜びの声を上げる
「あの戦いは酷かったからねえ。僕の話は既に世界中に広まりつつある。伝説になること間違いない!そして百年後、僕はまた世界に現れ、主人公たちを陰から導く…うん!これこそ僕の描いた陰の実力者像だ!」
シドは喜ぶ。なぜかシドの名前はどこにも広がっていなかったので偽名を使わず一人旅を続けていた。そしてこの旅は修行でもあった。彼は少女を自分の肉体から切り離した時、自分の生命力もかなり切り離してしまい、弱体化していた。それも、次元来のディアボロスと戦ったら引き分けるくらいには。
「…にしてもアルファ達にはどう説明すればいいんだろ。うーんアルファに怒られるのは怖いし、百年後に顔を出したらその時にはもう許してくれるかな。」
シドはそう言って、以前見ていた夢のことを思い出す。まさかアルファ達が僕に対してあんなにも、あんなにも…
憧れていたなんて!
僕が陰の実力者に憧れたように彼女達は陰の実力者である僕に憧れていたんだ!
ずっと気づいてやれなかったのは申し訳ない。でも僕からも最大のファンサはしたつもりだ。
こいつは結局愛情を何も理解していなかった。
「”憧れは理解から最も遠い感情だよ”とか言ってみたかったんだよねー。」
それは絶対にやめた方がいい
そんなこんなでシドは色々な国へ旅を続けた。陰の実力者ムーブをかましながら。
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あの事件から約一年ほど
アルファは物言わぬ人形と化していた。戦いが終わったときに残されたのはシャドウが救った一人の少女だけ。どれだけ探しても彼は見つからなかった。彼の言葉が頭の中で反芻し、どうしても動くことができない。
何度目の涙だろうか。
もう枯れたと思ったが、意外に人間の涙は枯れないらしい。
ドアがノックされる。
またこの女が来た。隣にはベータがいる。今すぐ殺してしまいたい。けどそれは彼の意志に反する。
「彼はよくアルファさんのご飯が一番美味しいって言ってたんです。」
またその話。記憶で覗いていたらしい。
「あなたが作った物に美味しくない物はないって」
私の知らない彼をこの女は知っている。腹立たしい。
「彼は貴方のことを一番の友人だと言っていました。彼にとって貴方やガーデンは大事な物でした。」
うるさい。黙って。
「私は貴方の想い人を奪ってしまった。殺されることには文句がありません。だから、どうか彼が大切だと思った人達のために起き上がってくれませんか」
今教団の残党が勢力を盛り返しつつあり、首魁は消え、リーダー的存在の彼女がこんな状態のガーデンにまとまりは消えつつあった。今はナンバーズが頑張っているが、最大戦力の七陰のメンタル状況は最悪であり、アルファ程でなくても皆苦しんでいる。
「…」
沈黙が流れる
「…では、もう戻ります。」
彼女が戻ろうとしたとき、アルファの手が動いた。
「ガッ!?」
ベットの布団やカーテンが吹き荒れる。アルファはその女にまたがり首を絞めあげる。
感情のない顔だった。
「(ようやく殺してくれるのか。でも、これで彼女が立ち直れるなら私は喜んで命を捧げる)」
上の空だったベータが異常に一瞬遅れて気付く
「アルファ様おやめください!!彼女は最後にシャドウ様が残された物です!!」
ベータがどれだけ引き離そうとしてもアルファの肉体はびくともしない。
アルファの身体はもう本人の意思でさえ言うことを聞かなくなっていた。
ダンっ!!
ドアがまた開かれる
「アルファ様!って何ですかこの状態は?!」
ガンマが姿を現し、ベータと二人がかりでアルファを少女から引き離す。
「聞いてください!今、ナンバーズの半数を使ってある情報を掴みました!!」
アルファは常に上の空なのでガンマは大きな声で話す。
「黒髪黒目のシドという青年が発見されたんです!!まだはっきりしてませんがシャドウ様と瓜二つとニューから伝えられました!!」
その言葉にはベータも反応してしまう
「それは本当なの!?」
「私は実際に見てないけど、特徴からして間違いないわ!」
少女はその話に驚愕しつつもアルファの方へ目線を向けた。
その時のアルファの表情は……
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シドは修行のため夜深くに森の中を走っていた。
「(ん?何か近づいてきたな。…速い!?)」
急速に接近した何かにシドの左腕が切り飛ばされる。血飛沫の隙間から見えたその顔は
「アルファか!!」
シドがスライムを展開するが、身体が弱りきっている彼のスピードでは彼女に対応することはできない。
「チッ(右腕もやられた。再生も阻害されている。これじゃあ勝ち目がない。)」
シドが押し倒されアルファが馬乗りとなる。
「…」
「やあアルファ。なかなか激しい挨拶だね。」
「…」
「そろそろ腕を治したいんだけど?」
「…いやよ」
「それは困るな」
雲が晴れ、二人の存在を月明かりが照らす
「どいてよ」
「イヤ」
「(ヤバイ本気で怒ってるパターンだこれ。)」
シドは次の返答に悩むが、先に声を発したのはアルファだった。
「…なんで居なくなった」
「僕の存在が公になったからね」
「私には会えたでしょ」
「怒られるのが怖くてさ」
アルファの肩が震える。
「私のこと嫌い?」
「嫌いじゃないよ。」
「じゃあなんでッ!!!」
シドが首を傾け、アルファの拳を避ける。
「愛してくれているんじゃないの…」
「…」
「あれは私の聞き間違え?もう私には夢と現実の見分けがつかない!今こうやって貴方に会えたのも、もし夢だったらと思うと気が狂いそうなの!!」
「…」
「…私のそばにいてよ」
……
…………
「悪魔憑きが解かれたすぐあとの怖がりの君に戻ったみたいだ…」
「…」
「いいよ。君が満足するまで一緒にいる」
「…ホントに?」
「うん」
「じゃあもう…足はいらないわね」
瞬間シドの足がアルファのスライムに切り落とされる。
「クッ!」
「今言うことを誓って」
「何?誓い?」
「そう、ただ誓ってくれたらいい」
「(何を誓わされるんだ?ここまで怒ったアルファは初めてだ)」
「健やかなるときも…」
「えっ?」
「病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、…これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、…そして命尽きた後も共にあることを誓いましょう。」
「それは結婚の言葉かい?」
「前も言ったでしょ。貴方に拒否権はない。」
「(あの時煮るなり焼くなり好きにしろとは言ったけど…こうなるとは)」
「貴方の目指すものを私は理解できないのかもしれない。でも理解なんて必要なかった。貴方が諦めればいい。私だけを見てたらいいの…」
シドは拒否の言葉を発そうとするが口を塞がれる。アルファの口付けによって。
シドの口の中に異物が入ってくる。
「(し、舌?!)」
あの時よりも長い口付けだった。
「ンアッ」
「あ、あるふぁ…?」
「やっぱり初めてなのね。良かった…。続きは貴方が死ぬ千年後にって思ってた。でも、もういいでしょ?」
僕は…陰に実力者に……
俺はシド君受けだと思い続けてる