キヴォトス最弱による復讐劇 作:せりなべ
砂の舞う街、アビドス。友人が何よりも大事にしてきた場所。
そこで私は、遭難した。
いや、なんでやねん。
アドビスには何度も来たことあるから大丈夫だと思っていたのは数時間前。今考えてみればアドビスに行く時は毎回ホシノが迎えに来てくれていたし、私はそれについて行っていただけだから道を知らないのも当然だ。それを思い出す前に立てた計画では、夜明け前には着いているはずだったのに、もう太陽はすっかり顔を出し切っていた。ヤバい。あんなこと言って家を出たのになんかかっこ悪すぎる。えーっと、確かここを曲がって、そして右だっけ? 左だっけ? うーん。右な気がする。
そのまま記憶を辿って歩き続けていると、突然銃声が聞こえてきた。それは不良生徒の小競り合いにしては大きすぎるもので、つい吸い寄せられるように音の鳴っている方へ向かえば、逃げ惑うアドビス市民と銃を構え、見覚えのある制服を身に纏う人々。
あの服は、あれは忘れるはずもない。
「カイザー、PMC」
脊椎反射のようなスピードで愛銃のアサルトライフルを構え、その頭を撃ち抜く。撃たれる前に撃つ。数秒で見渡す限りの兵士を一掃して、走り出す。移動すればまた兵士が湧き出てきて、それも走りながら撃って殲滅。撃って壊して押し通る。
こいつらの狙いは間違いなくアドビス高等学校。ホシノのいなくなった今を狙って一気に潰す気なのは考えなくてもわかる。でも、それをわかっていながらホシノがいなくなるはずもない。ならばきっと
「また大人に騙されちゃったんだね」
ホント私たちって似た者同士だと思わない? いつも大事な時に間違える。笑えちゃうよね。でも、今回は私が引っ張り上げてあげるよ。それに多分後輩ちゃんたちも放っておかないと思うね。あんまり知らないけど、そんな私でも愛されてるのはわかったくらいには大事に思われてると思うよ。
走って走って撃って見えてきたのはここら辺で一番大きな建物。その校門前にはアドビスの子たちと見たことない子が4人。白い服を着た大人が1人。そして、取り巻きを連れたアイツ。
「久しいね。カイザーPMC理事?」
「お前は……!
「覚えていたようで何より。で、ここになんのようかな?」
「チッ。覚えてろよ!」
今の兵力では敵わないと悟ったのかそう言って逃げ出す理事と兵士。それを目で最後まで送ってから、後ろに振り向く。
「いきなり飛び出てごめんね。自己紹介しようか。私はトリニティ3年の一ノ瀬ミオ。よろしくね」
「あ、はい。よろしくお願いします?」
「ええっと、ノノミちゃんとシロコちゃんはわかるんだけど、他のみんなの名前も教えてくれないかな?」
「1年の奥空アヤネです」
「同じく1年の黒見セリカ」
「よろしくね〜」
真面目そうなメガネの子と黒髪を2つにまとめた子。うーん。これはツンデレだね。私にはわかる。
「で、アドビスじゃなさそうなそちらの皆さんは?」
「私たちは便利屋68よ」
自信ありげに宣言したのは赤みがかった長髪の子。便利屋? どこかで聞いたことがあるようなないような……。
「ああ! ブラックマーケットとかで聞いたことあった! で、そんなみんながなんでここに?」
「ラーメンを食べに、じゃなくて喝を入れに来たのよ! それももう大丈夫みたいだけど」
「はい! ありがとうございました!」
「いいのよ。私たちは真のアウトローなんだから」
「アルちゃん、アウトローは関係ないと思うよ」
じゃあ、帰るわねと踵を返した便利屋68はそのまま見えなくなった。アウトローとは? よくわからないけど、いい人たちであることはなんとなく察せた。なんでアウトローなんてやってるんだろう。まあ、もういなくなっちゃったしそれは今度会った時に聞けばいいか。
「それでそちらの大人の方は?」
「私かい? 私はシャーレの先生だよ。よろしくね」
「ああ! 噂の先生ですか! 会えて嬉しいです〜」
小首をかしげながらも握手を返してくれる先生を
「それでミオさんはどうしてアドビスに?」
「ああ、昨日ホシノから変なメッセージが届いたから来てみたんだけど、やっぱりいない感じかな?」
「はい、カイザーに連れていかれてしまったみたいで」
「で、助けに行くんでしょ? なら私も連れてって。ホシノに言ってやりたいことがあるからさ」
そう言うとやや申し訳なさそうな顔をしてからアヤネちゃんが再び続ける。え? ここまで来ていらないですとか言われたら3日は寝込むんだけど。
「戦力が増えるのでこちらとしてもありがたいのですが……」
「大丈夫大丈夫! そんなこと気にしないでいいよ。私これでも強い方だからさ!」
体は弱いけどとは言わない。だって心配されそうだし、そんなネガティブな要素はわざわざ口にする必要はない。
一旦学校に戻って準備をしようということになって、皆振り返って学校に向かう。でも、1人だけ私と同じく立ち止まっている子がいる。
「ミオさん」
「大丈夫だよノノミちゃん。私は大丈夫だから、ホシノを助けに行こ?」
「……はい。そうですね」
準備をし、いざ戦いが始まればカイザー兵士に押されることもあったけど、先生が取り付けてくれた加勢もあって何とかホシノがいるはずの建物に近づいていた。
しかし、その加勢も底を尽きたところでやつが現れた。周りを大量の兵士で囲ませ、その中心にいるのはつい先日会った大人。
「皆、ここは任せて」
「この数ですよ!? いくらミオさんが強くても無茶です!」
「私には必殺技があるから大丈夫。それよりホシノを助けてあげて」
少し悩むような沈黙の後、アヤネちゃんは続けた。
「そうおっしゃるのでしたら、任せます。皆さん先へ進みましょう」
こちらを見つめるノノミちゃんとシロコちゃんには頷きで返しておいた。どの道誰かがここで止めないといけないのだから、これが妥当な判断だということは2人ともわかっているようで何も言わずに離れて行った。うん。それでいい。こんな戦いは私に任せておけばいいんだ。
「いやー、ホシノの後輩ちゃんたちもわかってるよね〜。私をここに置いていくなんてさ」
「そう思わない? カイザーPMC理事?」
「たとえお前でもこの数からは逃げられない。早く諦めるて逃げることだな」
「逃げる? 何言ってんの? こんなに良い機会滅多にないよ。カイザーを潰せるなんてさ」
「やはりアレを使うか。まあいい。それも見越して私はこの数の兵を集めたのだから」
私たちの周りを取り囲むのは大量の兵士たち。数える気も失せるほどの量だが、ただそれだけだ。この世界の戦闘で優先されるのは量ではなく質。こいつらには質が足りていない。
「私を止めたければそれこそ傭兵になったらしいホシノを連れてこないと無理だよ」
「傭兵? ああそうかそう伝わっているのか」
そういうと何が面白いのか笑い出す理事。
背中を嫌な予感が走る。つい最近もこの感覚を味わった。そしてその時は
「あの神秘を持つ者に傭兵なんてもったいない。副生徒会長は他のことに使う」
「どういうことだ」
「彼女はお前を引き継ぐ者。あれほどの神秘があればあの計画も完遂される」
「お前! まさか!」
「彼女は
目の前が真っ赤に染まった。目の前の大人しか目に入らない。
「お前ぇぇえええ!!」
「嬉しいかい? お友達もお前の仲間入りだ」
「殺してやる……! 絶対に殺してやる!」
「いきがるなよ
金属が欠けるようなそれ単体で聞けば心地の良い音。
また1つヘイローにヒビが入った。
「奈落の底で懺悔しろ」
足音が聞こえた。まだ立っているやつがいるのか。はは。そんなことはどうでもいい。奴らを潰せるならなんだっていい。奴らが持つ全てを破壊するのみ。懺悔しろ。過去の行いを償え。私はそのためだけに。
愛銃を構え、頭に狙いを定め、引き金を引くその瞬間、姿が消えた。一瞬のうちに視界から抜け落ちた。これまでの相手とは一線を画す速さ。必死になって照準を合わせるが、捉え切ることができない。飛ぶように動くその姿は見覚えがあった。それが誰なのかは思い出せないが、この目に焼き付いていた。近づいてくるその影を追うが、銃弾がその身に当たることはなかった。
なぜだ。なぜ当たらない。なぜここまで速い。なぜ私は当てることができない。
自分自身への問いかけに答える者はいない。気がつけば目の前まで迫っていて、この命は握られているも同然。それでも私は死ねない。死んではいけない。死ねない理由が私にはある。
「ミオ、帰ったら謝らせて」
頭に衝撃。視界は黒に包まれて意識が失われていく。嫌だ。私はまだ、やることがある。やらなきゃいけないとことがある。だから、死ねない。最後に一撃入れようと力が抜けた腕を持ち上げて、目の前の人間の額に当てた。そこで初の顔合わせが行われる。その色の違う双眸は悲しげに申し訳なさげにこちらを射抜いていて、その瞳の持ち主に該当する人が私の記憶に1人だけいた。消えかけていた意識が一瞬だけ鮮明になる。
なんだ。ホシノじゃん。ちゃんと助けてもらえたんだね。
暗転した。
目が覚めると同時に全身が軋むように痛む。頭を抱えながら起き上がり、見渡せば見覚えのある場所だった。
「アビドスの保健室……?」
なぜ私はこんなところに? ああ、なるほど。そうだった。
ホシノからメッセージが来て、そこからアドビスに向かって、後輩ちゃんたちとホシノを奪還しに行って、カイザーPMCと戦って、そして、
「目が覚めた?」
「うん。でも誰かさんのせいで全身痛いかもな〜」
「それは本当にごめん。あと、助けに来てくれてありがとう」
「どーいたしまして。今度なんか奢ってよ。それでチャラだから」
先程まで固かったホシノの顔が緩んだ。そしていつもの調子で続ける。
「うへぇ〜。借金持ちに奢らせるの〜?」
「わざわざここまで来たんだからそのくらいやってくれていいでしょ?」
「じゃあ今度ね」
「楽しみにしてるよ。そこにいる後輩ちゃんたちも一緒にね〜」
ドアを少しだけ開けて様子を伺っていた後輩ちゃんたちは私にバレてることに驚いたのか転んでなだれ込むように重なった。そしてアヤネちゃんが恐る恐る口を開いた。
「いつからバレてたんですか?」
「うーん。最初からかな」
やっぱりバレてたんじゃんか! 私は反対しましたよぉ。まあまあ。ん、こうなることはわかってた。
やいやいと言い合う後輩たちを眺めるホシノは本当に穏やかな顔をしていて、良かったという気持ちが私の胸を支配した。
「大事なら自分の手から零さないようにしないとダメだよ」
「うん。今回のでよくわかった」
「ホシノはもっと周りを頼っていいんだよ。せっかくいい後輩を持ったんだから」
「それをミオに言われる日が来るとはなぁ」
窓の外にはいつもと変わらぬ青空が広がっていた。
勢いで書いたので後から加筆する可能性大
来週はないかもです
私の癖上、曇らせがあるかもしれないのですがタグ付けた方良いですかね?