タクティカル祓魔師の作戦記録   作:ゲルゲルググ

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第八班共闘記録

「ジャック・ザ・リッパー?」

 

 ???禁域:ミワシ隊本部にて。

 

 ガランとしたブリーフィングルームにて、2人の男女が話し合っていた。一人は全身黒尽くめのコートを纏い、フードをして完全に顔を隠した圧倒的不審者。ミワシ隊第七隊長『楓呀刎々斬(ふうが はばきり)』。

 もう一人は、白と紫の和服、本人曰く大正ファッションなるモノに身を包み、桜色の髪に日の旗模様の鉢巻を巻いた、穏やかな女性。ミワシ隊司令部副官『金蓮花苺(かなはす はないちご)』ちゃん。

 

「はい、最近巷で噂になっていた呪詛犯罪者です。あらゆる形、あらゆる身分になりすまし、ここ数ヶ月で10件以上の呪詛殺人事件を起こした、令和のジャック・ザ・リッパー」

「令和のって着くと途端にダサいな…」

「こらっ、真面目に聞きなさい。んんっ…憑坐(よりまし)隊長さん曰く、境界対策課は既に当たりを着けて捜索を開始してるそうです」

「やっぱ早いねぇ、流石は境対。なら向こうに任せときゃ良いと俺チャン思う訳だけど…何か急ぐ理由がある感じ?」

「はい。つい最近起きた呪詛事件では、偶然近くにいた祓魔師が妨害出来たらしく、逃げる時にある事を名乗ったそうです…ミワシ隊を名の」

「あっ小林製薬(殺す)

 

 金蓮ちゃんに渡された数枚の資料をペラペラ弄んでいた手が、一瞬でぐしゃりと握り潰す。彼に限らず、ミワシ隊に忠誠を…烏有(うゆう)先生に忠誠を誓う者にとって、一般呪詛犯罪者がミワシ隊の名を名乗るなど言語道断。今すぐはらわたを引き摺り出して縄跳びをする所業である。先ほどから若干金蓮ちゃんがぷりぷりした雰囲気なのもソレである。

 

「それで、やっこさんの場所は」

九鬼(くき)隊長さんが突き止めてくれました。詳細は資料の5ページに」

「なるほど……よし、行ってくるぜ金蓮チャン。吉報を期待しといてくれ!」

「いってらっしゃ〜い!無事にもどってくるんですよ〜!」

「おうよ!」

 

 ドタドタとブリーフィングルームから出ていく第七隊長。その後、扉の向こうでバナナで滑ってドンガラガラガラガッッッシャンシャーン!!!となっている音が聞こえて、思わず不安になった。

 

「楓呀ちゃん、本当に大丈夫でしょうか……」

 

 そう思うのも無理はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、どうしてこんな所にいるの」

「そりゃこっちのセリフでやがりますよー!」

 

 前回のあらすじ。令和のジャック・ザ・リッパーが潜伏しているであろう座標に来たら、同じく居場所を突き止めた境界対策課の第八班とごっつんこした。

 今回のメンバーは、市倉八尋(いちくら やひろ)柴原大和(しばはら やまと)凍洞雪氷(とうどう ゆきひ)八乙女(やおとめ)かなめ、句柄庵道(くがら あんどう)の5人である。

 

「本当に仕事が早くて今回は邪魔だよ。もうちょい後で来てくれない?」

「は?うざ」

「そりゃこっちのセリフだってんですよ!汐羅雲の時もいたし、穢淫使って廃ビルに立て籠もってたり、アンタなんなんですか!」

「あはっ、そんなに出会っちゃうって事はぁ〜、捕まっても文句ないですよねぇ〜!」

 

 やっひ、凍洞くん、八乙女ちゃんが応え、同時に戦闘態勢をとる。

 

「柴原くんと句柄くんは、ジャック・ザ・リッパーを探してください!コイツはアタシたち3人でふん縛ります!」

「了解です!」

「任されたっス!」

 

 ――二手に分かれるか。憑坐チャン情報じゃあ、句柄ってコは俺チャンに宛てたほうが良い気がするが……あくまで本命はジャック・ザ・リッパーなのね。中々、強欲な選択だ。

 

 取り壊し予定のホテルの中に入っていく2人を止めるでもなく見送り、第七隊長は残りの3人に顔を向け、ポッケの中に忍ばせていた錫杖薙刀を元の大きさへと拡大させる。

 

「そっちがその気なら仕方無し……でももう一人くらい向こうに向かわせてくんない?じゃないとさぁ、4人が戦闘してる一枚絵とか、絵師さんの手が疲れちゃうでしょうが!」

「何訳の分からん事を言ってやがりますか!」

 

 第七隊長が飛び込むと同時に、やっひがMITAKAオールドバレルを向け矢を放つ。ソレを苦もなく薙刀で弾き返そうとするが、その矢についているのは旭光榴弾(スタングレネード)。激しい光と音を放つそれに一瞬視界が塞がれ立ち止まる。その隙を逃すまいと、凍洞くんの冷気が地面をヘビの様に伝い、両足を凍結させた。

 そして、やっひが詠唱と共に植物の矢を凍っていく第七隊長に命中させる。その蔦植物で出来た矢は一瞬にして成長し、氷漬けにされた第七隊長をガッチリと包み込んだ。

 

「や、やりました?…ふ、ふふふ!私が出る幕もなかったですねぇ〜!」

「油断しない方がいいですよ。こんなんでふん縛れるなら、今野放しになってねぇです」

「はぁ?…アレで終わらねぇのかよ」

 

 カィン

 

「イグザクトリィ!その通りでございます!」

「…ウッザ」

 

 声が響くと同時に、氷と植物を突き破りながら錫杖薙刀が突き出て、そのままスライドし氷と植物を微塵切りにする。そして当たり前の様に氷の中から五体満足の第七隊長が現れた。

 

「ぶぇっくしょい!あ〜許さねぇぜ、よくも冬時に氷漬けにしやがったなぁ!」

 

 そう言いながらやっひへ向けた切先が、人を殺せる速さで伸びる。ギリギリ反応が間に合わなかったやっひは成す術も無く頭を串刺し…にされる前に、八乙女ちゃんの飛ばした術符が切先を防ぎ、氷の剣を持った凍洞くんがソレを弾き返した。

 

 ゴワゴワなコートを脱ぎ捨てながら地面を氷漬けし、その上を滑走。一瞬にして肉迫し、二振りの氷刃を振るう。対して第七隊長、錫杖薙刀の柄で次々と振るわれる氷刃を巧みに受け止め、膠着した瞬間にくるりと回して手から弾き飛ばす。

 そして、柄尻を伸ばして鳩尾を突き、一瞬で錫杖を薙刀から刀剣へ変形させ斬りつけた。

 

 だがこれは防がれる。八乙女ちゃんが頑張って投げた術符が、凍洞くんを守り、続いてやっひが放った複数の矢の一本が錫杖刀剣を弾き、二矢三矢が距離を離した。

 

「助かった!」

「私が2人の無様な隙を埋めて差し上げますわ〜!」

「あっそう…へ〜、じゃあそこの黒子ちゃんから潰しちゃおっかな〜つって」

「ぴぇっ?!」

「させねぇですよ!」

 

 呪瘤壇が括りつけられた矢を横に跳んで回避しつつ、八乙女ちゃんめがけて疾走。2人はそこに氷と植物をけしかけるが、錫杖薙刀を地面に突き立て、棒幅跳びの様に地面から離れることで回避しつつ植物を斬り払い、懐から出した零号級界異「木ッ破水蚤」で爆破と華麗に対処。ワタワタと2人の方へ逃げ出していた八乙女ちゃんの目の前にスーパーヒーロー着地をキメる。

 

「ハァイお嬢ージィ、少し眠ってて貰おうか」

「ア゙キャ゜ッ?!ち、ちちち近づかないでくださいましィィィィィィ!!!!!」

「ん?ブッハwなんだそのピコh痛ァッ?!」

 

 何処から出したかも分からぬ、身の丈ほどのピコハンに頭を叩かれる第七隊長。

 

「えいっ!えいっ!えいっ!」

 

 ピコピコピコ

 

「イテッイテッイテッ」

 

 謎にほのぼのしてる絵面だ。一枚絵にちょうど良さそうか?

 

「イテッいや俺チャン的にはイテッイテッ別の所がイテッイテッ―アバーッ?!」

「八乙女さんをイジめんじゃねぇ」

 

 絵面のアホさにギャグノリでピコピコ殴られてた隙をついて、凍洞くんがアホを氷漬けにし、更に植物が巻き付いて一緒に凍り、先ほどの牢獄を形成。

 だが、コレでは第七隊長を閉じ込めれないとわかったばかり。故に……

 

「地に満ちし繁栄の根源よ、刹那に咲く華の香の君よ、燃え盛るが如き烈火の情よ。願わくば、この矢に御名の如き生命の躍動を与えたまえ。我が手に華の香の護りを与えたまえ。不浄に裁定の浄火を与えたまえ。我が行いに瑕疵あらば、浄火に燃え灰となり人に二度と面を向かうべからず。我が意、我が理に沿うならば―――この矢、外させたまうな!」

 

 詠唱と共に淡く光り始めたやっひが、弓に炎の矢をつがえる。舞い散る神の加護、浄火。放たれたあらゆる不浄を焼き尽くす炎は、着弾と同時に氷漬けにされた植物を一瞬で燃やし、中にいる第七隊長もろとも灰燼と化すまで灼き尽くす。

 

「こ、今度こそやりましたぁ〜?」

 

 あっ(小林製薬)

 

 カィン

 

「……え?」

 

 誰かが疑問符を口にする。それと同時に、3人の懐から、胴を横に真っ二つにされた形代が地面へ落ちた。

 

 ――え?あ、嘘、わたくし……っ

 ――クソっ、今の一瞬で…

 ――殺られたですかっ?!

 

 

【挿絵表示】

 

 

 我に返り、前を見る。奴は立っていた。少々コートが焦げたぐらいの第七隊長が、先ほどまで穢れた刀身だった筈の錫杖刀剣を握り立っていた。

 恐らく浄火によって本来の輝きを取り戻した刀身は、異様な長さから縮んでいき、常識的な長さになると同時にまた穢れに塗れていく。

 

「っべー死ぬかと思った。ガハハッ」

「……あんた、一体どんな攻撃しないとくたばらねぇんですか」

 

 カィン

 

「……悪いな、俺チャンもう誰にも殺られないんだ」

 

 端的に言うと、もう3人に勝ち目は無くなった。

 

「さて、どうしようかな。個人的には向こうに言った2人の援護に行く事をオススメするよ。俺チャン優しいから見逃してあげる」

 

 その言葉を聞いて……やっひはムッと睨みつけ、凍洞くんはモコモコした上着を脱ぎ捨て、八乙女ちゃんは涙目になりながらもピコピコハンマーをぎゅっと握り締める。

 

「バカ言うんじゃねぇですよ」

「調子こいてろクソダル野郎」

「ぜぇったいに、とっ捕まえてあげますねぇ!」

 

「………ほーん、やるやん。やっぱり境対課は立派やね、自分が人々の幸せを背負ってんのを理解しとる。じゃあ2人が戻ってくるまで遊んでやるぜオルルァン!!!」

 

 互いが武器を構え第2ラウンドが始まる瞬間……

 

 

 

 

 大きな爆発音が響き、柴原くんと句柄くんが入っていったホテルが音を立てて崩壊した。

 

「たっ、退避ーッ!!!」

「えっあっちょっ、ねぇさっきコレから第2ラウンドだったじゃん!空気読めこnあびゃばァァァァァァァァァ?!!?!」

 

 三人は退避し、第七隊長は瓦礫の雨に押しつぶされる。

 

 暫くコンクリが転がる音が続き、辺りが漸く静かになった後。3人が見たのは、傷だらけの柴原くんと、ぐったりとした句柄くん、上半身が瓦礫の山に突き刺さった第七隊長の無残な姿であった。

 

「柴原くん!句柄くん!」

「ハァッ…ハァッ…市倉先輩、すまねぇッス…」

「無理に喋らないでください。兎も角先ずは治療を」

「はいは〜い、大人しく私に治されてくださいねぇ〜」

 

 八乙女ちゃんが2人へ術付を貼り付け、加護を流す。たちまち外傷はあらかた塞がり、句柄くんの容態も幾らかマシになった。

 

「き、気をつけてください…アイツは、ジャック・ザ・リッパーは…一人じゃない…」

「は?マジですか?!」

「チッ、ダルいな!」

 

 その瞬間、辺りの瓦礫が一斉に動き出し、様々な影が這い出てくる。成人男性、貴族の様な女性、ペストマスクを貼り付けた医者、死体の子供、人狼と呼ばれる風貌の怪物。様々な存在が彼らを取り囲み、そして最後に瓦礫の下から現れた仮面を貼り付けた紳士服の男が、彼らへ向けて拍手を送った。

 

「いやぁ良きかな良きかな!矢張り祓魔師と言うモノは実に良い!その奇想天外な力には魅了されるばかりだ!」

「……またお喋り野郎ですか」

「コレは失礼、私はジャック・ザ・リッパー。他者の細胞を使って《異なる私》を複製するこの術式を以て、いずれ世界を私色に染め上げる男だ」

 

 皆ドン引きした。一見意味不明だが、このタクティカルな祓魔師社会になった今、その行為がどう言う結果を引き起こすか容易に想像できてしまったからだ。

 

「祓魔師の私を、そして見事に釣られた上に、そこで無様な姿を晒しているミワシ隊の私を作り出せれば、全人類私化計画に一歩、いや十歩近づく!」

「んなウザい事させるかよ」

「フッ…では強引にでも、君たちの肉を拝借するとしよう」

 

 周りのジャック・ザ・リッパーが、ジリジリとにじり寄る。一方的に不利な状況だ。包囲され、数も不利。相手の戦闘力は、少なくとも句柄くんが術式の反動でぐったりするくらいの強さだ。

 

 ……強さはそうでもないみたいやね。

 

「かかれェい!!!」

「ッ…来ますッ!」

 

 複数人の様々なジャック・ザ・リッパーが、一斉に第八班に襲い掛かり……

 

「ブルァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

「「「ギエピーッ!?」」」

「イヤァァァァァァァァァァッッッ!!!」

「「「アイエーッ?!」」」

 

 いきなり飛んで出て来た第七隊長の錫杖薙刀のフルスイングによって、錐揉み回転しながら吹き飛んで行った。

 

「き、貴様ッ生きていたのか?!」

 

 錫杖薙刀を縮ませながら、第八班と相対した時と違う…怒りが籠ったオーラを纏ってユラリと立ち上がり、ジャック・ザ・リッパーの方を向く。

 

「……許さねぇ、許さねぇぜ。全人類テメェ化計画だとォ?ざっけんじゃないよ!テメェにうゆせんが務まるわけねぇだろブッ殺して内臓引き摺り出して(自主規制)を(自主規制)して(自主規制)(自主規制)(自主規制)(自主規制)(隔離室送り)すっぞゴルルァ!!!」

 

「………めっちゃキレてますね…」

「そんなに地雷だったんですねぇ〜」

「ヘイ境界対策課!ここは一時共闘といこうや」

「どうするッス?市倉先輩」

「ッ…………〜〜〜〜っっっ」

 

 迷う市倉八尋。

 

 迷う市倉八尋。

 

「こ、今回だけですからねッ!コレ終わったらふん縛りますからねッ!」

「よぉぉぉしッッッ!!!」

 

 ついでに近づいてきたジャック・ザ・リッパーの顔面をブッ飛ばすやっひと第七隊長。

 

「じゃ、俺チャンこっち半分やるから、そっち半分お願いね。っしゃア!野郎オブクラッシャー!!!」

「あっちょっ…あぁもう!八乙女ちゃんを中心に周囲迎撃陣形!句柄くん、まだ動けそうですか?!」

決断(デシジョン)を使えば、武器を振り回すのはなんとか…」

「じゃあ柴原くん!」

「ッ…しゃア!了解したッス!句柄の足になりまッス!」

「八乙女ちゃん、あたしたちのサポート頼みます!」

「了解ですぅ〜。私に全部任せてくださいねぇ〜!」

「では、作戦…開始!」

 

 両者が動く。先ずは第七隊長。

 

 ブーメランの様に錫杖薙刀をブン投げ、複数のジャック・ザ・リッパーを真っ二つにしながら吶喊。胸元から取り出したカプセルを砕き、四八式軍刀を生成して近くのジャック・ザ・リッパーの心臓を貫き、引き抜くと同時にもう一人を袈裟斬りにする。

 そして、錫杖薙刀をキャッチしたジャック・ザ・リッパーへ向かって跳躍し、脳天から串刺しにする。錫杖薙刀をひったくり、柄尻を手の形に変形させ、四八式軍刀を掴ませ、両刃薙刀へ変形。人狼の様なジャック・ザ・リッパーが振り下ろす爪を逆に打ち砕き、八つ当たりの如く高速で振り回してバラバラにした。

 

 次に、やっひと凍洞くん。

 

 凍らした地面を滑りながら氷の刃で斬りつけ、その傷口から全身を凍結させる。時には地面を凍らすついでに足も凍らせてやっひに近づくジャック・ザ・リッパーを足止めし、刃をクナイのようにして投擲し、次々に氷漬けにしていく。

 その間、やっひは3本の植物の矢を番え、残りの形代のうち2枚を消費し、3回分の詠唱を言祝ぐ。放たれた矢は氷漬けにされたジャック・ザ・リッパー達を囲うように成長し、それぞれ一人ずつに巻き付いて、最後はドームを形成。そこに最後の上着を脱いで狩衣姿になった凍洞くんが植物のドームを完全に氷漬けにした。

 

 そして、柴原くんと句柄くんと八乙女ちゃん。

 

 決断と呼ばれる己の術式の応用を使い、身体強度を底上げした句柄くんを肩車した柴原くんが全力疾走をする。句柄くんはあり余る身体強度で華麗に槍を振り回し、ジャック・ザ・リッパーを片っ端から無力化していく。

 その時、ゾンビの様な子供のジャック・ザ・リッパーが後ろから飛び掛かり…八乙女ちゃんの術付に防がれた。句柄くんはノールックで子供のジャック・ザ・リッパーを柄尻ではたき落とし、奥から出て来た鬼の様な2号級界異の姿をしたジャック・ザ・リッパーの脳天へ向け槍を投擲。祓滅する。

 

「な、何故だ?!何故こうも容易く形勢逆転されるのだ?!」

「そりゃあお前、決まってんだルルォ」

 

 錫杖薙刀の柄を変形する。変形する。変形させ続ける事で、鞭の様に曲がり伸縮する様になる。ソレを見せつける様に、今から殺すとでも言う様に振り回す。

 

「コレ企画物だからな、キャラ掘り下げる時間ねぇんだわ。死ぬで君」

「また変な事言ってんじゃあねぇですよ」

「ふ、巫山戯るなァ!私の計画がこんな所で終わるものかァァァァァ!!!」

「うわぁ、お手本の様な巨大化だぁ」

 

 紳士服のジャック・ザ・リッパーの身体がボコボコと変形し、ここにいたジャック・ザ・リッパー達の特徴が合わさった、醜悪な4足の生き物が誕生した。

 

「そろそろ地の文もジャック・ザ・リッパーって書くの疲れただろうしな、チェックメイトと行こうぜ!」

「なんか癪に障りますが、同感です!」

「うざ、勝手に仕切るな」

「今更大きくなっても、私たちには敵いませんよぉ」

「でっかくなって倒し甲斐が出てきたッスね、句柄くん!」

「えぇ!ヒーローみたいにキッチリ倒して、ハッピーエンドとしましょう!」

 

 咆哮をあげ、手を叩きつけるが、やっひが発射した植物の矢に絡め取られ、潰すことは叶わず。その手を伝って凍洞くんと第七隊長が身体へ登り、柴原くんと句柄くんは八乙女ちゃんの術付に乗って高い位置にある頭へ向かう。

 

「アァァァァァヒーハァァァァァ!!!」

「うるさ」

 

 錫杖薙刀を鞭の様に振り回し身体を片っ端から斬り刻み、その傷口を氷結させ、身体の内側をじわじわと凍らせていく。ジャック・ザ・リッパーが咆哮を上げながら身を震わせ、体中に手を生やし2人を迎撃するが、そんなモノでこの2人は止められない。

 

 そして、最早身体の半分が斬り刻まれ、氷漬けされたジャック・ザ・リッパーの目の前に、術付に乗った柴原くんと、槍を振りかぶった句柄くんが現れ……

 

「いっけぇぇぇぇ!!!」

「ハァァァァァァァァァァッッッ!!!!!」

 

 身体の加護と身体強度に任せた槍が、亜音速で飛んでいき、ジャック・ザ・リッパーを頭から貫き、風穴を空け、爆発四散させた。

 

 身体が朽ち、ボロボロに崩れていく。こうして、ジャック・ザ・リッパー事変は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミワシ隊本部、病室

 

「それで、こんなボロボロになっちゃったと……」

「そうだよ。いやマジで酷いよ!あの後解散の流れだったじゃん!ジャック・ザ・リッパーもちゃんと本体無事だったじゃん!めっちゃついでにしばきに来たよあの境界対策課とか言う蛮族共!」

 

 病室のベッドにて、全身包帯ぐるぐる巻になった第七隊長が、花苺ちゃんと話していた。

 

 あの後、普通に境界対策課とバトルになり、普通にボコボコにされながら逃げてきたのだ。

 

「クソっ、死なないから舐めプしてたとは言え、ちゃんとボコボコにして来やがって、怖い連中だぜ……」

「まぁまぁ、楓呀ちゃんがちゃんと帰ってきてくれて、私は安心しましたよ。貴方に何かあると、烏有せんせが悲しむから…」

「ふ、そこは安心してよろし。拙僧は死なないよ」

「うふふ、それは安心ですね」

 

 こうして、ジャック・ザ・リッパー事変は今度こそ幕を閉じたのだった。おしまい。

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