タクティカル祓魔師の作戦記録   作:ゲルゲルググ

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ホモの書く小説にだいたい出てくる不審者が出るので初投稿です。


休日の市街地戦闘

 ――どうも皆さん、タクティカル祓魔師の樫輪涼介(カシワリョウスケ)です。あの……今久しぶりの休暇で、頑張ったで賞って感じで1人焼き肉でも行こうと思ったんですけど……

 

「アッハッハハッハッハ!いやコレ困ったなオイ!全然抜け出せ無いんだけど!いやウゼェなマジで!」

『繧イ繝帙ャ繧イ繝帙ャ繧エ繝懊え繧ゥ繧ィ繝?え繝懊?繝懊?繝?ラ繝懊ャ繧エ繝懊え繧ゥ繧ィ繝?ざ繝懊ご繝帙ャ』

 

 ――休日でも祓魔装備を持っていけってこう言う事か日聖(ヒジリ)さァァァん!!!

 

 特殊な繊維で作られた竹刀袋から黒不浄を取り出し、路地裏で人を飲み込もうとしている翼の生えたカエルの様な一号級界異に斬り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやァありがとな少年!コレは俺チャンの感謝の奢りだ!幾らでも食い給え!」

「は、はぁ……」

 

 そんなこんなで、カエルの界異をサクッと倒し、簡易浄化キット(バルサンの様な物)で後始末もきっちりした後、食べられかけていた男にお礼として焼き肉皇帝という店で奢ってもらっていた。

 

「と言うか、体は大丈夫なんですか?」

 

 界異とは穢れの塊。その体内に入ってしまえば、穢れの奔流を一身に受ける事になる。かつて勤務初日に体験した樫輪は、その危険性を身に沁みて理解している。

 

「いんや全然?元気100万倍だぜ?」

「あ、ハイ…ソウデスカ……」

 

 ――いや本当に大丈夫なのだろうか?いやまぁ、本人が大丈夫と言うならそれでいい…か?

 

 などと思いながらも、運ばれてきたお肉を焼いて食べ、暫しの間幸せに浸る樫輪。他人の金で食べる肉は美味いものである。勿論本人は割り勘するつもりだが。

 

 ――……にしても、なんであんな所に界異が一匹?近くの境界異常から抜け出た?でもそういう感じのは近くに無かったし、今は曇りだけど日も出てるし、光の当たらない場所で人を食べて力をつけようとしてた?それで偶々裏路地にいたこの人が………いや待て?なんでこの人裏路地にいたの?と言うか今見るとこの人メッチャ怪しい外見だな?!

 

 その男は、全身黒ずくめだった。上半身を黒コートで覆い、下半身も黒い長ズボンと黒いブーツ。その上黒い手袋を嵌め、顔はフードで影になって窺い知る事が出来ない。つか影にしては異様に暗すぎる。

 

 ――と言うか食事中でも脱がないのソレら?暑くない?

 

 影に吸い込まれていく肉を見ながらそんな事を考える樫輪。だがその後に、勤務先である境界対策課にも割と不審者気味な見た目の人達がいたのを思い出し、この男が何者なのかを察する。

 

「あの、突然で悪いんですけど」

「ん、なんじゃらホイ」

「もしかして…同業者ですか?」

「………」

「………」

「あァ、一応フリーの祓魔師なんだ俺チャン。祓魔重機免許もあるよ」

「マジかよ……!」

「マジかよってなんだよ?!」

 

 ――いや、その……うん、そっかー同僚かー。

 

「まぁお前さんの言いたい事もわかる。実際当たりのキツい同僚から良く言われる」

「なんかゴメンなさい」

「いいのいいの。つーか、お前さん境対の人間だろ?」

「え、まぁハイ」

「何故わかったの?って顔だな。見ればわかるさ。お前さんの太刀筋はタクティカル新陰流だろう。スゲェ綺麗だったぜ」

「ど、どうも…」

 

 ――なにこの人、初対面なのにメッチャ褒めてくれる。

 

「あ、そういえば名前…僕は樫輪涼介と言います。貴方は?」

「……そうだな、じゃあスサノヲって事で」

「……偽名?」

「呪詛対策でね」

「あぁ〜……」

 

 政府機関である境対の祓魔師は、常に7枚の形代紙を持つが故に、呪詛の対策として偽名を使う者は少ない。

 が、フリーの祓魔師だとそうは行かない。形代紙はコンビニなどで調達可能とはいえ、境対で使われている様な安定した品質の形代紙が必ず手に入るとは限らない。その為、フリーの祓魔師は偽名が多いのだ。

 

(境対ねぇ…あのコは今も元気だろうか)

「…?僕の顔に何かついてます?」

「いんやナニモ。それよりお前さん、彼女いんの?」

「………ノーコメントと言う事で」

「えぇ〜」

 

 などと他愛もない話を繰り返しながら食事を続け、次第に腹も膨れた彼らは会計へ向かう。途中、割り勘するしないですったもんだありながらも、なんとか割り勘を果たし外へ出た。

 

「それじゃあ、僕はこの辺で」

「おう!元気でnバギュ――」

 

 ――え?

 

 

 ――え?何が…

 

「界異だァァァァ!!!」

 

 その悲鳴を聞いて、漸く我に帰る樫輪。そして、眼の前で起きたことを改めて理解する。

 

 別れた瞬間、スサノヲの上から降ってきた蛇の様な界異が彼を丸呑みにし、そのまま空へとまた一瞬で登っていった。

 

「あぁもう!!」

 

 悪態をつきながら、勢い良く近くのマンションの壁を駆け上がる。そして屋上に着地して空を見上げ……

 

「……何が、起こってるんだ…?」

 

 空から、無数の界異が落ちてきていた。

 

 その光景に呆気を取られていると、ポケットのスマホから着信がかかる。

 

「日聖さん?…もしもし」

《「樫輪くん、怪我はない?」》

「ハイ。あの、空から界異が――」

《「それについてよ。原因は、今貴方がいる場所の上空に存在している界異集合群…『汐羅雲(セキラウン)』から降ってきたものなの」》

「汐羅雲?!そんな!アレはこんな低い場所で発生するものじゃ無いでしょう?!」

 

 汐羅雲、主に成層圏付近に発生する境界異常…及びそこから出て来た界異群の名称。その性質上、その境界異常から動く事は無く、発生場所に滞留し続ける。

 だが、この汐羅雲は市街地の真上と言う、ここまで低い場所に発生する筈がない。

 

 そこまで考えてから、気づく。低い所で発生したんじゃない。

 

《「発生したんじゃ無い。降りてきたのよ」》

「でもッ…それこそ有り得ない事じゃないですか!」

《そう。だから今その原因を解明中ってワケ。それで、本来汐羅雲の対処にあたっていた空域祓魔隊が、降ってくる界異を出来るだけ押し留めてる。貴方には、地上に落ちて来た界異の祓滅と一般人の避難を招集した祓魔師達と行って欲しいの。折角の休日に悪いけど、出来る?」》

「ッ…はい!!任せて下さい!」

 

 ――人命の前で、休日だの何だの言ってられないっての!

 

《「助かるわ。でも気をつけて、一体一体は一号級、強くても二号級の界異だけれど、一人の所を囲まれるのは危険よ。必ず死ぬわ。だからすぐに近くの祓魔師と合流する事。私も出るから、合流するまで死ぬんじゃないわよ」》

「わかりました!」

 

 通話を切り、狩衣の上に入っていた上着を脱ぎ捨てる。竹刀袋から黒不浄を取り出してから、スサノヲを呑み込んでいった蛇の界異が飛んだ方向へ向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

┌(┌^o^)┐

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 蛇の様な界異が、空の上を泳ぐ様にうねり進む。

 が、その瞬間、界異が苦しみ出したかと思うと、無数の槍…錫杖の先端に刃を取り付けた薙刀が全身を内側から突き破った。

 

「あークッセ。なんで穢れの塊のくせしてちゃんと生グセェんだよ。クセェのは穢れてっからか?」

 

 上顎を切り飛ばし、穢れに塗れた黒コートが出てくる。コートについた穢れを適当に払いながら辺りを見回し、人が1人もいない事を確認。

 

「最近の人達は避難が早くて助かるね。こっちとしてもヤりやすい」

 

 そう言いながら薙刀を構え次々と目の前に降りて来る一号級、二号級界異達と相対する。顔の周りから何かのパーツがそれぞれ顔面へとスライドし、鬼を模した機械的な仮面を形作る。そして――

 

 ふと、さっき会話した樫輪と言う少年の事を思い出す。

 

 ――…惜しいなァ、もう少し会話しときゃよかったぜ。

 

 その瞬間、物凄い音を立てながら、投擲された薙刀が空気を突き破り、軌道上にいた複数の一号級界異が爆ぜた。

 

 界異達がそれに気づいた頃には既にそこにスサノヲの姿は無く、自らが投擲した薙刀を掴んでいた。その薙刀を地面に突き刺し、急ブレーキをかけるスサノヲに殺到する界異達。

 スサノヲは薙刀の柄を両手で掴んだまま、ポールダンスの如く器用に体を回転させ、片足で直ぐ側まで来ていた界異を蹴り飛ばし、続くもう片方の足…の裏、ブーツの踵に仕込まれた銃口から黒不浄と同じ製法で作られた小さな球体を薙ぎ払いながら連射して、奥の界異を足止めする。

 

 そして直ぐ様器用に地面へ着地すると同時に薙刀を引き抜き、横一線。さっきよりも異様に柄が伸びた薙刀によって、複数の一号級、二号級界異を両断する。

 

「おっと」

 

 勘でその場から一歩ズレると、さっきまで立っていた場所に上から鋭いくちばしをした界異が降ってくる。その界異を柄を短くして刀身を長くした薙刀…いや、刀剣で真っ二つにすると同時に駆け出した。

 次々と降り注ぐ界異を避けるついでに両断しながらもう片方の腕で袖から黒不浄を取り出し、彼を包囲しようとしている界異の群れ…その層の薄い場所を強行突破する。

 

 二刀で界異を最低限斬り裂きながら群れを振り切り、そのまま転がり込むように裏路地へ入り込み……

 

 

 

 体が分裂した。

 

「上は頼むぜ俺チャン」

「おうよ」

 

 一見同じ見た目で同じ薙刀を持ったもう一人のスサノヲ。その手を握り、増えた己を空へとブン投げた。

 更にもう一人増えると、新たなスサノヲはもと来た方から、本体のスサノヲは奥の方からそれぞれ裏路地を抜け界異を祓滅し始める。

 

 空へ飛ばされたスサノヲは、近くにいたエイの様な一号級界異の背中に張り付く。暴れて振り落とされそうになりながらもしっかりしがみつきながら、人の皮……否、己の皮で作られた皮紙を貼り付ける。

 そして、人差し指で親指の指紋を手袋の上から切り裂き、血が流れ出る親指で皮紙に五芒星を描いた。

 

身儡操傀(シングツソウカイ)…縁起!」

 

 瞬間、皮紙から血管の様なモノが広がり、界異の全身に駆け巡る。全身に広がり終わった頃には界異は暴れるのを止め、大人しくなった。

 そのままスサノヲは懐からカプセルを取り出す。表面に結界術が張られたカプセルのボタンを押し、敢えてその結界を壊すと……中から破裂するように、絶対に入らない筈の大きさのガトリングが飛び出した。

 

「よぅし、そんじゃあ空に向かって突撃じゃあァ!」

 

 ガトリングを構えたスサノヲの声に答えるように、エイの様な界異は殺人的な速度で飛翔して行く。

 

「上の方は上手く行って何よりだ…ぜっと!」

 

 本体のスサノヲは裏路地から飛び出すと同時に目の前の界異を四等分し、効率的な動きで迫りくる界異達を次々と両断する。前から突っ込んで来る界異を飛んで避けながら二刀で真っ二つにし、着地と同時に片腕ずつそれぞれ別の方向から来る界異を袈裟、逆袈裟に斬り裂き、そのまま独楽の様に体を回しながらの高速移動で周囲の界異を次々と斬り刻む。

 完全に包囲されない為の位置変えを終えると同時に丁度近くにいた界異を二匹串刺しにし、丁度頭上から降ってきた界異をソレで勢い良くサンドし、怯む間に串刺しにした界異を横から挟み込む様に来る界異二匹にそれぞれぶつけ、頭上の界異の目ん玉を二刀で串刺す。そのまま界異の頭をこじ開ける様に二刀を振るい、怯ませた左右の二匹を縦に斬り裂いた。

 

「……界異の降る量が減って来たな。お空の人達もちゃんと仕事してくれてんねぇ」

 

 などとぼやきながら目の前の二匹の界異を斬り捨て、その二匹を囮に後ろから来る二号級界異を刀剣にした錫杖の柄の長さを勢い良く戻す事で足止め。なんなら柄の先端が掌の形になって界異を掴み、そのまま振り回して周囲の界異を纏めてぶん殴る。最後に一纏まりになった界異達を薙刀で薙ぎ払い、纏めて祓滅した。

 

 すると、上から勢い良く降ってきた黒い塊が地面を揺らす。

 

 その正体は、筋骨隆々なカブトムシの様な界異。溢れる穢れの量からして、恐らく三号級。

 

「あー……チッ、まぁ良いかァ!大変なのはみんな同じだもんなァ!」

 

 黒不浄を掌の形をした柄の先端に握らせ、薙刀から両刃刀へと形を変え、地面に刃を擦らせながら構えをとる。すると同時に、錫杖の刀身と黒不浄に赤黒い炎が纏った。

 

「業禍の舞でも拝んで死ねィ!」

『縺カ縺」谿コ繧ゥ繧ゥ繧ゥ繧ケ!』

 

 咆哮と共に羽根を開き、瞬きをする間に一瞬で距離を詰めるカブトムシの界異。コレが境対の祓魔師…樫輪涼介などであれば、為すすべも無くその角に串刺されていた事だろう。

 だがこの男は、そのカブトムシの突進を余裕だと言わんばかりに飛んで回避し、なんならすれ違いざまに角を斬り落とした。

 

 そして着地と同時に跳躍し、今度はこちらが一気に距離を詰める。界異が振り返った頃には、既にその身を赤黒い炎が逆袈裟に切断していた。

 そして逆袈裟の勢いを殺さぬ様に体を回転しながら逆方向からの袈裟斬り。そして横一文字に斬り裂き下から上へと縦に割りながら跳躍し、距離を取りながら両刃刀を振り回して炎の刃を飛ばし、微塵切りにする。

 

 そして最後に、着地と同時に地面に錫杖の刃を突き刺す。炎が地面を割りながら奔り、カブトムシの界異の足元へ到達すると同時に、勢い良く爆散した。

 

「……………フゥ、一丁上がりっと。上の方も……終わった様だな」

 

 残心を解いたスサノヲが空を見上げると、攻撃を受けたのであろう…落下するエイの界異を足場に跳躍し、烏の様な界異の頭を刎ねる己の分身。更にその上では、浄化されながらゆっくりと落下する四号級界異の姿も。向こうはどうやら空域祓魔隊が祓滅した様だ。

 

 空から視線を離し、もう一人の分身の状態をと辺りを見回し……道の先に、焼き肉を共にした樫輪がいた。

 ボロボロではあったが、嬉しそうにこちらに手を振る彼を見て、スサノヲは一歩踏み出し………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「樫輪くん。此処でジッとしてて」

「え、日聖さん?どうしたんですか?」

 

 ――一体何を……他の人達も、なんであの人に武器を向けているんだ?

 

「…そうね。元々ウチの管轄ではないから、知らないのも無理はないかしら」

 

 そう言って、日聖は彼を睨みつける。睨みつけるだけなのは、今この場にいる祓魔師の数と質だけでは、あの黒コートの男を捕える事は不可能だと理解してしまっているから。祓魔航空部隊の援護があればワンチャンあるだろうが、その部隊も四号級界異の相手で疲弊しているから無理だろう。

 

 結局、ダルそうに懐からミジンコの様な掌サイズの界異を取り出し、爆発させる事で生じた穢れの煙に紛れて、スサノヲは何処かへ消えていった。

 

「樫輪くん、呪詛犯罪と、ソレらを取り締まる呪詛犯罪対策課があるのは知ってるでしょう?」

「…はい」

「あの男は、呪詛犯罪対策課が追っている最重要案件、とある呪詛テロ組織に所属する幹部の一人」

「あの人が…犯罪者?」

 

 その言葉は、樫輪には衝撃だった。彼は、界異に食べられそうになり、一緒に焼き肉を食べ、遠目からだが、確かに界異を倒していたスサノヲの姿しか知らない。故に、犯罪者であると言う事実を余り受け入れられていなかった。

 

「スサノヲだったかしら?どうせ2秒で考えた偽名でしょうね。次からは偽名を持つ輩には本名を聞き出しなさい。フリーの祓魔師は、私達の本名開示に答える義務があるから。まぁ、あの男の名前は既に割れてるわ。憶えておきなさい、あの男の本当の名は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

┌(┌^o^)┐

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 禁域

 

 禍々しい世界の空に浮かぶ線路を、コレまた禍々しい汽車が走る。

 その車内で、2人の人物が相対していた。

 

「やっ、白虹(ハッコウ)ちゃん。帰ってきたよ」

 

 1人はあの黒コートの男。

 

「"不可"。遅過ぎます。予定時間から8分10秒777の遅刻です」

 

 もう一人は、黒い長髪を結び、冷たい瞳をした白虹と言う女性。

 

「正直すまんかった。でも仕方ないじゃん?上から汐羅雲が降ってくるとは思わなかったんだからサ。俺チャンが早めに帰ってもアレはそのまま市街地に降ってきただろうよ」

「そこの判断については"良"です。出来たとしても貴方を始めとした一部しかあの結果は生み出せなかったでしょう。そこは称賛に値いします、楓呀刎々斬(フウガハバキリ)中尉」

 

 スサノヲ改ため、楓呀刎々斬と呼ばれた男は、仮面の奥で笑みを作る。

 

「よせやい、褒めてもなにも出ないぞ」

「褒めてません」

「ゑ」

「先ず一号級界異に飲み込まれかけて身動きが取れなくなる事が有り得ません。挙げ句に境界対策課の祓魔師に助けられ、一緒に食事とは……巫山戯てるんですか?」

「巫山戯てねぇよ!!俺チャンだってミスする時はあるの!あと焼き肉が食べたかったの!烏有大尉だってこう言うミスするからなコノヤロー!」

「しませんよ。次そんな巫山戯た事を言ったら宇宙に飛ばしますよ」

「めっちゃ怖い事言うやん。やめて?」

「それと、いつまで顔に御社を貼り付けてるんですか」

「え?あぁ、教えてくれてサンキュな」

 

 鬼を模した機械的な仮面がパーツごとに分離し、黒いフードの中に吸い込まれていく。

 

「ソレで、例のモノは?」

「おう、ここに―ってくすねるな」

「出すのが遅いんですよ」

 

 懐からカプセルを出そうとした楓呀の掌から、術式を使ってカプセルを奪う白虹。カプセルの結界を切って大きめのケースを取り出し、中身を確認する。

 

 中には、ガラスケースに入れられた、金色に光る小さな界異が入っていた。

 

「無号級界異、呼金蟲(コガネムシ)穢金(ケガレカネ)の純度も規定通り。確かに受け取りました」

「まったく、広範囲の界異を呼び寄せるソレをご所望とは、今回のビジネス相手は碌な奴じゃないな。今の内に切っとく算段はしとけよ。こっちが痛い目を見る前にな」

「………貴方に言われずとも、理解しています」

「なら良いけど。んじゃ元気でな!白虹ちゃん」

 

 そう言って手を振りながら、丁度駅に停車した汽車から降りる楓呀。

 

「何故、烏有大尉はあの様な男を同胞としたのか…理解しかねます」

 

 そう呟きながら、白虹瑠璃(ハッコウルリ)は、楓呀の背を見えなくなるまで睨み続けた。

 

 

 

 ミワシ隊。

 それは、明治15年に日本全土の結界の維持と強化を目標に結成された部隊。『ト号作戦』と呼ばれる国防計画、強固な結界によって国内の界異を一掃すると言う陛下直々の大命を完遂する為、今もなお活動を続けている祓魔軍隊だ。

 例えそれが、月日の流れにより形を変え、呪詛犯罪と呼ばれる行為と成れ果てようと。彼らは進み続ける。

 

「……揃ったな。ではこれより、N.A.R.A.K.U襲撃作戦のブリーフィングを行う」

 

 そして今日も日ノ本の為に、また一歩進み出す。例えどれだけの犠牲を払おうと。




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